10 冷たい校舎村9
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── 現在・病院 ──
[ 黒沢の帰りを知ったのはいつだろう。 当人が実際に目を覚ますまでは、 きっと少し落ち着かずにいた慎一だった。
散々みんなの輪に加わりたいと言ったくせ、 ひとりぽつねんと立っていた慎一は、 きっとみんなよりワンテンポ遅れて気づく。
例えばガラス戸越しに見えたみんなの表情。 職員の動き>>20だとか、声だって聞こえたかも。
なんせ慎一は耳ざとい。 ちびちびと飲んでいたミルクティーの蓋を、 慌てながらもきっちり閉めて、 大慌てでその仕切りの内側へと駆けてった。]
(44) nabe 2021/06/16(Wed) 20時頃
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──黒沢、帰ってきた?!
[ ……あの場所を知る人間以外には、 どうにもおかしな文脈だろうけど。
抑えきれない声を発して、 その場にいた誰かの手を取ったかも。 ぶんぶんと大きく振るから付き合ってよ。
慎一はうれしい。 うれしくて頭の中がめちゃくちゃだ。 このままじっとしていちゃ、 こみ上げる熱に変になりそうなくらい。]
(45) nabe 2021/06/16(Wed) 20時半頃
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よかった……、
[ そう。その瞬間、 慎一はただ「よかった」と思う。
帰ってきてくれてうれしい。 たとえここが君にとって、 どれほど生きづらい場所だとしても。 会えなくなったらさみしくて、 君が死んじゃったら慎一はすごく悲しい。
もうどうしようもない後悔を抱きかかえて、 一歩だって歩けなくなってたかもしれない。]
(46) nabe 2021/06/16(Wed) 20時半頃
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[ だから──、 結局これも自己チューな考えかもしれない。 おまけにあちらで慎一はとんだ役立たずだった。
でも、やっぱり、自己チューだとしても。 黒沢が死んじゃったら、慎一が悲しい。 たとえ両腕が塞がっていようとも、 何もかも投げ出して手を伸ばさなきゃ、 取り返しのつかないことだってあるのだ。 そんな後悔、慎一は一生知りたくない。
そのことはここで待っている間に、 いやってほど身に染みて理解したからさ。
役立たず≠ヘ過去形にできるように、 いつか君のワガママに応える機会を慎一にもくれる?]
(47) nabe 2021/06/16(Wed) 20時半頃
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[ ……ああ、いや。 ここで言ってたって仕方ないな。]
(48) nabe 2021/06/16(Wed) 20時半頃
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[ ……気づいたら視界が滲んでた。 慎一は今、笑っているはずなんだけど。
……うれしくて泣くなんて、 もしかするとはじめてかもしれないなあ。
きっと今日はまだ会えない。 だけど、あの場所で心に抱いた「ありがとう」と、 今、頭の中で繰り返している「おかえり」を、 早く会って、直接伝えたいって慎一は思う。
それから、もっとくだらない話も。 雪道でしたヨーコ先生批判の結論も、 あの校舎の窓ガラスがどんなに硬かったかも。 ……笑えるだけの楽しい話も、全部。
声に出さなきゃ、何も伝わらないらしいから。*]
(49) nabe 2021/06/16(Wed) 20時半頃
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── 帰還後・病院 ──
[ それから。 では解散! とあいなる前に、 慎一はそいつを捕まえられたか。
ひとしきり喜びを噛みしめて、 それでも慎一の気分は少し高揚してる。
少なくともあの校舎にいたときみたいに、 靴の踵を踏んづけたり、足を庇ったりして、 のろのろと歩くんでもなく駆け寄るだろう。]
(50) nabe 2021/06/16(Wed) 21時頃
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……ユーガ!
[ ……まだ病院内だったなら、速足で。 あんまり大きな声を出さないように。 基本的に、慎一は決まり事に忠実だ。
距離を詰められたなら、 そう、少しばかり言いたいことが。
けど人の基本は挨拶ともいうし、 まずはもう慣れてきた言葉を投げよう。]
(51) nabe 2021/06/16(Wed) 21時頃
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……おかえり。 それから、ありがと。 黒沢と一緒に帰ってきてくれて。
[ ここは誰の家でもないんだけどね。 帰る場所なんていくつあってもいいんだって、 慎一はなんとなく、あの校舎を経て思う。
別に、自分の生まれ育った家じゃなくても、 教室でも、この世界そのものでも、 帰りたいと思えるんならどこだって。
まあ、だからさ。 細かいことはあまり気にしないで。 ……慎一が言うのもなんだけどさ。]
(52) nabe 2021/06/16(Wed) 21時頃
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[ それから、こんな話もしよう。 こうして今、笑えるようになる前、 この場所でどんな話をしていたのかとか。]
……あんね、 待ちながらいろいろ話してたよ。 黒沢は気づいてほしかったのかな。とか、 誰か、黒沢にたどり着いてくれるかな。とか。 ユーガなら、って番代と話してて──、
[ 番代が真っ先に炭蔵の名前を挙げたこと、>>4:+32 慎一はたとえばそんな話を取り上げて、 重たい前髪の向こうを見透かせないでいる。]
(53) nabe 2021/06/16(Wed) 21時頃
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……ユーガ、悩んだ? 迷った? 不安になったり、躊躇したりした?
黒沢の作った世界の中で、 いろんなもの見て、聞いて、触れて──。
[ 慎一は見透かせない目のあたり、 じっと見つめて静かに笑っている。
──としかここに書くこともないから、 慎一の話をついでばかりに付け足そう。
ずっと迷子みたいだった。 あの世界でも、現実に生きてても。 それはまあ、前にも似たことを言ったね。 だからそのくらいにしておいて、話を戻すと、]
(54) nabe 2021/06/16(Wed) 21時頃
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[ ……戻したとて、そんな感じ。 慎一はそう尋ねて、返事を待っている。 保健室への道すがらした会話を思いながら。*]
(55) nabe 2021/06/16(Wed) 21時頃
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── 後日・お見舞い ──
[ 扉をノックする前に少し考える。
「元気?」というのは絶対に変だし、 「久しぶり」もしっくりこない。
とはいえ、いくらあの夜、 治療室の前で会釈しかしなかった慎一とて、 黙って入室するような無礼者にはなりたくない。
はて、どうしたものだろう。 考えた末に「こんにちは」を胸に携えたけれど、 扉をたたき、するするとそれを開いたときには、 予定になかった言葉がふいに口をついて出ていた。]
(65) nabe 2021/06/16(Wed) 23時頃
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おかえり、黒沢。 …………こんにちは。
[ あの雪道を歩いた朝みたいに、 冬の制服を着て、コートを着込んで、 マフラーも巻いて……帽子はないけど。
そういう格好をした慎一は、 どうも勝手がわからないという素振りで、 紙袋片手におずおずと病室を訪れる。
──幸い、お外は寒空ながら快晴。 ずぶ濡れのスニーカーが床を濡らすこともない。]
(66) nabe 2021/06/16(Wed) 23時頃
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……動けるようになった?
[ それはきっとお見舞いが許されるようになって、 まだあまり日の経ってないころのことだから。
体の具合にそれとなく関心を向けつつ、 ひとまず、お見舞いの基本の部分を済ませるね。]
これ、お見舞い。
[ 慎一が差し出す袋の中身は、 小さい包みや、それより大きな箱で、 少しばかりごちゃついているので順番にいこう。]
(67) nabe 2021/06/16(Wed) 23時頃
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[ ひとつ。タオルハンカチ。 隅っこにペンギンが一羽いる。 よくよく水を吸ってくれるので、 ちょっと疲れた夜にでも使って。 それに、端の縫い目のところは触り心地がいい。
ふたつ。液体砂時計。 知らない? 耳鼻科とかによくあるやつ。 慎一はそれが妙に好きなんだ。暇つぶしになる。 あのね、何も考えたくないときにもいいよ。 ぽこぽこ動く泡を見てると無心になれるから。]
(68) nabe 2021/06/16(Wed) 23時頃
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[ それから──、]
これ、うちの親から。 ……というか、袋の中身がバレて、 めちゃくちゃ怒られて、足されたやつ。
[ みっつ。特別豪華でもかわいくもない、 デパ地下には大体置いてる定番のゼリー。 慎一の家にあると争奪戦になるやつ。だけど、]
(69) nabe 2021/06/16(Wed) 23時頃
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まだアレコレ好きには食べれないのかな。
日持ちするから──、 ……よかったら、お母さんと食べて。
[ ご家族と食べてって言おうとして、 慎一は少しだけ言葉に詰まってしまう。
あの夜。良い知らせを受ける前。 番代とひそやかに交わした会話を思い出す。
慎一は黒沢の家族の形を知らない。 そこに何があって、何がなかったかも、 どうして今黒沢がここにいるのかも。]
(70) nabe 2021/06/16(Wed) 23時頃
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[ だから、黙ろうと思ったんだけどね。 それを聞いて、どんな答えが返ってきても、 慎一に何ができるかなんて思い浮かばない。
けど、何を思ったか、 というか、あの日抱えかけた後悔を思って、 慎一はおそるおそるというふうに口を開く。]
……黒沢ん家、お父さんいないの?
[ ああいや、聞き流してくれてもいいんだ。 積もる話はまだまだたくさんあるからさ。*]
(71) nabe 2021/06/16(Wed) 23時頃
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真向一気 シンイチは、メモを貼った。
nabe 2021/06/16(Wed) 23時半頃
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── 後日・お見舞い ──
[ 「ありがとう」って言われたなら、>>85 「どういたしまして」を返すべき?
……基本的にはそうかもしれないが、 そのときの慎一はそそそっと、 体を病室の中に潜り込ませるだけだった。
や、居心地が悪いんじゃないよ。>>86 ただ、お見舞いってどうもはじめてで。 慎一はお作法がよくわからないだけだ。]
(94) nabe 2021/06/17(Thu) 01時頃
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[ ……いや、それだけじゃないな。
「座って」と促されて、>>86 慎一はようやく椅子を引いた。
動きがぎこちない? 仕方ない。慎一は少し緊張している。
あれだけもう一度会いたいと祈ったくせ、 後から悔いるのはごめんだと思ったくせ、 一度死を選ぼうとした人に、 どうやって向き合えばいいか測りかねて。]
(95) nabe 2021/06/17(Thu) 01時頃
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[ ……なので、 「お手洗いには自力で行くよ」なんて、 もし黒沢がまじめな顔で言っていても、>>87
たぶん、そのときの慎一は、 ひっくり返って笑うこともできない。 だからわざわざ言ってくれなくてよかった。
「ちょっとだけ」という言葉に、 それでも快方に向かっているならよかったと、 少し安堵の表情を浮かべたくらい。
……そもそも笑いどころじゃない? そっかあ。]
(96) nabe 2021/06/17(Thu) 01時頃
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多くないよ。 一個一個が小さい。
[ 大まじめな顔して慎一は言う。 入院生活にあるとよいものを、 慎一はまじめに選んだはずだったし、
親からの見舞いの品だと託されて、 そのことにも大して違和感はなかった。
だって、慎一は友だちの見舞いに行くと言った。 慎一の友だちだから、心配もするだろう。
……それを持たせた主たる理由が、 慎一の非常識なチョイスだったとしても。]
(97) nabe 2021/06/17(Thu) 01時頃
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[ なので、見てもいいかと問われれば、 慎一はふつうにうなずいただろう。 つまり、黒沢は実際悪くない。>>89
慎一はあの雪道で、 ペンギンの話をしたのを覚えてるし、 粒々が落ちていくのは見てて落ち着く。
……水滴が落ちるのは点滴で見慣れた。 というのは、まったく想定になかったけど。]
(98) nabe 2021/06/17(Thu) 01時頃
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……うん、言っとく。
[ しかし黒沢の対応が大人だったので、>>91 慎一は素直にうなずいてその会話を終える。
そこからは今までしてこなかった類の話。 返ってきたのは肯定で、>>92 続いたのは慎一の知らない世界の話だ。>>93
こんなことになって、病院に来ない家族。 一生会いたくない家族。 ……慎一の視界には存在しないもの。
やっぱり慎一はそれに対する答えを持ってないし、 現実的なアドバイスができるやつは他にいるだろう。 だから「そっか」って静かに相槌を打っただろう。]
(99) nabe 2021/06/17(Thu) 01時頃
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[ でもね、慎一が何か言うより先に、 求められた「なにか」に数度まばたき。>>93
先を越されちゃったなあ。って、 今度ははっきりそう思ったっていいだろう。 そういう笑みを浮かべて、慎一は口を開く。]
(100) nabe 2021/06/17(Thu) 01時頃
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……もちろん。 俺にできることならなんだってする。 できなさそうなことだってきっとする。
だって、俺さ……、 あのとき、黒沢の作った世界の中に、 俺のことも入れてくれて、うれしかった。
[ 誰かオシャレな手土産を持ってきたやつが、 どこかで似たようなことを言ってたって? ……類友ってやつかもしれないなあ。 ほら、融通のきかなさだって、>>1:69 そういうふうに言われるんなら、これも。
でも、これは慎一の分だから、 慎一の口から、ちゃんと言わせてね。]
(101) nabe 2021/06/17(Thu) 01時頃
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だから、ありがとう。 黒沢があの場所に呼んでくれたことが、 俺の隙間を埋めたんだよ……ほんとに。
[ あの場所で慎一のしたことって、 ひたすら食糧を漁ったくらいだけどね!
