14 冷たい校舎村10
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[冷たい校舎。静かな場所。 私の願いの集積点。
で、あるならば、完全に壊れてしまう前に、 みんなのことをかえすことも問題なくできるだろう。 ブラックホールなんかじゃないし。>>19
動かない車椅子に身を預け、 手を貸されることを断った不知火ちゃんにも等しく。>>18 夜に消えることなく、黎明を迎える。
……が、 和歌奈は己の悪癖をいかんなく発揮してしまった。 それは屋上での出来事の意趣返しめいていた]
(48) Akatsuki-sm 2021/11/16(Tue) 22時頃
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ちゃんと帰れるかどうかは分からないよ。 なんせ、……えーと、うん。 車椅子のバッテリーが切れちゃうっていうの、 私にも予想がつかなかったもん。 これは、うん、私の知らないことが起こってるわ。
変にこの世界にとどまってたら、 それこそもっと予想がつかないことが起こったりして……。
[ふと、 ……屋上で不知火真梛に言ったこと>>4:131を今さらまざまざ思い浮かべる。
自分に優しくするやり方、か。 ……でも、それを教えてあげられるのは私じゃない。 そう、間違いなく。
古香ちゃんがちゃんと抵抗してくれてるのは、 私としては頼もしく映る。>>29>>30>>31]
(49) Akatsuki-sm 2021/11/16(Tue) 22時頃
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[だから私は私の言葉を並べる他ない]
それに、私はかえってく時に、 不知火ちゃんが隣にいないのは、 困るっていうか嫌、っていうか……。
[ただのわがままだ。 だから最終的には君の好きにさせてしまうだろうと思いつつ。 締まりのない片手をひらひらと振った。 世界の終焉を振り返り際に見るちょっと前のことだった*]
(50) Akatsuki-sm 2021/11/16(Tue) 22時頃
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[―――その、「大丈夫」は。>>56 私からすれば確かにそう、なんだけど、 それはそれで……とか思ってたんだけど、 まさか疑問を示されるとは思わなかったわけで。
まっすぐ向けられたふたつの黒い瞳を前に、>>58 「えっ」って感じで瞳を見開くことをどうしても避けられなかった。
このくらい言えば分かるかなって、 なんとなく思ってたんだけど]
(82) Akatsuki-sm 2021/11/17(Wed) 02時頃
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…………大切だからだよ。 私にとってクラスメイトで、友達ってだけじゃなくて。 とにかく。す、……好きってこと!
[どれだけ言えば伝わるかなあ……なんてことを考えてるうちに、 結局こういう風に言っていた。 不知火ちゃんの瞳を見返すことはできたけど、 長くは続かずに、また交わらなくなってしまう]
(83) Akatsuki-sm 2021/11/17(Wed) 02時頃
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荒木くん……、気持ちは嬉しいよ。
[着ぐるみから聞こえた言葉は、>>78 視線を巡らせる先があるという意味ではありがたいが、 肝心の表情はちょっとしょぼくれたものだった。 だけどやがて、諦めたようにゆるゆる首を振った。 何せ彼までここに残る、となると、 力ずくでどうにかするのも難しい]
わかった。わかったよ。 ちゃんとかえれるようにするから。 君たちにその気があるなら。ちゃんと。
[ふう、と気が抜けたような息を吐いた。 最初からこう言っておけばよかったかもね。 でも、深刻に間違った、っていう気にはならなかった**]
(84) Akatsuki-sm 2021/11/17(Wed) 02時半頃
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[誰のもとにも、 夜明けは等しく訪れる]
(122) Akatsuki-sm 2021/11/17(Wed) 22時半頃
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―― 目覚めの時間 ――
