―― 図書室 ――
[扉が閉まる音を聞いてから、ふぅ、と肩を落としてカメラを見上げた。]
ワカナさーん。サービスショット届いたー?
[空元気の声の最後が闇に溶ける。しん、と静まり返った室内はいつの間にか夜に包まれていた。
先程まで大和が寝転がっていた机にもう一度腰掛けて、左の靴を脱ぐと、するするとレギンスを捲り上げていく。]
……脚の悪い、妹。
私、大和には怪我の話してなかったか。
また誤解されたら……解くのめんどい……。
[むしろ誰に話したのか忘れてしまった。ひふみ、と指を立てて、悩んで、思い出せなくて、諦めた。
痛々しい傷跡が綺麗に消えた左脚。ジャンプの要、羽ばたくための翼。アバターを捏ねて作った理想の自分は加算減算でなく"一年前の自分"。
彫刻にもなりそうな滑らかな脚線美は踝まで、裸足は無数の血豆と歪み割れた爪が不揃いに並び、誰に見せられたものでもない。けれどこのお世辞にも美しいとは言えない足は、修正なんてしない。
"願い"を書き換えようかとスマホを起動して、一人の脱落者を知る。**]
(25) 2023/04/24(Mon) 01時半頃