─乾恵一の家 応接間─
[咳き込む合間に見えた彼の表情は、まるで悪魔の様だった。血を啜り、それを「甘い」と宣う>>100のだから、実際悪魔と変わらない。康生の謝罪は悪魔の逆鱗に触れた>>101らしく、前髪が引き抜かんばかりに掴まれた>>102。]
い゛ッ!! 俺、は……
[痛みに滲んだ視界が薄く開けば、間近に彼の顔が在った。何事か言い掛けた康生の声が、告げられた内容>>103に止まる。引き攣る程に見開かれた瞳が、康生の衝撃を物語っていた。吐息が掛かる距離で、震える言葉が紡がれる。]
なんで────ケイ、誓うって……ゃ、ッ!
[制止の言葉は、音にならず塞がれた。康生が自分の体質について打ち明けた時、彼は言った筈だ。「君を生命の危機に曝すような事を、しないと誓うよ」と。今の彼は、悪意を以て康生の生命を危機に晒そうとしている。幾ら激昂したにしてもやり過ぎだし、人が変わってしまったかの様だった。]
(108) 2023/11/12(Sun) 01時頃