[そう声を掛けた瞬間、目の前の身体がころんと転がった。それ自体は大した事じゃなさそうで、息を吐いた。いや、吐く間は実際には無かった。]
[不穏な音に、自然と視線が上を向く。巨大な岩。それが何処へ向かうかなんて考える余裕は無く、反射的に翼を打って。]
────ハロちゃんッ!!
[つい先程まで、腕の中に居た小さな生き物。それにあと僅かで届く──そう思った次の瞬間、衝撃に跳ね飛ばされた。]
ッ、う……!
[飛行種の定めかキランディの身は、同じ体格の人間に比べれば、幾分か軽い。跳ね飛ばされて、恐らくは負傷したけれど今はそれどころじゃない。飛び起きざまに、大岩の落下地点へと駆け戻り、声を荒げる。]
ハロちゃんッ!!!
ハロ、返事して!!!! お願いッ!!
[同時に大岩を動かそうと試みるが、力はあっても体重が足りない。自分一人では、到底動かせそうにないのは明らかだ。震える手で、緊急信号を発信する。]
(160) 2021/11/12(Fri) 22時頃