[抱き締めて呉れる腕と、返される言葉>>51へ。黙った侭、抱き締め返して応えた。
違和感無く言葉を紡ぐには、頭が痛み過ぎているのも一因だったが。
其れに比べれば。注射の針の痛み等、無いも同然だった。
徐に、身体が重く為って行く。"見"えて居た景色の輪郭が曖昧になり、指先の感覚も、頭の痛みも遠退いていく。
何故だか少し、肌寒いと思った。死が寒くて暗い物として物語に描かれるのは、案外的を射て居るのかも知れない。
御揃いと、言えるのかしら、と。
夢うつつの思考で、一瞬だけ考える。
冷たく為った少女を抱いたポッドは、然し、星の瞬く闇の中を彷徨うのでは無い。友人と共に、恩人の故郷へ。新しく生きる為の旅路を往くのだ。
故に、何も同じでは無く。何も、解りは為ない。
少女は、少し長めに、眠るだけだ。]
ええ。
──おやすみ、なさい。
[最後に然う、囁いて。
少女の意識は、深い、深い眠りの底へと、落ちて行った。]
(52) sleepingxalice 2022/05/18(Wed) 22時半頃