けれど、あの場所でできなかったことも、 今からリベンジすることだってできるよね。 ……だって、黒沢乃絵はここにいるから。
だから、もうひとつだけ。 あのとき言えなかったことを口にしよう。]
(102) nabe 2021/06/17(Thu) 01時頃
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……あんね、 今さらかもだけどさ。
慣れちゃったんなら、 別の方法、探したほうがいいと思うよ。
気を紛らわせる方法なら、 俺だって一緒に考えるから。
[ なんせ慎一はそういうのに少し詳しいんだ。
君がぽつぽつ落ちる水滴に、 あまり興味をそそられないというのなら、 少しハードルは上がってくるけれど。]
(103) nabe 2021/06/17(Thu) 01時頃
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[ ちらりと左手首のあるほうを見て、 慎一はゆっくりと立ち上がる。 病み上がりに長居しても悪いからさ。それで、]
……お邪魔しました。また来るな。
[ なんせ慎一は、 ぽたぽた滴るしずくか何かを眺め続けるの、 気分が落ち着くし、好きなんだけれど、
永遠にそれが続くとさみしいのも知ってる。 そこに、はじけるような楽しいが生まれないのも。
だから、「また今度ね」って手を振って──、 なんせ慎一は話題が豊富なほうじゃない。 次はだれかと一緒に来てもいいなって思う。**]
(104) nabe 2021/06/17(Thu) 01時頃
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── 帰還後・病院 ──
[ 定型通りに「おかえり」「ただいま」と、 言葉が返ってきたので気分がよかった。>>156 たぶん、そうでなくても悪くはなかったけど。
帰ろうとしていたところを捕まえた。 炭蔵が振り返ってくれたからだ。 急ぎ足で追い付いて隣に並んだ。 寒空の下に出る間際のことだった。 慎一が無意識に携えるあたりまえの感覚。 その中にタクシーの選択肢は存在しない。 もしかしたらギリギリセーフだったかな。 なんにせよ、間に合ったのならよかった。]
(196) nabe 2021/06/17(Thu) 15時半頃
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[ 「よかった」って言われて、>>156 慎一はにいっと笑ってうなずく。 君が今、そう思えてるならよかった。 そのことを慎一は疑ってもなかったけど。] えっ、暮石がピアノ弾いたの? ……そっかあ。よかった。 [ そこから始まるお互いの知らない話。 途中で道を違ったから、 あちらとこちらの世界を共有しながら。 そこには慎一が驚く事実もある。>>158 何気なく伝えられた言葉に目を丸くして、 それからきゅうっと目を細めた。 意味はなくとも爪が短いままでよかったね。]
(197) nabe 2021/06/17(Thu) 15時半頃
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[ その「よかった」の意味は、 炭蔵には伝わらないかもしれないけど、 慎一はまた言う。今度は隣の相手に向けて。] ……うん、よかった。 黒沢が、ユーガたちといっぱい話して、 そのうえでここに帰ってきてくれて。 [ 期待に沿えたかって? もちろん。 少なくとも慎一にとって、 これは一番望んだ形に間違いない。]
(198) nabe 2021/06/17(Thu) 16時頃
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[ 前髪の下の目線の動きなど、>>159 慎一の目には見えるはずがないんだけど、 でも、声がまっすぐ飛んでくるのはわかるよ。 悩み迷ったと言いながらもその声は震えない。 そのうえ微笑み返してくるもんだから、 その内容がどんなに人間くさくても、 やっぱり、君は君でしかなかった。 慎一は目を細めているけれど、 別にもう起動スイッチを探しちゃいない。]
(199) nabe 2021/06/17(Thu) 16時頃
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[ ただ、淡々と重ねられる言葉に、>>159 慎一は意外だとか騒ぐんでもなく、 「そっか」って穏やかな相槌を打った。 ……ああ、でも。 「生きづらかったらしい」と言われたら、 さすがに数度まばたきをしちゃうかも。>>160 でもね、嘘だあなんて言わない。 疑ったりもしない。少しの間をおいて、 慎一は、ほうと小さく息を吐いて目を伏せた。 でもまたすぐに顔を上げる。隣を見る。]
(200) nabe 2021/06/17(Thu) 16時頃
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……あのさ、俺はさ、 人に手を差し伸べるなんて、 ユーガみたいに余裕あるやつが、 自分のことがちゃんとできてはじめて、 余った力でやることだって思ってた。 でも、帰りを待ってて思ったんだけど、 いつか・もしも・きっと……じゃ、 取り返しのつかないこともあるんだなあって。 [ 今気づいたのかって言われたとして、 慎一にはうなずくことしかできないだろうね。 でも慎一は人のお荷物にならないことは考えても、 それ以外の何かになれるとも、なろうとも、 あたりまえのように考えなかった。ついさっきまで。]
(201) nabe 2021/06/17(Thu) 16時頃
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[ でもまあ、ちょっと人より遅くても、 今気づくことができてよかったなって慎一は思う。 まだまだ先は長いから。長く続いてくはずだから。 さて、いつだって発展途上の慎一だけれど、 また少しばかり右斜め上に進んだと信じて。 その先の第一歩として、 まずひとつ、はじめから人間だったらしい友人へ。 あの校舎での会話をひとつリベンジしてもいいかな。]
(202) nabe 2021/06/17(Thu) 16時頃
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……あんね、 もし、ユーガがこれから、 自分の行動や選択が正しいか、 悩んで迷って進めなくなりそうだったら。 俺が「大丈夫だよ」って言うから。 ユーガはもう少しくらいは自信をつけて、 ユーガの信じた道を行けばいいよ。 ……だって俺、ずっと見てんだもん。 ユーガがいつも正しかったの、知ってる。
(203) nabe 2021/06/17(Thu) 16時頃
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……もしかすると、 ユーガには必要ないかもだけど、 でも、ただ、俺がそうしたいから。 [ にへらと慎一は笑った。 付け足しはたぶん誰かの受け売りだった。 だからね。前髪を切るのには賛成。 目は口ほどにものを言うらしいし。 慎一にもわかるよう、その顔を見せてほしい。]
(204) nabe 2021/06/17(Thu) 16時頃
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[ ふたりは発展途上な子ども同士、 おんなじ人間だったというので。 それなら、 「いつか」「もしも」じゃなく、>>161 いつだって君の周りに差し出されて、 いざというとき掴める腕の一本に、 慎一のソレもカウントしてもらえないかな。 曖昧なまま進むのが苦手同士なら、 融通のきかない頭でうんうん考えたあと、 一緒にだれかに手を貸してって言おうよ。 ……慎一を頼りたくないってんでも、>>2:461 これは、慎一がそうしたいっていうだけの話だ。]
(205) nabe 2021/06/17(Thu) 16時頃
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……まあ、 さすがに大学までは、 追っからんないけどね。 [ 最後はどうもカッコつかないけど、 悲しいかな学力の差というものがあり。 学校の外での人付き合いの仕方、 慎一はあんまり知らないんだけれど、 これについてはお手本になってくれる? ……ああ嘘。慎一からもきっと誘うから。 ひとまず、趣味とかいちから教えてほしい。]
(206) nabe 2021/06/17(Thu) 16時頃
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──とにかく、 まあ、なんか、そういうこと! [ 炭蔵は照れなかったらしいけど、>>159 慎一は照れたよ。慣れない話をして。 えいっと力業でその話を締めくくって、 帰路につこうとするんだろうけど。 高校生活3年間、 慎一の最強の移動手段はチャリだった。 ので、もしもタクシーを呼ぶやつがいたら、 最後に送ったのは「えっ……」って視線だろう。**]
(207) nabe 2021/06/17(Thu) 16時頃
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── 後日・お見舞い ──
……ひどい目?
[ はて、なんのことだろうな。 慎一は一瞬の間も置かずそう言って、 不思議そうな顔して黒沢を見ていた。
つまり、気遣いでも嘘偽りでもない。
悲しいことや辛いことがあった。 そう思うことはあったって、 慎一はひどい目にあったとは、 少なくとも、記憶する限り思ってない。]
(230) nabe 2021/06/17(Thu) 18時半頃
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[ ひどいことするようなやつ、 ここにはいない──とは言ったけど。>>3:292]
(231) nabe 2021/06/17(Thu) 18時半頃
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[ つまり、これも言葉にするのが難しい、 個人の中にあるあたりまえの感覚の話。
あの世界を悲しいと何度だって思ったけど、 ひどい目に合わされたとは慎一は思ってない。
慎一は息がしづらかったけれど、 それは、慎一側の問題でしかなかった。 帰る間際は確かに苦しかったけど、 本当に危ないわけがないってのんきに思ってた。
あの校舎が、そこにいた誰かの世界である以上、 腹を立てたり、嫌悪したりはしなかったよ。
……そりゃあ、慎一は苦手なものが多いから、 ひどい状態ではあったかもしれないけれど。]
(232) nabe 2021/06/17(Thu) 18時半頃
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[ それに、現実世界も似たようなもんだ。 慎一には生きづらいけど、嫌いになれない。
ひどい目に合わされているというより、 ただ慎一が呼吸をするのがへたなだけ。
だからね、不思議そうな顔してみたあと、 慎一は、まあいいやって感じで口を開く。]
(233) nabe 2021/06/17(Thu) 18時半頃
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簡単にじゃなくて、 それなりにいろいろあって、 なんだかんだの末に言ってるからね。
……要は、 黒沢が今ここにいてよかったって話。
[ 今度は後悔しないようにしたいんだよ。 ……伝わらなくても、これはまあいいかな。]
(234) nabe 2021/06/17(Thu) 18時半頃
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[ それで、]
うーん、できてたらいいかな。 ……人にやさしく。
[ 今度はね、慎一は否定しなかった。>>193
否定しなくてもいいように生きようって、 慎一にそう思わせたのは黒沢の世界だよ。
だから、あの世界を作ったのが、 黒沢の自己チュー精神だったとしても、 巡り巡って慎一の助けにはなったのだ。
だから、黒沢もやさしいねとは言わないけど、 自己チューでワガママなくらいでいいと思うよ。]
(235) nabe 2021/06/17(Thu) 18時半頃
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[ あの世界に慎一が残した心残り。 クレープを食べ損ねたとかじゃなくて……、 あのとき言えなかった言葉の話。>>194
思ったことはそのときに言うべきなのだ。 黒沢はもうとっくに答えを見つけていた。
「大丈夫」って言われて慎一は笑う。 本当に。それならよかったって思って。
だから、ほっとしたように病室を後にしよう。 気が紛れる≠ネら遠慮なく顔を出せるよ。>>195 「また今度ね」って小さく手を振りながら。**]
(236) nabe 2021/06/17(Thu) 18時半頃
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── 帰還後・自宅 ──
[ 自転車を走らせて帰宅するころには、 きっと空はとっくに白んでいた。>>117
いつもの位置に自転車をとめて、 そうっと静かに玄関扉を開く。
まだ家族は起きてないかもしれない。 そう思ってのことだったんだけれど、 予想とは裏腹に家の中は明るかった。
リビングのソファで姿勢を崩してた母が、 慎一の帰宅に気づいてゆっくり体を起こす。]
(241) nabe 2021/06/17(Thu) 20時半頃
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[ 「おかえり」と言われて、 「ただいま」と答えた。
「大丈夫だったよ」って言ったら、 「よかったね」って返ってくる。 うっすら笑う様子がちょっと眠そうだった。
「寝ててよかったのに」とつぶやいた慎一に、 「帰ってきて暗かったら悲しいでしょ」って。
慎一によく似たつり目がゆっくりと閉じて、 「ああ、仕事だあ……」って、頭を抱えた。]
(242) nabe 2021/06/17(Thu) 20時半頃
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[ それからまた瞼を押し上げて、 その視線だけで慎一を呼んだ。
ソファの傍らにおずおずとしゃがんだ慎一に、 慎一のよりも細い二本の腕がゆっくり伸びる。
薄い掌が慎一の頭を両側から挟んで、 慎一の顔にじいっと視線が注がれる。
そのまま数秒。「よし」と母は言った。 「泣いてないね」……うん。「少し寝といで」
促されるままに慎一はまた立ち上がった。 でも、すぐに思い出したように口を開く。]
(243) nabe 2021/06/17(Thu) 20時半頃
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……シャワー使っていい?
