17 【半突発身内村】前略、扉のこちら側から
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[最後のほうは細切れに、訥々と付け足して。
言葉は詰まるけれど、不思議なことに 恐ろしさはあまり感じない。
空になったグラスの氷が溶けて、からん、と 透明な音がやけに大きく響いた。 ]
(177) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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孤独、そうやなぁ……ホリーさんもそう? そんなふうに言ってくれるの、びっくりする。 嬉しいなって思うわ、 私ぜんぜんだめやったから。
耐えなかったし、まわりに当たりまくったし、 暴れたし泣いたし、迷惑かけて大負け大負け。 20対1のコールド負け。
[肩を竦めて茶化して、私はホリーさんに 自分の身に起こった摩訶不思議な体験を話すだろう。
どうあがいても戻らないと本当は理解していながら 悲劇のヒロインよろしく 闇へ、闇へと向かっていた日のことを。 ]
(178) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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[細めた目でこちらを見上げるホリーさんを、 私もじっと見つめ返して、緩く笑む。 空のグラスが差し出されたから、 あれ、カルピス、美味しかった?気に入ってくれた? イケる口ですねぇと戯けて喜んで、 すっかり要領を得たやり方でおかわりを登場させた。 ]
……ホリーさんは、耐えられた? 耐えて、負けずにいられたのなら、 それって誇れることやと思う。 人のこと責めないで、 自分のこと責めて耐えるなら、なおさら。
[ずず、と重たくなったグラスをホリーさんの前まで 滑らせて、ゆっくり口を開く。 飲み物がある間は、話してくれるだろうか。 気分を害したりしなければいいのだけれど、と 思いながら、冷たい液体を喉から胃へ送った。]**
(179) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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[「救いようのないバカ」だなんて! ふふふ、そうかもねなんて笑って。 なんで守ろうとしたのか? 人間の言うことはもっともだった。 かつて、人間を見捨てて旅立っていった僕のお兄ちゃんは「世界一賢い竜」の祝福があった。 その兄が人間を見限り竜たちを率いて新天地に旅立っていく時、僕だけはここに残ろうと思った。
竜は生まれた時、天から加護を授かる。 兄は「世界一の賢明さ」 姉は「世界一の美しさ」 そうして僕は「不死の加護」
天の加護には意味がある。 兄がその賢明さで新天地を目指すように、姉がその美しさで竜たちを率いれるように]
(180) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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[お母さんは、いつも僕に言ってたよ。
『あなたは世界一優しい子。 ただそれだけでいいの。 生きて、幸せになってくれればいいの』
お母さん、ありがとう、お母さん。 きっとお母さんは不死の加護を受けた僕の運命を誰よりも分かっていたんだろう。 お母さんは死ぬまでずっと僕を守ってくれた、世界一の邪竜として。 世界の全てを敵に回して戦って、戦って、そうして僕を守ってくれた]
(181) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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[昔を思い出して目を細めて、 それから、声を荒げる人間にふふと笑って]
だって、喧嘩はよくないよ。 大切なものがいくつも一瞬でなくなっていくんだ。 それが同じ仲間同士だなんて、悲しいよ。
戦争だって、よくないの。 子供たちが泣いちゃうから、お母さんと離れ離れになったり家族がいなくなったりしたら、僕は想像するだけで悲しくて泣いちゃいそうだよ。 だって、僕はもうひとりぼっちだから。
喧嘩して誰かが不幸せになって傷付き涙を流すくらいなら。 僕がその分、不幸を背負おう。たくさんの傷を受けよう。涙を流して海を創ろう。
だって僕にはそれが出来るから! 僕こそが、あの世界の最後の祝福。
(182) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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[「不死の呪い」は「不死の加護」 優しい竜がせめて死なず、やがて幸福を見つけられると祈る、天と母の加護だった。
人間じゃない、なんて。 人間が言うから、 なんとなくそんな気がしてた。 だってとっても優しいから。 こんなに人間に怒る人間を、僕は初めて見た。
ばかって言われてるけど、その言葉は優しい。 どこかお母さんの言葉を思い出した。
優しく体を撫でられて、優しくて勇敢だと言われて。 僕は何も言わずにくるんと顔を体にすっぽり埋めて、どうしてかな? 今までどんな責め苦や呪いを受けても流れなかった涙が、カウンターに静かにぽたぽた落ちていった]
(183) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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でもね、本当はつらかったんだ。 いたかったよ、くるしかったよ。 何度も逃げたいって思ったよ。 でもでも。 お母さんが守った世界だったもの。 お母さんのお墓があったもの。 もういないってわかってたけど、でも、見捨ててなんて、いけないよ……。
お母さん、おいてっちゃ寂しいよ、かわいそうだよぉ……
[ぐすぐすと、僕は泣き声を言う。 邪竜失格だと思ったけど、もうあの世界の邪竜はいなくなったんだもの。
だから、僕は僕としてこっそり泣いた]
(184) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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[そうしていると、頭にふわっと若葉の瑞々しい匂いがして、きれいなシロツメクサの花冠が飾られていた。 なんだかそれだけで、今までの苦労が報われた気がした。]
うむ、よい趣味だ! これから我は花冠の王となるのもよいかもしれん。 人間の世界を全て緑と花で覆い尽くしてやるのだ! わっはっは!