[白い……白い景色を見た。 それは朝の陽光に照らされる積もった雪ではなく、 どこかの部屋の天井だった。
眩しいなあ、って思いながら瞬きを繰り返す。 頭は依然としてぼんやりしているし、視界もぼんやりしている。 後者の原因はなんとなくわかる。 眼鏡をしてないからだ。 おかしいな、ちょっと前まではちゃんと、かけてたはずだ。 ……ちょっと前? 今はいつなんだ? そうしてここは……]
(123) Akatsuki-sm 2021/11/17(Wed) 22時半頃
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[和歌奈、と女の人の声が私を呼んだ。 しかもだいぶ泣きそうな、でも嬉しそうな感じだ。 声の主はちゃんと分かる。レイナさんだ。 横たわる私からは見えないところに、妹もいるみたい。声がしている。
ベッドのそばに駆け寄ってきたレイナさんは、 状況を懇切丁寧に説明してくれた。 望月高校の校舎の近くで血だらけで倒れてるのが見つかって、 数時間前まで手術をしていたこと。 手術中、クラスメイトが何人も駆けつけてくれたこと。 みんな、手術が無事に終わったのを喜んでくれたこと。 父は寝ずに見守ってくれてて、 今は飲み物を買いに行っていること]
(124) Akatsuki-sm 2021/11/17(Wed) 22時半頃
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[やがてレイナさんは、父を呼びに行ってくると言って出ていった。 一刻も早くこの良いニュースを伝えたいらしい]
……そっかあ。
[小さくため息を吐いた。 急に情けない気持ちになってくる。 分かってる。私はまた父を苦しめてしまう]
(125) Akatsuki-sm 2021/11/17(Wed) 22時半頃
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[父は……ひとことでいうと責任感の強い人だった。 家族が離婚に至った時も、 仕事に追われ家庭を顧みてなかったから妻も不倫をしてしまったと、 私に向かって謝ったのを、ぼんやり覚えている。
またそういうことをしてほしくはない。 ていうか思いっきり叱ってほしい]
(126) Akatsuki-sm 2021/11/17(Wed) 22時半頃
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[筋道立てて物事を考えられたのはそこまでで、 急にぐちゃぐちゃになった感情が涙として溢れてきた。
病室に残ってた妹が近付いてきて、 「いたいの?」って訊いてくる。 そうかもしれない。身体じゃなくて、ココロがさ。 でも応えるのをためらっていると、 妹は頭を撫でてくれた。 ぐちゃぐちゃになったココロをかき集めてくれるみたいに。
それだけでもちょっと救われた気になっちゃって、 つまりはかえってきてよかったって強く思えた。
そうこうしているうちに誰かが駆け込む足音がして、 その正体は案の定父で(後ろに看護師さんとかレイナさんもいた)、 それから父に思いっきり怒鳴られた]
(127) Akatsuki-sm 2021/11/17(Wed) 22時半頃
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[でも、最後にちゃんと、生きててくれてよかったって言ってくれた]
…………そっかあ。
[心は父に抱きつきたい気持ちでいっぱいだ。 だけどぐちゃぐちゃになりかけた身体はちょっと右手を動かすので精一杯。 あの校舎(せかい)にいた時は自由だった。 想いを伝えるのに、 言葉だけじゃない手段も使えたりして。>>116
……元気になりたいなあ。 そう思う私は確かに生きていて、 いつかココロに来る春を夢見ている*]
(128) Akatsuki-sm 2021/11/17(Wed) 22時半頃
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[「誰がお姉ちゃんだっての」>>130
河合和歌奈はそこまでツッコミ気質ではないため、 そんなことは逆立ちしても言わなかった。
……でも、あの面々の中でお姉ちゃんをやってるのが私だけって、 荒木君に指摘されて気付いた時には、>>75 ちょっとすごいなって思った和歌奈であった。
それはさておき]
(138) Akatsuki-sm 2021/11/18(Thu) 01時半頃
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―― お見舞い・古香路子の場合 ――
