10 冷たい校舎村9
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── 回想:チャイムの鳴る前 ──
[ 向き合え、逃げるな。 そんな言葉を紡いでしまったら、 炭蔵は自分の行動と発言が不一致すぎて 余計に行方が分からなくなってしまいそうだ。
だから、否定も肯定もできない、 ただそれだけのことだった。>>237
それから、炭蔵の話を聞いていた鳩羽から、 同意の言葉があった。>>239 何となく同意したとか、そういうものじゃない 仲間意識、みたいなものを感じた。 ]
(389) 2021/06/09(Wed) 09時半頃
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ははっ、案外俺たち、 似たもの同士だったのかもな
[ 繋ぎ合っていたバトンは、>>240 元あるべき左腕に収まった。>>241 誇り高き腕章は、鳩羽に良く似合っていた。
でも、そうだなあ、 これまでの自分が誇れるかどうか、 それすら基盤があやふやになっている 炭蔵にとってはどうにも怪しい。 でも、これだけは言える。 ]
(390) 2021/06/09(Wed) 09時半頃
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……俺もだ。
俺は、悪くない だから、父のせいで死ぬのは勘弁だ
[ 本当は自分自身、胸を張って誇りたかった。 ]
なあ、もしも俺より先に 解決策を見つけることができたら、 俺にも教えてくれよ
[ 互いの気持ちに寄り添い合うなんて、 炭蔵にはこそばゆくてもどかしい。 ]
(391) 2021/06/09(Wed) 09時半頃
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[ それでも、悪くはなかった。 この気持ちとの折り合いがつかなくても、 寄り添ってくれる君がいるなら、 答え探しをもう少ししてみようと思えたんだ。
それから、少し話して 炭蔵は鳩羽と別れ三階へ向かう。>>43 なあ、お前の頭の中だったら、 こんな物騒な事件起こさないだろ? その言葉を炭蔵は信じている。>>241* ]
(392) 2021/06/09(Wed) 09時半頃
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── 現在:保健室へ ──
[ 因みに、炭蔵だったら? ─── 多分言うだろう。>>366 その後を踏まえても、 今朝の登校を促してしまったメールのように
『文化祭を皆もう一度と楽しみたかったが、 これは想定外だった。すまない』
などと、謝罪するだろう。
尤も炭蔵が死んで泣くような奴がいるとは、 一切想定もしていなかったのもあるが。>>382
ただ、向井が役者になってTVに出てるとこ 見れないのは損をしたと思うだろう。>>367 ]
(412) 2021/06/09(Wed) 12時半頃
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[ それから、それから、─── 向井がなりたいもの≠ヘ、>>378 結局のところ分からず仕舞いだった。
役者という夢は簡単に途絶えて>>368 海のように深い思考があるとは露知らず、 ただただ炭蔵もおんなじように笑っていた。
この状況下で未来についてを 軽口のように話していられるのって 冷静に考えればすごいよな。 ]
(413) 2021/06/09(Wed) 12時半頃
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[ 完璧な人間については、>>370 炭蔵祐駕はそうありたかったから、 そう見えていたのなら良かったと言う。
誰かに期待されることも、 枠付されることも全て、 重荷に感じたことはない。 だから、そこまで気遣う必要はないぞ。>>372 ]
そう見えてて欲しかったから、 向井にそう見えてたのなら良かった うまいだろ、取り繕うの
[ だから、胸を張ろう。得意げに。 でも「嫌い」って言われるのは傷つくぞ。 炭蔵もちゃんと人間なんだから。 ]
(414) 2021/06/09(Wed) 12時半頃
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[ それに、だ。 向井の存在を負担に思うこともない。 発展途上の子どもを、 右肩上がりに伸びる曲線を描く子どもを、 自分の指標にしてたんだから。
むしろ、居なかったら? 炭蔵はどこに自分を据え置いてただろう。 ちょっとくらい手のかかる方が、 炭蔵祐駕にとっては非常にありがたい。 ]
でも、偶には、 休ませてもらっても許させるだろうか
[ 僅か5センチ上から、えらいえらいって、>>373 向井にやられるとちょっとムカつくけどな。 ]
(415) 2021/06/09(Wed) 12時半頃
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── 現在:保健室 ──
[ だから、こうして世話を焼ける方が、 炭蔵にとってはやはり有難い。>>381
手当に集中している間は、 向井の顔が見えなくて 声や声音でしか判断できない。 何を考えているのか分からなかったが、 一瞬の間があっても顔はあげなかった。 ]
(416) 2021/06/09(Wed) 12時半頃
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そうか
[ 泣くと言われて、返した言葉。>>382 涙の数だけ理由もあれば、 価格競争がしたい訳でもない。 向井にとっての想定外として 組み込んでもらえるほどの存在なれてたなら、 炭蔵祐駕にとっては、悪くないことだ。
だから、この笑いは、 ふざけてるように見えたからとか そう言うわけじゃあないぞ。 ]
(417) 2021/06/09(Wed) 12時半頃
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[ 但し、ゴールという言葉の意図が 炭蔵は掴めないでいる。>>383 ]
何だそれ、
[ 多分、水槽の中で目立って見えたのは、 他より完成されていたからじゃない。 動き方が普通の魚と違って、 垂直に泳いでいたりとかそういうの。 本当は、誇らしいと思いたかった、でも、思えない。
だから、ゴールには相応しくない。]
(418) 2021/06/09(Wed) 13時頃
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[ 水でふやかしたような、 結局はおんなじ内容の返事に思わず笑う>>385 ]
……向井がラクして生きる為にも、 そう簡単には死ねなさそうだ
[ 自分がゴール足り得なくとも、 新しい道を向井に示してからでないと。
だなんて、やっぱり偉そうに思う。 長年染み付いた感覚は、抜けそうにない。 ]
(419) 2021/06/09(Wed) 13時頃
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[ 手当を終えた後、>>386 向井は唐突にあるアイテムを口にする。 炭蔵が先程まで行儀悪く弄んでいたものだ。
試してみる?なんて言われれば、>>387 ポケットの中からそれを取り出して見せる。 ]
向井なら、どう使う?
