10 冷たい校舎村9
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[ 私が父に捨てられたもの。 捨てさせられそうになったもの。 ひとつひとつ拾い上げるみたいに、芽衣が頷いてくれる。 楽しかった。>>219 いらなくなんかなかった。 必要なくなんか、なかった。
そう、私は守りたかったの。奪われたくなかった。 自分の命を捨ててでも、守りたかった。 わかってくれて嬉しい。 芽衣はわかってくれる。友達は、わかってくれる。 私の大事なもの。必要なもの。 私に必要ないのは、むしろ ]
(229) 2021/06/15(Tue) 22時頃
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[ 芽衣は、私に心残りをあげたかったって言う。>>220 全然ダメって言う。>>221 そんなことない。全然ないよ。 むしろ私、芽衣の納得のいく演奏を聴いてたら、 心残り、なくなっちゃってた。 でも、芽衣は自分の演奏に納得がいってなくて、 聴いてもらいたかったって、言うから。 ……そっちの方が心残りになっちゃう。 でも、そんな迂闊な、2人を期待させるようなこと、 言えなくて。 私はそんなことないよ、って 首を横に振ることしかできなくて ]
(230) 2021/06/15(Tue) 22時頃
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[ そして、私の投げつけた質問に、>>212 真逆の答えが返ってくる ]
(231) 2021/06/15(Tue) 22時頃
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[ 炭蔵君の返事に、私は笑った。>>216 きっと涙目で、目じりは赤いけど、笑っちゃう。 ああそうだったなって思う。 自分ならこうする、ってはっきり言うけど、 私の選択を否定しない。 炭蔵君は、公平な人だった。>>0:650 そうだった。私、そのことを知ってた。 こんな時でも炭蔵君は変わらない。
変わらないなって思ったのに、 炭蔵君の話はそこで終わらなかった。>>217 命令じゃなくて、わがままで、お願い。 父に命令されるばかりだった私に、 炭蔵君は命令しない ]
……炭蔵君がわがままを言うなんて、意外。
(232) 2021/06/15(Tue) 22時頃
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[ 芽衣の答えに、私は笑った。>>224 これ以上なくシンプルに言い切られちゃった。 シンプルだったけど、芽衣がその二文字を口にするのに、 決意が必要だったこと、知ってるよ。 だって、友達だもの。わかるよ。 今までずっと私を否定せずに受け止めてくれた芽衣が、 私に突き付けた初めてのNOだもの。
まだちょっと歩み寄れただけの綿見さん。>>225 59点のクレープ。 辛いだけじゃないかもしれないこれからの未来。>>227 芽衣は一生懸命、私に心残りを積み上げようとする。 私の中に、もうそれしかない?>>228 ]
(233) 2021/06/15(Tue) 22時頃
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……わたし。 私、は、
[ 父に何か諦めさせられるたび、 私の中が空っぽになっていく気がした。 私の中に、まだ何か残ってる? ]
私、は、自由になりたい。 もう、父に雁字搦めにされるのは嫌。 見限られるかもしれないって怯えるのも嫌。 私は、……捨てられる前に、捨てたい。
[ 私が本当に捨てたかったのは、自分の命じゃない。 父による支配だった。 恩知らずと言われようと、私は、あの人と、 もう家族でいたくない ]
(234) 2021/06/15(Tue) 22時頃
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芽衣のピアノが聞きたい。 みんなと一緒にいたい。 みんなともっと仲良くなりたい。 みんなと、これからも、思い出が作りたい。
[ 私、もう空っぽだと思ったのに。 ひとつわがままが出てきたら、もう止まらなかった。 ぼろぼろ、涙と一緒にわがままが止まらない ]
みんなの未来の中に、私もいたい……。
(235) 2021/06/15(Tue) 22時頃
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[ 差し出された手は二本で、>>228 私の手も二本しかない。 左手を差し出すのは、特に勇気がいった。 そして右手にはクレープが握られたまま。 ここで格好よく両手を差し出せたらよかったんだけど、 やっぱり私、格好つけられないみたい。 だから私、ちょっと待ってね、って二人を待たせて、 べそべそ泣きながら涙トッピングのクレープを食べた ]
……私のわがまま、全部叶えてくれるって、約束して。 そしたら、帰る。
[ 少しくらいって炭蔵君は言ったけど、>>194 なにしろ私、生死の境をさまよってるんだよ? 少しくらいなんかじゃ気が済まない。 うんとわがままを言うけど、それでも叶えてくれる? 約束してくれるなら、私、2人の手を取ってあげる* ]
(236) 2021/06/15(Tue) 22時頃
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[乃絵ちゃんの質問>>231に、 わたしたちはわたしたちなりの答えを出した。]
(237) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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[炭蔵くんのわがままとわたしが積み上げる心残りが、 乃絵ちゃんの中に届いたのかな。 乃絵ちゃん>>232>>233はわたしたちの答えに笑った。
