[頭部の半分は鍔広の帽子で隠され目元を伺う事は叶わぬものの、口元には常に笑みが浮かんでいる。
だが問題はその頭部、隠した顔面の上部だ。
ヒューマンもしくはヒューマノイド体に大抵存在している鼻と言う名の突起物。視線誘導されるであろうラインを辿ったとしても、途中でそれは途切れてしまう。
頭部は鼻筋が途中からバッサリ斜めに切り取られ、顔面なる物が欠けていた。
黒い男には、顔が無い。
あるにはあるがそれは断面であり、黒い粘弾性物質が覗いている。
ザックリ言うと、コレの正体は黒いベッチャリしたスライムだ。
それが音声を発するたび断面が音を立てて泡立ち、発生した気泡が数度弾ける。
首から上、肌色と塗られた取り繕うヒューマノイド部位こそ皮膚を纏って居る物の、ソレ"らしい"のはソレのみであり、手首の隙間からは稀に本体の黒が覗く。
黒い取引先ィ〜?ノンノン、こいつは文字通りの黒い何かだ。それ以外のナニモノでも無い。]
(38) 2021/11/06(Sat) 00時頃