――海――
[大きな翼は風をぐぅんと押しやって、ワンストロークで大きく進む。
"海"と呼ばれた湧水地帯に辿り着くのも、さして時間がかからなかった。
その水のたまりが、どれだけ大地を広く覆っているのか、降り立てばよくよくわかる。
ハロの小さな視界は、すっかり水面で埋まってしまうのだから。]
すごい、すごい!
おみず、たくさんあるね!!
[初日に瓶に汲み取った熱水とは、比べ物にならない量。
瓶に詰めようものなら、どれほど数が必要だか、検討もつかない。
ああ、それに。]
おみずのにおい。
いーっぱい、するね。
[故郷のモイラも、こんなに澄んだ水ではなかったけれど、一面水に覆われた星だった。
泥混じりの、浅い、濁った湿地。それでも水は、ハロにとっては故郷のものだ。その冷たくてあおいにおいも、愛おしい、愛おしいものだ。]
(145) 2021/11/12(Fri) 21時頃