[ 外から帰ってきたらすぐにシャワーを浴びる。 リビングはいいけど、自室に入るのはそのあと。
カチコチに固まり切った慎一のルーティン。 朝帰りなんてしたことないから危なかった。
寝ている家族には少しうるさいかもしれない。 けれど、諦める気なんてちっともない慎一に、 母はため息とも笑いともつかない息をこぼし、 「好きにして」とだけ言ってソファに崩れた。]
(244) nabe 2021/06/17(Thu) 20時半頃
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[ シャワーを浴びて、ドライヤーも使って、 さっぱりしてリビングを通った慎一に、 もう体も起こさない母がふたつ言った。
お父さん起こしてきて。起きてると思うけど。 おばあちゃんにも「おはよう」って声かけて。
実際、心配性の父は寝てなんかなくて、 慎一の顔を見てほっとした顔をしていた。 「おかえり」と「いってくる」を一気に言う。
朝に強い祖母の部屋をそうっと覗いたら、 皺くちゃの手が伸びてきて慎一の手首を掴んだ。 つるりとした肌に血管だけが浮いたそれ。 傷ひとつない、かすかに脈を感じさせるそこ。]
(245) nabe 2021/06/17(Thu) 20時半頃
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[ なにか言葉を待たれているようなので、 慎一は順に「ただいま」と「おはよう」を言う。
よくできました。というように、 元から皺だらけの顔がさらに皺くちゃになった。 そうっと手首を離されて、慎一は自室に戻った。
自分以外にふたり分、気配のある広い部屋。 真っ暗な中、物音を立てないように歩いて、 ゆっくりと自分の陣地に体を滑りこませる。]
(246) nabe 2021/06/17(Thu) 20時半頃
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[ ……今までする機会もなかったけれど、 せっかくだから慎一の名前の話もするね。
謙虚に誠実な人間であれという期待と、 慎ましやかでも幸いに恵まれるようという祈り。 それが慎一の名前に込められたすべて。
いつもの時間まで少しくらい寝れるだろうか。 ベッドに横になって、慎一は一度目をつむる。
たぶん、じきに賑やかな朝がやってくるけど、 それでもやっぱり、慎一はこの世界が好きだ。
好きでいられたのはみんなや家族のおかげで、 だからつまり、慎一はやっぱり幸運の持ち主。
きっとまた、疲れたり息ができなくなるけど、 慎一の名にかけられた祈りは確かに届いてる。]
(247) nabe 2021/06/17(Thu) 20時半頃
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[ 期待のほうは、……これから善処しよう。
都合のいい言い方を覚えた慎一は、 きっとそんなことを考えて明日≠迎える。
いつもどおりかそうでもないかは、 実際迎えてみなくちゃわからないけど。*]
(248) nabe 2021/06/17(Thu) 20時半頃
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── 後日・学校 ──
[ ある日の学校終わりのこと。
少しだけ周囲の視線を気にして、 慎一はそっと、ふらっと歩み寄った。 普段はあまり訪れない机のとこまで。]
……暮石、
[ その机の持ち主の名前を正面から呼び、 慎一は軽く握った拳を二人の間に突き出す。 ゆっくりと手のひらを上向きにして、 ばらばらとした動きで指を開いていく。]
(249) nabe 2021/06/17(Thu) 21時頃
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[ 手のひらには硬貨が一枚きり乗っている。
鈍色のそれは長く筆箱に入れてたせいか、 記憶にあるよりもちょっと黒ずんで見えた。
はじめは、自分の手のひらに。 それから、目の前にいる人に。 慎一はじっと視線を向けてから口を開いた。]
今度≠チて、今じゃダメ?
[ 受験生にはまだ忙しい時期かも。 でも、持ち越したままも落ち着かなくて。 ダメかな。お伺いを立てるようにそう尋ねた。*]
(250) nabe 2021/06/17(Thu) 21時頃
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── その後・鳩羽と ──
レン、どっか寄ってかない?
[ ──って慎一は言った。 たぶん、進路の決まった人も出てる頃。
まだ空気は冷たいながらも晴天で、 駅までの道すがらどこかに寄るんでも、 慎一は一向にかまわない気分だった。
体育祭に球技大会、もちろん文化祭。 いろんな日常を積み重ねてたとて、 徒歩通学と電車通学じゃ向かう先が違う。
部活だって違ったんだから、 少なくとも慎一から声をかけるのは珍しい。]
(262) nabe 2021/06/17(Thu) 22時頃
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[ ……そんな理由をつけなくても、 慎一は自分から誰かを誘って、 学校外でどうこうみたいなの、 慎一はあんまりしてこなかった。
だからね、別になんだっていいんだ。 冬のアイスでも、やっぱ寒いから肉まんでも、 ファミレスでもカラオケでも適当な公園でも。
だって別に、あのアタリ棒を交換させることが、 慎一の目的ってわけじゃあまったくない。
だからもし都合がよければ、 少し慎一と歩いて行かない?]
(263) nabe 2021/06/17(Thu) 22時頃
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[ もしその機会が得られたなら慎一は、]
……レンさあ、 大学、こっちのほう? 卒業してもこのへんにいる予定?
[ ──って、いつもの調子で尋ねるだろう。*]
(264) nabe 2021/06/17(Thu) 22時頃
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── 冬・鳩羽と ──
[ 申し出があっさりと承諾されて、>>265 慎一はよかったって思って笑う。
鳩羽の顔の傷も、慎一の首の傷も、 もうすっかり治った晴れた冬の日。
大丈夫。ファミレス=ドリンクバー。 長居ができていいよねっていうのは、 慎一だってちゃんと承知している。 受験を控える中することかはさておき。]
(283) nabe 2021/06/18(Fri) 00時頃
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[ かくして、さほど混みあわない店の中、 甘味料の味ばかりするオレンジジュースを前に、 きっと馬鹿話だってしたんだろう。
それでも話題をそこに持ってったのは、 どうしたって別れと出会いの季節が迫るから。
受験生同士なら珍しくもないだろう質問に、 鳩羽はあっさりと大学の名前を挙げた。>>266
「あーあそこね」ってなる感じの。 豊高に通っていて、馴染みのある名前。]
(284) nabe 2021/06/18(Fri) 00時頃
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あー、うん。 近いじゃん、結構。
[ ゆるりとした調子で慎一は言う。 ちょっと、というか、結構うれしそうに。
それから、慎一のふんわりした問い。 「このへん」の定義を問う言葉に、>>267 少しだけ考えて慎一はこの場での定義を足す。]
(285) nabe 2021/06/18(Fri) 00時頃
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遊びたいねーってなったときに、 その足でどっかで会えるらへん。
[ だから、うん。 びっくりするほど遠くないなら大丈夫。 にへらと笑って一口ジュースを口に含み、 投げ返された質問に同じく大学名で答えよう。
少し方面は違うけれど、ここから遠くはない。 家から1時間半とちょっとくらいかな。 なので慎一は今、よかったって顔をしている。]
(286) nabe 2021/06/18(Fri) 00時頃
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あー、でも、 一人暮らしいいなあ。 俺も金貯めて家出よ。貯めれたら……、
[ そう言って羨ましがる反応も、 ただ純粋に、その背景を知らない友人として。
慎一は鳩羽に家に起こったいろいろを、 詳しくは知らないままに本気で羨んでる。
この友人は一人暮らしをはじめるらしい。 家を出たければ自分で費用を工面するルールと、 自分にバリバリにバイトする自信が一切ないこと。 その二点に阻まれた慎一からするとそれは羨ましい。]
(287) nabe 2021/06/18(Fri) 00時頃
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[ ……なんでも知ってるわけじゃない。
こうやって顔を突き合わせて、 何時間だって馬鹿話できる関係でも、 その背後にあるなにもかもを、 ひとつ残らず分かち合うわけではなくて。
でも、この時間にもきっと意味はあって、 どちらも無理してるわけじゃないなら。
慎一はこうしている時間が楽しいし、 これからも、続けばいいって思ってる。]
(288) nabe 2021/06/18(Fri) 00時頃
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[ ……だからさ、]
……たまに遊びに行ってもいい?
[ なんせ、同じ学校の友だちが、 同じ学校の人じゃなくなったとき、 どういう関係を築いていけばいいのか、 慎一はまだイマイチ想像がつかない。
だから今はひとまず、 この場で思いついた想像を投げながら。
……それからさ、たとえばの話。]
(289) nabe 2021/06/18(Fri) 00時頃
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[ たとえば、この店を出たとき。
近くの道路があまり大きくなくて、 車通りや人通りがないんだとしても。
慎一がなんにも考えていないふうに、 ふいと道の端に沿って歩いて、 少し離れた横断歩道に向かっていっても、 ちょっとだけ遠回りに付き合ってくれる?