[涙はぐしぐし拭って隠して。 花冠を誇らしげに頭に載せて。 名前を聞かれたのなら、少し……いや、かなり迷って、人間の耳元でこそっと囁く]
(185) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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我の名は………、 うぅん……、僕の名前は、
……………「ポポンタ」、だよ。 僕が生まれた時に原っぱいっぱいにタンポポが咲いてたから、お母さんが付けてくれたんだ。
でも、あんまり威厳がないから。 邪竜っぽくないから、秘密ね!!
「くりぃむそぉだ」はね、意外と近くにあるんだよ。幸せみたいにね。ふふふ。
[竜の仲間たちしかもう知らない僕の名前。 口にしたら、なんだかとても幸せだった]
(186) 2022/03/08(Tue) 23時半頃
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[花冠に手を伸ばす人間(じゃないけど)を見ていて。 なんだか苦しそうなのだ。 辛いなら、僕を叩いて辛いのごまかしていいけれど、この子はそうしない優しい子だ。
だから、お話しして何が辛くて痛いのか、聞いてみるのだ。 だから、この子の名前を聞くのだ]
……我の真名も教えたのだから、 そなたも教えるのだ! 等価交換なのだ! そうして我と盟約を結ぶのだ。
人間でないなら、我とそなたは盟友なのだ!なんでも話すのだ!
[ぐいぐいと、名前を聞こうとせがんでみて]
(187) 2022/03/08(Tue) 23時半頃
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[最後に、また褒められたからはにかんで。 できなかったと打ち明ける君に]
何も我と同じ事をせずともよい。 むしろ、これは誰にもできないからこそ我が背負った天命でもある。 できないことを嘆かずともよい。
生きているのだから。 ただそれだけで素晴らしい。
ただそれだけで……………、 僕に優しく花冠を作ってくれた君に僕は救われているよ。 ありがとう、君が生きて僕と出会ってくれて、僕はとても幸せだ。
[ありがとう、ありがとう。 優しく瞳を細め、また微睡む、今度は幸せな夢が見れそうだ。**]
(188) 2022/03/08(Tue) 23時半頃
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[ エフェメラームにはもう、太陽はない。 かつてそこにあったはずの巨大な天体は、 星の軌道が変わって随分遠くへと行ってしまった。
代わりに天に輝き続けるのは 禍々しい、白くて無機質な光だけ。 誰かが犯した罪の、残骸。
そこに朝も昼も夜もなく、 無機質な光は、光を与えてくれる代償に エフェメラームの生命を 今もなお、吸い取り続けている。 ]
(189) 2022/03/08(Tue) 23時半頃
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[ だから、そうだな 私は、空を′ゥていた。
ドームの上の深く暗い宙の色ではなく、 朝が訪れることを疑わない、陽を知る夜の色>>112 私の手の中に残る、一通の手紙を、見ていた。 ]
(190) 2022/03/08(Tue) 23時半頃
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[ 手紙を、書きたいと思った ]
(191) 2022/03/08(Tue) 23時半頃
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[ 書きたい、と願えば現れるのがこの世界だ。 ドームに突如出現したのは、 私の部屋に残してきた、古い書き物机。
それから、私がいくら探しても見つけられなかった あの時と同じ美しい緑のインク≠ニ万年筆だった 私にとって、とても大切な色だった。 ]
ああ…
[ これが、手元にあったなら。 あの常緑の森に住む小さな友だちにも、 きっと喜んでもらえる手紙が、書けたのに ]
(192) 2022/03/08(Tue) 23時半頃
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前略、扉のこちら側から
『 あなたの目には、何が見えていましたか 』
そう、綴ってくれた、誰かへ。
(193) 2022/03/08(Tue) 23時半頃
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ずっと忘れていたことがあった。 夜の次には朝が来ること。 太陽の陽を浴びて、星は輝くこと。 太陽が眠れば、暗い夜が訪れること。
あなたのような美しい星空色が 空に瞬き続けていること。
そんな当たり前のことすら失われて 私は、空を見ることも忘れていたんだ。
(194) 2022/03/08(Tue) 23時半頃
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私の目には、 美しい空が、見えていたよ。
朝が来て、昼が来て、夕方が来て、夜が来る そんな当たり前の空を見ていた。
陽を遮るように枝葉を伸ばした緑が 朝露に濡れ、きらきらと輝く様を見ていた。
(195) 2022/03/08(Tue) 23時半頃
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いつしか地面ばかり見るようになっていた 空の色が変わらなくなったから
空の色を見なかったふりをして、 星を飛び出し、いろんな世界を飛び回った もちろん太陽がない星だってあったから いつしか、空の本当の色を忘れてしまった
(196) 2022/03/08(Tue) 23時半頃
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それでも思い出したんだ 私の世界にも、美しい空があったこと それを、今日は思い出すことができた
