[商売人の笑みには、やはり薄く微笑んで。
差し出されたペンをとり、契約書をさらりと眺め、サインを書き入れる。額面も見たが、特段高いとも安いとも言わない。相場というものにあまり興味がなく、なんなら乗船料がいくらだったかも覚えていない。
商品と、取引相手を気に入りさえすれば値段は問わないタイプだった。]
これでよろしいですね。
振込は後ほど、経理の者にさせておきます。
[『オトモダチ』と言われて、くっくっと喉の奥で笑う。]
本当に商売がお上手だ。
ええ、勿論。気に入ったら紹介いたしますとも。
あ、こちら……一度使ったら絵柄が消えてしまったりします? ああいえ、別に返金しろなどとは言いませんよ。ただの確認です。
[……もしかしたら本当に絵柄が気に入っただけなのかもしれなかった。]
では、わたくしはそろそろ。
たくさんお話をしたら、少し喉が渇きました。
[そうしてカードを無事受け取れば、丁寧に会釈をして。
大食堂の方へするすると歩いていった。]
(50) 2022/05/02(Mon) 20時頃