[かつて【マトローゼ】という宇宙海賊団が存在した。
決して、義賊団などではない。
奪う先は金持ちが多かったけれど、それは効率故。
強きも弱きも関係無く、欲望の赴く儘、気が向く儘、風の吹く儘。
荒らし、奪い。得た富は享楽に費やす。
そんな荒くれ者どもの集団だった。
彼らを腕一本で束ねていたのが、ギョウブである。]
[【マトローゼ】は、今はもう無い。
団員が死に絶えたからだ。
星の海を股に掛ける屈強な男達も、星喰いアメーバには勝てなかった。]
[彼らの船に星喰いアメーバが入り込んだ時、いち早く気付いたのがギョウブだった。
別に、星喰いアメーバの擬態を見破る能力を持っていた訳ではない。
けれど、狸の嗅覚は鋭い。
見知った団員の部屋から本人の血の臭いがぷんぷんしてるのに、当の本人が無傷で平然としていれば、成り代わりを疑うのは自然の流れだろう。]
[だから、しれっと緊急脱出用ポッドで一人船を出た。
尻尾を巻いて逃げた訳ではない。
ギョウブはその足で危険生物駆除製剤をしこたま買い込み(実はPaLooook製だったのだが、本人は無頓着なので記憶していない)船へ戻ると、全体をそれで燻したのだ。]
(+16) 2022/05/12(Thu) 21時半頃