[目覚めてから何日も経って、 面会も許可されるようになる頃には、 ベッドから起き上がって本を読むくらい、造作もなくなっていた。 眼鏡は飛び降りた時に壊れてしまったので、 去年まで使ってた先代のやつを代わりに使っている。 取っておいてよかったというべきだ。
とはいえ自由に歩き回る方はまだだめだ。 松葉杖をついて歩けるようになるには、 もう少しかかる見込み]
(139) Akatsuki-sm 2021/11/18(Thu) 01時半頃
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[ともあれ古香路子が紙袋片手にお見舞いに来た時、>>45 読んでいた本をパタンと閉じて、 (ちなみにお気に入りの天体の写真集だ) ひらひらと手を振って迎えた]
ふふ、来てくれて嬉しいよー。 古香ちゃんったら太っ腹だねえ。
[はて、ドーナツの紙袋の他にもうひとつ持ってるのはなんだろう。 さりげなく視線を送っていたが、 やがて降ってきた言葉に、ああ、と納得の頷き]
飯尾先生も手厚いなあ……。 最近様子どう? 白髪とか、眉間の皴が増えてたりしない? って、私の方が質問されてるんだった。
(140) Akatsuki-sm 2021/11/18(Thu) 01時半頃
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[受験の方はだいたい大丈夫だけど、>>46 塾の資料の横流しは普通にありがたいなあ。 そんな風に答えながら和歌奈は、 奇妙に心がそわそわしているのを感じていた。
訊きたいことがあるならいつでもいいよ、 と言いたいけど、微妙に心の準備がしきれてない。 そういう気分が一番近いだろうか。
あの校舎(せかい)で、誰にも触れさせたくはなかったココロの奥を見せてしまったこと、 今さら後悔しない。 その気持ちがあるなら、君やみんなの方を真っ直ぐ向いていられる。 そう思ってはいるんだけどさ]
(141) Akatsuki-sm 2021/11/18(Thu) 01時半頃
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はぐ。
[などと内心シリアスしていたらこの様相である。>>47 やっぱり不意打ちには弱い]
どうしたのさ急にー。 今さら不知火ちゃんが羨ましくなったー?
[かえる前に体育倉庫でハグした件のことだね]
別に構わないけど……、
[軽く笑いながら手を広げる。
―――この、決してあったかくはない体温を分け合うこと。 それは和歌奈にとって、ただ思いを言葉にすることよりもずっと簡単だ。 ただ、言葉でないと伝えきれないものもあって]
(142) Akatsuki-sm 2021/11/18(Thu) 01時半頃
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そうだ。私からもひとつ。
今日から君のこと、 路子ちゃん、って呼んでもいいかな。
[例えばこういうのである。 君はいったいどんな顔をしたんだろうね**]
(143) Akatsuki-sm 2021/11/18(Thu) 02時頃
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―― お見舞い・夏見七星の場合 ――
やあ夏見ちゃん。 私は元気だよ。
[夏見七星が来た時にも、 穏やかに笑って迎える私だった。>>98 やがてはお見舞いの品、といって置かれた箱をまじまじと眺めることになる。
贈り物の箱って、 開ける前に中身を確認したくならない? 送り主に「ねえこれ何が入ってるの?」って訊いて。 私はたまになる。 そうして時と場合によって我慢したりしなかったりする。 誕生日プレゼントの箱を前にした時が、 一番我慢しなきゃいけないパターンだ]
(173) Akatsuki-sm 2021/11/18(Thu) 22時半頃
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[今は……まさにちょっと我慢したパターン]
わ、ありがとう。 ……開けていい?
[許可をもらえたなら、 包み紙をべりっとするために手を動かす。 彼女なら平気で中身をばらしてくれそう―― と思わなくもなかったけど、結局やめた。 箱も小さいし開けちゃった方が早いでしょ]
(174) Akatsuki-sm 2021/11/18(Thu) 22時半頃
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……、 あっかわいい! ありがとう!
