17 【半突発身内村】前略、扉のこちら側から
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[ 彼と彼の妻の慌てた表情が横切っては消え、 私の骨組みが風を裂くような音が響きます。 私の中を揺蕩う濃紺が大きく波打ってようやく、 振り回されていることに気づきました。
「落ち着いて」と彼の慌てた声が聞こえます。 「やめなさい」と彼の妻が手を伸ばしています。 するとぐるぐる回っていた動きが止まって、 余韻が私を天頂に留めました。
それから、引き戻されるような強い力。 嗚呼、私は地面に叩きつけられるのだと、 ついに終わりが訪れたのかもしれないと、 そう、思いました。]
(143) 2022/03/08(Tue) 22時半頃
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[ 私には閉じる目がありません。 そんなものがなくとも、見えていますから。 私には塞ぐ耳もありません。 そんなものがなくとも、聞こえていますから。
だから私が白くて柔らかいものの上にいて、 傍らの小さいものを彼らが抱きかかえたのが すぐに分かりました。
坊や、と彼らがその子を呼びます。 その子は無邪気に笑っていました。]
(144) 2022/03/08(Tue) 22時半頃
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[ 彼は私に百万年自動筆記具という名称をつけました。 万年筆と縮めた方がいいと言ったのは彼の妻です。
しかし、坊やが私を気に入ったから、 私の役目はなくなってしまいました。
それなのに、私の内から 色が失われることはありませんでした。
――どうして?]
(145) 2022/03/08(Tue) 22時半頃
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[ 今、私が名前に見合う役割を担うことはありません。 しかし”バキュラム”でもありませんでした。
歩けるようになった坊やは、 私をどこへだって引きずっていきましたから。
未知の物質でできているらしい私の骨組みは、 多少の段差では傷つくこともありませんでしたし、 身の内に揺蕩うインクが零れることもありません。
私はただ、”坊やのお気に入り”として 何もしないことを求められました。]
(146) 2022/03/08(Tue) 22時半頃
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[ 坊やの瞳は、光を吸ったように煌めいていました。 宝石というより夜が明ける前の空に似ています。
いつの間にか私の身の内に星空が満ちました。 その煌めきは、坊やの瞳によく似ていました。
――どうして?]
(147) 2022/03/08(Tue) 22時半頃
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[ 私は、誰かに必要とされなければならないのに、 そうでなければ”バキュラム”になってしまうのに。
私は”それ”が、とても怖ろしいのです。]
(148) 2022/03/08(Tue) 22時半頃
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[ だって、ほら。 こんな簡単に、あの子は手を離してしまうから。]*
(149) 2022/03/08(Tue) 22時半頃
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[ また、手紙が届きました。 グラスを満たす緑も誰かが眺めた灰色でもなく、 甘い茶色で書かれた言葉でした。
届く手紙の多くは、よく似た文面から始まります。 私は白い生き物の方を向きました。 何かを尋ねることはありません。 ただ見つめて、それから言葉を追いかけます。]
(150) 2022/03/08(Tue) 22時半頃
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『 私を、ずっと覚えていてくれることです。 』
(151) 2022/03/08(Tue) 22時半頃
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[ やはり私は、教えてもらった言葉を使えません。 更に今回はまっさかさま>>134から返事をしました。
その理由が、私には分かりません。 少しでも早くその言葉を吐き出したかった。 それだけなのです。
ふと、ここに来て 私に問いかけられた言葉の数々を思い出しました。]
(152) 2022/03/08(Tue) 22時半頃
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[ ”それ”は”それ”であって、 ”それ”以上でも”それ”以外でもありませんでした。
ただ”バキュラム”にならないよう、 人にとって意味があるものであろうとしました。 そうでなくては、枯れてしまうから。
坊やがどこにもいないのにどうして私の内は、 今もまだ、星空で満ちているのでしょう。]
(154) 2022/03/08(Tue) 22時半頃
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『 あなたは外に出たいのですか。 楽になれる場所にいるのに? 苦しくなるのに?
