…ふ。笑ってない。
[僅かの筋肉の動きも理解できるほど、回谷は今、自分を見ているのだろう。
その利点も得も何もやはりわからなかったが
だとするなら、自分に出来るのはただ一つだ。
白いアルバムを手渡し、別段濃くもない自分の事を教えていく。]
生まれたのが夏だからか、夏の写真が多いな。
[青空、入道雲、向日葵畑、夕焼けの影法師。
ページをめくればそんな写真が何枚も続いているだろう。
美術的価値もない、日常を切りとっただけのなんてことのない写真。]
自分は優しい言葉を掛けてやれない。
死んでいるのは自分かもしれないし、回谷かもしれない。
どっちも生きているかもしれない。
[回谷は自分が死ぬのが嫌だと、小さく零す。
誰ならいいということでは無いだろうけれど
その『やだな』には優しさ以外のものも含まれている気がした。]
(91) 2023/07/31(Mon) 17時頃