[こんなカタチをした代物には見覚えがある。>>99 修学旅行の二日目くらいの朝食の時に、 ゆで卵が置かれてたやつに似ている。 確かに卵をすんなり置けそうなサイズをしてるし、 そのまま置いといてもインテリアとして使えそうだ。
……置けるのは本物の卵だけ、だけど]
(175) Akatsuki-sm 2021/11/18(Thu) 22時半頃
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[いつの間に夏見ちゃん、その辺にあった椅子に座ってたから、 気がつけば目線はとっても同じになっていた。 真っ直ぐと視線がかち合った状態で、言葉を交わす>>100]
そっか。割っちゃったんだ。 私も、……夏見ちゃんがかえった後に、 白い卵を踏んづけちゃって。 そうしたらさ、……わかっちゃったんだ。 あの校舎が、大事な思い出を卵の中に閉じ込めたかった私の世界だってこと。 ……まあ、みんな割合かえっていっちゃったんだけど。
[踏んづけた卵の中から、 妹が大事にしてたぬいぐるみの耳が出てきた。 というのが直接的なきっかけなんだけど、 話せば長いし。これで間違ってもいない]
(176) Akatsuki-sm 2021/11/18(Thu) 22時半頃
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だから、………今なら言えるんだけど。 私の、世界の中に転がってた卵は、 私に関わった誰かのココロ、みたいなもので、 夏見ちゃんのココロから生まれたみたいなやつもあったかもね……。
[夏見ちゃんも何かの声を聞いたのかな。 夏見ちゃんのココロの中にずっと巣食ってた声を。
思い出させてしまったならそれはやっぱり私の咎だ。 あるいは、進路の話をした時には手をかけなかった君のココロを、 私は間接的に転がしてしまったのかも。 たとえ“うっかり転がした”で流せる範囲で済んだとしても]
(177) Akatsuki-sm 2021/11/18(Thu) 22時半頃
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[だからこそ、君の言葉はあまりに優しい。 うん、優しすぎる。 さらにいうなら鎮静剤じみてもいる。
うまく言えないけど、って言葉を置いてたけど、 要するにさ、ひとりにする気なんかないんでしょ。 しっかりみんなも巻き込んでるし。
放っておいて、なんて言えるわけもなかった。 何せ、私は飛び降りる前とは違って、 私を友だちと呼んでくれるひとを、 ちゃんと名前で呼びたいと思った私だ]
(178) Akatsuki-sm 2021/11/18(Thu) 22時半頃
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…………、 わかんない。いつかなるかもしれない。
[私は生きる限り、いろんな人と関わって、 その度に、誰かのココロを転がして割ってしまう方に舵を向けるかもしれない。 それをやっちゃって、またひとりになりたくなる前に、 ……つまりはあんまりにも死にたくなる前に、>>101 みんなの顔を思い浮かべて、思いとどまれればいいんだけど。 いや勿論なんとかなりたいけど。
結局、最悪に備える的な感じで考えを巡らせている]
でも、ひとりになろうって思う前に、 後ろを振り向くことはできる。 そんな私のこと、夏見ちゃんはさ、 追っかけてくれるかなあ……。
(179) Akatsuki-sm 2021/11/18(Thu) 22時半頃
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[卵を割っちゃってから悔やんでも、もう遅い。 それは十分すぎるくらいわかってる。
君もエッグスタンドになってくれるのなら。 私はとっても嬉しい。 みんなを巻き込んでおいて君だけほっとく気にもなれないし。
なんて言わないけど、 感情の赴くままにへにゃっとした笑みを浮かべていた*]
(180) Akatsuki-sm 2021/11/18(Thu) 22時半頃
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―― お見舞い・古香路子の場合/つづき ――
[傍から見れば薄情な話だろうけど、>>166 飯尾先生に白髪が増えようがお腹周りを気にしだそうが、 実はそんなに心配してないわけで。 加齢には勝てないしね。
お仕事ほんとにご苦労様です。 そう応えて紙袋を受け取った。 甘い香りが僅かに漂ってくる。 ちょっとだけ袋の口を開けて中身を見たら……いろいろあるね。 誘惑にはいい感じに耐えることができた]
(222) Akatsuki-sm 2021/11/19(Fri) 22時頃
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[ぎゅうっとハグされる前でも最中でも後でもいい、 君がわんわん泣いちゃってたら、>>168 とってもあたふたしてただろう。 そんなことにはならなかったけど。
