―現在:美術館前近辺―
[満点の星空を見上げるだなんていつぶりでしょうか。
修学旅行?林間学校?
それから今までの間に満点の星空を見上げたことなんてあったでしょうか。
しばし田端はそれに見惚れていました。
口の中には相変わらず、イチゴミルク味のロリポップがあります。
なかなか溶けてくれません。
卵サンドも早く食べたいのに、でもこの味が嫌ではありませんでした。
空にある星座を眺めます。
その星座にまつわる物語を思い出します。
ぼんやりと物語に思いを馳せる至福の時間。
それを邪魔したのは、ギャアギャアと言う耳障りな声でした。
眉を顰めて音の下方に視線を向けます。
カラスでしょうか、遠くにそれがたむろしているのが見えました。
何をしているのだろうと急に現れた烏に目を凝らします。
カラスが突き、啄み、奪い合っているその奥。
白くて細い手足が見えてギョッと目を見開きました。]
(89) 2023/07/29(Sat) 14時半頃