辿り付いた場所で、目を開ける。濡れた髪を掻き上げれば、肩には黒蝶が留まっていた。伸びた道は、ひとつ。その道の先に、待っていてくれる人が居る。ゆっくりと、ゆっくりと。あの日のような柄にもない恰好はしなかった。これからずっと一緒にいるなら仰々しい衣装は必要ない。まあ、割と恥ずかしかったし。白い清楚なワンピースのすぐそばに黒のTシャツスキニーの長身が立つ。カメラはやはりこの手にはなかった。だからもう写真を撮ることは叶いそうもない。ならば、この眼に焼き付けて行こう。アイツらの『生-みち-』も、自分達の『死-みち-』も。
(142) anbito 2023/08/07(Mon) 05時頃