[そこで視線を彼から絵画へと映した。
知らない男、知らない女、知らない感情。
成海にとっては傍らの福原と比べそれらは何の重要性も無い。
話を聞いた今は未来の彼などではなく、別の人間にしか見えなかった。]
だけど君は彼ではないのだから
どれだけ見た目がよく似ていても、全く違う大人になれる
……ごめん、この状況で語っていいことじゃなかったかな
[悲しい子供時代を変える術が無いのなら、もう思い出すことも無くなるような未来があればいい。
ゼミの皆が誰一人欠けることなく生存する未来を望む成海は、叶えば見ることのない数十年先の彼を思い描いた。
一分先の現実も曖昧な今では、残酷だったかもしれないとは後から思い至って。
今は福原の気が済むまで、退出の提案はやめて言葉を交わしている。
そうしている間に彼が言い出すかもしれないが。*]
(139) 2023/07/29(Sat) 21時頃