さっきあんなに首を振っていたのに>>230 もしかしてって期待しちゃいそうになる気持ちを堪えて、 わたしは手の差し出し続ける。]
(238) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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……うん。
[乃絵ちゃんが願いを口にした。 最初はいらないモノのこと>>234。 次に欲しいモノのこと>>235。
後者の話を聞いた時、わたし、指先が震えちゃった。
夢じゃないかな。 わたしが言って欲しいって思ったこと、 聞こえてるだけじゃないかな。
でも乃絵ちゃんの目からはぼろぼろと涙が溢れていて、 わたしは鼻を啜りながら笑った。 今度は強がりなんかじゃない、本当の笑顔だった。]
(239) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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[乃絵ちゃんはちょっと待ってねってクレープを食べる。 わたしはわたしたちの手を見て、炭蔵くんの顔を見て、 それから乃絵ちゃんを見て、からりと笑った。 何だか、ちょっと力が抜けちゃったね。
——わたしたちはみんな、二本の腕を持っている。
涙味のクレープがなくなるまで待って改めて。 わたしたちは、真正面から向き合った。]
……全然上手じゃないけど、いい?
[わたし、嘘つくのあんまり気にしないんだけど、 今だけは何の嘘も紛れ込ませたくなかったから、 乃絵ちゃんにひとつだけ尋ねた。 願い事には、わたしのピアノが含まれている。]
(240) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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絶対叶えるよ。約束する。
一緒にいよう。思い出作ろう。 ピアノも弾く……いつか、いつか。 ……ううん、未来のことは分かんないけど。 わたし、がんばるから、
乃絵ちゃんも、そこにいてほしい。
[わたしは差し出した手をもっと前に伸ばす。 いつの間にかわたしの目からは涙が消えていた。]
(241) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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[わたしは、わたしの宝物で、友達を迎えに行く。]*
(242) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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[ 俺が言いたいことを、 あの日黒沢がピーマンに例えて説明してくれたように 暮石がかみ砕いて 言葉にしてくれるのを聞いていた。>>227
もしも、黒沢の中が空っぽのように感じているのなら 暮石が心残りをひとつ積み上げたように 俺たちが黒沢の中を埋めてあげたいと思う。 ]
俺も、わがままを言ってみたかったんだよ 人生ではじめてのわがままをここで使うとはな
(243) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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[ 黒沢のひとつ目の願いは、>>234 俺も先延ばしにしてきたことだったから、 どこまで力になれるのか自信はないが。
二つ目の願いは、>>235 俺でも叶えられそうな内容だった。 ]
(244) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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[ べそべそとクレープを食べる姿が、少し可笑しくて ちゃんと食べ終わるのを待っていた。>>236
それから、黒沢がわがままを言う。 ]
分かった、約束しよう 絶対に叶えてみせる …俺のできる範囲にはなるが、善処しよう
俺の未来にも、黒沢が居て欲しい
[ 今回だけ、特別だからな。 わがままを全部、叶えてやろう。 だから、右手でも左手でもどっちでもいいから、 この手を取って欲しいと思う。
二本の腕は、手を取られるのを待っている。>>228 *]
(245) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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[ 私のわがままを全部叶えて。>>236 傲慢な私の要求に、 芽衣は上手じゃないけど、って言う。>>240 芽衣は、自分の手を大事にしてた。 芽衣は、ピアノを弾いた後、悔しくて泣いてた。 芽衣は、自分のピアノにきっとプライドを持ってる ]
私は、芽衣のピアノだから、聴きたいの。
[ 上手なピアノが聞きたいんじゃないの。 悔しくて泣いた芽衣の、納得のいくピアノが聞きたいの。 大丈夫、芽衣が自分の演奏に満足できる日が来ても、 もう私、心残りがなくなったって言ったりしないから ]
(246) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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いつか、遠い未来でもいいよ。 少なくともそれまでは、 ずっと一緒にいてくれるってことでしょ?