道を渡ったほうが早いなんて考えず、 気を抜いている自覚もなく歩き出しても。]
(290) nabe 2021/06/18(Fri) 00時頃
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[ あるいは、黄色信号で立ち止まるとか、 次の次の誕生日までは今と変わらず、 水っぽいオレンジジュースを啜っているとか。
へらへら笑いでごまかして、 周囲に合わせることもできるはずのこと。
きっとこれから、 ときどき慎一は忘れちゃうから、 もし見逃してくれるんなら、慎一はうれしい。]
(291) nabe 2021/06/18(Fri) 00時頃
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[ ……とにかく今は、
やたらと詰め込みすぎた氷が、 すっかり溶けて緑やオレンジを薄めるまで。 もしよかったら、くだらない話を続けよう。**]
(292) nabe 2021/06/18(Fri) 00時頃
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── 後日・暮石と ── [ 受験生にはたくさんすることがある。 けど、これだって慎一には重要だった。 手のひらに忍ばせた10円玉。 どう扱えばいいかわからなかったソレ。 ぴたりとふたりの視線が合って、 暮石が選んだ言葉に慎一はうなずいた。>>281 清くか精しくかはいったんさておき、 あの校舎に置いてこなかったんだから、 こちら側でこっそりせいさん≠オてしまおう。]
(320) nabe 2021/06/18(Fri) 09時半頃
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んー……、 別に押してってもいいけど、 声かけたら貸してくれると思う。 [ その日も慎一は自転車だったんだろう。 荷物が多いとかなにかそんな理由で。 暮石の分の足を調達する話。>>282 聞かれたなら気安い仲の級友に声をかけよう。 慎一の基準でいつもダラダラ学校に残ってるやつ。]
(321) nabe 2021/06/18(Fri) 09時半頃
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[ 妹の自転車借りに帰るより早いし、 二ケツという提案はすぐには出てこない。 借りるアテがつかなかったら別だけど。 とはいえ、どうせならどんな方法だって、 自転車でびゅんと風を切れたらいいよね。 買い出しの日には結局できなかったみたいに。]
(322) nabe 2021/06/18(Fri) 09時半頃
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[ 慎一は駄菓子には馴染みがある。 手作りのおやつにこだわる親もなく、 それ以外何も必要ないと言い切れるほど、 打ち込むようななにかもない18年だった。 だから、小学生が立ち寄るような店の前に、 よく知ったような顔で自転車を置いたら、 あたりまえみたく、懐かしいねって顔をする。 いくらこういう店だって、 10円玉ふたつじゃ選択肢は多くないけど、 慎一の知らない黒沢の好きなものとか、 暮石は知らないかもしれない、 消費税をカウントしなくていい話とか、 知恵を寄せ集めて二枚の硬貨をせいさんしよう。]
(323) nabe 2021/06/18(Fri) 09時半頃
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[ そんな最中にきっと、 小さいチョコを摘まみ上げたりしながら、 慎一はふと思い出したようにつぶやく。] ……あんときさあ、 数えはじめる前に一枚、 変なとこに挟まってたの見つけて、 俺、それ入れて数えたんだよね。 たぶん、暮石が数えたの、 俺がその一枚見つける前でしょ。 [ 慎一の声はあんまり重たくない。 ただ、きっとそういうことだよねって、 絡まってた紐をほどいていくような感覚。]
(324) nabe 2021/06/18(Fri) 09時半頃
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[ ……ああいや、 お金を扱うバイトとかは怖いなとか、 自分のしたことに対して思うとこはあったけど。 それでも、今回の件に関してだけ言えば、] はじめからさ、 一緒に数えてりゃよかったね。 というか、気づいたときに、 暮石にこっそり耳打ちしとけばよかった。 [ ……慎一にとってはそういう話。 だから10円玉一枚でも買える駄菓子を、 のんびりとした調子で吟味さえしていた。*]
(325) nabe 2021/06/18(Fri) 09時半頃
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── 後日・鳩羽と ── [ 「どっちでもいい」は、 慎一の視界にあまり多くは存在しない。 毎日変わらずバカみたいな話をして、 ゲラゲラ笑って過ごすためなら、 「それでもいい」って思ってたはずだった。 だからやっぱり慎一は、 君とおんなじ形をしているわけじゃない。>>315 ストローでコップの中に渦を作りながら、 春を迎えた先の未来の話をしていた。]
(326) nabe 2021/06/18(Fri) 10時半頃
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[ たとえ抱える背景が違くても、 お金がなきゃままならないのは一緒。 すべてを共有していなくたって、 ちょっとした共感を抱くのは難しくない。] 降って……うん、 降ってこねえかな…… 50万くらいぶわっと、 湧いて出てこねえかな…… [ 3億とか言い出すとよくばりが過ぎるけど、 そのくらいなら神様に届いたりしないかな。 バカげた夢想を膨らませて時間を消費しよう。]
(327) nabe 2021/06/18(Fri) 10時半頃
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[ それにさ、慎一にとってはやっぱり、 慎一の手探りなコミュニケーションを、 からりと笑って受け入れてくれるのが、 何にも代えがたく助かっちゃうので。] ……ありがと。 あ、でも。 泣いてる顔見てみたいから、 やっぱり、たまににする。 [ ほら、だいたい一番に泣いてる慎一には、 人の泣き顔ってそこそこ物珍しくってさ。]
(328) nabe 2021/06/18(Fri) 10時半頃
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[ どこまでもふざけた調子で笑っていよう。 慎一が息継ぎできる場所を増やすように、 それが君にとっても意味を持つと祈って。**]
(329) nabe 2021/06/18(Fri) 10時半頃
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── 後日・冬のファミレス ──
[ 結局のところそのときだって、>>335 具体的な数字を出したのは慎一のほう。 そのことにだって気づかずに、 笑っていられるんだから幸運だった。]
……ンな大げさな。
もし泣かせちゃったらそのときは、 おーよしよしってしてやるよ。
[ 何気ない日常じみた会話を、 本当に何気なく交わせること。 そんな時間も、誰かの泣き顔も、 全部慎一には貴重だから、大事に抱えてくね。]
(369) nabe 2021/06/18(Fri) 21時半頃
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[ ふと、続いて投げかけられた言葉に、>>338 慎一は返事をする前に少し考えたんだ。 まばたきだけを繰り返してその意味を考える。]
……泣かないよ。 息、できてるよ。今。
……いつか泣いちゃうかもだけど。
[ 向けられた笑みに目を細めて慎一は言った。
あんまりふつうにできているから、 なに聞かれたかわからないとこだった。]
(370) nabe 2021/06/18(Fri) 21時半頃
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[ ファミレスの片隅で、 薄い色水をつついているふたり。 ふざけ調子でげらげら笑って過ごす今。 それだって充分すぎるくらい楽しいけど。
でもいつか、「そういう意味」じゃなく、 泣いて、怒って、それからまた笑おう。 そういういつか≠ネら、いつまでも待ってる。*]
(371) nabe 2021/06/18(Fri) 21時半頃
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── 後日・暮石と ──
[ 文化祭準備のときみたく、 ふたりきりになったら案外、 なにかしら会話が生まれたかも。>>372
……変な空気になったりもしたっけ。 でも、それがあって今があるんなら、 結果オーライじゃないかな、とも慎一は思う。
でもとにかく、冬の風を切って走るとき、 鼻の奥がすうっとするみたいな感覚。 慎一は好きだから、共有できたならうれしい。 もたついているうちは、ゆっくりでいいからさ。]
(399) nabe 2021/06/18(Fri) 23時頃
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[ 店内を見回す姿に、>>373 「あんまり来なかった?」とか聞きながら。 きっとそういう何気ない会話もそこにあった。
透明な容器や紙箱の中に、 詰め込まれた小さな包み。
きっとイチゴ味のなにかがいいね。 黒沢像を少しだけアップデートして、>>373 狭い店内に似合わない育ち切った体で、 店内をうろついてみたりしよう。]
(400) nabe 2021/06/18(Fri) 23時頃
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なんで? 俺に怒るとこないじゃん。
ズルしたのはお互い様だし、 暮石も帳尻合わせしようって、 それで一枚足しといたんでしょ。
……ふふ、俺たち、 販売係が思ったより下手だったね。
[ その行為が実のところ、 慎一の安寧を思ってのことだったとか、 慎一はちっとも想像していないから、 まるで共犯者呼ばわりしていてごめんね。]
(401) nabe 2021/06/18(Fri) 23時頃
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[ 10円で買える駄菓子。 こんなに小さかったかなあって、 慎一は手のひらに乗せながらつぶやく。]
俺さあ、悪気なかったんだよね。 とっさに10円抜いちゃったけど。 10円ほしさにそうしたんじゃないし。
もちろん、ダメなのはわかってんだけど、 暮石もそうだったって思ってるから……、
ふたりでみんなに謝るべきかもだけど、 そういうタイミング? めぐりあわせ? ……が悪かったってことにしとかない?
[ きっと慎一のテンポは一定だった。>>375]
(402) nabe 2021/06/18(Fri) 23時頃
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[ 再度の謝罪にゆるりと首を横に振り、 慎一は思ったより小さい暮石を見下ろしてる。]
……だからあのとき、 相談しなかったのは、俺こそごめんね。
でもさ、見落とすことも、 数え間違うことも、誰でもあるじゃん。 あるんだよ。人間なんだから。
だから……、 きっと一緒に数えてたら、 誰にも「ごめん」はいらなかったなって。
[ 「ラクだった?」と尋ねられて、>>378 慎一はあんまり素直じゃない答え方をした。]
(403) nabe 2021/06/18(Fri) 23時頃
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[ 反省するべきはきっとその一点だって、 慎一はなんとなくそう考えている。
なんせ人生なんてトライ&エラーの繰り返し。 エラーの多い人生を送っているものだから、 暮石よりも自己反省会には慣れてるかもね。
そこまで気にしているとまでは思わず、 慎一は同時に駄菓子を吟味さえしていた。
暮石が摘まみあげたイチゴ味。>>378 それを横目に確認しながら、 慎一はフーセンガムを取った。イチゴ味。]
(404) nabe 2021/06/18(Fri) 23時頃
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……ああ、でも。 ふたりでわあわあ数えたほうが、 楽しかったかもなあって思うよ。
[ そしたら10円ズレていたって、 慌てながらもふたりの知恵を寄せ集めて、 うまいこと処理できた気もするしね。]
(405) nabe 2021/06/18(Fri) 23時頃
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だから、次があったらそうしよ。 今回は、俺と暮石だけの秘密ね。
[ さて、せいさん≠済ませてしまおう。
そんな調子でいる慎一はもう少し、 反省したほうがいいのかもしれないけど。 こういうことって慎一にはそう珍しくない。 特に、他人と関わって生きていこうとすると。
だから、硬貨を一枚ぽっちずつ握りしめて、 見知らぬおばあさんにせいさんしてもらおう。]
(406) nabe 2021/06/18(Fri) 23時頃
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[ 生きてるとわからないことだらけだけど、 駄菓子屋でのお会計のお作法と、 フーセンガムの膨らませ方くらいなら、 慎一にだってお手本を見せることはできるから。*]
(407) nabe 2021/06/18(Fri) 23時頃
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── 帰還後・炭蔵と ──
[ ギリギリ間に合ったらしいので、 やっぱり慎一はいつだってツイてる。
いくつかの「よかった」を重ねて、>>379、 あの校舎の中の時間を振り返りながら。
でも、むしろきっとここがはじまり。 問題が山積みの現実世界で、 みんなで長生きをしていくための。>>380
ひとまず一点、「ため息!」と指摘しよう。 もう黒沢は気にしないのかもしれないけど。
あるいは、慎一の前で吐ききって、 ほかのとこには持ち込まなければいいと思う。]
(410) nabe 2021/06/18(Fri) 23時半頃
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[ 慎一があの校舎で何を見て聞いて学んだか。 あるいは帰ってきてから何を知ったのか。
そんな話はいずれしてもいいよ。 そのときは炭蔵の話ももう少し聞かせてね。 例えばお米を粗末にしなかった話とか。 きっとこれからもその機会はあるから。
ひとまず、今は。 笑みとともに受け入れられたらしい申し出に、>>382 にいっと笑って大きくうなずいておこう。ぜひ!]
(411) nabe 2021/06/18(Fri) 23時半頃
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[ 尚、反射的につくりかけたガッツポーズ。 その二の腕なんざ上着を着こんで見えないけど、 慎一は意外と力持ちに成長したので、 腕がちぎれる心配はしてくれなくていい。>>383
でも、一緒に迷子になっちゃったときは、 人見知りがちな慎一と一緒に声をあげてね。]
(412) nabe 2021/06/18(Fri) 23時半頃
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大学? 成績に見合ってて、 家からも通えそうなとこ。 一応第一志望はー……、
[ 聞かれるがままに慎一は答える。 実家から通えなくもない距離の大学。 特に意外性もない、妥当な選択だと思う。
本当は家出たいんだけどねーとか、 雑談がてら付け足したっていいんだけど、
炭蔵の志望大学の話になっちゃうと、>>384 慎一は「さすがだなあ」と感心した顔して、 自分の話どころじゃなくなっちゃうと思う。]
(413) nabe 2021/06/18(Fri) 23時半頃
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[ さっそく不慣れ同士な学外の付き合い。>>384
多肉植物の栽培が趣味のユーガくんへ、 慎一は魚のいる水槽を眺めるのが趣味です。
……植物園と水族館でもハシゴしようか。 それか何かいいアイデアがあったら教えて。
なんにせよ、穏やかなのは慎一も好き。 君もそうなら互いが心地いいと思う時間を、 共有することができたらいいなって思うよ。]
(414) nabe 2021/06/18(Fri) 23時半頃
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[ せっかくうやむやにしようとしたのに、 改まった挨拶を返されたもんだから、 慎一はそれこそすっかり照れてしまう。>>385]
……うん。ユーガも。 いつもありがと。と、よろしく。
[ お返事は少したどたどしかったけれど、 炭蔵が急に声を上げて笑い出したもんだから、 慎一はちょっとびっくりもしてしまう。
けれど、肩を軽くたたかれれば、 きっとはじかれたように慎一も笑い出した。 いつかみたく、不思議そうな目なんかしない。 ゲラゲラ笑いあったりもしよう。友だちみたいに。]
(415) nabe 2021/06/18(Fri) 23時半頃
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[ タクシーを乗り込んでいく炭蔵が、 こちらを見てまだ笑い続けている。>>385
慎一には最強の自転車がついているので、 同乗するか聞かれたとしてもきっと乗らない。
ただ、なんかちょっとうれしかったから、 見えなくなるまで手を振っていてあげる。*]
(416) nabe 2021/06/18(Fri) 23時半頃
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── その後・バレンタイン大作戦 ──
えっ、いいの?! やったー、ありが、と…………
[ 本命ではありえないテンポの良さで、 紙袋から取り出されていく包み。>>425
はじめは素直に喜びの声をあげ、 イベントに乗じてもらえるならもらおうと、 差し出されたモノを手に取った慎一だった。
ぱあっと笑みを浮かべていた表情は、 その中身に目を落としたときに曇り、 よどみなく発されるはずだった礼は、 お尻のところでちょっとつまづいた。]
(429) nabe 2021/06/19(Sat) 01時頃
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え、岩モチーフ? 斬新……
[ たぶん、チョコと混ぜ込まれたクッキーの、 色合いのバランスのせいとかなんとか。
非難するでもなく純粋な感想、 あるいは疑問として慎一はつぶやいた。
そういえば、プラカードのときも……。 思い出して、番代のセンスならありえるかなって、 気付いたら口からこぼれ落ちていた言葉たちだ。]
(430) nabe 2021/06/19(Sat) 01時頃
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……とりあえず食ってみる! ありがとな!
