[死者を悼むのは苦手だ。
今まで様々な探査船や対象惑星を転々としつつ、大勢のクルーと親しくなった。
だがその全員が無事船に戻ってきたかと言うと、そうではない。
何度繰り返しても、嫌な物は嫌なまま。突然開いた空白に整理が追いつく事は無い。
泣けたらよかったのにといつも思うが、そう言ったパーツは不要だと切り捨ててしまったのが自分達である。
アシモフの遺体は見なかった。
破損した彼の通信機のみを直接調べ、やることがあるからと言いそのまま船を出た。
滅多に行わない、船外探索である。
行き先はアシモフのロストポイント付近。
地質データとガスのサンプルを複数個拾い、それだけで帰ってくるつもりだ。帰りの経路によっては、もしかしたら"海"が見えるかもしれない。
簡易的な現地の地形スキャンも行えるだろう。軽めの装備を幾つか6輪駆動探査車に積み込んで貰い、自分用の探索スーツを着込んだ。
見た目はヒューマノイド体のボディスーツと変わらないが、頭部にあたるドーム部分には黒い液体が溜まり、歩行の振動と共にカプカプと揺れている。]
(37) 2021/11/09(Tue) 18時頃