― 四日目:船内 ―
[パチンと、手元の情報管理用機器の電源を入れる。
空中に展開される複数のディスプレイ、待機中オフライン表示のクルー別アイコン、各自の発信機の位置。
昨日、一昨日、その前、それ以上前のスペランツァでの数多の記録。
持ち帰ったものと、持ち帰る事が出来なかった物。
死者のデータも生者のデータも平等に処理するものの、死者の記録の最後に付け足すのは専用の報告書だ。
専用のテンプレートは用意されているものの、それの入力に慣れてしまった自身の手によって、報告書は滞りなく提出される。
遺族等が居れば種族に合った翻訳形式で送られる物だ。
最も、調査船に乗るようなクルーの中には独り者の放浪者も居る為、外部に出る事は稀である。
『マーレ10』に降りてから、三つ重ねてしまった死者の名前。
…――送り先はあるのだろうか。それは自分の管轄の外側、別の物が担当するだろう。]
(153) 2021/11/14(Sun) 20時半頃