10 冷たい校舎村9
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墓
少
霊
全
レンに1人が投票した。
ヒイラギに4人が投票した。
ヒイラギは村人の手により処刑された。
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レン! 今日がお前の命日だ!
2021/06/14(Mon) 00時頃
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時は来た。村人達は集まり、互いの姿を確認する。
レンが無残な姿で発見された。
キーンコーンカーンコーン…………
(#0) 2021/06/14(Mon) 00時頃
──午前8時50分
そしてまた、新たな今日が訪れる。
すっかり凍り付いてしまった校舎で、
またひとり、ふたりと誰かが消える。
柊由樹と鳩羽憐が見当たらない。
(#1) 2021/06/14(Mon) 00時頃
そして、5度目のチャイムが鳴ったとき、
君は理解しているはずだ。
──ここは、君の世界。
すべて、君が望んだものだった。
君が望んで、作り上げたものだった。
どうかな。二度目の文化祭は楽しかった?
なかなかうまく作れていたんじゃないかな。
君は完璧でなきゃ気が済まないのかもしれないが。
(#2) 2021/06/14(Mon) 00時頃
……どちらにせよ、決断の時はやってきた。
この世界は、どこまでもは持っていけない。
君の作り上げた世界は有限なのだ。
気づいているだろう。
もうじき、誰もいなくなる。
君以外誰も、この世界に留まれやしない。
だから君も選ぶのだ。
悩みはない、けれど誰もいない世界に一人留まるか、
痛みや苦しみ、悲しさ。そして、仲間の待つ世界へ帰るか。
もう時間はあまりないけれど、
どうか君にとって悔いなき選択を。
(#3) 2021/06/14(Mon) 00時頃
冷たい校舎の時は────、
(#4) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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見限られないように優等生を演じようとした私。 見限られないように気遣いを身に着けた柊君。 処世術として必死に身に着けたのだとしても、 よく気が付いて気遣える柊君のこと、尊敬するな。 私も割と必死だったけど上手く優等生やれなかったもの。 ありのままの柊君は、 きっと柊君が思ってるほど悪い子じゃないよ。 ……って伝えたら、今度は柊君、どんな顔をするのかな。 広報係一緒にやってくれてありがとう。 いつか、柊君が好きになった人が、 柊君のことを好きになってくれますように。 そんな日はきっと来るよ。大丈夫。
(*0) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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鳩羽君のこと、3-9のムードメーカーだと思ってた。 鳩羽君がみんなのために笑おうとしてたなんて 全然知らなかったな。 それでも、この世界の主じゃないって>>4:21 自信をもって言い切れる鳩羽君は眩しかったよ。 ココア、学校に来たら奢ってあげるって言ったのに、 果たせないままだったね。ごめんなさい。 寄り添いたい、考えたいって思うのに、 自分のことは大丈夫って言っちゃう鳩羽君。 似た者同士だって鳩羽君は思ってくれたけど>>4:89 でも、鳩羽君は本当に限界がきちゃう前に、 ちゃんと大丈夫じゃないって言えるようになってね。
(*1) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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[ 家に帰ったら、部屋の様子が変わってた。 大きな変化があったわけじゃない。 飾ってた写真が捨てられていた。
机の上に飾ってたの。 文化祭の時、みんなで撮った写真。 楽しかった、私にとって本当に大事な思い出 ]
(0) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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[ そんなもの、必要ないって言われた。 私には友達とか、仲間とか、必要ないんだって。 友情ごっこをしてる暇なんてないんだって。 友情なんて不要だって言われた。 尊敬され、頼りにされ、 崇拝されるような人間であるべきで、 同級生との対等な友情はいらないんだって。 そんな馴れ合いは害にしかならないんだって。 だから、清算しろって言われた。 そんな、害にしかならない人間関係は、 全部清算するように、って。
それが私に下された判決。 心が軋んで悲鳴をあげた ]
(1) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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[ 父の言うことは絶対で、私はそれに逆らえない。 だけど、ひとりぼっちで生きていけるほど強くない。 そんな孤独に私が耐えられるわけがない。
文化祭、楽しかったの。みんなで作り上げたから。 みんなで頑張って、それが評価されて、 すごくすごく嬉しかったの。 そういうの、捨てろっていうの? そういうのものを、害悪だっていうの? 私の人生に、それはあっちゃいけないっていうの?
ねえ、それで、 私の人生とやらには、あと何が残ってるの? ]
(2) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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[ こころが痛い。痛い。痛いよ ]
(3) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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[ 切らなくちゃ。切って、切って、やり過ごさなくちゃ。 生きるために、切らなくちゃ。 切って、痛いのを忘れて、それで……あれ、まだ痛い。 こころが痛い。痛いよ。 ねえ、まだ痛い。生きなきゃ、いけないのに。 生きる、生きなきゃ、切る、もっと、切って、 生きなきゃ……あれ、なんのために?
わたし、なんのために、いきなきゃいけないの ]
(4) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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[ わからない。わからなくなっちゃった。 むしろ気づいちゃった。 今死ねば、みんなの仲間でいられるって。 それに、見限られる日を迎えずに済むって。 友達を失わずに済む。見限られる前に消えられる。 これ以上の方法なんてないんじゃない? もう、それしかないんじゃない? だって、私は、みんなの仲間でいたい。友達でいたい。 お願いです。私をみんなの仲間でいさせてください ]
(5) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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……ああ。 あー……そっか。
[ そうだった。思い出しちゃった。 私、自殺したんだった。 この校舎の主は、私だった。 もう一度文化祭を胸に刻み付けたかったのは、私だった。 私だったんだ ]
(6) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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[ どうしようかな、って私は思った。 みんなには随分わがままに付き合ってもらっちゃった。 そろそろおしまいにしなくちゃいけない。
でも、もしも、もしも……もうちょっとだけ、 わがままに付き合ってもらえるなら、 もうひとつだけ、許してもらえるかな。 私のこと、捜してくれるかな。 私に会いに来てくれるかな。 これで本当に最後にするから ]
(7) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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[ 私は歩く。3階の廊下を歩いていく。 通り過ぎた部屋の一つを覗いたら、 衣裳部屋に倒れているマネキンが見える。
開いた窓を見つければ、 その下にあるものが私にはわかる。 だって、私この世界の主だから、わかるんだ。
ごめんなさい。私、そんなつもりじゃなかった。 みんなをこんな目に遭わせるつもりなんて、 本当になかったの。 でもこの世界から帰ろうとしたらこうなっちゃうみたい。 それなのに来てくれてありがとう。
そうして、私はたどり着いた部屋の扉を開く ]
(8) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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[ 最後の心残り、叶えてもらえるかな。 芽衣のピアノを聴かせてほしい。 昨日弾いてたことを、私は知らなくて、 今もまだ、私は芽衣のピアノを知らないままだから。 でも、こんなわがまま、聞かなくてもいいよ。 もう十分だから、帰ってくれてもいいよ。 校舎はもうみんなを閉じ込めない。 出られるようにしてあるから。
でも、もしも、もしも許してくれるなら、 音楽室で待ってるね ]
(9) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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[ 廊下にあった、物騒なカッターナイフは消え失せた。 危なかったよね。ごめんなさい。 ため息ももう聞こえないよ。 もうここに、私への失望は届かないから。
3-9の教室に、きちんとフォトフレームに収められた、 たくさんの写真が飾られている。 文化祭だけではなく、体育祭や修学旅行、 卒業アルバム用に撮った授業風景なんかもある。 もちろんそれらも、 私にとって大切な思い出だったから。>>1:655 でも、みんなで作り上げた文化祭。 その一端に関われた気がしたから、 やっぱり私にとって文化祭は一番特別だった。
3-9の一年の思い出が切り取られたちょっとした写真館。 もし通りがかることがあったなら、 帰ってしまう前に楽しんでいってくれたら嬉しいな* ]
(10) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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— AM8:50 —
[チャイムの音で目が覚めた時、 乃絵ちゃんはどこにもいなかった。 わたしは驚かなかったけど、少し泣きそうになる。
先に出ただけ。昨日もそうだった。 そんな言い訳が通用しないことは、もう分かってた。
だって、不意に耳をくすぐるため息がない>>10。
わたしはぐっと堪えてベッドを出る。 顔を洗って、身体もちょっと拭って。 制服のスカートはすっかり皺だらけになっちゃったけど、 ポケットに入れたお守りやお財布は無事だ。]
(11) 2021/06/14(Mon) 00時半頃
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[わたしは充電が半分になったスマホを手に取った。 日付はやっぱり最初の日と同じ。 わたしは表示を隠すようにメールを開く。
最初の日、チャイムと共にスマホへ届いた文面>>1:1。 わたし、見返さなかった。机に置いていった>>1:31。 今になってようやく、わたしは現実を直視する。]
……いいよって言ったじゃん。
[わたしはスマホを胸ポケットにしまった。 ダッフルコートは羽織るのではなく腕に抱えた。 ずっと守ってくれた歴戦の上靴に裸足の爪先を入れる。
あんなに散らばっていたカッターナイフも見当たらない。 わたし以外いなくなった保健室を一度だけ振り返って、 わたしは廊下を走り出した。]
(12) 2021/06/14(Mon) 00時半頃
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[一度目のチャイム。時の止まった校舎に閉じ込められた。 二度目のチャイム。最初に九重さんの人形が見つかった。 三度目のチャイム。ひとみちゃんと樫樹くんが消えた。 四度目のチャイム。向井くんと綿見さんが先に帰った。 五度目のチャイム。乃絵ちゃんの姿がない。
——でも、乃絵ちゃんじゃない。
わたしは男の子たちが眠る休憩所>>1:651へ走った。 鳩羽くん>>4:85と毛布を取りに行ったから、 道に迷うことはない。
扉を開く。 誰の姿も見当たらなくて、わたしはまた駆け出した。]
(13) 2021/06/14(Mon) 00時半頃
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炭蔵くん!
[炭蔵くん>>4:458はまだ食堂にいたかな。 もし別の場所だとしても、扉の前にわたしはいる。
わたしは炭蔵くんに乗り上げる勢いで近づいた。 さすがに実際にはやらないよ。前のめりだけど。
わたし、自分がいなくなるとか帰る>>4:212とか、 思うとか思わない>>4:210以前に考えかった>>4:430。 やっぱりずっと、乃絵ちゃんのこと考えてた。
でも今朝、乃絵ちゃんの姿が見えなかった時に理解した。 ため息が聞こえなくなって、カッターナイフも消えて。 もう、終わりなんだなって。なんとなく、思った。]
(14) 2021/06/14(Mon) 00時半頃
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[炭蔵くんはどうしてたかな。 わたしは走って乱れた息を整えようと深呼吸を繰り返す。 心臓はずっとバクバクと跳ねていた。]
後悔するくらいなら、少しでも何かしたい。 ……って、言ったよね。
[数日前の朝>>1:568からわたしはいろいろ変わったけど、 あの約束>>2:35はまだ有効かな。 わたしは炭蔵くんをまっすぐ見つめ、眸を探す。]
乃絵ちゃんを、連れて帰りたいの。
[協力してとか、力を貸してとか、 お願いする言葉はいっぱいあった。 でも、わたしは言わない。 炭蔵くん自身に望んで、一緒に来て欲しいから。]
(15) 2021/06/14(Mon) 00時半頃
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[わたしは炭蔵くんの眼前に手を伸ばして、 前髪を掻き上げようとする。 拒んで払い除ければ、すぐ飛んでいく弱い手。 それでもわたし、炭蔵くんの意思を知りたかった。]
……それに、鳩羽くんと柊くんも。探したい。 きっと、どこかで倒れてるから。
[眸を見ることができてもできなくても、 わたしはスピーカーを見上げる。 チャイムは鳴った。これまでのことから、 鳩羽くんと柊くんがどうなったかは想像に容易い。
二人の行方を知らないまま、 わたしは乃絵ちゃんをここの主として話した。]
(16) 2021/06/14(Mon) 00時半頃
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[わたし、樫樹くんがどんな表情だったか>>2:226も 綿見さんの前に包丁が二本あったこと>>3:687も 知らない。
見つけられないのは寂しいかなって思うけど、 わたし、死んだ姿をみんなにいっぱい見せちゃうのは、 ちょっとだけ、ヤだなって思う。
恥ずかしいのかな。申し訳ないのかな。 例えば、わたしがわたしだけ帰った時、 それを見つけるのはきっと乃絵ちゃんでしょう。
それは、やっぱりヤだよ。]
(17) 2021/06/14(Mon) 00時半頃
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[わたし、ひとみちゃんに言ったの>>4:11。 鳩羽くんに言ったの>>4:129。
先に帰っただけ。また会えるって。
だから、先に場所を知った相手の顔は見てない。 次に見るのは、いつもの顔だって決めてる。 絶対帰るって、帰らなきゃって、思ってる。]
(18) 2021/06/14(Mon) 00時半頃
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……でも、誰にも見つけてもらえないのは寂しいもん。 わたしが、ヤだ。探したい。
[大勢の民衆に埋もれる時は終わった。 今ここにはきっと、炭蔵くんと、わたしと、 乃絵ちゃんしかいない。
探すための足も、差し出すための腕も、 伝えるための口も、何もかも、あるだけしかない。]
(19) 2021/06/14(Mon) 00時半頃
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わたしひとりじゃ、全然、何にも、足りないの。 だから……だから……。
[わたしにはやりたいことがいっぱいあって、 一つだけを追い求め続けたわたしはそれに慣れてなくて、 混乱したみたいに頭の中がぐるぐる回っている。
見上げた顔を戻すと、 不安や迷い、決意や意思の混じる目を炭蔵くんに向けた。 そこに諦念は、ない。]
(20) 2021/06/14(Mon) 00時半頃
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[もう終わりだって理解した時、わたしは帰りたいって思ったの。 乃絵ちゃんと一緒に帰りたいって、思ったの。]*
(21) 2021/06/14(Mon) 00時半頃
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夜笑国 メイは、メモを貼った。
2021/06/14(Mon) 00時半頃
夜笑国 メイは、メモを貼った。
2021/06/14(Mon) 01時頃
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[ 時計を見上げていた。 秒針が刻々と時を刻むのを逃さないように、 待ち受けるようにじっと見つめていた。
そうして、3、2、1、…… スピーカーへと顔を上げれば、 最後のチャイムが鳴った。 ]
(22) 2021/06/14(Mon) 02時頃
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[ 炭蔵はまだ、この世界に居た。 その事実を受け止めれば、少しだけ笑って 律儀にゆっくりと食器を片付け始める。
そうしていたら、その扉が勢いよく開いて、 あっという間に詰められる距離感に、>>14 思わず後ずさってしまったが。
暮石の姿を見て、 大凡のことを理解していただろう。 ]
(23) 2021/06/14(Mon) 02時頃
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[ 鳩羽と柊は帰った≠アと。>>16 この世界の主は、黒沢だってこと。>>15
カッターナイフを見た時から、 ずっと炭蔵は薄々勘付いていた。 連想ゲームをするなら、思い浮かべるのはただ一人。 ただ、炭蔵の知らないところで、 カッターとの関連のある人物も居るかもしれないと 確信が持てなかったのもあったが。 ]
(24) 2021/06/14(Mon) 02時頃
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暮石、落ち着け ……まだ、12時間近くある いや、もう12時間しかないとも言うが
俺に出来ることは限られているが、 最善を尽くそう
[ 呼吸も荒く、必死な様子の暮石に いつものように落ち着いて返事をする。 ──……した、筈だった。
彼女の手が伸びてきて、>>16 炭蔵の前髪を掻き上げれば、 其処には隠しきれない表情が浮かんでいる。 ]
(25) 2021/06/14(Mon) 02時頃
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揺れる眸は、不安の色、 そして激しい焦燥を映す
(26) 2021/06/14(Mon) 02時頃
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[ 俺の決意は最初からずっと変わらなくて、 約束だって有効期限は無期限だった。 それに、頼まれなくたって、 黒沢のことを連れ戻したいと思っている。
けれど、暮石は知らないと思うが、 俺は無意識のうちに、この校舎に来てから 黒沢と言葉を交わすことを避けていた。 理由は、そうだな── 自信がなかったから。 俺の考えが本当に正しいのか、 どんな言葉を選べばいいのか、 足元が地面から浮いているように落ち着かなくて。
俺の力では、黒沢のことを 取り戻せないんじゃないかって 思ってしまって自信がなかったんだ。 ]
(27) 2021/06/14(Mon) 02時頃
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[ 昨日の夜には鳩羽に責任を押し付けようとしてた。 情けないよな、本当に。
そんな複雑な感情を乗せた眸を、 暮石に暴かれてしまったことも情けない。
あんなみんなを助けたいだとか、 偉そうに言っておきながら勇気も出ないとか、 本当に情けなくて嫌になる。 ]
(28) 2021/06/14(Mon) 02時頃
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[ でも、 ]
……足りないことはないだろ、 少なくとも俺は、今暮石に勇気は貰えたし
[ 眸を見られて数秒、 ワンテンポ遅れて視線を逸らし、 前髪を指で弄びながらにそう答えた。
真っ直ぐに俺を見上げる眸の中に浮かぶ色、>>20 諦念など一切浮かばない、暮石が居る。 ]
(29) 2021/06/14(Mon) 02時頃
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まずは、柊と鳩羽を見つけ出そう ……その間に作戦会議でもしようか 黒沢をどうやって連れ戻すかについて
[ 真っ直ぐ黒沢の元に向かいたい気持ちもあるが、 今朝消えたであろう二人の姿も確認したい。 その気持ちは暮石と同じだった。 ]
(30) 2021/06/14(Mon) 02時頃
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[ 不安も焦燥も消えないけれど、 炭蔵祐駕はどこまでも炭蔵祐駕で、 今はもう前だけを見つめていた。 ]
(31) 2021/06/14(Mon) 02時頃
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……そうだ、暮石。 なんかこう、前髪を留めるもの持ってないか?
