―現在:一階奥―
大藤くんのこと、好きだったりしたのかしら。
[田端が例の絵の前にいたのは、この場所で災害に巻き込まれたからでしょうか。
あの部屋で居眠りしてからの記憶は曖昧ですが、幼い頃の夢を見ていた気がします。
その中には優しいあの二人の事もありました。
自分にとってはそれが慈悲だったのでしょうか。
迷惑をかけた気がします。
あの狐が何者だったのか……を考え始めると、夢の中だからで済ませてしまいたくなります。
夢の中で夢を見るだなんて、おかしな話ですね。
そして唐突につぶやいたこのセリフは、ここに回谷とかれとが残された意味です。
正直に言えば回谷と田端とにあまり接点はありませんでした。
別に彼女だけではなく、周囲と必要以上に深く関わろうとしてこなかったからこそです。
そんな二人が残されました。
そして、この夢が慈悲ならば。
最後に想いを伝えたいだとか、寄り添ってもらいたいだとか、そんなことを考えての事では……と考え至ったのです。
でも、それではまるで……。]
(14) 2023/08/04(Fri) 06時頃