出られないから、出たいのですか。 帰りたいから、出たいのですか。
後者であるならば、あなたにとって どちらの場所も必要だったということでしょう。
あなたはどうして外に出たいのですか。 それは、あなたの望みではないのですか。』
(155) 2022/03/08(Tue) 22時半頃
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『 私は呼吸を必要としませんので、 忘れたことを思い出す手伝いはできません。
目を閉じて、思い出す人はいますか。 忘れられない思い出はありますか。
何もかもが消えてしまったのではないのなら、 誰かに手を伸ばすのも悪くないかもしれません。
――ひとりは、とても寂しいけれど。 あなたと一緒に息をしてくれる誰かが、 どこかにいるかもしれませんから。 』
(156) 2022/03/08(Tue) 22時半頃
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[ 私は仮初の名前すら記しませんでした。 白い生き物が手を伸ばすのを見届けてから、 私はまた暗い宙を見上げました。 煌めく星はよく見えません。
身の内を揺蕩う星空が、波打っていました。]
(157) 2022/03/08(Tue) 22時半頃
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『 前略、扉のこちら側から 坊やへ
あなたは今、どこにいますか。 私に飽きてしまいましたか。
あなたは幼い頃からやんちゃで、 私を振り回してはお二人に止められていましたね。
私に痛みはありません。傷つきもしません。 それでもお二人は私を労わり、 坊やもまた、私にごめんねと言っていました。 』
(158) 2022/03/08(Tue) 22時半頃
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『 前略、扉のこちら側から 坊やへ
あなたは今、幸せですか。 私がいなくて、泣いてはいませんか。
私の姿が見えなくなるだけで泣いていた坊や。 あなたのお母様が拗ねていたことを あなたは知っているでしょうか。
私はあなたの傍を離れられませんでしたから、 あなたのお母様が眠ったあなたを愛おしそうに 撫でていたことを知っています。 』
(159) 2022/03/08(Tue) 22時半頃
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『 前略、扉のこちら側から 坊やへ
あなたの望みは何でしたか。 どうして私を気に入ったのでしょう。
私は不気味で怖ろしいでしょう。 お友だちに私を馬鹿にされた時、 あなたはとっても怒っていましたね。
あなたが少しずつ大きくなって 私を人前に出さなくなったのに、 どうして私を手放さなかったのですか。 』
(160) 2022/03/08(Tue) 22時半頃
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『 前略、扉のこちら側から 坊やへ
あなたの目には、何が見えていましたか。 どうして私を、人のように扱うのですか。
私は食事を必要としません。 私は睡眠を必要としません。
二皿準備すればあなたの夕飯が冷めるだけなのに、 私をベッドへ入れれば、 あなたを傷つけてしまうかもしれないのに。
どうして? 』
(161) 2022/03/08(Tue) 22時半頃
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『 前略、扉のこちら側から 坊やへ
私は、どうして生まれてきたのでしょう。 』
(162) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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『 ――ひとりは、さみしいです。 だから、どうか 私をみつけて。 』
(163) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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[ 私は扉のこちら側にいました。 それを知っていほしいのは、 思い浮かぶのは、ただひとりでした。
私は手紙を書き続けます。 私以外は扉を潜れないと理解しながらも、 私が私である以上、こうすることしかできません。]
(164) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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[ 私は”バキュラム” あるいは ”百万年自動筆記具”。 永遠に近い時を生きる、人に寄りそうモノです。]**
(165) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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[ お節介が重ねたふたり分の言葉に、 真摯に向き合うあなた≠ゥら、 ひとり分の返事が、返ってくる。>>136
夕焼けの色、星の宙になる前の 真っ赤な空の色。 誰かの笑う顔に似たような色。
─── それは、 きっと太陽を知っている人の色。 繰り返す朝と夜を、知っている人の色。 ]
(166) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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素敵ないろで、笑うんだな。
[ そう呟いた声は、 言葉と言葉の間に挟むことはできたか。 もしできなくても、まあ、構わない。 ]
(167) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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[ そして 私は、聞く。 これは、まだ見ぬ未来のことを。 訪れるかもわからない、いつかのことを。 あなたと、交わしておく約束。>>138 ]
ああ。必ず。 必ず手紙を書くよ。
[ それはさよならなんかよりも ずっと、ずっと、力強く。 あなたの目を、あなたの奥にある誰かの目を。 私は、見つめて、告げるんだ。 ]
(168) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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[ 例えばあなたと同じドアをくぐれたら。 私は誰か≠ノそれを聞くのは容易かっただろう あなたが寝起きするのを見守って、 いつか誰かが目覚める日を、心待ちにして。
だけど、そうはきっといかないから。 あなたと私は、同じ世界へは帰れないから。 ]
(169) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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……さよなら。 どうか、元気で。
[ だからもう、呼び止めない。 名前も交わさなかった、見知らぬ誰か。
だけど、忘れない。 私は、忘れないために、 あなたの背中をただ、じっと見つめていただろう **]
(170) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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狐……ぽくはなかった。 綺麗な人だったし? いや狐が汚いとかそーゆーことじゃなくて。
[ふ、と小さく吹き出しながら、 促した隣の椅子に掛けてくれたホリーさん>>100を 改めて見つめた。
『お可愛い』という言い方、さっきのお辞儀。 がさつな私とは違って、お嬢様なんだろうか。 飾り気の無い様相ではあるけれど、 言葉の端々が丁寧な気がする。 (ふぁっさふぁっさと揺れるしっぽがあるなんて いくらなんでも想像するはずない!>>101) ]
(171) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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/* 手紙を出しているのがバキュラムくん一人だから負担軽減にならないかな、で手紙を出したけど、いらないお節介でしたね。 綺麗に全部拾ってらっしゃって、力量がすごい。
私のは拾いづらいよなあとは思います。 内容と、在席不定期すぎて返事がいつ来るかわからないことと。 あと時期も悪かったかな、2日目は遅すぎる。 皆もう〆に向かい始めてるからね。、
バキュラムくんと関われたら嬉しいな、で手紙を貰うことを考えましたが、ほぼ全員からロルが来るのは大変なんじゃないかという遠慮をしています。 これもいらない遠慮かしら。どこまで気を配れば良いか、わからない。
(-34) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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