妬いちゃったのかもか、そっかあ。>>167 ……それは不知火ちゃんには内緒にするよ]
む……、 泣いても別に気にしないよ。
[みんなはどうだかわからないけど、私はそう。 とはいえこういうのは泣いちゃうかもしれない路子ちゃんのココロの問題かなあ。 私だって、泣いてるところ、 もう一回見られたくないなあ、って思うし……]
(223) Akatsuki-sm 2021/11/19(Fri) 22時頃
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[ともあれ、満足げに笑ってた君と、 他愛もない話をした。 そういう話からでいいのかい路子ちゃん。>>170 病室でする話としてはあまりにもそぐう、と思うけれど。 もう一度甘い匂いの漂う紙袋を見た]
……うん。
[そうして、素直に頷いた]
あの子、フレンチクルーラー好きだから。 喜んでくれるよ。
…………この前、誕生日だったから。 メッセージカードも書いて、 お見舞いに来た時に渡せた。
(224) Akatsuki-sm 2021/11/19(Fri) 22時頃
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[何気なく返事できてるように聞こえててほしいな、 って思いながら私は応える。 なんせ妹の誕生日が来る前に死んじゃおうって思ってたから。 まさか普通にお祝いできる、なんてさ……]
そうしたら、笑ってくれたから。
君の言ってた通りに。 ……なんとかなりそうな気がする。 来年も、この先も。
[そうして時を重ねれば、 私がしてしまった酷いことも、過去のものになるのかもしれない。 妹との間にあったことだけじゃなくて。全部まとめて]
(225) Akatsuki-sm 2021/11/19(Fri) 22時頃
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[過去は消えないって? それはそう。 過去に絶えたはずの光も今を照らすけれど……]
……かえってこれてよかったなあ。
[とにかくしみじみと呟くのだった*]
(226) Akatsuki-sm 2021/11/19(Fri) 22時頃
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―― お見舞い・平塚莉希の場合 ――
[長いこと病室にとどまっていると、 ちょっとばかり普段の感覚が曖昧になるらしいと知った。 たとえば曜日の感覚とか。
とはいえ昼下がりの今、>>162 クラスメイトがお見舞いに来ていることを変だとは思わなかった。 妹も午前中から、レイナさんに連れられてお見舞いに来てたし。
お見舞いの品は、ドーナツと違って日持ちのしそうな代物であった]
わっ、可愛いじゃん。
[すでにベッドの横には、 可愛い猫型のエッグスタンドがちんまりと置いてある。 けっこうあれと合うんじゃないかな。 和洋折衷という便利な言葉を感じさせた]
(282) Akatsuki-sm 2021/11/20(Sat) 20時頃
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[二人っきりになれたきっかけは実にシンプルで、 家族が席を外してくれたからだった。 そんなわけで静かな病室で、ふたりっきりで向かい合う。 思い出すのは、君がジャンルについて探ろうとしていたこと]
まあ、状況からしてホラーだったもんね。 むしろすこしふしぎ…… 略してSF、みたいなやつだと今は思うけど。
[トリックも何もない。 深層心理が悪戯したようなもの。 それでも答え合わせ、したいですか。なるほど>>163]
(283) Akatsuki-sm 2021/11/20(Sat) 20時頃
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えっ? ……ああ、うん。 どうしたしまして。
[「帰ってきてくれてありがとう」>>165 ――その言葉で、後のことを考えて引き締まってた表情は一気に緩んだ。 色んな意味で。 石頭くん主催のパーティーのことといい、 なんだろう、急に普通の会話に引き戻されたって気がした。 とにかくついつい頬が緩んでしまう。 パーティーで食べたいものについては考えておくね、と答えて]
恐れ多くも帰ってまいりました、なんてね。 こっちこそ、ありがとう。 飛び降りた夜に病院に来てくれたんだよね。
(284) Akatsuki-sm 2021/11/20(Sat) 20時頃
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[すでに一線を踏み越えた身だから、 飛び降りた夜の話をすると表情もシリアスになりがちだ。 ああ平塚ちゃんの笑顔がまぶしい……]
……それで。 何から答えればばいい?
