サラは優しいですね。
[行きたいところへ、という沙羅へそう返す。
死んだ者を忘れられず、いつまでも傍にいて欲しいと願う人の姿も、いくつも見てきたから。彼らの行きたいところへ、と言う少女の答えを、優しさと――ある種の強さでもあると受け取った。]
わたくしは、そうですね……
[自分のことを問われて、少し考えるような間。
普段ならば、"彼らが安らかであることを"などと答えていただろう。《銀光教団》としても、死後についての取り決めは特になく、それぞれが信じたいように信じる、というふんわりとした扱いとなっていた。
《銀光教団》は生きている者のための教団であり、生きている者が救われることが第一であるからだ。]
死後のことは、あまり考えません。
ただ、その死が苦しいものでなかったことを願うばかりです。
[失礼だったら、と言い添えられた言葉には、気にすることはないとばかりにゆるく首を振った。]
(65) 2022/05/09(Mon) 01時頃