[ ── カチカチ、と音を立てて刃を見せる。
炭蔵なら、どうだろうか? 首筋に刃を立てて、喉をかっきる? お腹を刺すには、細すぎるだろうか ともなれば、…… ]
(420) 2021/06/09(Wed) 13時頃
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手首、とかよくある話だよな
[ 出した刃を、左手首の皮膚に当てる。 それだけでは、何も思い出しそうにない。 軽く引けば、薄らと血が滲むだけだ。 ]
…… そう簡単なことでもないか
[ 向井も試すか? なんてカッターナイフを揺らして見せる。
促しておいてやらないって? まあ、当初の傷の手当という目的は果たしたのだ。 上に行くのを止めはしない。 ]
(421) 2021/06/09(Wed) 13時頃
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今度はひとりで行けそうか?
[ なんて、揶揄うように言う。 ]
俺は、少し片してから行くよ
[ 勝手に借りたものを出しっぱなしだ。 使ったものは、元の場所に戻さなければ。 それに新しい傷、作っちゃったしな。
だから、向井が出ていくのなら後ろ姿を見送って、 もう少しだけ、保健室に居残ることに決めた。 *]
(422) 2021/06/09(Wed) 13時頃
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── 現在:保健室へ ──
[ ほとんど動かない表情筋、>>428 これじゃあ確かに役者にはなれなさそうだ。 急に笑う回数増やしてしまうと、 筋肉痛になりかねないし、 向井の真似をするのは癪に触る。 だから、丁重にお断りをしておこう。
それと、助詞を間違えたんじゃない。 ああいうときも′凾ないでくれよ ]
(460) 2021/06/09(Wed) 18時頃
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[ それから、先輩からのアドバイス。>>430 ]
……善処しよう
[ 定型的日本人の返答をする。 炭蔵には本当に、そんな権利あるんだろうか? 誰かに枠付されて出来上がった自分に。 その枠を飛び越えたら、どうなるのか。
炭蔵は、やはり少しだけ怖かった。
だからと言って、向井を頼りたくはない。 もう少しだけ、自分で考えてみるよ。 忠告には感謝してるんだ。本当に。>>431 ]
(461) 2021/06/09(Wed) 18時頃
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── 現在:保健室 ──
[ 炭蔵祐駕という男には、 冗談というものは中々伝わらない。
でも、そうだなあ、 背負いたくて背負ってるんだ。 向井のひとりぶんくらい、そんなに重たくない。 ]
ああ、任せておけ ただし、見返りも欲しいところだな
[ でも、これは半分冗談、半分本気。 ジュースの一本くらいは、 奢ってもらってもいいだろう? ]
(462) 2021/06/09(Wed) 18時頃
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[ それから、 冗談が通じないって知ってただろ? 向井が驚いている様子に、>>435 むしろ炭蔵の方が怪訝そうな顔をする。
これまでつるんとして綺麗だった手首に 向井のかかとにあるのとそっくりな 横向きの線が一本刻まれている。 でも、それだけだ。 掴んでみたって、それ以上変わらない。 向井に掴まれてるところの方が、 よっぽど痛く感じるんだが。 ]
(463) 2021/06/09(Wed) 18時頃
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[ ようやく向井が口を開けば、 炭蔵の問いへの回答が聞ける。>>438
横じゃなくて、縦。 実演して見せる向井の腕は綺麗なままで、 刃の仕舞われたカッターナイフは、 もう一度炭蔵の元へ返ってきていた。 ]
ああ、俺も聞いたことがあるな 深く突き刺せないんだったか
[ 受け取ったカッターナイフを見るが、 流石にその実演までは行わない。 ほら、向井が今度こそ 泣き出しちゃうかもしれないしな。 ]
(464) 2021/06/09(Wed) 18時頃
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[ だから、元あったポケットの中へと戻す。 ちなみに、何でも入るポケットじゃない。 今はカッターナイフとハンカチ、 スマホくらいだ。 ]
片手で十分できる範囲だ
[ 息をふっと吐くように笑って、 その気のない言葉に必要ないと首を振る。
怒ってるんだか、拗ねてるんだか、 絆創膏が曲がってしまったら、 真っ直ぐになるまで枚数を使わせてもらおう。
保健の先生には、向井のせいってことに しておくから安心してくれ。 ]
(465) 2021/06/09(Wed) 18時頃
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ああ。足元にはくれぐれも気をつけて
