―現在:美術館長室―
[それは、次に現実世界に帰る、目が覚める人が誰なのかを伝える声が頭に響く、その少し前。]
わんわ。
[田端が目を覚ました第一声がこれでした。
ツンツンと何かで突かれて>>227くしゅっと眉を寄せながらぼんやりと目を開いたのです。
その手足は短く、胴体ももちろん小さくて胸も平らになっていました。
着ているのは、スイカの柄を模した袖なしのワンピース。
少しヨレヨレですが、それは寝ていたせいもあるでしょう。
小さくて少し湿っぽい手で狐の鼻先を撫でました。
恐る恐る、それでも躊躇わずに。
今の田端の背丈は一メートルもありません。
ただ、大人の田端と同じ色の髪と瞳と、この年頃には不似合いかもしれない紫色の髪留めが、確かに田端なのではないかと思わせるかもしれませんでした。
なでなで、と"わんわ"こと狐を撫でてみます。]
(6) 2023/08/02(Wed) 00時半頃