[ 暮石は提案に乗ってくれたかどうか。 別行動をするのであれば、 別れる前に手でヘアピンの形を真似どって 持っていないか確認をするだろう。
ないなら、そうだなー… 足元にはもうカッターナイフも落ちていないし、 どこかの教室でハサミでも借りようか。 **]
(32) 2021/06/14(Mon) 02時頃
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— チャイムが鳴った後:食堂 —
[保健室を出て休憩室、それから1階の部屋をいくつか。 わたしが食堂に辿り着いたのは チャイムの余韻がとっくに消えてしまった頃。 詰め寄った炭蔵くん>>23とわたしの間には、 走り回って乱れたわたしの息の音だけがする。
わたしは炭蔵くんの反応も待たず、矢継ぎ早に話した。 乃絵ちゃんがこの世界の主人である明確な証拠はなくて、 本当は鳩羽くんかもしれないし、柊くんかもしれない。 もちろん目の前の炭蔵くんの可能性だってある。
わたしは確信に近い思いを抱いていたけど、 炭蔵くん>>24にわたしを疑う様子は一切なかった。 わたしの方が不思議に思って混乱が増していく。]
(33) 2021/06/14(Mon) 11時頃
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……っ、でも、
[疑問を口にするより先に、 炭蔵くん>>25は落ち着いた声でわたしを嗜めた。 いつもと変わらない温度。平らな響き。 無機質にも見えるそれに、 わたしは疑問より反発のような気持ちが勝る。
それをぐっと飲み込んで、 わたしは言い募る代わりに身を乗り出し、 炭蔵くんの鼻筋に手のひらを滑り込ませた。 そのまま手の縁で額を撫ぜれば、重い前髪が剥がれる。]
(34) 2021/06/14(Mon) 11時頃
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[眸>>26を、見た。]
(35) 2021/06/14(Mon) 11時頃
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……なぁんだ。
[民衆っていうのは勝手なもので、 勝手な想像で知らない相手のこと決めつけるし>>0:136、 その割に無意識に頼ったりする>>0:29。 炭蔵くんならやってくれる。炭蔵くんだから間違いない。 まともに返事もせず、わたしは既読だけを増やす。 他人事。人任せ。そんな日々だった。]
わたしと同じじゃん。
[炭蔵くんだって、腕は二本しかないんだ>>1:570。 その心の内、詳細>>27>>28までは分からないけど、 揺れる眸は炭蔵くんの口よりよっぽど雄弁だった。
こんな当たり前で簡単なことも分かってなかった 自分が何だかおかしくて、思わず笑っちゃう。 プライドの高い炭蔵くん>>4:437を傷つけてしまうかな。 でもわたし、別に馬鹿にした訳じゃない。]
(36) 2021/06/14(Mon) 11時頃
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[わたしの基準はわたしで、善悪は正直どっちでもいい。 今の炭蔵くんが今のわたしにとって正解だった。 それだけのこと。]
(37) 2021/06/14(Mon) 11時頃
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[自分より慌てた人を見た>>1:37時や、 泣いている人の前で笑っていた時の気分に似ていた。 おかげで少しずつ混乱も落ち着いてきた気がする。
わたしは全力疾走と笑いに跳ねた心臓を押さえた。 深呼吸は二度。こうすれば上手くいく気がする。]
足りないよ。わたし一人じゃ全然足りない。 現に今、わたし炭蔵くんに助けてもらった。
言葉にしなきゃ伝わらないことが多いけど、 言葉以外でもできることはあるんだって。 教えてもらった気がする。
[炭蔵くんの眸がわたしを落ち着かせてくれたんだって 言ったら、炭蔵くんはどういう顔をするかな。 ううん、どういう色を眸に宿すんだろう。
確かめようにも、わたしの指は逸らされた視線>>29に 離れてしまって、前髪はもう炭蔵くんの指のものだ。]
(38) 2021/06/14(Mon) 11時頃
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ありがと。
[乱れた前髪の隙間から、まだ少し眸は見えるかな。 わたしの瞳に映る様々な感情は、 得た落ち着きが水みたいに広がって柔く馴染んでいた。 その視線を炭蔵くんのそれと繋げようとした。]*
(39) 2021/06/14(Mon) 11時頃
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[そうしてわたしの息がこの場に馴染んだ後、 わたしは炭蔵くん>>30の提案に頷く。]
……というか、そんなほいほい信じていいの? 本当はわたしが騙してるのかもしれないのに。
[ため息がひっかかっていたわたしと、 カッターで勘付いていた炭蔵くん>>24。 お互いにお互いの理由を知らないから、 わたしはさっき喉奥に消えた疑問を掘り起こす。
ここにわたしたち以外の人がいないことは分かっていた。 だからとりあえず移動しない? と提案して歩き出す。]
(40) 2021/06/14(Mon) 11時頃
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留めるもの?
[炭蔵くん>>32が予想外のことを言い出したのはその時。 わたしは手のひらで自分の身体を叩いて確かめる。 ぼたん、お財布、スマホ。紺色のハンカチはもうない。 鳩羽くんのコート。……ここは違った。]
今は持ってない……けど、教室にはあるよ。 鞄の中。机に置いてるから。
[わたし、髪短いからそういうのあんまり持ってない。 でも時々前髪を邪魔に思うことはあって、 そういう時に使う物ならあるよと炭蔵くんに告げる。]
(41) 2021/06/14(Mon) 11時頃
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検討してくれたの?
[一昨日>>1:572は乗り気じゃなさそうだったのに。 残念ながらわたし、流行り>>0:74には疎い方だから 笑顔のまま、いいねって賛同した。
万が一にでも炭蔵くんがやめるなんて言い出す前に 教室への移動を提案する。]*
(42) 2021/06/14(Mon) 11時頃
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夜笑国 メイは、メモを貼った。
2021/06/14(Mon) 11時頃
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[ 眸を、見られた。>>35 ]
(43) 2021/06/14(Mon) 12時頃
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[ 反発するような言葉、焦ったような様子が、 次第に落ち着いて行くのがわかる。>>38 ]
……そうだな、同じ人間だよ
[ 少しだけ不貞腐れたような声音になってしまう。 平坦だった声にも次第に隠せない感情が乗り始める。
けれど、告げられる言葉に、笑い声。 俺はそれを不快に思うことはなく、 逆に気恥ずかしい思いが優ってしまったから 視線をつい逸らしてしまっていた。 ]
(44) 2021/06/14(Mon) 12時頃
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|
[ そうして、同じように深呼吸をする。 二度、そうすればこの気恥ずかしさも落ち着いた。
よもや、互いが互いを落ち着かせたなんて 気付けもしていなかったから、 助けた≠ネんて言われても心当たりがない。
ただ、感謝の言葉を述べられれば、 悪い気はしないものだった。 ]
いや、俺の方こそありがとう
[ 今はもう逸らしていた視線を戻して、 暮石のものと繋げていた。>>39* ]
(45) 2021/06/14(Mon) 12時頃
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[ それから、暮石の疑問に小さく笑う。>>40 ]
あまり主張をしてこなかった暮石が言うんだ まさか狼少女だと思うことがあるか?
……それに、心当たりがない訳じゃない
[ まだ拾ったカッターナイフはあっただろうか? もし消えていないのならば、 ポケットから取り出して見せようとするだろう。
ないのなら? 自分で傷つけた左手首を暮石に見せる。 暮石のひっかかっていたことはわからないが、 黒沢の癖ぐらい気づいていただろう? ── と、言わんばかりに。 ]
(46) 2021/06/14(Mon) 12時頃
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[ そして髪留めの件については、 教室にあるらしい。>>42
そうだな、やっぱり辞めると言い出す前にと、 俺たちは自分たちの城である教室へと向かった。* ]
(47) 2021/06/14(Mon) 12時頃
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[ 教室にたどり着いた頃、 カッターナイフの無くなった綺麗な廊下に、 扉の外に靴跡が残されているのが見えた。>>4:496 ]
なあ、暮石 ……これは、多分そうだよな
[ そう≠ニいうのは、マネキンを示唆する。 暮石はそれを見た時、どんな顔をしていただろうか。 俺はちらりと表情を盗み見ようと視線を向けていた。
本当は、今すぐにでも辿りたかったが、 当初の目的の髪留めを先に回収しよう。 そう提案をして、教室の中へ踏み込んだ。 ]
(48) 2021/06/14(Mon) 12時頃
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[ きっと、暮石が髪留めを探している間、 俺は黒板に並ぶ寄せ書きを眺めていた。 廊下に貼り出されている写真のように まるで卒業アルバムの裏表紙のように 思い出の一部に、感じていた。 ただ、文字の内容は物騒なものが多いけど。
辿るように文字を読んでいれば、 ふと、増えているものに気づいた。 ]
───…… 鳩羽の字だ
[ やたらと目立つ文字。>>4:497 教室にマネキンはない。 と、言うことは。外にあった靴跡は──…… ]
(49) 2021/06/14(Mon) 12時頃
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行こう、暮石 多分あの足跡の先に、鳩羽がいる気がする
[ 髪留めは見つかっただろうか? 足跡を辿るように3階へと向かおう。* ]
(50) 2021/06/14(Mon) 12時半頃
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— 食堂 —
[不貞腐れたような炭蔵くん>>44の声にわたしは笑う。 一対一で喋ったことがなかった炭蔵くんに わたしがすぐ親しみを覚えたのは、 炭蔵くんの中身を見た気がしたからだ>>1:524。
ずっと、あの眸>>1:486をまた見たいと思っていた。
少し遠くからじゃ覗こうとしてもできなくて、 手を伸ばそうとしても届かなくて、 ようやく叶ったわたしの願いは、 炭蔵くんがわたしと同じ人間だって教えてくれる。
わたしもちゃんと人間なんだって教えてくれる。]
(51) 2021/06/14(Mon) 15時頃
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嬉しいよ、わたし。
炭蔵くんが同じ人間で。 ここにいたのが、炭蔵くんで。
[だからわたし、素直にその気持ちを伝えた。 今はたぶん、言って伝える場面だと思ったから。 向き合って一緒に深呼吸。一回、二回。 胸に手を当てると、鼓動も落ち着いていくのが分かる。]
(52) 2021/06/14(Mon) 15時頃
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そんな顔見せられたら、 わたしも一緒に頑張りたいって思うもの。
[完璧、というのが何事にも冷静沈着で 正解を選び続けることを言うのなら、 今の炭蔵くんは完璧じゃないのかもしれない。
でも、それがいいの。 わたしにはぴったり、大正解。
ここにはもうわたしたちしかいなくて、 埋もれられないどころか民衆でもなくなっちゃった。
王様と民衆じゃなくて、炭蔵くんとわたし。 再度繋がった視線>45は、 前だけを見つめているような気がした>>31。]*
(53) 2021/06/14(Mon) 15時頃
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[お互いの意思を確認した上での作戦会議>>30。 わたしは心当たりがある様子の炭蔵くん>>46へ 不思議そうな顔をする。
もし炭蔵くんがカッターナイフを取り出したなら、 わたしは懐かしそうに目を細めた。 わたしが聞いて>>1:138、炭蔵くん>>1:325が拾った。 はじまりの日のことだ。
もし見せられたのが左手首なら、 わたし、炭蔵くんの頬に指を伸ばしてつねったと思う。 自分で自分の手を傷つけるなんて、何してるの。ばか。
言いたいことは分かるけどね。 真実は、生クリームみたいに甘くない>>4:522。]
(54) 2021/06/14(Mon) 15時頃
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……わたしもあるよ、心当たり。
[乃絵ちゃんがわたしにだけ零してくれたこと>>0:718。 だからその詳細までは話さないけど、 わたしが聞こえなくなったため息を探すように 耳を澄ませたら、何かあることくらいは伝わるかな。]*
(55) 2021/06/14(Mon) 15時頃
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— 3-9教室 —
[最初に気づいたのは炭蔵くん>>48だった。 昨日までなかった足跡が、扉の外へ続いている>>4:496。 どうやら3階の階段を昇ったようだった。]
うん。
[分かっていたことだった。 何ならさっきまでそれを前提に話してた。 でも直面するとやっぱりわたしの身体は強張る。
九重さんを思い出した。ひとみちゃんも、向井くんも。 それが本当じゃなくても、人が死ぬことはやっぱり怖い。
炭蔵くんの視線に気づかないまま、わたしは教室に入る。 気づいてないから、泣きそうな顔も隠せなかった。]
(56) 2021/06/14(Mon) 15時頃
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[わたしは鞄からヘアピンを取り出すと、 炭蔵くん>>49の言葉に顔を上げた。
みんなでいろいろ書き込んだ寄せ書きみたいな黒板。 壁にはフォトフレームに収められた写真が並ぶ>>10。 廊下とは違い、今度は文化祭以外の思い出もたくさん。]
こういうのは、卒業式にやるものじゃん。
[お別れはまだ、ちょっとだけ早いよ。 わたしは一人呟いてから炭蔵くんの見ているものを見る。
『 じゃあな、いってくる! 』だって>>4:497。
その意味を知る人はここにはいない。 でも、わたしは返すためのコートを強く握りしめた。 こんな時でも深爪は、何の跡も残してくれない。]
(57) 2021/06/14(Mon) 15時頃
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[わたしは炭蔵くんに黒いシンプルなヘアピンを渡した。 そのままの足で、わたしは教壇をのぼる。
足元にはチョークが落ちていた。 縁から零れたというにはあまりにも遠く、 まるで、持っていた誰か>>4:498が落としたみたいだ。
わたしは屈んで、チョークを摘み上げる。 いつかのように、三本の指だけが白く染まった。]
……ねぇ、炭蔵くん。 頭の中の世界って、どれくらい頭の中だと思う?