[ 出て行く向井へ右手を上げて応えた。 向井の左手首と同じ、 傷一つない肌が覗くだけだった。 *]
(466) 2021/06/09(Wed) 18時頃
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── 現在:保健室 ──
[ それから、炭蔵は自分で自分の手当をする。 片手で消毒をして、上から絆創膏を貼る。 向井の期待を裏切って、 形は崩れることはなく、真横に綺麗に貼られている。
左手を握っては開いてを繰り返すが、 指先が痺れる様子もなければ、 動かしにくいなどもない。
ただ、ちょっと傷があるだけで、 何にも問題ないことを確認していた。 ]
(467) 2021/06/09(Wed) 18時頃
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そういえば、九重は何と言ってただろうか この世界からの脱出方法については──
[ 彼女は見つかっただろうか?
幾ら自分に家に帰りたくない理由があろうとも、 他のクラスメイトたちのことが心配だ。 まだ完全な夜更けまでには時間がある。
そう思い、保健室から外へ出ていった。 *]
(468) 2021/06/09(Wed) 18時頃
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── 回想:誇りのキャッチボール ──
[ お互いの悩みなんて、もう関係なかった。>>423 炭蔵も鳩羽も、悪くない。>>424 そう、自分のしたことは悪くない。
こんな作られたばっかのロボットみたいな 炭蔵でも信頼してくれる人がいる。 それは喜ばしいことで、─── 当然だ。 だって、正しいはずの父が作ったんだから。 ]
なあ 何が正しくて何が正しくないんだろう 俺はやっぱり、答えが見つからない
[ 任せられたら?>>425>>426 炭蔵は間違いなく、背負う。 ]
(507) 2021/06/09(Wed) 20時頃
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[ 人任せにされたって、 向井と鳩羽のふたりぶんくらい、 炭蔵にとっては負担でもなんでもない。 ]
ああ、任せておけ 答えが出次第、鳩羽に伝えるよ
[ 例えば、父が正しいなら、祐駕も正しい。 父が正しくないなら、祐駕も正しくない?
この時はまだ、 プログラミングされた思考の中にいた。 でも、ほんの少し生じたバグに気付けたのは、 間違いなくこの会話あったからこそだった。
結論を急ぐ必要はないと思っていた、 それが、チャイムが鳴る前のことだった。* ]
(508) 2021/06/09(Wed) 20時頃
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── 現在:3-10へ ──
[ 左手首の絆創膏を隠しもしない儘、 自分たちの教室のひとつ、隣。
3-10の教室を訪れていた。 廊下や、この教室に誰か居ただろうか。 挨拶もそこそこに、真っ直ぐと中央へ。
2mの手の届く距離の配慮だったのだろうか。 「グロ注意」と書かれた張り紙を>>234 炭蔵は決して無視したわけじゃない。 ]
───……っ、
[ 自分の目で見たものでないと、 信用できない性格が仇になる。 ]
(515) 2021/06/09(Wed) 20時半頃
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[ 配慮でかけてあったのだろう、 カーテンの下を覗けば、 首元の裂けた人間── じゃない人形だ。
あまりにもリアルで、 辺りに広がる赤いものも偽物だと思いたかったが、 この鼻に付くにおいが本物だと物語る。 ]
悪趣味な、
[ まるで九重にそっくりな人形だった。 臭いを遮るように鼻を摘み、眉間に皺を寄せる。 そうして、誰もがそうしたであろう。
人形の頭につられて、天井を見ていた。 ]
(516) 2021/06/09(Wed) 20時半頃
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[ どこかのクラスのお化け屋敷にあった、 装飾をまるでもぎ取ってきたような、 そんな景色が広がっている。
不気味、としか形容できなかった。 ]
(517) 2021/06/09(Wed) 20時半頃
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[ ところで、九重は見つかったんだろうか?
───…… もし、もしも、 九重がこの世界の主だったんなら? この世界でも改めて、死んだってことだろうか?
なあ、教えてくれ。 それともまだ、この校舎の何処かにいるのか? 死人に口なしとは、このことだろうか。 ]
きっと今頃、鳩羽が見つけてくれてるか
[ 軽くため息を吐いて、炭蔵は布を掛け直した。 *]
(518) 2021/06/09(Wed) 20時半頃
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