[彼女の訊きたいことは私には問題なく答えられる。>>164 最初はぜんっぜん自覚がなかったこと。 文化祭の日そっくりの世界ができたのは、 その思い出が私の中に焼き付いていたから。 未だ自覚なかった時に、自分で墨鳥くんに言ってた「あの素晴らしい時をもう一度」>>2:381 というのが、図らずもしっくりときた]
(285) Akatsuki-sm 2021/11/20(Sat) 20時頃
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[それから卵から聞こえた声のこと。 私のココロから生まれたもので、私が聞いてきた―― 思いを割らないようにしてきた人たちにちなんだ声なんだって。
それから呼んじゃったみんなのココロから生まれたものも、 そこには落ちていたかもしれない。 そう話すときは苦々しい表情になった。 断定できなかったのは、自分の卵しか拾えてなかったから]
私はひどいやつなんだ。 “卵”を踏んじゃっても悲しいとも思わない。 それを知られたくなかったからいっしょうけんめい優しくしてきた。
もしあの世界に長くとどまって、卵の正体に気付いてたら、 わざと踏みたくてしかたがなくなってたかも。 誰の世界であろうと。
[たとえ話はうまく伝わるかな。 ベッドの上で膝を抱えたい気分になったけれど、 足はまだギプスで固定されているからできない]
(286) Akatsuki-sm 2021/11/20(Sat) 20時頃
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ちゃんとやれてると思ったけど、 文化祭の後、妹のこと泣かせちゃって……、 それで、あ、もう駄目だなって思った。 だから、死にたかった。 誰にも私の後ろ暗いところを知らせずに。
そのつもりだったんだけどなあ……。
[遠い目になって窓の外を見た。 空がきれいだ。 ……あ、でもお先真っ暗って気分じゃない。 むしろしみじみしてるんだ]
(287) Akatsuki-sm 2021/11/20(Sat) 20時頃
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……死んじゃうとさ、好きってことも伝えられないんだ。 それがココロの奥ではわかってたから、 みんなも呼んじゃったのかなあって。
……私の世界の文化祭、 楽しんでくれてありがとう。
[彼女を心配させないように、今度はちゃんと、朗らかに笑えたはず*]
(288) Akatsuki-sm 2021/11/20(Sat) 20時頃
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―― そしてこれは余談 ――
[退院してからの楽しげな予定―― お祝いと打ち上げパーティーの話を聞いた日の夜に、 食べたいものについては思いついた。
『不知火ちゃんのつくった目玉焼きが食べたい』
石頭くんのおうちのキッチンを使えるかどうか、 そのあたりはなるようになればいい、と思いつつ。 この意向はちゃんと伝えることはできたはず。 彼女がお見舞いに来たならその時に。 病院で会えなくともグループチャットを通じて*]
(289) Akatsuki-sm 2021/11/20(Sat) 20時頃
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―― 退院して、それから ――
[退院してからしばらくは、 松葉杖をついて校舎の中を歩き回った。 通学路は歩き回れなかった。 完治するまでは車で送り迎えをすると、父が頑として聞かなかったのだ。 過保護か。いや、しかたがないか。
かくしていつかの不知火真梛のように反抗したりせず、 昇降口のそばで迎えを待つ。 和歌奈はスマホを普通に取り扱えるので、 家族用のチャットに「学校終わった」というメッセージと、 宇宙人が手を振ってるスタンプを送信する]
(310) Akatsuki-sm 2021/11/20(Sat) 22時半頃
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[あとは待つだけだ。 これが案外長い。 猫のたまり場でも見に行こうかな、と思ったが、 ちょうど近くをでかい人影が通りかかったのでやめた。
おーい、と言ってその人影こと、 荒木春満を呼び止められただろうか。 なんとなく知りたいことがあったのが半分、 もう半分は、]
お父さんくるまで暇なんでねえ、 それまで暇つぶしの相手になっちゃくれないかな。
[腰を低くしてぺこ、と頭を下げる。 あるいはまた人選ミスと思われてもしかたがない……かもしれないが、 いたって本気であった]
(312) Akatsuki-sm 2021/11/20(Sat) 22時半頃
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そういえばさ、 荒木くんって誕生日いつだったっけ?