[炭蔵くんはここで前髪留めるかな。 わたしはみんなの文字がたくさん並ぶ黒板を見ていた。 置いていく10円>>3:590だって 頭を振ったら耳から出てくる訳もないんだから、 問いの答えは想像に容易くはあるんだけど、それでも。]
(58) 2021/06/14(Mon) 15時頃
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ここに書いたら、伝わるかなぁ。
[楽しかった文化祭、目を惹く綺麗な文字>>1:317。 あの日黒板に書かれたのは、楽しいことだけだったね。]
(59) 2021/06/14(Mon) 15時頃
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[結局、わたしが待たせちゃったかも。 チョークを元に戻して、手を叩いたわたしは 炭蔵くん>>50と一緒に教室を出て行く。
教室には写真と寄せ書きと。思い出だけが、残った。]
……行こう、きっと待ってるよ。
[『一緒に帰ろう』 右肩上がりの癖のある文字は、無人の教室に佇む。
わたしたちは足跡に導かれるように3階へ進む。 みんなの待つ、3階へ。]*
(60) 2021/06/14(Mon) 15時半頃
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— 3階 —
[途中、1枚欠けた写真>>4:507には気づけたかな。 3階に上がると寒さが増した気がした。 制服姿のわたしは身を震わせる。
少し先、開いた窓>>4:520が原因のようだった。 雪が降り込んでいる。]
……こんな時まで仲良しなの。
[窓の下に何かがあるのは、この距離からでも分かった。 それに——わたしは階段を上がってすぐにある 教室>>4:496の中を見る。
こんな時まで、近い場所>>4:494にいるんだね。
わたしの腕は二本しかないし、身体は一つしかない。 炭蔵くんと同じ。だからわたしはまず教室に入った。]
(61) 2021/06/14(Mon) 15時半頃
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— 階段前の部屋 —
[衣装部屋だったらしいそこは、 ラックとハンガーが脇に並んでいただろうか。 中央にできた道の先には姿見があって、
——鳩羽くんが、倒れている。]
……。
[わたしは血溜まりの前まで近づいた。 裾が床につかないように気をつけながらしゃがみこむ。]
(62) 2021/06/14(Mon) 15時半頃
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また明日って言ったじゃん。
[わたしは鳩羽くんに話しかけた。返事はない。 下手くそな「笑顔」がマネキンに赤く刻まれていた。
抜け殻みたいだなって、思った。 それに、何にも似てなんかないのに、 向井くんの話をした、あの廊下を思い出した。 涙が水たまりになったみたいな、あの廊下を。
ほんのちょっとの間だけ、わたしはコートに顔を埋める。 感情を逃すように息を吐いた。]*
(63) 2021/06/14(Mon) 15時半頃
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夜笑国 メイは、メモを貼った。
2021/06/14(Mon) 15時半頃
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[ 同じ人間で良かった。>>52 一緒に頑張りたい。>>53 暮石のくれる言葉は、心の中に滲むように広がる。
今この瞬間に至るまでこの世界で誰かと過ごしてきて 沢山の言葉を交わして、何人もの姿を見送ってきた。 もうこの世界に残されたのは俺たちだけだとしても、 ココにあるのは、俺たちの気持ちだけじゃない。
真っ直ぐに同じ方向を向いている。 これも多分、俺たちだけじゃないと良いな。 ]
(64) 2021/06/14(Mon) 16時半頃
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[ 心当たりの件については、>>54>>55 詳細は語られなくとも時折聴こえていた ため息≠フ理由に繋がりそうだった。
あのはじまりの日のカッターナイフ。 まだたった2日前のことなのに、 何故だか遠い昔のように感じるよな。 俺たちは多分、あの時から気付いてたのかもな。
それから、手首のこと。 頬を抓られても然程痛くはなかっただろう。 ]
これは向井が悪い
[ と、罪を擦り付けてもおこう。 *]
(65) 2021/06/14(Mon) 16時半頃
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[ そうして、教室に入る時、 盗み見た暮石の顔は泣きそうで、>>56 帰った≠ニ信じていても、 悲惨な状態のマネキンがあるのは確かに なるべく見たくはないものだろうと思う。 ]
無理はしなくていいからな
[ それでもきっと、暮石は見ると言うだろうが。 あやすようにぽん、と小さな頭をひとつ叩いて 教室の中へ踏み込んでいた。 ]
(66) 2021/06/14(Mon) 16時半頃
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リハーサルにしても、 まだ少し早いよなあ
[ 正しく卒業アルバムのように並ぶ、 整列された写真たちと寄せ書きの黒板。
ヘアピンを受け取り、>>58 その黒板に文字が書き足されるのを見ていた。 ]
どのくらい頭の中、って…… さあな、それは俺にも分からない
[ 量の多い前髪を上に掻き上げて、 てっぺんに集めてヘアピンで固定しながら、 暮石の不思議な質問に答えて。 ]
(67) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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[ 刻まれた文字に、眸を薄める。>>60 ]
伝わると思う、 いや思うじゃなくて、絶対伝えよう
[ チョークの粉が少し舞う。 精神世界なんだ、問いの答えはわからない。 分からないけど、まだ気持ちは伝えられると思う。
だから、俺は黒板に新たな書き込みはしなかった。 ちゃんと一緒に帰ってから、 卒業アルバムの裏表紙にサインしよう。 それまでは、お預けだ。 ]
(68) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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どうだ、似合うか?
[ ヘアピンをつけ終えたなら、 検討した結果を見せつけるよう>>42 暮石にファッションチェックも依頼していた。* ]
(69) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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[ そして、思い出を教室に残して向かった先。 三階に辿り着くと、寒さが増す。 暮石の視線の先を追えば、 ひとつだけ窓が空いているのが見えた。>>4:520
俺の腕も二本しかないし、身体も一つしかない。 暮石と同じで、手近な教室に足を伸ばす。>>61 ]
(70) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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[ 後ろから、中に倒れている鳩羽を見た。>>4:496 顔をコートに埋める暮石の隣にしゃがみ込み、 背中を擦るように手のひらを添えた。
そして、もう一本の手はカッターナイフを拾う。 ]
まだ俺たちに明日≠ヘ来てない この校舎の中は、 永遠に同じ日付を繰り返してる 俺は鳩羽と約束したんだよ、
俺たちが目指すべき明日は、もう少し先にある
[ そう、俺も約束したんだ。 この校舎が動き出す明日へ。>>4:366 ]
(71) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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だから、鳩羽はきっと、 一足先に明日≠ナ待ってるだろ こんな作り物の笑顔じゃない、 本当の笑顔を浮かべてな
[ 話しながら、 暮石が途中で顔を上げないことを願っていた。 だって、俺も泣きそうになってたから。 もし見てしまったのなら? ……他のみんなには内緒にしてくれ。
特に、綿見には言わないように。 ]
(72) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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[ 衣装部屋の中にあるもので、 可能な限り文化祭の日に近くなるよう ごちゃごちゃとした装飾をつけてやろう。 どうだ、満足のいく出来栄えになっただろうか?
それから、暮石が落ち着いた頃に、 開けっ放しの窓の方へと向かうだろう。* ]
(73) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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[ 近づけば、窓の外ではなく、 窓のすぐ近くに、 降り積もる雪に覆われたマネキンがひとつ。
吹き込む風が、雪が、冷たくて。 窓枠に、手をかける。
なあ、暮石覚えているか? はじまりのあの日、一緒になって覗いたこと。 あまりにも深い闇が広がっていて、 言葉を失っていたっけ?>>1:297 その気持ちを覚えているから、 下を見ないようにそっと窓を閉めた。 ]
(74) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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[ そうして、マネキンの傍にしゃがみ込み 上に積もる雪を、素手で払い除けていた。
顔があるべき場所になくったって、 これは柊だと分かっていた。 ]
こんなところに一人で、寒かっただろうな ……暮石、鳩羽の傍に運んでやらないか?
[ そういえば、柊の下の名前はユキだったか。 誰かを下の名前で呼んだことはない俺は、 ふと頭の中で、連想ゲームをしていた。
それと、寂しがりな柊のことだ、 ひとりで廊下に残されるより良いだろ? *]
(75) 2021/06/14(Mon) 17時頃
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— 教室まで —
[死んだらそこで終わり>>1:527。 わたしは一昨日、炭蔵くんとそんな話をした。
どんなに思い出を大切にしたって、 そこに新しい何かは二度と生まれない。 声も、顔も、温度も、過ごした時間も、人の気持ちも、 全部、掠れていくばかりだ。
それは、嫌だった。怖かった。 帰ったって信じようとしても、 終わった姿を見るのはお母さんを思い出すから。]
……だいじょーぶ。
[頭を叩かれる感覚がして、 炭蔵くん>>66がわたしより先に教室へ入っていく。 その腕にはまだ絆創膏>>2:364があったかな。 向井くんが悪いと主張する炭蔵くん>>65だったけど、]
(76) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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あって五分。
[と、わたしはその意見を却下した。 向井くんがこんなびっくりすること望む訳ないでしょ。 わたしの中の向井くんはそういう人だ。 でも炭蔵くんの前では違うのかなって思うから、五分。
本人>>0:707は仲の良さは否定してたけど、 長い付き合いであることは言葉の端々に見えてたから。]
向井くんはつねったらびっくりしちゃうよねぇ。
[そんな話も少し前のこと。 わたしたちが目にするのは卒業アルバムみたいな教室。 そこでわたしは文字を書く。
わたしが書いている間に炭蔵くん>>67も身支度を 整えたみたいで、ファッションチェックを仰せつかる。]
(77) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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なんか、ちょっと幼く見えるね。
[留め方の問題かな。それとも眸がよく見えるから? 頭のてっぺんで固定された前髪は量が多くて、 ヘアピンだとちょっと力不足だったかなって思う。 わたしは表情を和らげながら、ヘアピンから逃れた 端の前髪に手を伸ばして、横へ流そうとした。]
よく見えるよ。わたしはこっちの方がすき。 だから……似合うんじゃない。
[わたしの返答はやっぱり自分基準で、 少し考えてから依頼主>>69に沿う回答も付け加える。
わたしたちは足跡を追った。 炭蔵くん>>68の伝えようって言葉が胸に残っている。]*
(78) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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— 3F階段前の部屋 —
[さっきは頭、今度は背中。 炭蔵くん>>71の温度が冷えたわたしの身体に広がる。 カッターを拾う姿は見えなかったけれど、 続く言葉にわたしは息を吐くのをやめた。]
ここに、明日≠ヘない……。
[何度朝を迎えてもスマホの日付は変わらなかった。 わたしたちは、同じ一日を繰り返している。 止まった校舎に明日はないんだ。 黒板に書かれた文字>>4:497を思い出していた。 わたしは顔を上げて炭蔵くん>>72を見る。]
(79) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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……うん。
[やっぱり、よく見えるよ。泣きそうな顔。 わたしは指摘することなく頷いた。 だって、きっとわたしも同じような顔をしている。
だからこのことは二人だけの秘密にしよう。 わたしは人差し指を自分の口元に押し当てて笑った。]
(80) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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[それから炭蔵くん>>73は部屋を豪華に飾りつけている。 文化祭の時、鳩羽くん情報量過多だったよね。 ごちゃごちゃとした装飾にそんなことを思い出していた。
……うん、もう大丈夫。 わたしは自分の足で、もう一人の下へ向かう。]
(81) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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[開いた窓の下を覗く勇気はわたしにもなくて、 炭蔵くんが窓枠に手をかけるのを見ていた。
そういえば、2階の窓を閉め忘れてた気がするけど、 廊下には雪が積もってなかった。 誰か>>1:649が気づいて閉めてくれたのかも。 わたしはそんなことを思う。
それから、柊くん>>4:520へ視線を落とした。 炭蔵くん>>75と一緒に雪を払い除けていく。]
うん、そうしよう。 一人は、寒いもんね。
[わたしは炭蔵くんの提案に賛成して、 二人で協力して柊くんを階段前の部屋まで運ぶ。 雪みたいな冷たさに、わたしの指先がじんと痛んだ。
なんとか運び切ると、 赤く彫られた笑顔とぽっかり抜け落ちた顔が並ぶ。]
(82) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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……待っててね。
[ここに明日≠ェ来ないなら、 待ち合わせをした月曜の放課後だって二度と来ない。
わたしは柊くんの輪郭に手を伸ばした。 指先で触れるとひんやり冷たい。]
それじゃ、いってきます。
[わたし、柊くんの名前の由来なんて知らないから、 わたしの中の柊くんは今でも春色をしてる>>0:572。
春って、あたたかくてほっとするでしょ。
鳩羽くんの隣、 手足が折れ曲がってしまった柊くんの身体には、 丁度いいサイズのダッフルコートがかけられていた。]*
(83) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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— 3階の果て —
[鳩羽くんの足跡に導かれて3階へ来たわたしたちは、 最初に二人を見つけた。
これでもう、迷いはない。 鳩羽くんと柊くんが先に明日へ進んで、 炭蔵くんとわたしは同じ道を歩いている。
わたしたちの心当たりは確信になった。]
……できることを、しよう。
[結局まともな作戦会議はできなかったけれど、 わたしの心はもう揺らがなかった。 隣には炭蔵くんがいて、未来にはみんながいる。 わたしたちは同じ方向>>64へ進んだ。]
(84) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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[音楽室は校舎の端>>0:678にある。 夜にピアノを弾いた後、わたしは鍵をかけなかった。 わたし以外、誰かが来るって思わなかったから。
ひとつひとつ部屋を確かめた最後、その果てに。 わたしたちが探し求めた人>>9はいたかな。]*
(85) 2021/06/14(Mon) 18時頃
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夜笑国 メイは、メモを貼った。
2021/06/14(Mon) 18時頃
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―― 音楽室 ――
[ ここには私をとがめる人なんていない。 だから私は窓のそばで外を眺めながら、 立ったまま、お行儀悪くクレープを食べてた。 責任を持って食べなきゃいけない、自己責任クレープ。 冷蔵庫にある全部を食べ切るには まだまだ時間がかかりそうだけど、 大丈夫。ここの時間は止まってるもの。 芽衣は一蓮托生って言ってくれたけど、 責任をもって私が全部食べるから、安心してね。 だって私たち、友達でしょう? ]
(86) 2021/06/14(Mon) 19時頃
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[ 音楽室の鍵は開いてた。>>85 でも、私はこの校舎の主だから、 鍵がかかっていたとしても、きっと問題はなかった。 自覚してしまえば簡単なの。 ほら、自覚してなかった時だって、 文化祭になったり、写真が飾られたり、 屋台が3-9のばっかりになったりしたでしょ? 自覚してしまえば、ため息は聞こえなくなったし、 カッターナイフも消えた。 この校舎は私の意のままだ。 この校舎で、私の思い通りにならないものは ]
(87) 2021/06/14(Mon) 19時頃
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来てくれたんだ。
[ 扉が開く音がしたから、私は振り返って微笑む。 この校舎で、私の思い通りにならないもの。 この校舎に残った最後の2人。 でも、2人はこんな校舎の端っこまで会いに来てくれた。 だから私は嬉しくなってしまう。 炭蔵君は見たことのない髪形をしてて、>>67 最後に珍しいものが見れたなって、 私、やっぱりご機嫌になった ]
(88) 2021/06/14(Mon) 19時頃
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大丈夫、先に帰ったみんなは無事だし、 2人ともちゃんと帰れるよ。 でも、みんなをあんな目に遭わせちゃったのは、 本当に申し訳なかったと思ってる。 私、あんなことになるなんて全然知らなかったの。 だからって、許されることじゃないけど。
[ きっと、2人が一番気になってると思うことを、 私は最初に伝える。 ここに来る途中に、鳩羽君と柊君のことも きっと見つけたよね。 もう、校舎にいるのはここにいる3人だけ ]
(89) 2021/06/14(Mon) 19時頃
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2人が最後になったのは、 きっと私が2人には最後までいてほしいと思ったから。 でも、もうこれでおしまいにする。 長いこと引き留めてごめんなさい。
[ 食べかけのクレープを握りしめたまま、 私は2人に頭を下げた。 私が謝ってたって、みんなに伝えてもらえるかな。 私には、もうその機会はないから* ]
(90) 2021/06/14(Mon) 19時頃
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夜笑国 メイは、メモを貼った。
2021/06/14(Mon) 20時頃
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── 3F階段前の教室 ──
[ 大丈夫と告げていたのを信じていたが、>>76 やはり目の前にすると落ち着かないようだった。 少しでも暮石の感情を逃がすことの 手助けになっているのなら、よかった。>>79
それから、暮石には どうにも弱みを握られてしまうものだ。>>80 けれど、ふたりとも同じ顔を しているんだから、おあいこだ。
泣き笑う暮石につられて、 俺も人差し指を口元に添えて笑っていた。 ]
(91) 2021/06/14(Mon) 21時頃
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[ 廊下に出れば、雪に埋もれた柊を発掘する。>>82 ごちゃごちゃと五月蠅く飾られた鳩羽の横に、 柊が寄り添うように置こう。
歪な顔をしたふたりが並ぶ。 暮石が声をかけるのを横目に、 俺は、何時間も前のことを思い返していた。 ]
……約束は忘れてないからな
[ ふたりと交わした約束を叶えるため、 俺は暮石と共に衣装部屋を後にする。 ]
(92) 2021/06/14(Mon) 21時頃
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── 3Fの果てへ ──
[ 鳩羽と柊を見つけることができた。 残すはあと一人。 俺たちの心当たりのある人だ。
暮石の言葉に、頷く。>>84 まともな作戦会議はできなくとも、 向かうべき場所は、同じだ。
俺ひとりで背負わなくてもいい。 心強い味方が隣に、未来にいる。 ]
……もしも、変なことを口走っていたら 構わず俺の背中を叩いてくれ
[ そうだ、果てに辿り着く直前。 作戦会議ならぬお願いを、暮石にしておこう。 ]
(93) 2021/06/14(Mon) 21時頃
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[ ─── ようやく、ご対面だ。
三階、一番端の教室。 音楽室に黒沢は居た。>>88
振り返る彼女は微笑んでいて、 それから自ら話し始めるのを静かに聞いていた。 俺にとっては、その光景は異様に見えたが 隣にいる暮石にはどう見えただろう。]
黒沢、探したぞ
[ 俺の第一声はこれだ。 こんな端っこにいるのは骨が折れたぞ。 ]
(94) 2021/06/14(Mon) 21時頃
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[ それから、 ]
この髪型、似合ってるか?