[ 芽衣が、自分で納得のいく、聴かせたいって思える ピアノが弾けるようになるいつか。>>241 ずっと、とかいつまでも、なんて言うのは 私にはまだ難しくて「それまでは」なんて言っちゃう。 言い慣れない私のわがままは、 まだまだ付け焼刃なのかもしれない ]
(247) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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[ 意外だと思った炭蔵君のわがままは、>>243 珍しいどころか人生初なんだって ]
初めてをこんなところで使っちゃっていいの? そんな貴重なの、 叶えてあげないとばちが当たっちゃうね。
[ 炭蔵君の初めて、私がもらっちゃうね。 誤解を招く表現?知りません ]
(248) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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[ 絶対叶えるって言った後、>>245 善処するって言い直す炭蔵君は、 とっても正直者だと思う。 その正直さに免じて、死ぬのは諦めてあげる ]
(249) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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[ 私は差し出されたふたつの手を取って、ぎゅっと握る* ]
(250) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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[乃絵ちゃんの控えめなわがまま>>247にわたしは笑う。]
それまでしか一緒にいてくれないの?
[なんて、ちょっと意地悪。 わたしのピアノを望んでくれた乃絵ちゃん>>246に、 それまでなんてある訳ないのにね。]
ずっと一緒にいたいってことだよ。
[約束じゃなくて、わたしがそうしたいから。 乃絵ちゃんに伝えて、わたしは乃絵ちゃんの手を引く。 そうしたら、乃絵ちゃんのもう片方の手を取った 炭蔵くん>>245にもその力が伝わるかな。 わたしは、校舎の果てから出ようと促した。]
(251) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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[音楽室の中、 わたしは手を繋いだ乃絵ちゃんを見上げる。 少し身体を傾けたら、向こうに炭蔵くんも見えた。]
乃絵ちゃん。
[わたしは大切な友達の名前を呼ぶ。 一緒に帰ろう。明日へ進もう。 そのために、まずはどこへ向かおうか。 道のりは分からないけれど、ひとつだけ確かなのは、 わたしが乃絵ちゃんの手をもう離さないことだけ。]*
(252) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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夜笑国 メイは、メモを貼った。
2021/06/15(Tue) 23時半頃
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[ 握られた手を、強く握り返した。>>250 ]
(253) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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[ 俺のはじめてを貰った責任は、 ちゃんと取ってもらわないと困る。>>249 だから、俺のわがままが叶うまでは 黒沢から目が離せない。
ところで、俺たちも帰る為には、 これまでの法則からすれば、 マネキンになる必要があるんだろうか?
……それとも、この世界の主が、 帰ると決めたのであれば、 もう少し違う帰り方があるんだろうか? ]
(254) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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[ そうだ、それから。 ]
帰る前に、言っておきたいわがままはあるか?
[ 現実世界の黒沢がどうなっているのか、 それを俺たちはまだ知らないけれど、 きっとすぐには会えないかもしれないから。
今、こうして話せるうちに聞いておきたい。 ]
(255) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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[ どうやって帰るのかは、黒沢次第。 ただ、この世界から帰る直前に呟くだろう。 ]
───… ありがとな
[ この世界に招待してくれて。 特別だと、思ってくれて。
反対側の腕が暮石の方に引かれれば、>>251 俺の腕も同じように引っ張られる。 黒沢へ視線を向ければ、向こうに暮石が見える。>>252
時の止まった冷たい校舎から、 みんなの待つ明日≠ヨ向かおう。* ]
(256) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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[ 「それまでは」って言った私に、>>247 「それまでしか」って芽衣は返した。>>251 私にはまだ難しいことを、 芽衣は軽々と飛び越えてしまう。 だから私はうんって頷いた ]
うん。「それまでは」は、取り消し。
[ 私にはもうないって思った未来が、 遠く広がっていく気がした。 やっぱり、まだ怖い。 足が竦みそうになるような、そんな気持ちもある。 でも、私の両手を握るふたつの手が温かいから、 私、歩けるよ。 名前を呼ぶ芽衣の声に促されて、>>252 私、もう一度頷いた ]
(257) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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帰ろ。昇降口から、出られるから。
[ もう、この校舎は誰も閉じ込めない。 だから私たちは手を繋いだまま、 昇降口からきっと帰れる。
先に帰ったみんなは、あんな目に遭ったのにね。 この仕様、本当に酷いよね。 でも、みんなは無事に帰れたけど、 私は帰ったら瀕死だから、 それに免じて許してくれないかな。 ここ笑うところなんだけど、やっぱり笑えない? 帰ったら私、冗談のセンスも磨くね ]
(258) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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