− 昨日のこと −
幸いなことに『封じる』ことは得意でしてねぇ。僕が離れれば長くは持ちませんが、まあ、収まるまでの間なら。
[閉じ込める、とまで言えばだいぶ皮肉が効いている。少女自身を苦しめる『檻』と、していることはそう変わらない。話す言葉はきっと、聞いてほしいことだろうと思った。故に遮らず、『医術的措置』の診断書にため息をついた。最後まで、少女の言葉を聞き入れると右手で前髪を後ろに掻き上げる。髪に隠れた顔の半分の、目玉がある部分には文様の入った宝玉が収められ、その周辺に蠢く入れ墨が刻まれていた。]
こう言っちゃ、何だが……
[口を引き結んでしばし言いよどむが、結局]
『逃げたい』と一度思った時点であんたさんは欠陥品だよ。商品としては失格だ。
恐怖じゃ上質な品はつくれやしないってことだなぁ。
(12) 2022/05/06(Fri) 11時半頃