[ 幼く見えると言われた前髪を示す。>>78 仲間はずれの前髪の端を、 暮石がしたように自分でも流してみせる。
ご機嫌になっているともつゆしらず、 どうだ?なんて、黒沢にも同じ質問を。 ]
(95) 2021/06/14(Mon) 21時頃
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[ それから、 ]
そのクレープはどうした?
[ なんて、手に持っているクレープを指摘する。 ほら、確かクレープは完売だった筈だ。 女子が夜中に何をしていたのかなんて、 俺は全く知らなかったから。 ]
(96) 2021/06/14(Mon) 21時頃
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[ それから、 ]
……黒沢が言いたいのはそれだけか?
[ 頭を下げる黒沢を見て>>90、俺の眸は薄くなる。 俺が知りたいのは、そんなことじゃない。>>89 俺はあの日≠ゥら今までずっと、 黒沢の嘘に乗っかっているんだ。>>0:817
黒沢からのSOSを、ずっと、ずっと待っていた。 ]
(97) 2021/06/14(Mon) 21時頃
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[ 俺は、無意識の内にだろうか。
まだ絆創膏が貼られたままの、 左手首を握り締めていた。 *]
(98) 2021/06/14(Mon) 21時頃
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— 校舎の果て、音楽室 —
[鍵が開いていることにわたしは違和感がなかったから、 だからこそ中に乃絵ちゃん>>87がいたことに驚いた。
乃絵ちゃんは窓の側に立っている。 その手に持っているのはクレープ>>86で 一つ前の夜、わたしと一緒に作ったもの。 名前はラップにしか書いていなかったけれど、 所々焦げた生地がわたしに事実を教えてくれた。]
……起こしてくれたら、良かったのに。
[乃絵ちゃん>>88は来てくれたんだって言う。 振り返った顔は笑っていた。 わたしは乃絵ちゃんの手元に視線を向けて、 わたしより先に保健室を出た乃絵ちゃんに触れる。]
(99) 2021/06/14(Mon) 21時半頃
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[「責任を持って食べようね」って言ったじゃん>>4:523。 「大丈夫」って言ったじゃん>>4:525。 「また明日ね」って、言ったじゃん>>4:526。
わたしと乃絵ちゃんの間には言えないことがあったけど、 それでもちゃんと、隣にいたじゃん。
今の乃絵ちゃん>>89がすごく遠く感じた。 説明でみんなが無事であることをしっても、 わたしの胸に広がるのは、安堵よりも不安が濃い。
炭蔵くん>>94もきっと 同じような感覚を覚えているんじゃないかな。 続く言葉>>95には道中での約束>>93を果たそうかと 思ったのに、わたしの手は炭蔵くんの背に届かない。
それはそれでいいのかなって迷ったのもあるけど、 単純に、身体を上手く動かせなかったから。]
(100) 2021/06/14(Mon) 21時半頃
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[分かってる。分かっちゃった。 乃絵ちゃんは、今、この校舎の主としてここにいる。]
(101) 2021/06/14(Mon) 21時半頃
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[だからわたし、口を挟めなかった。 乃絵ちゃん>>90の頭が下がるのを黙って見ている。
乃絵ちゃんが音楽室にいることも、 そこでクレープを立ち食いしていることも不思議で、 現実味がなくて。 わたしはいつも出迎える側だったから、 この景色ごと夢なんじゃないかとすら思える。
わたしたちは秘密があってもともだち>>1:131だけど、 それでも。言わなきゃ、伝わらないんだ。 ここで過ごす中で、わたし、 そういう当たり前で大切なことをたくさん知った。]
(102) 2021/06/14(Mon) 21時半頃
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|
[クレープについて尋ねる炭蔵くん>>96が、 今どんな顔をしているか>>97わたしは知らない。
わたしはどんな顔をしていただろう。 笑っていたかったけど、たぶんそれは失敗した。 だからわたしの目は普段より大きくなって、 乃絵ちゃんの姿を映す。
わたしたちは同じ方向を、乃絵ちゃんを見ていた。]
(103) 2021/06/14(Mon) 21時半頃
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……乃絵ちゃんが、ここを作ったの?
[乃絵ちゃん、何にも知らないんだと思ってた。 だからいくら心当たりがあっても、 心のどこかで違うんじゃないかって思えた。
でも、もうダメなんだね。おしまいなんだね。
だからわたし、抱えていたもの>>3:152を吐き出した。]
一緒に、帰ろうよ……。
[最後までじゃなくて、これからも一緒にいようよ。 乃絵ちゃんが告げるおしまいを拒むように、 わたしは首を横に振った。]*
(104) 2021/06/14(Mon) 21時半頃
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―― 音楽室 ――
[ 探したぞって言われて>>94 ああ、探してくれたんだなって思うと、 私はやっぱり嬉しい。 だから、私はうん、って頷く ]
そうだよね。 ありがとう。 [ 3階の一番奥。普段の私とは縁のない場所。 私はヒントになるようなものを何も残さなかったし、 ピアノの鍵盤を押してみたりもしなかった。 そんな「ここにいるから会いに来て」って アピールするみたいなこと、 こんな時だってやっぱり私にはできない。 それなのに、こんなところまで探して、 会いに来てくれたんだよね ]
(105) 2021/06/14(Mon) 22時頃
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[ 炭蔵君は、前髪をてっぺんで固定してた。>>67 止めきれなかった前髪が左右に落ちてる。>>78 横に流して止めればまた違ったんだろうけど、 その留め方は私も幼く見えると思う。>>95
私は炭蔵君とあんまり身長が変わらない。 目線の高さも同じくらい。 だから、前髪の隙間から覗く目を、 下から見上げるなんてこともしたことがなかった ]
私はいいと思うな。 炭蔵君の顔がよく見えるもの。
[ きちんとこうして目が合うの、初めてじゃないかな ]
(106) 2021/06/14(Mon) 22時頃
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このクレープは、昨日の夜芽衣と作ったの。 私も芽衣も初めてだったから、ちょっと失敗しちゃった。 でも、すごく楽しかった。
[ クレープのことを炭蔵君に聞かれて、>>96 ね?って芽衣に同意を求めたけど、 芽衣は笑ってなかった。>>103 芽衣は楽しくなかった? ああ、そうだよね。 こんなところに閉じ込められて、 他のみんなはあんな目に遭ったのに、 楽しかったなんて、不謹慎だよね。 そう気づいて、ちょっと反省した ]
(107) 2021/06/14(Mon) 22時頃
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[ 反省した私は、ちょっと申し訳なさそうに2人を見る。 私がここを作ったのかって、芽衣に聞かれて、>>104 ああそうか、そもそもそのことも ちゃんと言ってなかったなって気づいた ]
とぼけてたわけじゃなかったの。 私、本当に気づいてなかった。 すっかり忘れてたの。 ごめんなさい。
[ そうだよね。まずはそこからよね。 みんな、校舎の主は誰だろうって探してたのに、 私はそれが自分であることをすっかり忘れて、 素知らぬ顔してたんだもの ]
(108) 2021/06/14(Mon) 22時頃
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[ 帰ろうよ、って芽衣が言う。 だから私はますます申し訳ない気持ちになった ]
ごめんね。 あのメールを送ったのは私。 ……私、自殺しちゃったの。
[ ここに連れてこられちゃっただけの 芽衣や炭蔵君とは違う。 現実世界の私の身体は、もうほぼ死んでるはず ]
だから、私は帰れないの。
(109) 2021/06/14(Mon) 22時頃
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[ 炭蔵君の顔がよく見えるの、いいなって思ったけど、 あ、この顔はきっと怒ってるよねっていうのも>>97 いつもよりよくわかるから、 本当に、申し訳なさしかない。 ごめんなさいって謝ることしかできないよ ] ……ごめんなさい。 私、自分のこと、よくわかってなかったみたい。
[ 約束を忘れたわけじゃなかった。本当だよ。 あの約束は、私にとって拠り所だった。 SOSを出せって言われたの、本当に嬉しかったんだよ。 私のこと、助けてくれるつもりなんだって、 嬉しかった ]
(110) 2021/06/14(Mon) 22時頃
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大丈夫だと思ってたの、本当に。 大丈夫じゃなくなる時って、一瞬だったんだね。
[ 棒倒しの棒だって、積み上げたジェンガだって、 崩れる時は一瞬だ。 そんなことくらい知ってるのに、 私、自分のことはわかってなかった ]
(111) 2021/06/14(Mon) 22時頃
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それに、私、自分で思ってたより馬鹿だったの。 馬鹿だから、助けての言い方もわからなかった。
[ だから、こんなことになっちゃった、って 眉を下げて笑う。 私の右手はクレープでふさがっていて、 左手首なんか握っていないのに、 炭蔵君が手首を握ってるなんて、なんだかおかしいね。 私からも見えるような絆創膏だったら、 私、あれって呟いて眉を寄せるし、>>98 炭蔵君、その手はどうしたの?って聞くよ* ]
(112) 2021/06/14(Mon) 22時頃
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[ 暮石が背中を叩いてくれないから、>>100 俺の口から出る言葉は止まらなかった。
でも、きっと同じような感覚でいたから、 思っていたように上手くできないのは、 俺も十二分に分かっているつもりだった。 ]
(113) 2021/06/14(Mon) 23時頃
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[ ありがとう、と言われても、>>105 黒沢のホントの気持ちが全く分からなくて、 口元がへの字に曲がってしまう。
前髪の評価については、 暮石と同じように高評価だった。>>106 こうして真っ直ぐに目が交わるのは初めてで、 きっと、黒沢にとっての俺の印象も また変わってしまいそうだ。 ]
(114) 2021/06/14(Mon) 23時頃
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[ 暮石がクレープを見て何を思っているのか>>99 前しか見てない俺には分からなかった。
ただ、少し焦げたクレープの生地が視界に映る。 楽しかったと考えてしまうことが、 不謹慎とか不謹慎じゃないとか>>107 そんなことは俺にとっては問題じゃなかった。 ]
(115) 2021/06/14(Mon) 23時頃
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[ 俺の言葉の後に、 吐き出すような暮石の言葉が響く。>>104
黒沢は、淡々と事実を語り、 ただただ謝るだけだった。>>108>>109 俺の言葉に対しても。>>110 暮石の拒む言葉に対しても。>>104
別に俺は怒っているわけじゃない。 ]
俺も、たぶん暮石も、 黒沢からの謝罪が欲しい訳じゃない
[ 左右に首を振って否定する。 ]
(116) 2021/06/14(Mon) 23時頃
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[ それをいうのなら、>>111 綺麗に並べたドミノが、 どこかを崩してしまえばあっという間に 全てが崩れていくようなもので。 黒沢の隠していたものに勘付きながら、 放置してしまっていた俺にも非はある。
あの日、無理矢理にでも 黒沢の腕を掴んでしまえばよかった。 そんな後悔が、胸に過ぎる。 ]
(117) 2021/06/14(Mon) 23時頃
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俺も、つい数時間前まで 「助け」を求めることを知らなかった だから、助けてと言えなくたって 俺は馬鹿だとは思わないがな
[ 笑う黒沢は、見ていてとても痛々しく思う。 ]
(118) 2021/06/14(Mon) 23時頃
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噫、これは黒沢と同じ気持ちに なってみようと思ってな
[ 絆創膏のことを指摘されれば、 特に悪びれた様子もなく見せるだろう。 暮石にはああ言ったが、>>65 向井に嗾けられなくとも、いずれやっていただろう。 だから、五分……ではなく、十割俺が悪い。>>77
なあ、黒沢の傷の具合はどうだ? もう迂闊なことをしていないようだが、 つい、黒沢の手首に視線が向いてしまう。 ]
(119) 2021/06/14(Mon) 23時頃
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この世界は、助けてと言えない黒沢の気持ちを 代弁した世界なのだと俺は思っていた
だから、俺を最後まで残してくれたのは 俺に何かして欲しいことがあるんじゃないか?
[ 最後までいてほしかった。>>90 その言葉には、嘘はないだろう? 俺は、きっと黒沢の気持ちを 全て分かってやれないかもしれないが。 少しでもいいから、言葉にして欲しいと思う。
あの日のようにわかりやすく、話して欲しい。 切実とも取れる眸で、俺は黒沢を見つめている。* ]
(120) 2021/06/14(Mon) 23時頃
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[そう、探したんだよ。 乃絵ちゃんがどこにいるだろうって考えた時、 わたし、すぐにどこかひとつの場所が浮かばなかった。
教室にはいなかった。保健室もそう。 食堂で炭蔵くんに会う前に、生徒会室も探したと思う。 いつも雨を受け止めていたベンチはわたしたちが 出られない外にあって、渡り廊下にも見当たらない。
炭蔵くんと合流して2階に上がって、 鳩羽くんの足跡を見つけた。
もしそれがなかったら、乃絵ちゃんの手にある クレープはもっと少なくなっていたんじゃないかな。]
(121) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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[そんなクレープを不思議に思った炭蔵くんの疑問へ 答えた乃絵ちゃん>>107が、わたしに同意を求める。 わたし、辛うじて頷くことしかできなかった。
鍵盤の音>>105がしたら、きっとすぐに駆けつけたのに。 乃絵ちゃんのSOSはわたしたちに届くことはなく、 ここに辿り着けたのは、ひとつずつ扉を開けた結果だ。
それとも、もっと気づけたことはあったのかな。 わたし、知らないこといっぱいあるんだなぁって。 わたしは自分で選んだ行動を後悔していたから、 ね? って言う乃絵ちゃんに笑い返すことができない。]
(122) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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[いつかの仮定>>1:529、間違ってなかったのかな。
だから、わたし悔しかったの。 乃絵ちゃん>>109に「帰れない」って言わせたことが、 どうしようもなく、苦しかったの。]
(123) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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[わたしは炭蔵くんの言葉>>116へ同意するように、 また首を横に振る。頭を振りすぎてクラクラした。
続く乃絵ちゃん>>110>>111>>112の話は炭蔵くんへ、 きっと二人の間に何かあったんだろうなって思う。 わたしは口を挟まず、乃絵ちゃんが炭蔵くんの手首に 視線を向けるのを見ていた。
……見ていたんだけど。 炭蔵くん>>119からわたしの知らない事実が出た時は、 さすがに思いっきり炭蔵くんの方を見た。
背中を叩くんじゃなくてつまむ。頬より強めにつまむ。 止めた訳じゃないよ。聞いていない。そういう意味。 だからわたしは炭蔵くんの話>>120に合わせ、 指を離して視線を乃絵ちゃんに戻した。
深呼吸、二回。わたしは口を開く。]
(124) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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どう、して……?
[疑問だけが詰まった音、 乃絵ちゃんにどれだけ意味が伝わるだろう。 わたしは笑うより大きな目を湛え、乃絵ちゃんを見る。]
どうして、自殺したの。
[それが乃絵ちゃんを苦しめたの。 ため息を怖がらせたの。見捨てられた気持ちにさせるの。 限界で耐えきれなくなるまで、一瞬で崩れるまで>>111、 顕にしない長袖の下、わたしの知らない傷を作ったの。
本人が望まないことは聞かないようにしてた。 乃絵ちゃんが望む分だけ話を聞いて、頭を撫でて。
でも、もうダメなんだよ。おしまいなんだよ。 そういうのも、全部。]
(125) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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[わたしは知らなきゃいけなかった。 知らなきゃ、帰れないって言う乃絵ちゃんに 何も返せないと思ったから。]
教えて、乃絵ちゃんのこと。 ……お願い。
[わたしは願うしかできない。 今はまだ、知ることしかできない。
炭蔵くんとわたし、それぞれの問いは場に並んだ。 わたしは炭蔵くんの背ではなく、腕を叩く。 促したのか任せたのか、それはわたしにも分からない。]
(126) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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[この距離じゃ、前髪を掻き上げることもできないし、 眸の中だって覗けないでしょ。 より深く潜るなら、わたしたちと乃絵ちゃんは遠すぎる。
わたしは扉の前を離れ、窓の方、ピアノの近く、 あるいは、乃絵ちゃんの側へ近づこうとした。]*
(127) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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[ 例えばの話。 保健室で芽衣を起こして、>>99 「芽衣、おはよう。あのね、思い出したの。 この校舎の主、私だった」って言ってたら、 どうなってたかな? やっぱりちょっと格好悪い気がする。 最後くらいちょっと格好つけさせてくれても いいじゃない? でも、結局クレープ立ち食いしてるところ見つかったから どっちにしたって格好悪かったね ]
(128) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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[ 私、謝ることしかできないと思う。 こんなところにみんなを閉じ込めたし、 先に帰ったみんなはあんな目に遭ったし、 みんなが探してた校舎の主は私だったし、 帰ろうよっていう芽衣のお願いも聞けないし、 炭蔵君との約束だって守れなかった。 謝るしかないって思うのに、 欲しいのは謝罪じゃないって言われても>>116 困ってしまう。 謝る以外に、私にできること、何かある? 私、本当にわからなくて、 心底困った顔で首を傾げた ]
(129) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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[ 炭蔵君に非なんてないよ。>>117 クラスの委員長っていうだけで、 クラスメイトみんなの人生背負っちゃうつもりなのかな? 私が隠したかったものを、炭蔵君は尊重してくれただけ。 私は感謝しかしてないよ。 だから、非なんて感じないでほしい ]
(130) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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炭蔵君は、こんな風になっちゃう前に、 助けを求めることができるようになったんでしょ。 その差って、大きいよ。
[ 死ねたらいいなって考えることと、 本当に死んじゃうことくらい違う。 手遅れになる前に言えなかった、 私はきっと馬鹿だと思う。 私と、炭蔵君は違うよ。 ……そう思ったのに ]
(131) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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それは馬鹿なことだよ!