[ まあつまり悪気はないので。 そして番代に害意があるとも思わないので。
慎一はにっと笑って、 相手によっては許されなさそうなことを言ったけど、
吹きこぼれたぬるいコーラのお礼として、 それはきっと妥当なラインの味がした。 ……とだけ、ここに書き記しておこう。**]
(431) nabe 2021/06/19(Sat) 01時頃
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── 後日・せいさん ──
……発端は、 変なとこ挟まったそいつだよ。
[ 雑然とした店内は、 18歳の体には少し狭苦しくて。 棚と棚の間で身をよじりながら、 ピンク色を探しては摘まみ上げた。
不思議そうな顔をした暮石に、>>434 慎一はちょっと笑いながら言う。
10円玉が変なとこ挟まらなきゃ、 こんなことははじまりはしなかった。]
(472) nabe 2021/06/19(Sat) 10時頃
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準備はバッチリだったんだけどな。 ……ままならないよなあ。
でも、しっかり準備してなきゃ、 きっともっとぐちゃぐちゃだったから。 チャートもスイッチも、あってよかった。
[ 「ありがとーね」と言いながら、 慎一は苦笑している暮石の手のひらの上、>>435 ポップな色合いの小さなお菓子に目をとめる。
「それ、おいしいよ」って平和な言葉を添える。 平和で平穏で平坦な会話を店内に響かせてく。]
(473) nabe 2021/06/19(Sat) 10時頃
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[ 二人の間でボールを転がすような会話。 そのときボールを持っていたのは慎一で、>>436 さんざん手元でもてあそんでから暮石に渡す。
しっくりくる言葉を探すみたいに、 暮石がゆっくりと言葉を吐くのを見ていた。
「いいの」って言われても、 慎一は言葉を最後まで待っていた。
「人間なんだから」それにうなずいて、 やっぱり静かな調子で言葉を紡ぐんだろう。]
(474) nabe 2021/06/19(Sat) 10時頃
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人間だから、うん。 想定外なんてなくならないし、 誰にでも起こりうることなんだから、 もうちょっとおおらかでいたいんだけど。
[ 頭ではそう思っていても、 いざ何かが目の前で起こると、 そうもうまくはいかない慎一だった。
でも静かに過去を振り返ってる今なら、 ちゃんと本心から言えているはず。
誰が悪いんでもなくて、ただ人間だから、 この世には想定外がありふれている。 もう少し寛容でいたいよねって、 これは慎一にとって願望でもあった。]
(475) nabe 2021/06/19(Sat) 10時頃
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[ 暮石がこちらを見上げてくる。>>437 そんな顔で見られるの慣れてないから、>>438 慎一は今ちょっとだけくすぐったいよ。
いつだって発展途上らしいから、 今度見上げてもらうときは、 もう少し大きくなっちゃってるかもしれない。]
……暮石はねー、 この店だとちょっと大きく見える。
[ 言葉の真意も取れずに、 見たまんまのことを言って慎一は笑った。 だからね、狭苦しい店内をそろそろ抜けて、 冷たい空気を吸い込みに行こうか。>>>439]
(476) nabe 2021/06/19(Sat) 10時頃
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[ 自転車を押して並んで歩きながら、 慎一は得意げにピンクのフーセンを作った。
「薄く均等に伸ばすんだよ」とか、 「ゆっくりゆっくりでいいんだ」とか、 先生面をしてたら10円分はもう残り少ない。
冬場の限られた日照時間。 もう太陽が隠れようとしてるころ、 慎一は真正面に向かって笑ってうなずいた。>>440]
(477) nabe 2021/06/19(Sat) 10時頃
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……うん。楽しかったね。 あの日の思い出のことさ、 俺も、きっとずっと持ってくよ。
変なトッピングの注文に焦ったのも、 10円玉をびくびくしながら間引いたのも。
[ せいさん≠セって済ませたんだから、 慎一も「楽しかった」って笑っていいかな。 いいよって言われなくても慎一は笑ってる。
「ばいばい」って言葉を受けて、>>441 慎一も同じように挨拶するまで待っててね。]
(478) nabe 2021/06/19(Sat) 10時頃
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うん。ばいばい、じゃーね。
[ さらりと挨拶を交わして踵を返そうとして、 慎一は思い出したように少しだけ立ち止まった。
まだそこに立ってくれているなら、顔を見て。 帰りかけてたんならその背中に向けて言う。]
ピアノ。弾いたんでしょ。 ……よかったね。って言っていい?
[ なにがよかったって? 深爪のことだと思ってくれても別にいいよ。 それじゃあ今度こそ別れの挨拶をしよう。]
(479) nabe 2021/06/19(Sat) 10時頃
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……いつか、 俺も聞きたい。暮石のピアノ。 ……だから、また今度ね。
[ ピアノには詳しくないけど、 慎一は音楽は好きだったりするんだ。
だから、そんなお願いをぶつけつつ、 ゆっくりとその場を立ち去っただろう。
ピンク色のふくらみが、 弾けてしまわないように気をつけながら。*]
(480) nabe 2021/06/19(Sat) 10時頃
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── 後日 ──
[ ……結局のところ、 サッカー部vsバスケ部のバレンタイン対決の行方は、 あるいは高校生活最後のバレンタインを、 もっとも充実したものにしたのは誰だったのか。
……そこにイケメンがいるじゃないかとか、 見えきった勝負だとかいうのはさておき、だ。
もらったチョコを披露し合う機会があったら、>>481 慎一は番代のチョコの出来栄えの差に困惑しつつも、 「ええっそんだけ? ユーガがあ?」って、 悪気のない声で騒ぎ立ててやっただろう。
おかしいなあ。慎一の友だちは、 みんな優しくっていいやつなんだけどなあ……。]
(497) nabe 2021/06/19(Sat) 12時半頃
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[ なお、バレンタインの日、 慎一の腕の中には、28(0..100)x1、 偶数:1+3個くらい。 奇数:番代の8点チョコ。今のところ。
そこそこ浅く広く3年過ごしたつもりなんだけどな。 本命は無理だとしたって、バラマキチョコくらい……、]
(498) nabe 2021/06/19(Sat) 12時半頃
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[ とにかく、おとこのこたちはそこに揃っていたかな。 もらった岩チョコ(※違う)を齧りながらでも別日でも、 慎一は心底不思議そうにつぶやくんだろう。]
……わっかんねーよなあ。 レンなんかもっともらえてもいいだろ。本命。 サッカーうまいし、友だちは多いし。 明るいし。優しいし。ノリいいし。
卒業式には第二ボタンと言わず、 全部引きちぎられてもよくない? なにがそれを阻んでるワケ?
[ 女子ってわかんないね。という顔の慎一。 自分のモテ非モテ状況にはさして興味もないが、 友人のこととあれば本気で首を傾げよう。]
(499) nabe 2021/06/19(Sat) 12時半頃
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[ ──尚、どう足掻いても慎一に乙女心はわからないし、 なにも閉鎖空間での内緒話ではないので、 飛び入り参加するというならご自由にどうぞ。**]
(500) nabe 2021/06/19(Sat) 12時半頃
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── せいさん≠終えた日 ──
[ もう半分大人みたいな18歳が、 どうりで身動きがとれないわけだった。>>537
雑多に積み上げられた棚の駄菓子や、 子どもなら邪魔にもならない位置に、 無造作につるされたカラフルなおもちゃを、
壊さないよう、蹴散らさないよう、 慎重に手足を運ぶやさしいふたりだった。]
(590) nabe 2021/06/19(Sat) 20時頃
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……それでいいよ。 ロボットだったら駄菓子も食べれないし。
もっと出来のいい人間になれたら、 本当の本当によかったんだけどね。
[ それこそおおらかで寛容な、ね。 とはいえ、これものんびりと慎一は言う。
もしもなんにでもなれるならなりたいもの。 それは結局のところ夢物語でしかなくて、 慎一にとっては寝て見るほうの夢だから、
もしも君にとっては目を開けて見て、 欠片だけでも掴めるようなものだったら、 やっぱり「よかったなあ」って慎一は思うよ。]
(591) nabe 2021/06/19(Sat) 20時頃
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[ 駄菓子屋を出た暮石は、 慎一の目には等身大の暮石だった。
20cmくらい低いとこに頭があって、 慎一のより狭い歩幅で歩きながら、 へたくそなフーセンを破いている。>>543
その光景にきゅうっと目を細めて、 「不器用だなあ」って慎一は笑っていた。
それとおんなじくらいの温度で、 「全部持っていくよ」とも言う。>>543]
(592) nabe 2021/06/19(Sat) 20時頃
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[ 高校生活とともにおわり≠ナ締めくくる物語。
きっとそれじゃあさみしいから、 目下つづく≠ノ書き換える作業をしてる。
まっすぐ正面から問い返す暮石に、>>544 いつかみたいに棘のある雰囲気はなくて。]
ユーガが言ってた。 別に自慢されたんでも、 なんでもないんだけどね。
[ 気恥ずかしそうな声。 珍しい一面を見た気がして、 やっぱりここでおわり≠ノするのは惜しいから、]
(593) nabe 2021/06/19(Sat) 20時頃
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……うん、いいよ。 暮石がよかったって思えたら、 いつか♂エも聞きたいなあ。
[ 曖昧なまま未来の話をしよう。 あ、でも。見通しが立ったら教えてね。
いつか。またね。また会おうね。 はっきりとした輪郭を持たない約束が、 ふんわりと夕暮れ時の空気を漂っている。
また今度≠ヘ実現されたのだ。 いつか、またね≠烽ォっとある日今≠ノなる。
そう信じているから、 もう一度だけ大きく手を振った。*>>545]
(594) nabe 2021/06/19(Sat) 20時頃
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── 後日・バレンタイン談義 ──
[ 番代のチョコにかじりついた慎一は、 「うっ……」ってなって紅茶を飲んだ。
口直し(失礼)にと、 綿見作の義理ブラウニーの袋を開けつつ、 ほかに、バスケ部マネ一同からのやつとか、
要は気持ちが重たくないやつばっかり、 慎一の前にいくつか並んでおり、 そしてそれを速攻で食べてる慎一だった。
かるうい気持ちで自分が振った話に、 鳩羽と柊がやり取りするのを見たりしながら。]
(595) nabe 2021/06/19(Sat) 20時頃
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チョコはチョコじゃん。 ポッキーでもチロルでも10円チョコでも。
[ カウントしちゃおうよって言う慎一だ。>>522 そういうことなら慎一も、 妹の失敗作を10個は食ったから数えたい。
そして、鳩羽のいうところによると、 鳩羽の家にはダメ親父がいて、 だからモテなくってもいいらしい。>>523
でも、柊のいうところによると、 義理の顔した本命説もあるらしい。>>565 ついでのような諸注意をほほーんと聞く。>>566]
(596) nabe 2021/06/19(Sat) 20時頃
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[ そしてモテなくてもよかったはずの鳩羽が、 「モテてーなーーー!!!」と叫ぶので、>>573
ブラウニーがおいしいなということと、 モテと遺伝の相関について考えてた慎一は、 やっぱり、少しだけビクッと顔を上げる。
鳩羽にモテ期が来ないのと同じくらい、 その叫び癖が慎一にとっては「なんで?」だよ。
口の中のものをきれいに飲み込んで、 それから理解しがたいって顔で口を開く。]
(597) nabe 2021/06/19(Sat) 20時頃
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友だち付き合いこんなにうまいのに、 恋愛になったら急にダメなことなくない? どっちもおんなじ人付き合いじゃん。
レンとつるんでるの楽しいし、 いろいろ、ラクだよ。なー、ユキ。
っていうか結局、 モテたいの? モテたくねえの?
[ 尚、慎一は鳩羽の親を知らないので、 ダメ親父とやらにはノーコメントだ。
このあとの議題に関わってくるので。 どっちなんだよって点に関しては、 このタイミングで一応確認をしておくね。]
(598) nabe 2021/06/19(Sat) 20時頃
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[ なんともややこしい話だと思わない? 慎一は思う。なんともややこしいよね。
モテたい≠ヘ男子高校生の夢だけれど、 こんな面倒な問題が伴うなんて知らなかった。
まあ、慎一の母国語は日本語で、 「好き」は「好き」でしかないので仕方ない。
仮に英訳の問題の中での「好きです」は、 I love you≠ナもI like you≠ナも、 おそらく得点はもらえるので問題もなかった。
たぶん、そのへんのややこしさについては、 みんなには遅れて実感を伴うんだろうから、 そのときには先輩として相談に乗ってよ。]
(599) nabe 2021/06/19(Sat) 20時頃
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[ ってことで……今のところは! 現時点での大先輩ともいえる、 柊パイセンの説法をよく聞いておこう。>>566
恋とは気づいたら巻き込まれてるもの。 何かが巻き付いてるはずもない軽やかさで、 またブラウニーをひとかけ摘まみ上げながら。*]
(600) nabe 2021/06/19(Sat) 20時頃
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── 後日・バレンタイン談義 ──
[ あっちからも>>598こっちからも>>609 柊大先輩に同意を求める声が飛んでいた。
恋愛になるといろいろ難しい。 同意を求められた先で柊がうなずいたかどうか。 それは慎一の納得度合いにもそこそこ影響する。 なにはともあれ、]
ふーーーーん。そーかね。 レンがダメダメなの想像つかないのに。 そんなに違うもんかねえ。なあ、ユーガ?