扉のこちら側で 久しぶりに、ひとと話をしたんだ
美しい空みたいに表情を変える女の子 夕焼け空が好きだと言った男の子
そして、あなたからの手紙を受け取って 私は、思い出すことができたよ
私は空を、見ることが好きだったということ だからあなたの手紙に答えるなら、こうだ
(197) 2022/03/08(Tue) 23時半頃
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『 私の目には美しい空が見えていたよ 』
(198) 2022/03/08(Tue) 23時半頃
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だからどうか あなたにも美しい空が映っていますように。
私は扉の向こう側へ、 また、空を見に行こうと思うよ。
フーデリア 拝
(199) 2022/03/08(Tue) 23時半頃
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[ それに何かを見る目≠ェないなんて 私は知るよしもないから。
だけど、美しい緑色のインクで書いた手紙は 乾く前のインクが朝露のように きらきら、きらきらと輝いた。
そこには家の名前もなんにも関係ない、 私だけの名前を、添えて。
─── そして、いまここにあった 万年筆やインクとともに、 跡形もなく、消えていくのだろう。 **]
(200) 2022/03/08(Tue) 23時半頃
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宝珠 コーラは、メモを貼った。
2022/03/08(Tue) 23時半頃
調律師 ミケは、メモを貼った。
2022/03/08(Tue) 23時半頃
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─ タルトとくりぃむそぉだ ─
すごく…すごい
[ くりぃむそぉだの魔力に魂を持っていかれたおかげで 少女に失礼なことを言われていたなどとは まったくこれっぽっちも気が付かなかった>>123
もっともオタク≠ェ何のことかは知らなかったので 聞こえたところで憤慨することもなかったけれど ]
(201) 2022/03/09(Wed) 03時頃
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ぁ…ありがとう ございます
[ 気がつけば目の前に紙が差し出され>>123 震える手でそれをを受け取りながら この時わたしは『恥ずかしくて死にたい』という かつてない感覚に身を震わせていた。 死にたいと思ったことは一度や二度ではないが こんな頓死せんばかりに身悶える羞恥に 苛まされたことなどない。 ヒトの目に自らの本当の姿を晒したときですら こんなに恥ずかしいと思ったことはないのだから。
そうやってぷるぽるしていたので、目の前の少女の 豹変する様>>124になど気づく由もなく…… ]
(202) 2022/03/09(Wed) 03時頃
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!? これが…これがかの『くりぃむそぉだ』? 幸福と永遠の象徴≠ニ言われる飲み物? じゃ、じゃあもしかして神様への捧げものなのでは? わたしなんかが飲んでいいものなの?
え? ってことはもしかしてあなたって… その人形のを依り代に顕界した異国の神様なのでは?
困ったな…わたし他所の神様への作法とか知らない…
[ でぃあなんとかさんの何気ない一言と 味わったことのない衝撃的な味が相成って それはそれは盛大な勘違いに至るわけだけど そのへんの誤解を解いてくれたかはともかくとして 無事2杯目を戴くに至るわけで ]
(203) 2022/03/09(Wed) 03時頃
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名前? ホリーよ。わたしの世界のヒトの言葉で聖 どうしてそんな名前をつけてくれたのか不思議だけど
あなたはタルト? いい名前ね。 初めて聞く名前だけれど、不思議と耳に馴染むわ。 なんだか甘い雰囲気のある名前。 その姿にとてもお似合いね。
[ 名を問われれば特に抵抗もなく答える。 それから少し考えるように手元に視線を落とし ]
(204) 2022/03/09(Wed) 03時頃
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にせもの≠ニは言ったけど、 別に悪い意味ではなかったの。 でもそうね、あまりいい使い方ではなかったね。 ごめんなさい。
[ 先の問に言い淀んでいた様子を思い出す>>119 ]
仮初め≠ニ言ったほうが聞こえがいいのかな。 別に変なことではないと思うの。 わたしのこの姿だってある意味そういうものだし。 ヒトだって演じるものでしょう? 営むために役割を
(205) 2022/03/09(Wed) 03時頃
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でも結局演じようが装うが 本質的にはそんなに変わらないんじゃないかな。 だってそこに本物≠ェいないわけじゃないから。
[ タルトがお人形を指すのか、その中の者を指すのか わたしにとっては大きな違いはない。 今話しているくりぃむそぉだ≠授けてくれた この子がタルトなのだから ]
それに仮初めが仮ではなくなることだってあるのだし。 わたしもこっちの姿のほうが遥かに長いから もう、どっちの姿が本当なのか実感はないの。 [ ヒトの世で生きるための術ではあったのだけれど あまりの馴染みすぎた。体も、心も、思い出も ]**
(206) 2022/03/09(Wed) 03時頃
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