[ 私と同じ気持ちになってみようと切ったなんて!>>119 訂正する。炭蔵君も馬鹿だ。 悪びれた様子もなく、平然と手首を見せる炭蔵君に、 私は開いた口が塞がらない。 柊君もざっくりやっちゃったみたいだったし、 3-9の男子、好奇心強すぎない? ]
同じ気持ちになってみようとしたからって こんなことしてたら、命がいくつあっても足りないよ!
[ 面倒見のいい炭蔵君だもの。 私が特別じゃないことくらいわかってる。 クラスのみんな一人一人にこんな風に向き合ってたら、 本当に炭蔵君、そのうち死んじゃいそう ]
(132) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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[ 私の手首?見たい? 私はあまり見せたくないな。 誰だって自分の汚いところ、見せたくないでしょ。
それにね、現実の私は、こんなものじゃない。 思い出した私は知ってる。 替え刃を何度も折りながら、体中傷つけたこと、 覚えてる。思い出しちゃった ]
(133) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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[ ここは、私の気持ちを代弁した世界?>>120 それは、確かにそうだと思う。 ここは私の望みが叶う世界。 だけど、「助けて」と言えない私の気持ち? そんなことは……そんな、はずは ]
……ちがう。違う、よ。 私はただ、文化祭の思い出が大事で、 その思い出を、ずっと大事にできる場所に行きたかった。 [ そのはず。それ以上の意味なんて、ないはず ]
(134) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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炭蔵君には、謝りたかった。 約束したのに、私、本当にあの約束、嬉しかったのに、 守れなくてごめんなさいって、謝りたかったから。 ……それだけだよ。
芽衣は、絶対私の秘密に気づいてたのに、 気づかないふりしてくれたから。 いっぱい、私の嘘に付き合ってもらってごめんねって そう言いたかった。 あとね、芽衣のピアノ、聴いてみたかった。 それが最後の私の心残りだから。
[ そのはず。私の最後の心残りはそれで、 私は、それ以上何も望むことなんて* ]
(135) 2021/06/14(Mon) 23時半頃
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[ どうしてって、芽衣が聞く。>>125 そうよね、気になるよね。当然だと思う。 そして、私は2人をこんなに巻き込んじゃった。 2人には……ううん、この校舎に来てくれたみんなには、 「どうして」を知る権利がある ]
芽衣は、お父さんのこと、好き? 炭蔵君は、家族のこと好きって言ってたよね。 私、そう言い切れる炭蔵君が羨ましかった。
[ 夏の日の会話を思い出す。>>0:821 ねえ、炭蔵君、あの時の私の返事を覚えてる? 憎んでるんじゃないかって思うことも、あるかな。 私、そう答えたんだった>>0:899 ]
(136) 2021/06/15(Tue) 00時頃
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私、姉が一人いるの。歳は離れてるんだけどね。 綺麗で、頭がよくて、人望もあって、 みんな、姉のこと完璧だって言ってた。 父の自慢の娘だった。 でもね、ちょっと……事件が起こって、 姉は父を失望させたの。 父は激怒して、姉を追い出して、 そして、私は姉の代用品になった。 “父は間違っていなかった”ってことを 証明するための道具になったの。 ……でも、私じゃ全然姉には及ばなくて。
[ 炭蔵君に顔を向けた。覚えてる?って首を傾げる。 家庭内の問題っていうより、私の問題。>>0:1177 そう、原因は私のスペック不足 ]
(137) 2021/06/15(Tue) 00時頃
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ずっと、怖かった。姉は一度の失敗で見限られたから。 私は、全然姉には届かないから。 私じゃ、姉の代用品にはなれないから。 何かひとつ失敗するたびに、 捨てられるんじゃないかって怖かった。 失望のため息を吐かれるたびに、 今度こそ見限られるのかと思った。 プレッシャーに耐えきれなくて、手首、切っちゃった。 傷口が痛む時は、心の痛みを忘れられたから。
[ でもね、って私は言った。 勘違いしてほしくなかったの ]
だから、死のうって思ったわけじゃない。
(138) 2021/06/15(Tue) 00時頃
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芽衣には話したよね、中学の時はバレー部だったこと。 絵のコンクールで表彰されたこと。 高校になってやめたのは、父にやめさせられたから。 そんなものは何の役にも立たない、 私の人生には不要だって命令されたから。 ……私、父の命令には逆らえなかった。
[ だって、全然父の求める水準に達せないんだもの。 全然姉に追いつけないんだもの。 そんな私が、父に意見なんて、できるわけがない ]
(139) 2021/06/15(Tue) 00時頃
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何か一つ取り上げられるたび、 私の中から何かがなくなる気がした。 どんどんどんどん、 私を作ってるものが消えてく気がした。 それでも、大丈夫だって思ってた。 大丈夫なはずだったの。 だけど……、
[ 俯いたら、クレープが目に入った。 私と芽衣が初めて作ったクレープ。 59点の出来栄えのクレープ。>>4:467 父にとってはきっと生ゴミにしか見えないだろうそれ ]
(140) 2021/06/15(Tue) 00時頃
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私に、友達は必要ないって命令だけは、 どうしても、聞けなかった……。
(141) 2021/06/15(Tue) 00時頃
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[ ぽとぽととクレープに雫が落ちた。 雫が落ちた部分の生クリームが溶ける。 甘いクレープがしょっぱくなっちゃう。 ぽとぽとと落ちる雫と一緒に、私の言葉も落ちた ]
(142) 2021/06/15(Tue) 00時頃
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……今死ねば、父の命令、聞かなくて済む。 みんなと友達のまま、死ねるって、 そう、思っちゃった。*
(143) 2021/06/15(Tue) 00時頃
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夜笑国 メイは、メモを貼った。
2021/06/15(Tue) 00時半頃
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[ 手首を見せて、事実を伝えたら 頬を強く抓られて、>>124馬鹿と罵られる。>>132
そんなに悪いことだったか? 俺は心底困った顔をするし、 何よりすごく痛い。暮石の手が。
離してくれ、と暮石に視線を送った後、 黒沢の叱るような言葉に向き直った。 ]
(144) 2021/06/15(Tue) 00時半頃
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あはは、これで死んだら元も子もないよな ……けど、こうやって叱ってくれたり、 俺に必要な言葉をくれる黒沢が、 何を考えているのかが知りたいんだ
[ 暮石の問いかけに全てが詰まっていた。>>125 俺たちは知りたいんだ、黒沢のこと。
それに柊にも同じような話をしたが、 誰にでもこんなことをする訳じゃない。 ]
(145) 2021/06/15(Tue) 00時半頃
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……だったら、今 その約束を叶えてはくれないか? 俺は、黒沢のSOSを受け取りたい
[ 無理に汚いところを見せろとは言わないが、>>133 それを知ったところで 黒沢に対する気持ちは変わらない。 強がることも悪いことだとは思わない。 でも、黒沢が弱みを見せても良いと思えるような、 そんな特別な相手に俺はなりたかったんだ。
小突かれて、黒沢に手の届く距離へ近づく。>>120 ……案外、暮石が粗雑に扱ってくるから、 ちょっと意外そうな顔もしつつ、だったけど。 ]
(146) 2021/06/15(Tue) 00時半頃
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[ それから、黒沢がぽつりぽつりと話し出す。>>136
家族の話は、覚えていた。 あの時はまだ、自信を持って家族を好きだと言えた。
黒沢の吐露される家族関係を知り、>>137 黒沢の感じていた痛みを知った。>>138 ]
(147) 2021/06/15(Tue) 00時半頃
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[ 父親からの命令、──… 俺の父親からの教育も、一種の命令のようなものだ。 俺は、炭蔵祐駕は、こうあるべきだと、 俺は疑問も持たずに応え続けてきた。
俺と黒沢との違いもスペックの問題≠セとしたら、 黒沢が言っていたように 俺は気持ちの理解ができないんだろう。
けれど、その命令は俺の中では悪≠セ。>>141 ]
(148) 2021/06/15(Tue) 00時半頃
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[ 俺と黒沢は、友達と言うには距離があっただろう。 ──… けれど、暮石は? 俺からすれば、ふたりは友人のように見えていた。
こんなことを聞いて、 どんな顔をしているのか、 大丈夫だろうかと少し心配して 暮石の反応を少し窺いもしただろう。
暮石の様子を窺って、それから、 クレープに落ちる雫を見て、俺は言葉を紡いだ。 ]
(149) 2021/06/15(Tue) 00時半頃
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父親の言うことに逆らえない気持ちは 俺もよく、分かる でも、父親が本当に正しい≠フか?
俺たちはまだ子どもで、 親が俺たちの全てのような気がしてしまう 俺もここにくるまではそう思っていたよ
(150) 2021/06/15(Tue) 00時半頃
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でも、俺たちだって考えるひとりの人間だ 俺は黒沢のことを見れていない父親の所為で、 大切な友人を失いたくない
それに黒沢乃絵は黒沢乃絵で、 姉に代わりでもなければ、父親の道具でもない 俺は、今泣きながら弱音も吐けるような、 そのままの黒沢が好きだ
……これからも教えて欲しいことも沢山ある ほら、知ってるだろ?俺の不器用なとこ**
(151) 2021/06/15(Tue) 01時頃
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[ 手首を切ったらしい炭蔵君は、 すごく困った顔をしてる。>>144 悪びれることなくあっさり手首を見せたから そんな気がしてたけど、 炭蔵君、全然問題だと思ってなさそう。 困った顔をしてるのも、前髪に隠されてたら わからなかっただろうから、 今ははっきり顔が見えるのをいいことに、 私はちょっと炭蔵君を睨んだ ]
あはは、じゃないよ。 もっと自分の身体を大事にして。
[ 自分のことを棚に上げてる? でも私、自分の心を大事にしてるつもりだった。 私が手首を切ったのは、私を守るためだった ]
(152) 2021/06/15(Tue) 01時半頃
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……もう、手遅れでしょ。
[ 約束。>>146 普通SOSって、手遅れになる前に送るものでしょ。 私はもう一線を越えちゃったのに。 受け取る方だって困るでしょ。
今更、何言ってるのかな。 私が炭蔵君にどれだけ弱みを見せたと思ってるの? 大丈夫じゃなくなったらSOSを出す、なんて約束、 私は炭蔵君にだからできたのに。 そして、私がため息が怖いことを知ってるのは芽衣だけ。 私がこの校舎に最後までいてほしかったのは、 炭蔵君と芽衣の2人。 とっくの昔から、私にとって2人は特別だった ]
(153) 2021/06/15(Tue) 02時頃
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[ 私がずっと抱えていたもの、全部。 芽衣は「教えて」って言ったから、>>126 私は全部隠さなかった。 だって、これが最後だもの ] ……正しくない。 私、ずっと理不尽だって、思ってた。
[ 私は姉じゃない。 私は姉の代用品じゃない。 私は姉にはなれない ]
(154) 2021/06/15(Tue) 02時頃
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[ 「優しくない人」の定義を聞かれて、浮かんだイメージ。 自分勝手で、 自分の思い通りにならないと気が済まなくて、 自分のことを気を使われる側だと思ってて、 自分の思い通りにならないことを、 他人のせいにできる人。>>2:278>>2:279>>2:295 私はずっと、父をそんな人だと思ってた ]
(155) 2021/06/15(Tue) 02時頃
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そんなこと、知ってる。知ってたよ、炭蔵君。 姉に期待を裏切られた途端、 ずっと出来損ない扱いしてた私を 姉の代わりにしようなんて、 そんな無理を通そうとする人が、正しいわけがない。 [ 自分が間違ってなかったことを証明するためだけの道具。 そんな扱いをされて、父だから正しいなんて、 そんな風に思えるほど私はおめでたくなんかない ]
(156) 2021/06/15(Tue) 02時頃
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……でも、父が間違ってたから、何なの? 私がどんなに白いって言っても、 父が黒だって言ったら黒なの。 それが我が家の、ルールで、命令。 結局、私はまだ子供で、 父がどんなに理不尽な暴君だとしても、 そんな父に依存して生きてるの。 逆らったら、生きていけないの。
[ 早く大人になりたかった。>>2:606 大人になったら、自分で別の場所を見つけて、 生きていけるかもしれないって思った。 でも、間に合わなかったね。 大人になるより、私の限界の方が早かった ]
(157) 2021/06/15(Tue) 02時頃
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……だから、もう手遅れ。 自殺を図るような娘は父の人生の汚点だから。 私はきっともう捨てられてるし、 私が生きていける場所なんて、 現実のどこにももうないの。
[ そのままの私が好きって、>>151 もうちょっと言葉を選んだ方がいいと思うよ。 口説き文句みたい。勘違いされちゃうよ。 でもそれも炭蔵君の不器用なところだったね ]
(158) 2021/06/15(Tue) 02時頃
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言ったでしょ、私、炭蔵君の不器用なところ、 嫌いじゃないって。 炭蔵君は、そのままの炭蔵君でいいんだよ。
[ 炭蔵君よりストレートじゃない私は、 ずっと嫌いじゃないって言ってたけど、>>0:1174 炭蔵君の言い方を借りるなら、私はそういう 不器用なところがある炭蔵君のことが好きだったよ** ]
(159) 2021/06/15(Tue) 02時頃
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[例えばの話。 保健室で乃絵ちゃんに起こされて>>128、 乃絵ちゃんが校舎の主であることを打ち明けられたら。 正直、想像がつかないのが本音。 乃絵ちゃんはきっと、わたしにそういうこと言わない。 袖の中に隠した傷のようにどうしようもなく辛いことで あればある程、一人で抱えて持っていく。
だからわたし、乃絵ちゃんがいなかった時>>11 驚かなかったし、泣かなかった。
格好いいとか悪いとかは分かんないけど、 わたしたぶん、乃絵ちゃんのそういうとこ、知ってた。 クレープ食べてるのは予想外だったけどね。]
(160) 2021/06/15(Tue) 12時半頃
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[炭蔵くんに>>144対して、乃絵ちゃんの口>>132と わたしの指が動く。つまんだのは背中でも頬でもいい。 大事なのは、炭蔵くんが困った顔で視線を向けるまで、 わたしが痛いくらいに力を込めてたってこと。
不慮の事故か何かだと思ってた。 だってあんなに刃物が落ちていたんだもの。 向井くんとの経緯>>2:387>>2:421を知らない以上、 炭蔵くんが自ら切るなんて思いもしない以上、 責任の所在をわたしが語ることなんてできないし、 その理由>>119はわたしには信じ難いものだった。
わたしは炭蔵くんの手首へ視線を向ける。 絆創膏が貼られた場所からは、 もう血が滲むこともなさそうだった。]
(161) 2021/06/15(Tue) 12時半頃
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[わたしのお母さんは、手の怪我で夢を断たれた。]
(162) 2021/06/15(Tue) 12時半頃
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[たまたま怪我して、たまたま怪我した場所が悪かった。 死んじゃった時と同じ。シンプルで分かりやすいでしょ。
わたしが死ぬのに大量の血なんていらない。 たった一筋、刃で線を引いただけで、 わたしの命は人より容易に奪われることがある。
もし炭蔵くん>>146を叩いたわたしの手が強かったなら、 つまりはそういうこと。 わたし、珍しくちょっと怒ってた。]
(163) 2021/06/15(Tue) 12時半頃
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……それヤだ。心配もする。 だから。できたら、怪我、しないで。
[怪我してもしなくてもどっちでもいいなんて思えない。 乃絵ちゃんと炭蔵くん、どっちかだけなんて思わない。 どっちも、なんだよ。今のわたしは特別欲張りだから。
あるのはわたしの感情で、正しさなんてどこにもない。
炭蔵くんの困惑顔が意外そうな表情に変わるから>>146、 わたしは炭蔵くんの眸を見て、わたしの気持ちを伝えた。 乃絵ちゃん>>132も言葉を重ねたみたい。]
(164) 2021/06/15(Tue) 12時半頃