[ 違うと思います? 好きと好きの違いの話。 前髪を変えてモテ期到来……説もあったのに、 戦利品はちょっとさみしい友人にも尋ねながら。]
(625) nabe 2021/06/19(Sat) 21時半頃
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[ like≠カゃ足りなくてlove≠ェいいとは、 とんだ贅沢ものが紛れ込んでいたもんだな!
モテたいけど、モテなくてよかった。 言語化されて尚難解なその解答は、 慎一には到底理解の及ばない話であるがゆえ、]
ンー、よくわかんねえけど。 付き合える気しないなら、 モテなくてよかった、でいんじゃない?
付き合える気がしたとき、 モテたり好きな子できたらいーね。
[ そういうめぐりあわせって大事でしょ?]
(626) nabe 2021/06/19(Sat) 21時半頃
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[ いくら慎一がそいつをいいやつと思っても、 本人に付き合える気がしないのであれば、 きっと今はそのときではないのだ。と思い、
つまり、鳩羽憐のモテない理由の分析と、 今後の対策を練る必要はなくなってしまった。
なので、ゆるりと視線を巡らせ、 割とまじめな調子で思い出したように柊に言う。]
……ユキは、 制服をバザーに出したりする予定があるなら、 ちゃんと事前にそう告知しておきなね……
[ いっそ代替品に適当なボタン持ってくれば? とか、 そんなくだらない話にゆるりと水を向けていた。*]
(627) nabe 2021/06/19(Sat) 21時半頃
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真向一気 シンイチは、メモを貼った。
nabe 2021/06/19(Sat) 22時半頃
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── その後・猫とチャット ──
『アパート猫ダメじゃなかった??』 『餌やりしていいの?地域猫的な?』 『レンの顔より猫が見たい。ねこ。』
[ 山羊が腕組みをして難しい顔をしてる。 そんなスタンプをポイっと投げて、 慎一はようやっと顔を上げた。
ざわざわとした最寄駅のホームに、 一際大きな音でアナウンスが響いて、 目の前に電車がすうっと滑り込んでくる。
確認するまもなく、中はぎゅう詰めで、 慎一は毎日非常に不愉快な思いをしている。]
(644) nabe 2021/06/19(Sat) 23時半頃
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[ 季節は巡り、春を迎え、新生活だった。
受験を無事に終えて進学先を決め、 卒業式では答辞を読む誰かを、 みんなの中から見上げたはずの慎一だ。
なんでもないはずの日常も、 一旦そこで形を変えてしまうから、 きっと慎一はたくさん写真を撮る。
自分にとってかけがえのなかった形を、 きちんと記録に残そうとするように。 文化祭の打ち上げではあまり写らなかった人たちも、 今度はきちんとスマホの画面に入ってくれる?]
(645) nabe 2021/06/19(Sat) 23時半頃
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[ それから、残りのクラスの年間予算は、 卒業式後のパーティーか何かで使ってしまおう。 ごはんを食べに行ったっていいんだ。
余ってたんじゃなく、残してたんだよ。 今日だけはパーッと使っても怒らないから、 意外と融通がきくと見直してくれてもいいよ。
とにかく、変化の苦手な慎一にも、 どうしたって訪れる最後の一日。
慎一は朝6時に起きて台所で顔を洗った。 目玉焼きはちょうどいい固さに仕上がって、 牛乳もヨーグルトも切らしてはいなかった。 左足から靴を履いたし、雪なんて降ってない。
その日、慎一はけっこう気分が良かったので、 きっと機嫌良くゲラゲラ笑いの一日を過ごしたはず。]
(646) nabe 2021/06/19(Sat) 23時半頃
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[ そして日常は形を変える。
慎一は大学生になった。 弟たちは受験生に、妹は高校生に。 つまり、それぞれの肩書きが変わっても、 向井家の朝は戦場がごとく慌ただしく、 慎一はその中でたくさんのジンクスを守り続ける。
いくつか増えたものといえば、 右から2番目の改札を通って、 4両目の真ん中の扉から電車に乗るとか。
どれだけ平穏に過ごそうとしたとて、 満員電車は不愉快でしかないので、 やっぱり慎一は早いとこ家を出たかった。]
(647) nabe 2021/06/19(Sat) 23時半頃
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[ 目下の問題は慎一の融通のきかなさと、 柔軟性と応用力のなさをもってしても、 続けられるバイトが見つかるかってこと。
毎日のように求人広告を眺めながら、 ため息をついちゃいそうになるんだけど、 ひとりで考えても結論はなかなか出ないので、 友人らにアドバイスを求めようかって頃合い。
そこで降ってきた猫問題である。>>344 地域猫として受け入れられてるなら構わないが、 猫の行く末は正直気になる。バイト以上に。
散々猫についての返事をしてしまったし、 バイト決まった?って聞くのはまたでいいや。 人の波に流されながら慎一は見知らぬ猫を思う。]
(648) nabe 2021/06/19(Sat) 23時半頃
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[ 拝啓、ガラも色もよくわからない猫さん。 (友人が自分にばかりピントを合わせるもので)
おまえにも居場所があるといいんだけど。 なにがなんでも飼い猫になれってんじゃなく、 なにかあったときに「おかえり」って、 世話を焼いたり受け入れてくれる場所が。 急になくなったりしない場所がね。それだけ。
結局、猫はそのままアパートに居付くのか、 猫の今後について返事があったかなかったか。 いろいろあったりなかったりするんだろうが、 ここで語るのはこのあたりまでにしておこう。]
(649) nabe 2021/06/19(Sat) 23時半頃
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[ 語り尽くせない日常のひとかけらとして。*]
(650) nabe 2021/06/19(Sat) 23時半頃
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── その後・バレンタイン ──
……あれ、黒沢じゃん。 こんなとこで何してんの? ……待ち合わせ? 風邪ひくよ。
[ いやだって、人目につかなそうな、 中庭の隅っこのベンチってそれ、 絶好の告白スポットじゃないですか?>>640
ま、だとすればそこに声をかけるのって、 無神経中の無神経って話になるんだけど、 そこにいるのに気づいちゃったんだもの。
慎一に悪気はなく、気軽に歩み寄り、 まだ大事な時期だろうと心配もした。]
(683) nabe 2021/06/20(Sun) 09時頃
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[ ちょうど3年元バスケ部マネ一同からの、 毎年恒例のバレンタイン支給のあとだった。
炊き出しかって手際の良さで、 なんの雰囲気もなく配布されたソレだけど、 「一同」からとあってそれなりに豪華だ。
ホワイトデーには慎一たち3年元バスケ部員が、 放課後に近所のケーキ屋までチャリを飛ばし、 ショートケーキをこれでもかと買い込んで、 お返し&お別れパーティーをしたりもするんだ。
つまり、なんていうか──、 本命がもらえなくてもバレンタインは楽しいね。 そんな日に、浮かない顔しちゃってどうしたの?]
(684) nabe 2021/06/20(Sun) 09時頃
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[ そこそこ豪華な包みを抱えた慎一は、 ベンチに腰掛ける黒沢をじいっと見下ろす。 ……その謎の物体X、まだ残ってたかしらん。>>640
だとしたら慎一はやっぱり悪気なく、 「え、それ何? 食って大丈夫?」って、 眉をひそめて尋ねたりもしたんだろうけど。
……失敗作のラクな処理の仕方、知ってる? 慎一はちょっと詳しい。妹がチャレンジャーだから。*]
(685) nabe 2021/06/20(Sun) 09時頃
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── 後日・バレンタイン ──
お、……ひる、ごはん……?
[ 慎一は通りすがりなので、 コートを着込んでいたりはしない。
黒沢はどれだけ長居する気だったんだろう。 しっかり装備で首を横に振る姿に、>>729 怪訝そうをすっかり通り越して、 何言ってんだろって顔をしながら。
少なくともお昼ごはんには見えなかった。 これじゃお料理スキルだけじゃなくって、 誤魔化しスキルも10点としか言えないよ。]
(749) nabe 2021/06/20(Sun) 12時半頃
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……原材料が食べ物なのに、 こんなんにできちゃうんだから、 人間ってある意味すごいよねえ。
[ 誤魔化すような笑い方を見下ろして、>>731 慎一の頭にぐるぐると浮かんでいたのは、 何人かのおんなのこの顔と制作物だった。
毎年同じことを繰り返す妹。なっちゃん。 今年はなんだかゴムみたいに噛み切れない、 不思議なものを生み出していたけれど、 結局あれって何を作りたかったんだろう。 悲しいかな兄たちは完成形を知らないままだ。
それから、番代。これ似たようなもんじゃない? いい笑顔で人に配り歩いていたけど、黒沢を見て?]
(750) nabe 2021/06/20(Sun) 12時半頃
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[ ……とにかく、 誤魔化し笑いの黒沢は見てて居た堪れない。 なにかを察した気分になって、 慎一はかわいそうにって目をしてたと思う。]
……あー、失敗したの?
ひとりで処理しないほうがいいと思うよ。 マジで永遠に食べ終わんないから。 母数増やしてちょっとずつ食べりゃ、 ちょっとした笑い話になるからさ……、
[ まあ、お料理ができないキャラは、 何がなんでも受け入れられないってなら、 無理な話かもしれないけどね! 慎一はまだ結構あるソレを見下ろす。辛くない?]
(751) nabe 2021/06/20(Sun) 12時半頃
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あんね、番代は似たようなの配ってた。 毒じゃないし、もらった俺は食う。
……みんなに食べてもらえば? たぶん、笑ってくれると思うよ。
[ 少なくとも慎一はそういうの慣れてるから、 失敗作パーティーになっても参加するよ。 ……正直な感想は添えると思うけどね。
先輩からのアドバイスはシンプルだ。 人海戦術。これっきゃないねって顔で、 慎一は「どうしますか」って感じに少し待った。
判断は本人に委ねるけど、味に飽きたなら手伝うよ。 心身の健康とプライド、さてどっちを取りますか?*]
(752) nabe 2021/06/20(Sun) 12時半頃
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── その後・バレンタイン ──
[ 自己責任論。 自分の面倒は自分で見ようねって話。
慎一はそういうの嫌いじゃないし、 それを遂行できる人を尊敬してたんだけど、 さすがに今「すごいね」とは言えなかった。]
……錬金術は、 価値のあるものを生み出してこそ、 錬金術って呼ばれるんだと思う……
[ 謎の物体Xを穴が開くほど見つめても、 換金性のある何かには到底見えず、 慎一の口から出てくるのは、 フォローでもなんでもなく素直な感想だ。]
(813) nabe 2021/06/20(Sun) 17時半頃
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……うん、うん。
[ あの校舎にいた人にお礼を。 そう語る黒沢はなんだかいじらしかった。
バックストーリーに相槌を打ちながら、 慎一は静かにあの場にいた面子を思い浮かべる。
死なば諸共……というのはこのケースにおいて、 ちょっと不謹慎すぎる言い回しかもしれないけど、 えーっと、ほら。旅は道連れ世は情け? とかいうし。
すでに一名巻き込まれたらしい誰か>>794に、 心の中で「がんばろうね」って声をかけた慎一に、 黒沢は言いづらそうに告げた。「山ほどあるの」>>795]
(814) nabe 2021/06/20(Sun) 17時半頃
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山ほどかあ……、
[ 大丈夫、見て。慎一は笑ってるよ。 ちょっとだけ顔が引きつってるけど。
「助けてくれる?」求められたならもちろん! いくら慎一の腕が義理チョコを抱えてたとて、 友人には手を差し伸べられる人間でいたいって、 確かにそう願ったのは慎一自身だ。うん、だから。]
(815) nabe 2021/06/20(Sun) 17時半頃
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……俺、あんときのやつらに声かけるね。 大丈夫、黒沢はお礼がしたかったんだよって、 ちゃんと経緯は伝えとくから、みんな来る。
[ たぶんね。みんな絆されてくれるよ。 ひとりで食べれば二日分だとしても、 みんなで食べれば青春の1ページになる。
ひとまずここで一口いただいておこうか? 大丈夫。うええって顔をするかもしれないけど、 ほうじ茶があるならお口直しだってできるから。>>811]
(816) nabe 2021/06/20(Sun) 17時半頃
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[ ──かくして、 いつ∞どこで≠ェ決まれば、 きっと慎一は吹聴して回ったことだろう。 なんなら今からだっていいよ。
黒沢がお礼をしようとしてくれたみたい。 ちょっぴり失敗しちゃったみたい。 なんとか成功させたい一心で、 失敗を重ねたみたい。
みんな、飲み物を多めに準備して、 近々冷たくはない校舎で会いましょう。*]
(817) nabe 2021/06/20(Sun) 17時半頃
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── 余談・ホワイトデー ──
[ じゃんけんをしていた。自宅で。 慎一と、双子の弟と合わせて3人。 卒業式を目前に控えた時期のことだ。
ホワイトデーのお返し問題。>>759 柊に指摘されるまで慎一は忘れてた。 ホワイトデーを、というか、 卒業式との日取りの関係性を。
なのでそのときは「あ゛!」と叫び、 それきり「どーしよ」と役立たずになる。
卒業旅行案も捨てがたいけど、>>831 今からだと予約やスケジューリングが大変かな。 新生活が落ち着いたころに提案してみようよ。]
(849) nabe 2021/06/20(Sun) 21時頃
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[ 話を現在に戻そう。じゃんけんをしてる。 誰が買い出しに行くかのじゃんけんだ。
相手も本命じゃないんだしさー、 スーパーで適当にお菓子買ってきて、 こっちも適当にばら撒けばよくね?