[なんとなく知りたいことに触れるきっかけとして、 ともかく話を振った]
名前的には春っぽいけど。 春満くん、って。
[私の知らない君のきょうだいのことを知りたかった。 どさくさにまぎれたみたいに名前を呼んでもいた。一度。 君の兄、それが君のなろうとしてなれなかったものってことも、 あるいはいつか知ることができるのかな。
未来にはなんにもないってことはないし、 他の誰の真似でもない君もやっぱり、 私の世界を構築したひとりなのだ*]
(315) Akatsuki-sm 2021/11/20(Sat) 22時半頃
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[私の女友だちは軒並み強いなあ、 って、病院に閉じこもってた時のことを回想すると、 しみじみ思ってしまう。 おこがましくも私が勝手に友だちって呼んでる向きが多いんだけど。
私が呼んだんじゃなくて、 追っかけたってとらえてくれた夏見ちゃんも、>>194 たとえ冗談めかしてたって、 私が言うから間違いないって言える路子ちゃんも、>>245 「卵を踏みたい?」って訊く平塚ちゃんもさ。>>314
ほんとにさ、 頑張って生きて見たけどもう駄目でした、なんて言えない気がしている。 ココロそのものや縁、そういうものが壊れた悲しさをわかれなくても、 分け与えてくれるあたたかさだけで、 冬を越せそうな気がするくらいだ]
(329) Akatsuki-sm 2021/11/20(Sat) 23時半頃
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[それでまあ、退院してからというもの、 ちょっとずつだけど、路子ちゃんだけじゃなくて、 女の子みんな名前で呼ぼう、っていうのを実行している。 男の子たちはちょっとハードルの高さを感じつつ、それなりに頑張った。
時は少しずつ進んでいって、 私は自分の足で、石頭くんのおうちの床を踏んでいる。 松葉杖もギプスもない。 久しぶりの自由、というものを感じていた。
あとは、うん、経済差というものも]
私の家のキッチンと違う……。
[なんて言いながら見ていたのは、 フライパンに、綺麗に割れた卵が到達する場面。>>299 豪勢さに反して実に庶民的だけど、 私が望んだ光景だ]
(330) Akatsuki-sm 2021/11/20(Sat) 23時半頃
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[そういえばこの日を迎える前にこんな光景もあった]
…………???
[私は妹がいる。君は末っ子で妹。>>298 だから君を姉と呼んでもいい……?
どういうことなの、とツッコまなかったし、 実際、わざとらしく咳払いしてから]
えーと、……ま、真梛おねえちゃん。 頼りにしてますよー。
[呼んでみた。 もっと恥ずかしいものかと思ってたけど、 ふふっと笑っちゃうだけですんで、それで最初のハードルを越えることができた。 下の名前で呼ぶための]
(331) Akatsuki-sm 2021/11/20(Sat) 23時半頃
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[ともあれ話を打ち上げの日に戻そう。>>300]
………。 わ、私も!?
[差し出されたまっしろな卵と、彼女の顔を交互に見た。 ぶっちゃけ予想外だ。 当然ながら練習はしてない。
そこはかとなく高級な感じがする卵を手に取った。 黄身が潰れても無駄にはならない、とはいえ、 変に手に力が入ってるなあこれ]
(333) Akatsuki-sm 2021/11/21(Sun) 00時頃
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[……あ、そうだ。 変に力んで「綺麗に割る」ってことにこだわらなくってもいいんじゃないなあ。 私という人間はどこか壊れてて、 それでも自分を綺麗に見せるって目標は潰えたけど、 そんな私のことも友だちと呼んでくれる人がいる。 追いかけてくれる友だちもいる。
妹とも、肩肘張らないでいっしょに遊べてるし……]
(336) Akatsuki-sm 2021/11/21(Sun) 00時頃
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[とにかく行動あるのみだ、って、 私はフライパンの縁にコン、と卵を当てた。 フライパンの上に卵を移動させて、ひびを押し開けばぱかっと割れて]
あっ……、 見た? 今の見たよね? いい感じに割れたの!
[先に割られた卵も巻き込んでスクランブルエッグにしないですんだ。 ついついはしゃいじゃったよねえ。
おかげで乾杯の時もちょっとテンションが高かった、 というのは余談である*]
(338) Akatsuki-sm 2021/11/21(Sun) 00時頃
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[私のうみだした卵の中で。 私を追いかけてきた“きみたち”について考える。
屋上は寒かったよね。 私もそうだった。 私に入った罅を誰とも分かち合えないまま、 消えていくにはもってこいだった。
冬の空はね、星が綺麗に見えるんだ。
だけど私はお星さまにはなれなかった。 それでいいって思ってるよ]
(*0) Akatsuki-sm 2021/11/21(Sun) 00時頃
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[大好きだよ。 そして、*いつかまた会う日まで*]
(*1) Akatsuki-sm 2021/11/21(Sun) 00時頃
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