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[わたしは乃絵ちゃんの方へ向き直った。
本当は、乃絵ちゃんにも同じこと言いたいよ。 怪我しないでって。 炭蔵くんと同じくらいヤだけど口を噤む。
ちなみにもう一人>>3:288の該当者については、 わたしたちの距離>>4:246が一定を保たれていたから 幸か不幸かわたしが気づくことはなかった。
閑話休題。 「どうして」って踏み込んだわたしの問いに答える 乃絵ちゃん>>136へ、わたしはゆっくり近づいていく。]
(165) 2021/06/15(Tue) 12時半頃
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すきだよ。
ちょっと気が弱くて、でもわたしたちのこと 何より大切にしようとしてくれるお父さんが、 わたしはすき。
[そして、ちょっぴり嫌い。 自分のこと、すぐ後回しにしちゃうから。 わたしの夢がいつかお父さんを殺してしまいそうで。]
(166) 2021/06/15(Tue) 12時半頃
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[お姉さんがいることは前から知っていて>>0:849、 お母さんのことも話を聞いたばかり>>4:524。 でもお父さんの話は、乃絵ちゃん、しなかったと思う。
でも、フツーでしょ。 わたしたちは高校生だ。小学生じゃない。 親の話をしないことは珍しくもなんともない>>0:240。]
……うん。
[乃絵ちゃんの話は炭蔵くんとわたしの間を伝う。 わたしはその間、いつもベンチでしていたみたいに 相槌を打ち続けた>>0:1058。]
(167) 2021/06/15(Tue) 12時半頃
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[お姉さんがいること以外に バレーや絵を描くことをやめたことも知っていた。 降り注ぐ雨粒で乃絵ちゃんの輪郭を捉えた気にもなった。
何にも、足りなかったね。
もう時間も残されていない校舎の果て。 口にすることを避けていた「どうして」が、 乃絵ちゃんの本当>>141>>143を教えてくれる。]
(168) 2021/06/15(Tue) 12時半頃
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[炭蔵くん>>146と乃絵ちゃん>>153の話は 揺らぎ>>134を見せながらも、そう簡単には交わらない。
わたしは二人の話を聞きながら記憶を辿っていた。 思い出すなら、言葉より声からの方がいい。 高さはどうだったかな。掠れ具合は? わたし、元気で楽しそうなのもいいと思うけど、 ゆったりしたテンポがよく似合うとも思ってるよ。
だから炭蔵くん>>149がわたしの表情を確かめるなら、 さっき>>103に比べて、ほんの少し柔らかかったはず。
わたしは人より少しだけ大きな手を、 乃絵ちゃんの手に添えようとした。 もし乃絵ちゃんが許してくれるなら、 わたしたちの手の中には涙味のクレープ>>142がある。]
(169) 2021/06/15(Tue) 12時半頃
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……文化祭、楽しかったなら嬉しいって。
[乃絵ちゃんが繰り返し口にする「手遅れ」って言葉。 謝ってばかり>>129>>135の乃絵ちゃん。
伝言は頼まれていない>>3:357。 だからこれは、わたしが力を貸してもらっているだけ。
ここにはもう、たった三人しかいないけれど、 最初からそうだった訳じゃない。 それなら、思いは人の数だけあるはずだ。]
(170) 2021/06/15(Tue) 12時半頃
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こんな世界作っちゃうくらい、楽しかったんだなあ。 ……向井くんがそう言ってた。 向井くんも文化祭、楽しかったからうれしいって。
でも、そういうのだけじゃダメなくらい 疲れちゃったなら、悲しいとも言ってた。
乃絵ちゃんはあんな目に遭わせちゃったって言うけど、 何も、悪いことばかりじゃなかったよ。
[いつもの帰り道じゃ、聞けなかった話>>2:261がある。 朝の気まずさ>>0:561を引きずり続けるだろうし、 あんなこと>>4:165言う機会だってきっとなかった。 約束>>4:386>>4:456を交わすこともなく、 終わっていくだけの月曜日もあっただろう。
何より、一度でもわたしが愛を口にできたのは>>4:383、 この場所がわたしたち以外いない、 思い出の詰まった校舎だったからだ。]
(171) 2021/06/15(Tue) 12時半頃
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いいことも、たくさんあった。 少なくともわたしはそう。きっとみんなも。
[優しいだけじゃなかったかもしれない。 わたしはマネキンになる感覚も知らない訳だし。 でも全員が何らかの意味を得たんじゃないかなって、 そう、信じたいだけかもしれないけど。
乃絵ちゃんはどんな顔をしていただろう。 もし乃絵ちゃんと目があったなら、 わたしはほのかに微笑んで見せた。 虚勢でも見栄でも、舞台の上では堂々とするものだ。
数歩離れる前に乃絵ちゃんの頭に手を伸ばす。 撫でることはできたかな。]
(172) 2021/06/15(Tue) 12時半頃
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……——ピアノ、聞きたいんだっけ。
[乃絵ちゃんから数歩離れたわたしは、 ピアノの蓋を持ち上げながら尋ねた。 乃絵ちゃんの最後の心残り>>135なんだって。
深紅の布を畳んで、引いた椅子に浅く腰掛けて、 ペダルとの距離を確認。わたしは背筋を伸ばした。]
——魔法、かけてあげる。
[夜、柊くんが来てくれて良かった。 誰か一人のために弾く喜びを教えてくれて良かった。
おかげで、指の震えを少しでも抑えることができたから。 わたしは乃絵ちゃんのために、わたしの音楽を奏でる。]
(173) 2021/06/15(Tue) 13時頃
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[本当はね、「上手くできないと思うけど」って 予防線を張りたかった。
でもわたし、 世界には、他が雑音に成り代わるようなすごい音楽が あるってことを伝えたかったから我慢したの。
最後の心残りを晴らすんじゃなくて、 また聞きたくなるような音楽を届けたかった。
わたしは炭蔵くんみたいにたくさんの言葉を知らないし、 我の強いわたしの性格は寄り添うことに向いてない。 炭蔵くん>>151は不器用だけど、わたしも大概だ。 残念ながら、ここに器用な人はいないんだよ。
わたしたちは、できることをやるしかない。
だから、わたしは乃絵ちゃんのためにピアノを弾こう。 わたしにはそれしかできない。 それだけは、できるから。]
(174) 2021/06/15(Tue) 13時頃
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[……できると、思ったんだけどなぁ。]
(175) 2021/06/15(Tue) 13時頃
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[激しくて、力強い曲だった。 それでいて雄大な大らかさもある。 難しい指遣いも多く、聞き応えもある長さ。
わたしがいくら愛を注いでも、 わたしの衰えた指はちっとも気持ちに応えてくれない。
当然だ。 これはお母さんが亡くなった頃に練習していた曲で、 随分前に弾けないと諦めてしまったものだから。
冷たい校舎の中、わたしの額を汗が伝う。 指がもつれた。メロディーが乱れた。腕が痺れてくる。 それでもわたし、一度も止まることなく弾き続けた。
完璧なんてどこにも見当たらない、 思いを叩きつけるような音色だった。]
(176) 2021/06/15(Tue) 13時頃
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[ごめん。 わたしの音、遠くの銀河まで走れないみたい>>4:175。
わたし自身が、そう思っちゃった。]
(177) 2021/06/15(Tue) 13時頃
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[数分に渡る演奏を終え、わたしは鍵盤から指を離す。 心臓がバクバクしていた。息も切れていた。 わたしは椅子に座ったまま、乃絵ちゃんを見上げる。]
……っ!
[——涙が、こぼれた。]
(178) 2021/06/15(Tue) 13時頃
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[どんなに泣きそうでもずっと堪えていたのに、 悔しくて、苦しくて、悲しくて、涙が溢れる。]
……ごめ、ん。 ちがうの、もっと……っ、わたし、
[魔法、なんて。あんなに見栄を張ったのにね。
乃絵ちゃんに別の世界>>4:426を見せられなくて悔しい。 もっとちゃんと弾けてたんだよ。嘘じゃない。
乃絵ちゃん>>157にすぐ反論できないことが苦しい。 そんなお父さん、こっちから捨てちゃえって思っても わたしだって子どもだ。解決策を持ってない。
乃絵ちゃん>>158が何もかも諦めていることが悲しい。 手遅れだって言う。帰れないって言う。なんで、]
(179) 2021/06/15(Tue) 13時頃
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[わたしは制服の袖でぐしぐしと目元を擦った。 わたしが泣いちゃダメだ。そう言い聞かせる。]
現実って、楽しいことばかりじゃないよね。
[ヤだな、声が震えてる。わたしは一度言葉を切った。]
死んだら、終わりなんだよ。
これからあるはずだったこと、思い出。 全部なくなっちゃう。
顔とか声とか、どんな話をしたとか、 そういうのも少しずつ、別のものに変わっていく。
(180) 2021/06/15(Tue) 13時頃
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[帰ったら、わたしはまた愛に口を閉ざすことになる。 自分のことよりわたしを優先しちゃうお父さん。 偉い大人の親戚だって、要らぬお節介はわたしのため。
わたしの物語に悪意はない。 ただ、首に真綿を柔く巻かれているだけ。
決して死ぬことできない息苦しさの中で、 それでもわたしは生きていく。]
(181) 2021/06/15(Tue) 13時頃
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わたしの力はちっぽけかもしれないけど、 炭蔵くんや鳩羽くんだっている。 他のみんなだって生きてる。
綿見さんとも話せたんでしょ。 ……お母さんだって、いる。
[乃絵ちゃん>>4:524曰く、立派なお母さん。 苺大福の話をしている時、ちょっぴり嬉しそうに見えた。 好きだったのかなって思う>>4:469。 夜食もそう。わたしの知らない夜に、わたしの知らない 乃絵ちゃんの楽しみ>>4:309があった。]
(182) 2021/06/15(Tue) 13時頃
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これからなんだから……だから、 ……友達のまま、生きてよ。
もっと教えてよ。巻き込んでよ。 言葉にして、伝えてよ。 でないと分かんないよ。
今話したこと、誰にも言ってないんじゃない。 ……できるなら、伝えようよ。
せめて、飲み込まないで、痛くしないで。 全部、わたしにぶつけていいから。
一蓮托生、でしょ。 わたしとなら、ワルイコトでもいいんでしょ。
(183) 2021/06/15(Tue) 13時頃
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[わたしは椅子を離れて、乃絵ちゃんの前に戻る。 ドーナツの穴を通さなくたって、 わたしの赤い目には乃絵ちゃんしか映っていない。
もう一度手を取ろうとしたけどどうかな。 疲労と不安で指が震え、ぺとぺともしたかもだけど、 蓄えた熱さで手を温めることくらいはできるかも。]
乃絵ちゃんは帰れないって言うけれど、 手遅れじゃないとしたら……どうしたいの。
わたしは、乃絵ちゃんの気持ちが知りたい。 ……教えて、くれる?
[理不尽であることも分かってて>>154、 お父さんが間違っているとも思ってて>>156、 それでもなお、どうしようもない>>157。
乃絵ちゃんが抱えているのは 簡単に解決できるものじゃないけれど、]
(184) 2021/06/15(Tue) 13時頃
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わたしは必要ないって言われても、 乃絵ちゃんの友達をやめる気、ないからね。
[名前で呼び合ったらともだち? きっと違うよね。
わたしが友達でいたいから、ともだち。
涙と汗でぐちゃぐちゃでも、指が震えていても、 全然出口が見つからなくても、不恰好でも。 わたしはいつもみたいに笑って見せた。]**
(185) 2021/06/15(Tue) 13時頃
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夜笑国 メイは、メモを貼った。
2021/06/15(Tue) 13時頃
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[ 暮石には悪いと思っている。>>161 母親がどうして亡くなったとか、 どんな夢を抱いていたのかなんて知っていたら。>>162 もう少しだけ、気を遣うよう努力したと思う。
それから生死の話。 暮石にとっては、自分でいられなくなること。>>1:528 それが、彼女の死なのだろうが、 暮石が自分でいられなくなる切欠を俺は知らない。 だから、余計に暮石に気を遣えなくて申し訳ない。
それから、黒沢も自分を棚に上げて言う。>>152 心を大切にする為に切ったとしても、 身体のことは大切にしていないじゃないか。 ]
(186) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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……分かった、善処する
[ 欲張りな暮石と、自分勝手な黒沢に謝罪しておこう。 ]
(187) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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[ 全てを曝け出した黒沢は>>154、 手遅れだと言う。>>153
俺はようやく黒沢と話したことを思い出し、 父親のことだったのかと気付く。>>0:1173 それに、黒沢は俺とは違う言えない¢、の人間だ。 内に秘めて、グレーゾーンを受け入れようとする。 黒沢は言ってくれるだろうという自負が、>>1:267 きっと俺の中の誤算だったのだろうな。
それに、父親への依存は、>>157 必ずしも黒沢だけではなかった。 俺だって、父親に依存して寄生して生きている。 父親の進行方向へ右へ倣えの生活だった。 それは同じな筈なのに。 ]
(188) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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[ 炭蔵家では父親の方が過ちを犯し、 それが俺の人生にとっての汚点だと思っていた。 でも、父に依存していた俺は切り捨てられなくて、 何もなかった時間に巻き戻したかったんだ。
……もう、本当に手遅れなんだろうか?>>158 ]
(189) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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[ 俺の言葉選びが下手なこと、よく知ってるだろう? 口説き文句だと勘違いされても別に構わなかった。 男女の仲など関係もなく、黒沢を信頼しているし 尊敬もしていて、人として好きだから。 俺が俺でいられるのも、こうやって俺を認めてくれる 黒沢がいるおかげでもあるんだ。>>159 ]
それはありがたいよ
[ 物腰柔らか仕様にもしもなれていたのなら、 両想いじゃないか、くらい言えただろうか。 ]
(190) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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[ そうして、暮石に視線を向けた時には、 彼女は少し表情が柔らかくなっていた。>>169 物腰柔らか仕様の返答は、暮石に任せよう。
多分、俺とは違う黒沢をずっとよく知っていて、 今も見えている世界が違うんだろうと、思う。
暮石が包むように掌を重ね、>>169 文化祭の思い出を語り出すのを静観していた。>>170
この世界に来てから、 確かに見ていて惨いこともあっただろう。 でも、この世界に来てからいいことはあった。>>172 俺もそうだ。鳩羽も同じ気持ちだろう。>>4:221 それに柊のことも知れたし、>>4:230 向井と本音で話せたのも、>>2:414 この世界に来れたから、この世界じゃなければ、 きっと俺は、知らないままのことが多かっただろう。 ]
(191) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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[ 頭に伸びた掌が、今度はピアノに向かう。>>173 暮石がピアノを得意とすることを知らなかった。 その音色を聞いたこともなかった。
魔法というにはあまりにも雄大で、>>176 お世辞にも完璧とは言い難い一曲だった。
しかし、音楽に詳しい訳ではないが、 技巧の高さだけでは乗せきれない思いが確かにあった。
一直線に黒沢に向かっていく、圧倒する何かが。 ]
(192) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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[ 鍵盤から指が離れ、暮石の眸に涙が溢れる。>>179
きっと、親を亡くした暮石にしか 分からない感覚なのだろうと思う。>>180 黒沢に向けた懇願のような言葉の数々を耳にして、 もう前髪で隠されていない俺の表情も、 ほんの少しもらい泣きしそうになっていただろう。 ]
(193) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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[ 俺も聞きたかったこと。>>184 仮説の話、───もしも手遅れじゃなかったら? ]
もしも、この世界が黒沢の最後のSOSなら 手遅れなんて言わせない、間に合わせてみせる
それに、少しくらいわがまま言ったって ここには誰も咎める人はいないだろ?
