[さて。この老獪な狸爺が、今こうして冷凍ポッド内に居るのは、果たして偶然だろうか?]
[ギョウブは、信用商売をしてもなければ、教祖でもない。
そもそも、引退済の海賊にいかほどの信用があろうか。
皆無であろう。
だから、名に疵が付く事は何とも思っていなかった。
加えて経験上、さっさと脱出するに限るとも考えた。]
[狸は冬眠をする生き物ではないが、疑死の習性がある。
他の宇宙人よりは、仮死状態からの蘇生が容易いのだ。
ギョウブは、自分の悪運を信じてもいた。]
[万が一発見されず、永遠に宇宙の放浪者になるとして。
それは肉色の塊に喰われるより、余程自分に相応しい最期の様に思えた。]
[ただ、自ら冷凍追放を希望しはしなかった。
自分が言い出す事で、希望者が殺到してはいけない。
日に一つしか、ポッドの用意は出来ないのだから。]
(+18) 2022/05/12(Thu) 22時頃