3人のうち誰が言い出したんだったか。 ファミリーパックとかでよくねー? 気づけばそういう結論に落ち着いて、 もう代表でひとりが買いに行こって話。
たぶん慎一はあの日、 「ユキになにがしかのボタンをもらえれば、 寄ってきた大概の女子は満足すると思う」 とか他愛もない話にまじめに返すついでに、>>759 お返しの内容についても相談するべきだった。]
(850) nabe 2021/06/20(Sun) 21時頃
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[ もちろん、買いに行くのは負けたやつ。 なかなかそれが決まらずにいたとこに、 様子を見てた妹がふいに言い放った。
「ダッサ」兄たちはなにも言えない。 「わたしスーパーのとかヤだからね」
おまえに注文をつける権利はないって、 たぶん、3人とも思ったけど言えなかった。
おまえが言えよって小突きあってる間に、 妹が部屋に引っ込んじゃったから、 慎一たちは行き先を近所のケーキ屋に変更する。 あと、慎一はじゃんけんに負けた。]
(851) nabe 2021/06/20(Sun) 21時頃
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[ ──かくして、卒業式の日。
ありきたりな焼き菓子の詰め合わせを、 慎一は誰に贈るでもなく教室で開封する。
これ番代の分。市販のだから100点だよ。 こっちのちょっと大きいのは綿見にあげる。 黒沢もこれ、今後のお菓子作りの参考にして。
他にばら撒きチョコくれた子にも渡して、 余った分は「これ友フィナンシェ」つって、 あの校舎にいたメンバーに配り歩いて、
それでも余った分は式後のパーティーに、 ささやかな彩りとして添えられていたはず。*]
(852) nabe 2021/06/20(Sun) 21時頃
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── 後日・バレンタイン ──
[ コート姿の女子に囲まれそこにいた。>>853
「大丈夫?」って聞かれて、>>821 少し微笑む気遣いを慎一は見せた。えらい。]
大丈夫──だけど、 黒沢、よくそこまでひとりで食ったね。
[ フォローするつもりはあったんだけど、 素直な感嘆を足すとどうにもならなかった。 トータルあんまり大丈夫じゃないです。 とも取れる答えを返してもぐもぐしてると、 やって来た援軍から支援物資の供給が。>>853]
(857) nabe 2021/06/20(Sun) 22時半頃
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[ ありがてえ……と思いながら、 ほうじ茶とともに流し込む作戦だったけど、
一体どういうことだろう。 暮石が涼しい顔(※主観)をして、 クリームパン勝手に謎の物体を食べていく。>>854
まさか食べ合わせのおかげとは知らず、 慎一は心の中の暮石像をアップデートする。 意外と悪食らしい。見かけによらないなあ。]
(858) nabe 2021/06/20(Sun) 22時半頃
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[ その後援軍がやってきたんだかどうだか。 慎一はもぐもぐできる限りもぐったら、 コートもないことだし退散しただろう。 後日改めて食べる会があるなら参加するよ。 だから、凍えちゃわないうちに今は許してね。
こちら側では容赦なく時は進むし、 あと少しの間は受験生の形をしてなくちゃ。
リベンジの算段が聞こえたとして、>>855 でも黒沢、アルケミストだからなあとか、 野暮なツッコミは入れなかったのでえらかった。*]
(859) nabe 2021/06/20(Sun) 22時半頃
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── 後日・リベンジ ── [ 謎の物体Xを処理したバレンタイン。 あの日リベンジの約束が交わされてたこと、 結局慎一は知ってたんだかどうだか。 なにはともあれ差し出された包み。 見た感じおいしそうなんだけれど、 なんせ黒沢、錬金術使うからなあ……。 ちょっと警戒した目をしつつ、 免罪符のように添えられた名に、>>918 慎一はまたちょっと遠い目をする。 警戒しないでと言われたって、ねえ。]
(923) nabe 2021/06/21(Mon) 12時頃
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暮石かー……、 綿見じゃないんだ……。 [ 謎の物体Xを生み出す黒沢に、 8点チョコの番代、悪食の暮石。 慎一に信じられるのは綿見だけだよ。 ……ってなっても仕方なくない? まあ、でもね。 包みの中身はいたってふつうに見える。 おいしそうなチョコクッキーの形をしてる。 味見済だと黒沢も言っているし、 はじめは警戒していた慎一も、 おずおずって受け取るために手を出す。]
(924) nabe 2021/06/21(Mon) 12時頃
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その件は別にいいんだけど。 恨んでくるようなやつらじゃないし、 全然気にしてくれなくていんだけど。 なんていうか、黒沢って……、 まじめなうえ、向上心に満ちてるよね。 [ それを冗談と受け取れない程度には、 あの謎の物体にはインパクトがあった。
しみじみとまじめに慎一は答えて、 受け取った包みをその場で開く。 マスキングテープをびりっとちぎって。 お行儀が悪いって? おとこのこなんてそんなもんだろ。]
(925) nabe 2021/06/21(Mon) 12時頃
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[ それで、袋の中身を指先で摘まみ、 ぽいっと口の中に放り込む。 尚、手元にほうじ茶はもちろん、 飲み物の類は備えていないけれど、 だって、大丈夫なんでしょ? 信じるよ。 もぐもぐと咀嚼を繰り返して、ごくん。 口の中をすっかり空っぽにしてから、 慎一はにいっと笑って口を開いた。]
(926) nabe 2021/06/21(Mon) 12時頃
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──うまいじゃん! え、こないだのなんだったの? [ つい余計な一言が出てきちゃうんだよなあ。 でも、慎一は知らないリベンジのお約束、>>865 ぜひとも今後も守り続けてほしいって思うよ。 決められた手順を守るってのは、 料理に限らずとっても大事だからね。 慎一はそのことをとてもよく知ってる。 ……とにかく、 その日はおいしいおやつにありつけて、 慎一はご機嫌に「サンキュー」って言った。*]
(927) nabe 2021/06/21(Mon) 12時頃
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── 後日・卒業式 ──
うん。あれはね。 もらったとは思いづらい。
……けど、まあ。 友チョコ的なモノでもいいよ。 黒沢の錬金術が、 もう二度と起きない祈願もあわせて。
[ そんなこと言って慎一は笑った。 笑って、焼き菓子をひとつ押し付ける。>>1055]
(1082) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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いっぱい時間がかかっても、 人よりゆっくりペースでも、 そのうちできるようになるよ、たぶん。
[ 無責任な言葉もひとつ添えたけれど、 そういう心構えでいたほうがきっとラクだよ。
それに30年と少しかかるというならちょうどいい。 みんなが半世紀生きたお祝いにでも持ってきて。
……この先ずっと続く縁だろう? 少なくとも慎一はそう信じてるから。]
(1083) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ 写真を撮ろうと言われて、>>1057 慎一はもちろん! と大きくうなずいた。
レアな黒沢リベンジさせてくれる? 笑顔も、変顔も、躍動感あふれる没写真も。
でもね、いつもどおりの黒沢でも、 笑顔で隣に写ってくれるなら慎一はうれしい。*]
(1084) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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── 後日・卒業パーティー ──
[ わあわあとみんなに交じって騒ぐのが、 慎一は本当に好きだった。交じれてた?
だからきっとそのときもそう。 ふらふらと歩き回っていた慎一は、 ふいに呼び止められてぴたと立ち止まる。]
なに、暮石。
[ 大丈夫。慎一は機嫌よく振り返る。 「わあ」とも「ぎゃあ」とも言わない。>>1050]
(1085) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ お疲れ様と言われて悪い気はしなかった。 大したことをしたつもりはないけれど、 それは間違いなく慎一のお仕事だったから。
にいっと、あるいはふふんと、 慎一は笑いながら差し出されたカードを取り、 その紙面に目を落として、一層笑みを深める。]
……これ、ピアノ?
[ これも聞きようによっちゃ失礼な発言だな。 大丈夫、判別できてたよ。>>1051 慎一だってわかりきったことを聞くときもある。]
(1086) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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えー、えー……、 うれしい、ありがと。
覚えてくれてたことも、 呼んでくれることも、 そのー……、配慮? も?