俺たちに気を遣う必要だってない 俺たちはいつだって対等な関係にあるんだ
[ 暮石のように、友達≠ニ俺の口からは 自信をもって言えなくてこんな言い回しになる。 ]
(194) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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俺もこのまま、黒沢を思い出にしたくない まだ黒沢の知らないところがたくさんあるんだ
でも黒沢は聡いから、このまま戻れても その先はどうして生きたらいいのかって悩むだろう
でも、俺も暮石も、 それに先に帰ったみんなもいる。 黒沢からのSOSはしっかりと受け取ったから、 もうひとりで悩まなくていいんだ
黒沢の生きる場所は俺たちに作らせてほしい
(195) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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[ 暮石みたいに顔を歪ませるようなことはないが、>>185 やっぱり泣きそうになっている顔は変わらない。
それから、今ぐらいは触れてもいいだろうか? 暮石には気兼ねなく触れられたけど、 やはり黒沢に対しては、許可を取りたくなってしまう。
叶うなら、そうだな。 ほとんど同じ高さにある頭くらい撫でさせてくれ。 **]
(196) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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[炭蔵くん>>196の手が乃絵ちゃんの頭に向かう。 わたしより背の高いふたりの顔を、わたしは見上げた。 目を細めたのは笑っていたからなんだけど、 眦にほっとした色が差したのは炭蔵くんを見てからだ。
炭蔵くんの言葉>>194>>195が、背中を押してくれる。
今でもやっぱり正しいとか間違っているとかは よく分からないことも多いんだけど、 炭蔵くんがいて、同じ方を向いているからこそ、 わたしは分からないままでも進めるんだと思った。
わたしが怖い時に頭を優しく叩いてくれるから、 前を向けない時に、背を撫で明日を教えてくれるから。 わたしがここにいるのは、炭蔵くんのおかげだ。]
(197) 2021/06/15(Tue) 19時頃
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[もしこの世界が炭蔵くん>>120の言う通りなら、 わたしたちはもう少しだけ頑張れるんじゃないかな。
わたしの話はどうにもぐちゃぐちゃだったけど、 大切なことは炭蔵くんが言葉にしてくれた。]
三人で、一緒に帰りたいな。
[わたしの話を炭蔵くん>>186が知らないことは当然で、 炭蔵くんとわたしが一対一で話す機会すら、 こんなことがなければありえなかったかも。 隣に並んで乃絵ちゃんに手を伸ばす姿を不思議に思う。]
(198) 2021/06/15(Tue) 19時頃
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ね。
[だから、謝らなくていいんだよ>>187。 わたしのわがままなんだから。
わたしが勝手に、炭蔵くんに親しみを持っちゃっただけ。 あなたが傷つくの、ヤだなって思っただけ。 今日限りでも、相棒になれたって信じたかっただけ。
今はまだ、そう返せはしなかったけれど、 誰にも見せなかった涙を二人にだけ明かして、 ほんの少し強がりと共にわたしはにこにこ笑った。]*
(199) 2021/06/15(Tue) 19時頃
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夜笑国 メイは、メモを貼った。
2021/06/15(Tue) 19時頃
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[ 芽衣が自分の手を大事にしてること、私は知ってた。 そんな芽衣にとって、自分で手首を切るなんて、 きっと考えられないことだろうと思う。 自分のことは棚に上げてたけど>>152 芽衣が炭蔵君に向ける言葉は、>>164 私にも刺さった。 何か言いたげな顔で、それでもこちらを向いた芽衣は 私には口を噤む。>>165 でも、目は口ほどにものを言ってて、 私は申し訳なくなって、ちょっと目を伏せた。
でも、炭蔵君には全力で自分を棚に上げる。>>186 心が壊れて死んじゃったら、 結果的に身体も駄目になっちゃうでしょ。 だから、あれは必要な犠牲だった。 まあ、最終的に私はこんなことになっちゃったから、 どうしようもないんだけど。 ここ笑うところだけど、笑えない? やっぱり私に冗談は言えないね ]
(200) 2021/06/15(Tue) 19時頃
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[ 私は冗談が言えないけど、 炭蔵君はもっと酷いと思う。>>190 冗談じゃなくて真面目にそう思ってるのが むしろ質が悪い。 これで愛想を身に着けたら人たらし間違いなしなので、 やっぱり炭蔵君はそのままでいいと思う。 物腰柔らか仕様は一生身に着けない方がいいよ。 勘違いに誘導する悪質さが身につくだけだから ]
(201) 2021/06/15(Tue) 19時頃
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[ 芽衣はお父さんが好きだって言った。>>166 芽衣が私のことを知らなかったように、 私も、芽衣の抱えているものを知らない。 だから、躊躇いなく好きだと言える芽衣のことが、 私はやっぱり羨ましい。
落ち着いて話そうと思ったのに、 やっぱり私は冷静にはなりきれなかった。 感情的な人間は、父が嫌うものだ。 いつも冷静に落ち着いているべきだって言われた。 ……父自身は、あんなに感情的な人なのにね ]
(202) 2021/06/15(Tue) 19時頃
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[ 涙がトッピングされちゃったクレープに、 芽衣の手が添えられる。>>170 顔を上げた私に、芽衣はこの世界から帰ったみんなの、 私の知らなかった話を教えてくれる>>171 ]
……文化祭、楽しかったの。
[ 伝えてもらった言葉に、私はそう返して、 でも、と首を横に振った ]
でも、写真、捨てられちゃった。 私にはいらないものだって。
[ データはもちろん残ってる。 でも、飾ってる写真を捨てられて、 私は思い出を汚されたと思った ]
(203) 2021/06/15(Tue) 19時頃
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文化祭そのものだけじゃなくて、準備から、全部。 みんなで作っていくの、楽しかった。 みんなで作り上げたから、楽しかった。 でも、私にそんな馴れ合いは必要ないって。
[ 一番大事だと思った思い出を否定されたの。 それが許せなかったから、 私はメールに残したんだと思う。 持っていたい思い出はそれだけ。 家族の思い出なんてない。そんなもの、いらない* ]
(204) 2021/06/15(Tue) 19時頃
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[ 私の知らなかったみんなの言葉を伝えてくれた芽衣は、 まるで私を力づけるみたいに笑って、 私の頭を撫でる。>>172 ため息が怖いって打ち明け話をしたあの時みたいに ]
うん。聴きたい。
[ ピアノに向かう芽衣に>>173 眼鏡を外して涙を拭ってから、私は頷いた。 ちょっとこすっちゃったから赤くなっちゃってたかも。
芽衣のピアノを聴くこと。私の最後の心残り。 それが、今叶う。 全部叶って、もう私、思い残すことなんかないかな。 ……そう、思ったのに ]
(205) 2021/06/15(Tue) 20時頃
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[ 芽衣がピアノの話をする時、 それって過去形だったと思う。 今でも芽衣は自分の手を大事にしてて、 それでも芽衣の語るピアノの話は過去だった。 だから私、聴いてみたいなって、言えなかった。
それなのに、芽衣の選んだ曲は明らかに難易度が高い。 私は音楽に詳しくない。それでも、 この曲がとても難しいことと、>>176 芽衣の指がそれについていけていないことには気づいた。 叩きつけられるような激しい音は、 そのまま芽衣の思いがこもっていた。
演奏を終えて、顔を上げた芽衣と目が合う。 その目から――――涙がこぼれた ]
(206) 2021/06/15(Tue) 20時頃
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なんで……なんで謝るの、芽衣。
[ 私は首を横に振る。 芽衣のピアノを聴いてみたい。それは最後の心残りで、 それを叶えてもらったっていうのに。 これで私、もう思い残すことなんて、ないはずなのに。
困ったな、って思う。だってわかっちゃうんだもの。 これは、芽衣にとって不本意な演奏で、 芽衣は、それが悔しいんだって。
心残りなんて、もう何もないはずなのに。 困る。とても困る。 芽衣の納得のいく演奏、聴きたくなっちゃうじゃない。 心残り、増えちゃうじゃない。 芽衣は魔法を見栄を張ったって思うかもしれないけど、 これは立派な魔法だよ。 でも……でも! ]
(207) 2021/06/15(Tue) 20時頃
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……私、ずっと死ぬつもりなんかなかったけど、 でも、死ねたら楽だろうなとは、ずっと思ってたんだよ。
[ 私、死ぬつもりなんてなかった。 それは、私には死ぬ勇気も覚悟もないと思ってたから。 生きたかったから、じゃない ]
死ねるのに。楽になれるのに。 このまま楽になっちゃ駄目?駄目なのかな? 私、もう頑張りたくない。 そんなわがままは言っちゃ駄目なの?
[ 手遅れなんて言わせないって炭蔵君が言う。 でも、わがまま言っていいなら、>>194 このまま死なせてって私はわがままを言いたい ]
(208) 2021/06/15(Tue) 20時頃
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綿見さんと、父は、違うよ。 綿見さんは、私を見てくれた。 それが嫌いって感情でもね。 だから私は綿見さんと仲良くなりたいって思ったの。 父は違う。あの人にとって私はお人形。 マネキンと話をしようなんて思わないでしょ。 母は、父には逆らえないよ。 姉が縁を切られた時だって、母は何も言えなかった。 ……お姉ちゃんは、妊娠してたのに。
[ 綿見さんと話せたって芽衣は励ましてくれるけど>>182 私は、綿見さんとは、なんとかなりたかったんだよ。 気づかないふりをしてた時だって、 これ以上嫌われたくなかったから、 そうしてたつもりだったの。 私は父と対話する勇気なんかないし、 そうしたいとも思えない ]
(209) 2021/06/15(Tue) 20時頃
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[ そう、私、ちゃんと綿見さんと話せたんだよ。 ちょっとだけ仲良くなれたの。 この結果はどうかな? 炭蔵君を失望させずに済んだかな?>>0:181 でも私、それでも父と話す気にはなれないの。 あの人は、人の話を聞かないから ]
(210) 2021/06/15(Tue) 20時頃
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[ 生きてって、>>183 思い出にしたくないって>>195 芽衣も、炭蔵君も言ってくれるけど ]
自殺して、死に損なったら悲惨って、 綿見さんだって言ってたよ。 私、身体中を滅茶苦茶に刺したの。 どうなってるのか、私にもわからない。
[ 特に左手首は何度も切った。 うっかり助かったとして……まともに動くかな? もう、無理なんじゃないかな ]
(211) 2021/06/15(Tue) 20時頃
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ねえ、それでも生きなきゃ駄目? 楽になっちゃいけない? [ 炭蔵君が頭を撫でてくれる。>>196 どうしたい?って芽衣が聞いてくれる。 一蓮托生の友達だって言ってくれる ] 現実は……怖いよ。
[ 楽しいことばかりじゃないその場所が、>>180 私は怖い。 終わる方がずっと楽。 楽に流されることは簡単で、 苦しい望みを認めることが、まだ私には難しい* ]
(212) 2021/06/15(Tue) 20時頃
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[ 綿見と話せたこと、 それが黒沢の出した結論で、 向き合う努力をしたことを知れれば、 失望なんてする筈もなかったよ。>>210
いや、どんな結果を選んでも、 失望するしないの資格もないんだが。 ]
(213) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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[ 三人で帰りたいと、暮石は言う。>>198 同意を求める言葉に、俺は頷いた。>>199
俺が此処にいられるのも、暮石のお陰だった。>>197 教室で動けないで居た俺を迎えに来てくれたのも、 こうして黒沢に近づくよう促してくれたのも、 俺が先延ばしにせず向き合えているのも。
俺にとっても暮石は、 今日限りだったとしても相棒だ。 同じ方向を向いている親しみを持った相棒だ。 ]
(214) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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[ でも、黒沢は───… まだ同じ方向を向いてはくれないらしい。>>212
ピアノの演奏を聴いていた黒沢は、 確かに揺れていたように思ったのに、>>207 黒沢の口から溢れでたのは、 楽になりたいというわがままだった。>>208 ]
(215) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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……俺だったら、生きようと思う けど、楽になることが悪いこととは思わない 人は誰しも、楽な方に流れるものだろ
これまで頑張ってきたんだもんな、黒沢は これ以上頑張れとも言えないよ
(216) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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でも、それでも、生きて欲しいと思う これは命令でもなくて俺の我儘でお願いだから もちろんこの手を振り払ってくれてもいい
ただ、黒沢が怖くなくなるまで 俺は絶対に手を離すつもりはない
[ そう言って、片手を差し伸べる。 手を取ってくれなかったら? 多分、俺の顔はようやく歪む。 *]
(217) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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[焦げた生地でできたクレープに涙とわたしの手を足して、 わたしは乃絵ちゃん>>203の話を聞く。]
みんなの話、もっと聞いておけばよかったな。
[そうしたら、もっと乃絵ちゃんへ 伝えられることがあったかもしれないのに。 写真が捨てられた話に、乃絵ちゃんの手を強く握る。]
(218) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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うん、……うん。 楽しかったよねぇ。
いらなくなんか、必要なくなんか、ないのにねぇ。 そういうことじゃ、ないのに、ねぇ。
[乃絵ちゃんの話を聞く度、あのメール>>1が鮮明になる。 逆らえない命令、一人じゃ生きられないこと。 教室にはわたしたちの思い出がたくさん飾られてたけど、 一番多かったのは、文化祭の写真だ。 わたしは廊下に並んだみんなの顔を思い出す。
乃絵ちゃんは、これ以上大切なものを奪われないように 死のうとしたんだなって分かったから>>143、 手を握る力はより強くなった。 わたしの短い爪は、それでも乃絵ちゃんを傷つけない。
わたしは笑った。お日様にはなれないけど、 あの文化祭の日、楽しかった時を取り戻すみたいに。]*
(219) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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[わたしの魔法はわたしに従ってくれなかった。 ボロボロで、ぐちゃぐちゃで、 せめて止まらないことで、曲としての形を辛うじて保つ。 もっとできると思ってたけど、それしかできなかった。
わたしは乃絵ちゃんに、 とっておきの心残りをあげたかったのに。
泣きたくなくても涙が止まらなくて、 乃絵ちゃん>>207の言葉にわたしも首を振る。]
(220) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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だ、って、もっとちゃんと、弾けたの。 でも、もう弾いちゃ ダメだ から、
わたし、 ぜんぜん、 ダメな、 の。
のえちゃんに、 きいてもらいた かった、な。 わた し、 の おんがく。
[声を発する度にしゃくりあげそうになるから、 わたしはとうとう言葉すらぐちゃぐちゃになった。 乃絵ちゃん>>208の言葉を一音たりとも 聞き逃したくなくて、わたしは息を止める。]
(221) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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[痛みは、乃絵ちゃんが生きていくために どうしても必要なものだったんだと思う。
だからわたしは口を噤み続けた>>200。 乃絵ちゃん>>211、身体中を刺したんだって。 絶対痛いのに、痛みで手を止めてもおかしくないのに、 それくらい、どうしようもなかったんだ。
乃絵ちゃんは死ねたらラクなんだって言う>>208。 生きるのは苦しいんだろう。辛いんだろう。 前のわたしなら、もう何も言えなかったかもしれない。
……でも、ね。 ラクと楽しいが別々で、必ずしもイコールじゃないこと、 わたしはもう、知っちゃったの。]
(222) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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[だから、たとえワルモノになったとしても、いいや。]
(223) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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——ダメ。
(224) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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[わたしは乃絵ちゃんの言葉>>212に、また首を横に振る。 重ねた手を片方外して、右ポケットに入れた。 大事なお守り。ひとみちゃんが渡してくれた、ぼたん。 ぎゅうって握り締めてから、わたしは口を開いた。]
綿見さんと仲良くなりたいのに、終わりなの。 話せただけでいいの?
これから、でしょう。 クレープ焦げちゃったんだよって、一緒に言おうよ。 教えてもらったら、今度は上手にできるかも。
[乃絵ちゃんが語る家族のこと>>209。 お姉さんの代用品だって話。 乃絵ちゃんの家族のことは、乃絵ちゃんが一番知ってる。
だからわたしが伝えられるのは、楽しかったって 言ってた文化祭、一緒にいたわたしたちのことだけ。
ポケットから手を出し、食べかけのクレープを示した。]
(225) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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現実は、楽しいことだけじゃない。 苦しくて、つらくて、どうしようもないこともあって。
だから、わたしここも結構すきだったよ。 永遠にいられるなら、それもいいかなって思うくらい。
[でもそんなことはありえない。 わたしはそれを理解しているから帰るの。
苦しくて、つらくて、どうしようもないこともある、 それでも大切なものがいっぱいある現実へ。]
(226) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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まだ、思い出にしないで。置いていかないで。 全然ラクじゃないかもしれないけど、 死んだら、楽しいことなくなっちゃうよ。
……乃絵ちゃんはそれでいいの。 思い出だけで、いいの。
わたしはヤだなぁ。 これからの未来に乃絵ちゃんがいないの、ヤだなぁ。
[わたしは乃絵ちゃんを包んでいたもう片方の手も離し、 手のひらを乃絵ちゃんへ向ける。]
(227) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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[わたしの手は、炭蔵くん>>217の隣に並んだ。 乃絵ちゃんへ二本の手が差し伸べられる。]
現実は、怖いだけ? 乃絵ちゃんの中に、もうそれしかない?
