>>26
[分かりやすく「慣れていません」を伝える仕草に、先程までの接客の疲労感が何処かへいった。
こういう客はいつでも大歓迎である。……特に、純粋そうな若い子は。
自身の悪癖である。兄弟弟子たちと悪行三昧だった頃、こういう風体の人物は実に『良い客』になってくれたので。……やはりまだまだ当時の感覚は抜けきっていないようである。
然し、だ。いざ会話を始めてみると、これが中々に面白い子だった。「温かい飲み物ならこれくらい種類があるのだけど」とメニューを差し出して。また赤くなって縮こまるから気分を解そうと、来店理由や興味のある分野の話を振ってみる。
来店理由はともかく(大体予想通りだった>>25)『魔術』について語り出す彼女は、先程まで小さくなっていたのがどこへやら。目を輝かせて楽しそうにしていたので。こちらまで楽しくなってくるような、そういう子であった。
第一印象は、そんな感じ。
接客時間が終わり、「また来てね」と微笑むと、顔を赤くしながら何度も頷いていた。……そして次の週に再び来店して、己を指名したのであった。]
(39) 2024/02/26(Mon) 21時頃