─プロローグ ベンチにて─
[康生が恋愛に関して熟達していると思われている>>34のなら、それは全くの誤解だ。確かに康生には思慮深い面があるし、頭だって良い方だ。そして、ある面に於いては酷く大人でもある。だがそれは、経験の偏りに因るものだ。康生の経験は、偏りが非常に激しいのだ。]
[つまり、何処かが突出しているという事は、別の何処かが大きく欠けているという事だ。純白で居られるのは、穢れを知らないからだ。真っ直ぐで居られるのは、曲がる事が出来なかったからだ。希望だけを瞳に宿すのは、絶望を映す余地が無かったからだ。そして、康生自身にそうである自覚は恐らく無いだろう。無いからこそ────問題は複雑な様でいて、至極単純なのだ。答えは、いつだって此処にある。傍に居るけれど、見えていないだけだ。]
ああ。本当にケイのことが嫌いなら、雨竜先輩と結婚してるって。
そっちの方がこう、「勝った!」って思えるじゃん。
大体、嫌いな相手をただ避けるだけって……なんか匡先輩らしくなくね?
ケイが大事だから傷付けたくなくて、落ち着くまで離れてるんじゃって気がする。何となくだけどさ。
(41) 2023/08/13(Sun) 08時半頃