……一緒に、帰ろうよ。
[ぐるぐる回って、たどり着いたのは結局最初と同じ。 わたしはわたしの気持ちを押しつけただけかもしれない。
でもほんの少しでも同じ気持ちがあるのなら、 どうか、手を取ってほしい。
わたしはそう伝えて、ほのかに笑った。 乃絵ちゃんの願いを、選択を、答えを 待つ。]*
(228) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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[ 私が父に捨てられたもの。 捨てさせられそうになったもの。 ひとつひとつ拾い上げるみたいに、芽衣が頷いてくれる。 楽しかった。>>219 いらなくなんかなかった。 必要なくなんか、なかった。
そう、私は守りたかったの。奪われたくなかった。 自分の命を捨ててでも、守りたかった。 わかってくれて嬉しい。 芽衣はわかってくれる。友達は、わかってくれる。 私の大事なもの。必要なもの。 私に必要ないのは、むしろ ]
(229) 2021/06/15(Tue) 22時頃
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[ 芽衣は、私に心残りをあげたかったって言う。>>220 全然ダメって言う。>>221 そんなことない。全然ないよ。 むしろ私、芽衣の納得のいく演奏を聴いてたら、 心残り、なくなっちゃってた。 でも、芽衣は自分の演奏に納得がいってなくて、 聴いてもらいたかったって、言うから。 ……そっちの方が心残りになっちゃう。 でも、そんな迂闊な、2人を期待させるようなこと、 言えなくて。 私はそんなことないよ、って 首を横に振ることしかできなくて ]
(230) 2021/06/15(Tue) 22時頃
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[ そして、私の投げつけた質問に、>>212 真逆の答えが返ってくる ]
(231) 2021/06/15(Tue) 22時頃
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[ 炭蔵君の返事に、私は笑った。>>216 きっと涙目で、目じりは赤いけど、笑っちゃう。 ああそうだったなって思う。 自分ならこうする、ってはっきり言うけど、 私の選択を否定しない。 炭蔵君は、公平な人だった。>>0:650 そうだった。私、そのことを知ってた。 こんな時でも炭蔵君は変わらない。
変わらないなって思ったのに、 炭蔵君の話はそこで終わらなかった。>>217 命令じゃなくて、わがままで、お願い。 父に命令されるばかりだった私に、 炭蔵君は命令しない ]
……炭蔵君がわがままを言うなんて、意外。
(232) 2021/06/15(Tue) 22時頃
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[ 芽衣の答えに、私は笑った。>>224 これ以上なくシンプルに言い切られちゃった。 シンプルだったけど、芽衣がその二文字を口にするのに、 決意が必要だったこと、知ってるよ。 だって、友達だもの。わかるよ。 今までずっと私を否定せずに受け止めてくれた芽衣が、 私に突き付けた初めてのNOだもの。
まだちょっと歩み寄れただけの綿見さん。>>225 59点のクレープ。 辛いだけじゃないかもしれないこれからの未来。>>227 芽衣は一生懸命、私に心残りを積み上げようとする。 私の中に、もうそれしかない?>>228 ]
(233) 2021/06/15(Tue) 22時頃
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……わたし。 私、は、
[ 父に何か諦めさせられるたび、 私の中が空っぽになっていく気がした。 私の中に、まだ何か残ってる? ]
私、は、自由になりたい。 もう、父に雁字搦めにされるのは嫌。 見限られるかもしれないって怯えるのも嫌。 私は、……捨てられる前に、捨てたい。
[ 私が本当に捨てたかったのは、自分の命じゃない。 父による支配だった。 恩知らずと言われようと、私は、あの人と、 もう家族でいたくない ]
(234) 2021/06/15(Tue) 22時頃
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芽衣のピアノが聞きたい。 みんなと一緒にいたい。 みんなともっと仲良くなりたい。 みんなと、これからも、思い出が作りたい。
[ 私、もう空っぽだと思ったのに。 ひとつわがままが出てきたら、もう止まらなかった。 ぼろぼろ、涙と一緒にわがままが止まらない ]
みんなの未来の中に、私もいたい……。
(235) 2021/06/15(Tue) 22時頃
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[ 差し出された手は二本で、>>228 私の手も二本しかない。 左手を差し出すのは、特に勇気がいった。 そして右手にはクレープが握られたまま。 ここで格好よく両手を差し出せたらよかったんだけど、 やっぱり私、格好つけられないみたい。 だから私、ちょっと待ってね、って二人を待たせて、 べそべそ泣きながら涙トッピングのクレープを食べた ]
……私のわがまま、全部叶えてくれるって、約束して。 そしたら、帰る。
[ 少しくらいって炭蔵君は言ったけど、>>194 なにしろ私、生死の境をさまよってるんだよ? 少しくらいなんかじゃ気が済まない。 うんとわがままを言うけど、それでも叶えてくれる? 約束してくれるなら、私、2人の手を取ってあげる* ]
(236) 2021/06/15(Tue) 22時頃
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[乃絵ちゃんの質問>>231に、 わたしたちはわたしたちなりの答えを出した。]
(237) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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[炭蔵くんのわがままとわたしが積み上げる心残りが、 乃絵ちゃんの中に届いたのかな。 乃絵ちゃん>>232>>233はわたしたちの答えに笑った。
さっきあんなに首を振っていたのに>>230 もしかしてって期待しちゃいそうになる気持ちを堪えて、 わたしは手の差し出し続ける。]
(238) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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……うん。
[乃絵ちゃんが願いを口にした。 最初はいらないモノのこと>>234。 次に欲しいモノのこと>>235。
後者の話を聞いた時、わたし、指先が震えちゃった。
夢じゃないかな。 わたしが言って欲しいって思ったこと、 聞こえてるだけじゃないかな。
でも乃絵ちゃんの目からはぼろぼろと涙が溢れていて、 わたしは鼻を啜りながら笑った。 今度は強がりなんかじゃない、本当の笑顔だった。]
(239) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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[乃絵ちゃんはちょっと待ってねってクレープを食べる。 わたしはわたしたちの手を見て、炭蔵くんの顔を見て、 それから乃絵ちゃんを見て、からりと笑った。 何だか、ちょっと力が抜けちゃったね。
——わたしたちはみんな、二本の腕を持っている。
涙味のクレープがなくなるまで待って改めて。 わたしたちは、真正面から向き合った。]
……全然上手じゃないけど、いい?
[わたし、嘘つくのあんまり気にしないんだけど、 今だけは何の嘘も紛れ込ませたくなかったから、 乃絵ちゃんにひとつだけ尋ねた。 願い事には、わたしのピアノが含まれている。]
(240) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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絶対叶えるよ。約束する。
一緒にいよう。思い出作ろう。 ピアノも弾く……いつか、いつか。 ……ううん、未来のことは分かんないけど。 わたし、がんばるから、
乃絵ちゃんも、そこにいてほしい。
[わたしは差し出した手をもっと前に伸ばす。 いつの間にかわたしの目からは涙が消えていた。]
(241) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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[わたしは、わたしの宝物で、友達を迎えに行く。]*
(242) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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[ 俺が言いたいことを、 あの日黒沢がピーマンに例えて説明してくれたように 暮石がかみ砕いて 言葉にしてくれるのを聞いていた。>>227
もしも、黒沢の中が空っぽのように感じているのなら 暮石が心残りをひとつ積み上げたように 俺たちが黒沢の中を埋めてあげたいと思う。 ]
俺も、わがままを言ってみたかったんだよ 人生ではじめてのわがままをここで使うとはな
(243) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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[ 黒沢のひとつ目の願いは、>>234 俺も先延ばしにしてきたことだったから、 どこまで力になれるのか自信はないが。
二つ目の願いは、>>235 俺でも叶えられそうな内容だった。 ]
(244) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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[ べそべそとクレープを食べる姿が、少し可笑しくて ちゃんと食べ終わるのを待っていた。>>236
それから、黒沢がわがままを言う。 ]
分かった、約束しよう 絶対に叶えてみせる …俺のできる範囲にはなるが、善処しよう
俺の未来にも、黒沢が居て欲しい
[ 今回だけ、特別だからな。 わがままを全部、叶えてやろう。 だから、右手でも左手でもどっちでもいいから、 この手を取って欲しいと思う。
二本の腕は、手を取られるのを待っている。>>228 *]
(245) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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[ 私のわがままを全部叶えて。>>236 傲慢な私の要求に、 芽衣は上手じゃないけど、って言う。>>240 芽衣は、自分の手を大事にしてた。 芽衣は、ピアノを弾いた後、悔しくて泣いてた。 芽衣は、自分のピアノにきっとプライドを持ってる ]
私は、芽衣のピアノだから、聴きたいの。
[ 上手なピアノが聞きたいんじゃないの。 悔しくて泣いた芽衣の、納得のいくピアノが聞きたいの。 大丈夫、芽衣が自分の演奏に満足できる日が来ても、 もう私、心残りがなくなったって言ったりしないから ]
(246) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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いつか、遠い未来でもいいよ。 少なくともそれまでは、 ずっと一緒にいてくれるってことでしょ?
[ 芽衣が、自分で納得のいく、聴かせたいって思える ピアノが弾けるようになるいつか。>>241 ずっと、とかいつまでも、なんて言うのは 私にはまだ難しくて「それまでは」なんて言っちゃう。 言い慣れない私のわがままは、 まだまだ付け焼刃なのかもしれない ]
(247) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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[ 意外だと思った炭蔵君のわがままは、>>243 珍しいどころか人生初なんだって ]
初めてをこんなところで使っちゃっていいの? そんな貴重なの、 叶えてあげないとばちが当たっちゃうね。
[ 炭蔵君の初めて、私がもらっちゃうね。 誤解を招く表現?知りません ]
(248) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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[ 絶対叶えるって言った後、>>245 善処するって言い直す炭蔵君は、 とっても正直者だと思う。 その正直さに免じて、死ぬのは諦めてあげる ]
(249) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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[ 私は差し出されたふたつの手を取って、ぎゅっと握る* ]
(250) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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[乃絵ちゃんの控えめなわがまま>>247にわたしは笑う。]
それまでしか一緒にいてくれないの?
[なんて、ちょっと意地悪。 わたしのピアノを望んでくれた乃絵ちゃん>>246に、 それまでなんてある訳ないのにね。]
ずっと一緒にいたいってことだよ。
[約束じゃなくて、わたしがそうしたいから。 乃絵ちゃんに伝えて、わたしは乃絵ちゃんの手を引く。 そうしたら、乃絵ちゃんのもう片方の手を取った 炭蔵くん>>245にもその力が伝わるかな。 わたしは、校舎の果てから出ようと促した。]
(251) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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[音楽室の中、 わたしは手を繋いだ乃絵ちゃんを見上げる。 少し身体を傾けたら、向こうに炭蔵くんも見えた。]
乃絵ちゃん。
[わたしは大切な友達の名前を呼ぶ。 一緒に帰ろう。明日へ進もう。 そのために、まずはどこへ向かおうか。 道のりは分からないけれど、ひとつだけ確かなのは、 わたしが乃絵ちゃんの手をもう離さないことだけ。]*
(252) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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夜笑国 メイは、メモを貼った。
2021/06/15(Tue) 23時半頃
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[ 握られた手を、強く握り返した。>>250 ]
(253) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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[ 俺のはじめてを貰った責任は、 ちゃんと取ってもらわないと困る。>>249 だから、俺のわがままが叶うまでは 黒沢から目が離せない。
ところで、俺たちも帰る為には、 これまでの法則からすれば、 マネキンになる必要があるんだろうか?
……それとも、この世界の主が、 帰ると決めたのであれば、 もう少し違う帰り方があるんだろうか? ]
(254) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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[ そうだ、それから。 ]
帰る前に、言っておきたいわがままはあるか?
[ 現実世界の黒沢がどうなっているのか、 それを俺たちはまだ知らないけれど、 きっとすぐには会えないかもしれないから。
今、こうして話せるうちに聞いておきたい。 ]
(255) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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[ どうやって帰るのかは、黒沢次第。 ただ、この世界から帰る直前に呟くだろう。 ]
───… ありがとな
[ この世界に招待してくれて。 特別だと、思ってくれて。
反対側の腕が暮石の方に引かれれば、>>251 俺の腕も同じように引っ張られる。 黒沢へ視線を向ければ、向こうに暮石が見える。>>252
時の止まった冷たい校舎から、 みんなの待つ明日≠ヨ向かおう。* ]
(256) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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[ 「それまでは」って言った私に、>>247 「それまでしか」って芽衣は返した。>>251 私にはまだ難しいことを、 芽衣は軽々と飛び越えてしまう。 だから私はうんって頷いた ]
うん。「それまでは」は、取り消し。
[ 私にはもうないって思った未来が、 遠く広がっていく気がした。 やっぱり、まだ怖い。 足が竦みそうになるような、そんな気持ちもある。 でも、私の両手を握るふたつの手が温かいから、 私、歩けるよ。 名前を呼ぶ芽衣の声に促されて、>>252 私、もう一度頷いた ]
(257) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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帰ろ。昇降口から、出られるから。
[ もう、この校舎は誰も閉じ込めない。 だから私たちは手を繋いだまま、 昇降口からきっと帰れる。
先に帰ったみんなは、あんな目に遭ったのにね。 この仕様、本当に酷いよね。 でも、みんなは無事に帰れたけど、 私は帰ったら瀕死だから、 それに免じて許してくれないかな。 ここ笑うところなんだけど、やっぱり笑えない? 帰ったら私、冗談のセンスも磨くね ]
(258) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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[ 帰る前に言っておきたいわがままは?>>255 炭蔵君に促されて、 私、きょとんと目を見開いた。 そうだ、私、わがまま言い放題の権利を手に入れたのに、 やっぱり言い慣れてない。 そうだなあ、って考えて、決めた ]
お見舞いに来てもらえるようになったら、 私が退屈しないように、会いに来てね。 それで……、
[ 私の目線、ちょっと上を向いた。 正確には、炭蔵君の前髪を留めてるヘアピンを見た ]
(259) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
|
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それまでに、前髪切ってきて。 現実でも炭蔵君の顔、ちゃんと見たいから。
[ さて、私のこのわがままは、 炭蔵君の難易度的にはどれくらいなのかな? お見舞いに来てくれるまでに、 わがまま他に一杯用意しておくね ]
(260) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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[ 音楽室は3階の一番奥。昇降口からだいぶ遠い。 廊下を歩いて、階段を下りて、 私たちは明日を目指す。
廊下には、文化祭の写真。 横切る教室は、お化け屋敷に喫茶店、 楽しかったあの日の思い出がここにある。 そして、ここに来て増えた思い出も ]
(261) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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[ 自己責任の一蓮托生59点クレープは、>>4:504 まだ食堂の冷蔵庫に残ってる。 責任を持って食べようねって言ったけど、>>4:523 食べる時間はどうやらなさそう。 私と芽衣のワルイコトは、 文化祭の思い出と一緒にここにいつまでも残る。 思い出がひとつ増えたということにして、 許してもらおう ]
(262) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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[ 昇降口の扉は、嘘みたいに簡単に開く。 そこから外へ足を踏み出すのは、 やっぱり少し足が震えるけど。 私、笑って2人に言うよ ]
(263) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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来てくれてありがとう。 また、明日ね。*
(264) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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炭蔵君は不器用な人だと思ってたけど、 私、少し認識を改めた。 私、炭蔵君は天然だと思う。天然な上に人たらしでしょ。 綿見さん、本当の天然は私じゃなくてここにいるよ! 怖くなくなるまで手を離さないって、>>217 そんな安請け合いしていいのかな。 私、一生怖いままかもしれないのに。 委員長ってそこまで責任取らなきゃいけないものなの? 絶対違うと思うんだけど。 でも、炭蔵君のわがまま、嬉しかった。 炭蔵君の言う通り、この校舎は私のSOSだったよ。 助けに来てくれてありがとう。
(*2) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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ずっと何も言えずに、何も聞かずにいた私たち。 それでもその関係は心地よくて、私たちは友達だった。 でも、この校舎で、 私はずいぶん芽衣にいろんなこと喋っちゃったから、 今度は芽衣の番だと思う。 芽衣が私を助けてくれたみたいに、 私にも芽衣が助けられるかな? 芽衣のピアノも聴きたいけど、芽衣の話も私は聞きたい。 これからも、私と芽衣は友達だから。 59点じゃないクレープも作ろう。 でも私、59点のクレープも悪くなかったよ。 芽衣とワルイコトするの、楽しかったもの。
(*3) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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