[ 嬉しさと、ちょっとの恥ずかしさとで、 慎一はいつもみたくへらへらと笑ってた。
2年後の日付。指でなぞってみたりして。 紙のざらざらとした感触が伝わって、 そう、慎一はそういうの、落ち着くから。]
(1087) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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──うん! 何があるんだろうなあって、 その日まで楽しみにしとく。
[ 隣に並んで立っていると、 表情まではきっと見えないだろう。
フーセンガムの話。駄菓子屋の話。 「あのおばあちゃんね、 すんごい顔覚えいいんだよ」とか、 また暮石が知らないかもしれない話も。
笑いながら他愛もない会話を交わすけど、 あのさ、慎一は数字を覚えるの得意なんだ。 さっきの日付、もう絶対に忘れないからね。]
(1088) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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……暮石もね。 楽しいこと、いっぱいあるから。
[ 腕は二本しかなくて困っちゃうけど、 どっちも≠ヌころじゃなくきっとたくさん=B きみの行く道にもたのしい≠ェあふれますように。]
(1089) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ ──それから、
クラス委員会計本当に最後のお仕事。 合わなさそうだから、じゃなくて、 ひとりじゃつまんないから、 よかったら一緒に数字の足し引きをしよう。
1円だってズレちゃいないって自信があるから、 ぴったり0になった暁には「よかったね」って、 少しだけ得意げに顔を見合わせて笑わせてね。*]
(1090) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ それ以外にも、卒業式の日。
慎一はせわしなく、 あちこちで別れを惜しみ、 たくさんの写真を撮った。
慎一が友だちだと思ってんだから、 フィナンシェは等しく押し付けたはずだ。
ヨーコ先生に挨拶をして、 「来年からがんばってね」って、 おかしな激励を送ったりもした。
いつの間にか消えてた、 友人の制服の第二ボタンに、 「えっ」って視線を送りもした。]
(1091) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ したいことがたくさんあった。 それだけで慎一は幸福だった。]
(1092) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ それから。春の風が吹く頃。>>1063 呼んでくれたなら慎一は駆けつける。 誰かに必要とされるの、嫌いじゃないんだ。
……そういう言い方をしたって、 つけこんでくるような友だちはいないはず。
ボウリングだって誘われれば行ったよ。 球の扱いは苦手じゃない慎一だから、 56(0..100)x1点くらいは出せただろう。
相変わらずチャットの返事は簡素だけどね。 でも、つながり続ける縁があるのはうれしい。]
(1093) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ ……ま、投げると転がすじゃ違うからね。]
(1094) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ 「いいけど、俺免許ないよ」 そんな心もとない返事をしながらも、 チャリの距離ではなかったから、 慎一は電車を乗り継いで向かったはずだ。
免許、取りたかったんだけどね。 「そこで曲がって」と言われた瞬間、 ハンドルを大きく切るようなザマだから、 ちょっと今はまだ、予定は未定ってとこ。
だから少し時間がかかっちゃうけど、 ホームセンターでじっくり吟味しよう。 ところでふたりの共通の友人には、 ホームセンター通がいるんだけど知ってた? 慎一は受け売りの知識を披露したかもしれない。]
(1095) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ いくつ季節が巡っても、 食べて食べて食べて笑える、 そんなふたりでいられたならうれしい。
だから、ある夏の日、>>1064 送られてきた写真で相変わらず、 かわいい猫がブレブレだったとしても、 慎一は目を細めてそれを眺めたよ。
『当たった?』って返して、 その日気まぐれに慎一もアイスを買った。
……で、アタリだったかって? 今度会うときに持っていくからね。
それとももうおまじないやジンクスの類、 君の人生には必要なくなっちゃったかな。]
(1096) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ 慎一は今も左足から靴を履く。*]
(1097) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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(1098) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ かんぺきな一日なんてほとんどないまま、 日常はたやすくせわしなく形を変えてく。
みんな≠ヘみんな≠フままであると、 慎一は根拠もなく信じてた節があるけど、 その中にも、形を変えた関係があるなら、
それを知るとき慎一は目を丸くして驚き、 それから、「よかったね」って言うはず。 心の底から、嘘偽りのない笑みとともに。]
(1099) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ 不変のものなどきっと存在しないので、 慎一もみんなと同じ頃に大学生になる。
マクロだかミクロだか知らないけれど、 案外講義に数字が出てこなくて悲しい。
とはいえお金を管理する立場になると、 テンパって犯罪者になりかねないので、 なりたい職業はいまだなお白紙のまま。
それでも時間は平等に進んでいくのだ。 新歓の人混みにすたこら踵を返したり、 ライブハウスに響く音に怖気づいたり。
引き続き些事にひどく消耗しながらも、 慎一は、面白おかしく毎日を生きてる。]
(1100) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ だからこれは、語り切れない日常の一片。]
(1101) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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── 後日譚 ──
[ その四角い箱の中は騒々しかった。
うるさいなあって慎一は思うけれど、 ハッピーでご機嫌な大学生活には、 未成年飲酒と乱痴気騒ぎでできた、 こういう場も欠かせないって聞いた。
実際、楽しくないわけじゃなかったんだ。 半透明のピッチャーをなみなみと満たす、 生温いビールが各テーブルに置かれたときは、 さすがにちょっとびっくりしちゃったけれど。
当然のように渡されたグラスを受け入れた。 慎一はこういうとき、流れにあらがわない。
さすがに未成年飲酒をえらいとは思わないが、 今日も周囲の感覚に迎合する努力をしてる。]
(1102) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ 基礎演習のクラスで知り合ったやつと、 バスケやってたんだって話になって、 じゃあサークルに入ろうってなったのだ。
豊高のバスケ部は弱小だったし、 あんまり上手じゃないよって言った慎一に、 「うまいやつは体育会入るっしょ」って、 へらへら笑ったそいつと来たはずだった。
あるいは、基礎演習クラスの親睦会で、 各クラスにつくメンターの先輩が、 この場を取り仕切ってくれてるんだっけ。
いけない。事実関係まで混線してきたな。 けどまあ、そういうありきたりな場だ。 慎一はここでも多数派を真似して生きてる。 それなりに交友関係を広げて、日々愉快に。]
(1103) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ ところでみんなはもう酔っぱらったりした? みんなも自分の限界を越えてお酒を飲んだら、 少しは慎一の視界を感じてもらえるかもしれない。
部屋の中を動き回る人たちのカラフルな服が、 あっちこっちで混ざってぐちゃぐちゃしている。 カメラのズームボタンを間違って操作したみたく、 視界の遠近感覚がおかしくなっているのは、 おそらくお酒のせいだったけれど。
前後左右の声や物音が全部ごっちゃになって、 ボリュームの調節機能がバカになったみたいに、 変に大きく聞こえたり小さく響いたりする。 急にすべての音がこもって聞こえたりね。
みんながみんなお酒を飲んだらそうなるのか。 そんなこと知らないけど、とにかく、 視界がいつもよりひどい。酔っぱらっていた。]
(1104) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ 隣にいたはずのやつは気づけばいなくて、 慎一はぼうっと座敷に座っていた。
突然、「シン」って呼ばれる。 ここにも慎一をそう呼ぶ人はいる。 向井とも呼ばれるし、向井くんとも。 どれをとっても慎一のことだった。
それから、目の前にグラスが置かれた。 透明な液体がその中を満たしている。
「酔ってる?」って聞かれてうなずいて、 「飲めば?」って言われてグラスを取った。
何の疑いもなくそれに口をつければ、 無味無臭を予測したのとは裏腹に、 喉を焼くような刺激とひたすら苦い味がする。]
(1105) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ 酒だった。 噴き出す寸前でそれを飲み込んでから、 せき込みえずいている慎一に、 そいつは「気づかないかあ」って言った。 それから「酔ってるね」としみじみと。
それが悲しくてというよりは、 せき込んだせいで涙がにじんだ。
グラスがひょいと取り上げられる。 そいつはぐいと中身を飲んでから、 慎一の視線に気づいたようにこっちを見た。]
(1106) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ 明るい髪の色をしていた。 長く鬱陶しそうな前髪の下で、 一瞬、目を三日月みたく細めてみせた。
くりくりとした形の目のせいか、 鴉みたいに深い色の瞳のせいか、 その視線はなんだか妙に力強い。
やたらと瞳の印象が強いが、 正面から見ると整った顔をしている。 少しやせすぎなくらいの頬を緩め、 静かに、穏やかな笑みを浮かべていた。
場の熱気と酔いが回ったせいで、 薄着になっていく人間たちの中で、 長袖を捲りもせずにきちんと着ている。]
(1107) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ ……たぶん、そのせい。 慎一はそのときなんだかふいに、 「帰りたいなあ」って思って、
それに被せるようにそいつが、 「帰る?」って尋ねてくるから、 慎一は余計に帰りたくなっちゃった。
でも、こいつのことよく知らないな。 一緒に来たんでもない気がするな。誰だっけ。 名前の字面は覚えられても顔覚えは悪いんだ。 慎一の家、大学から結構遠いんだよなあ……。
「どこに?」薄ら笑いの伝染った慎一に、 「どこでも」いい加減なこと言うせいだ。
その瞬間、慎一の頭の中まで、 カラフルで賑やかでめちゃくちゃになっちゃう。]
(1108) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ たとえば、真っ白な雪道。 それを背景に佇んで、 なぜか眼鏡を大切に持つ人。
クレープ。パンケーキ。 生ぬるくなったコーラ。 ひしゃげてしまった菓子パン。 ピンク色のフーセンガム。
打ち上げに添えられた黒板の整った文字。 右斜め上を向くチャートと手作りスイッチ。 放課後の美術室、ホラーな試作品と屋台装飾。 薄っすらとした手首の傷。踵のバンソーコー。
揺れる黒色のしっぽを目で追いかけたり、 誰かの世話する鉢植えを静かに眺めたり。 冷蔵庫に並んだチューハイ缶を無視して、 人の家でオレンジジュースを啜る夜。]
(1109) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ いろんな光景や、みんなの声や、 そのとき鼻の奥を通り抜けたにおいさえ、 嵐のように頭の中を通りすぎてって、 慎一はどういうわけだか泣きそうだった。
気分が悪いのはお酒のせいで、 この場があんまりうるさいのは辛いけど、 思い出して泣きそうってなんなんだろうな。
お酒で余計に涙もろくなるなんて知らないし。 それなのに慎一は少し笑ってもいるんだ。 いったいなんだっていうんだろう。いや……、]
(1110) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ 慎一にはあの日々が愛しかったし、 今、無性に恋しくて仕方なかった。]
(1111) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ ──…………、]
(1112) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ 「わ」と誰かが言った。そいつだった。 次の瞬間、さわり心地の悪い湿った布が、 慎一の顔面にぎゅうっと押し付けられている。
「鼻血」って言われなくたって、 生あたたかい感触で慎一は気がついたし、
たとえ「気分は?」って聞かれなくても、 「……最悪だ」ってつぶやいていたと思う。
「そういうこともあるよね」って、 そいつはぼんやりとした視界の中で笑った。 うん。あんまり気分が最悪すぎるから、 慎一も泣き笑いだよ。そういうこともある。]
(1113) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ 今日もまたかんぺきな一日じゃなかった。
右から2番目の改札を通って、 4両目の真ん中の扉から電車に乗っても。 さっきお手洗いに立ったときだって、 左右を慎重に確認して靴を履いたのに。
賑やかな場に来るのは少し億劫で、 来てみたら楽しかったはずなのに、 結局、慎一はまたぐったりしてる。
慎一の人生はそういうことの繰り返し。 特別なことはなにも起きない。 きっと、そんなに特別な話でもない。]
(1114) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ 休んでるように言われて、 壁にもたれて蛍光灯を見てたんだけど、 慎一はふいに立ち上がって、 静まる気配のない喧騒の中を横切ってく。
会費は事前徴収制だった。 というか一年生はほとんど取られなかった。 だから大丈夫。慎一はもう帰る。それだけ。
左足からくたびれたスニーカーを履く。 後生大事におしぼりを握っていたが、 気づいたら鼻血はもう止まっていた。
ガンガン痛む頭をおさえながら、 慎一はその箱の中をひとりで抜け出す。]
(1115) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ 慎一の知った話じゃないが、 今、箱の中では派手な頭をした奴が、 今度こそ水の入ったグラスを片手に、 誰もいない壁際を不思議そうに見ている。 数秒経って、そいつも騒ぎの中を横切ってく。]
(1116) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ だから、たぶん。 そんなに難しい話じゃないんだ。
疲れるよ。 生きるのは疲れる。 情報量が多すぎる。 見たくもないものとか、 聞きたくもない音とか、 知りたくもない情報が、 いつも慎一をぐちゃぐちゃにしてく。
でもたぶん、おぼれかけたときに、 誰かの腕に捕まって息継ぎすることもできて、
そうすればきっと、慎一だって、 この立派な二本の腕でハグしてやれる。 自分以外の誰かを、めいっぱいの力で。]
(1117) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ ……思い出した。急に。 なりたかったものの話。 子どもの頃の作文の話。
同級生たちがなりたい職業や、 どんな大人になりたいかを綴る中で、 慎一は「魚」って書いたんだった。
でも、18歳の慎一は人間になりたい。 立派な二本の腕を持った人間にね。
これも成長って呼んでいいのかなあ。 我ながらゆっくりすぎてヤになっちゃうけど。
でもまあ、えらいよね。慎一もみんなも。 がんばっててえらいよ。生きてて今日もえらい。]
(1118) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ つまり──、 心配無用さ、くろねこ氏。>>718
日常は形を変えてくから、 新たな居場所を作るのには、 ちょいとばかり時間がかかるけど、
そういうときは踵を返して、 「ただいま」を言うアテもあるから。 きっと十人十色の声音で、 「おかえり」が聞けるって信じてる。]
(1119) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ 初夏を感じさせる風が心地よかった。
まだまだ夜はこれからって時間で、 人通りもある道を慎一は抜けてく。
お酒のせいで頭が重くて、苦しくて、 水面から顔を出すみたいに上を向いたら、 夜空にぽっかりときれいな月が浮かんでた。
あの冷たい校舎では白に隠れてた月だ。 帰ってきたあの日の夜空はどうだっけ。
とにかく、きれいだなあって慎一は思って、 そう、月がきれいで、みんなのことを思った。]
(1120) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ パシャリ、と一枚。 スマホのノーマルカメラで撮った空には、 月も星もほとんど輝いては見えないけど。]
(1121) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ グループチャットに、 不鮮明でブレた夜空の写真が一枚。
それから、なぜかとぼけた顔のヤギが、 「ただいま!」って両手を広げている。
きっと意味なんてわからないだろうけど、 よかったら気まぐれに空を仰いでみてね。
慎一はちょっと今日の夜空に詳しいんだけど、 このあたりは雲ひとつなく月がきれいです。
like≠ニlove≠フ判別はつけがたいが、 あんね、慎一はみんなのことが好きだよ。とても。]
(1122) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ ただいま≠言えるこの居場所だけは、 ずっと変わらないって信じてもいいかなあ。 慎一がもう少し大人になるまでだけでも。ね。]
(1123) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ ……ただでさえ酔っぱらってるのに、 歩きスマホなんてするもんじゃない。
小さな段差に足を取られかけて、 慎一は派手によろめきながらも、 すんでのところで強く地面を踏みしめた。
危ない。ビビッてドキドキしちゃうけど、 足も立派なのが二本ついててよかった。 バカみたいでちょっと笑えもするけれど。
ひとりでへらへら笑っていた慎一を、 追いかけてくる派手頭がひとつあって、 慎一は酔った頭で「ヘーキ」と言うけど、 まあ実際、あんまりヘーキじゃないので。
きっと明日、礼と謝罪を込めて昼食を奢る。 それで、やっとそいつの顔と名前を覚えて、]
(1124) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[ そして明日も、明後日も、その先も。 かんぺきでない日をゲラゲラと笑おう。**]
(1125) nabe 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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