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この村にも恐るべき“人狼”の噂が流れてきた。ひそかに人間と入れ替わり、夜になると人間を襲うという魔物。不安に駆られた村人たちは、集会所へと集まるのだった……。
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ちゃんとご注文通り、さまざまな人たちをお呼びしましたよ。 いたるところから…そう、地平の果てや、宇宙の彼方からも。
中には、主様を消してくださるような方もいらっしゃるかもしれません。
(0) 2023/11/10(Fri) 02時半頃
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それは地球と呼ばれる 青い星で起きたことかもしれないし
全く別の星で起きたことかもしれない。
(1) 2023/11/10(Fri) 02時半頃
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青い星 地球は、メモを貼った。
2023/11/10(Fri) 02時半頃
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─近しい世界─
[──可能性の数だけ世界は分岐し、存在している。]
[もしそれが事実なら、ほんの少しの差異で分岐した世界という物も存在し得るのだろう。たった一つの行動が、或いは偶然が生んだずれが、結末を大きく変える事だってあるのかも知れない。]
・ [一つ確かなのは、どういう訳か“私”はまだこうして自我と思考を保っているという事だ。一度死を迎え、心臓以外の全てを喪った今も、息子──康生の胸の中に居る。比喩的な表現ではなく、移植された心臓として。]
[外部は勿論、康生にすら声を届ける事は出来ないこの思考が、どれだけの意味を持つものなのかは解らない。けれどもまだ私は、康生の五感を通して状況を知る事も、それらに対して何かを感じる事も止めてはいなかった。]
[康生とその学友達──加えて私が、地球を守るパイロットに選ばれ、死の運命から逃れられないと定まった時も。戦闘やそれに起因する出来事により、康生の学友達が既に幾名か命を落とした今も尚。私は康生の胸中で、不毛な思考を垂れ流し……生きている。*]
(2) 2023/11/10(Fri) 03時頃
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死刑宣告はとても静かに下された。
柔らかな手が頬を撫でるかのように。 耳元に響くものはなく、悟りに近い。
脳内に決定事項を植え付けられた僕は、否応なしに事実として受け止めるしかなかった。
芝居がかった声でもした方がまだ恐ろしくもなかったのに、人智を越えた力によって知らしめられたのである。
ーー次のパイロットは、僕だと。
今までの抵抗などまるで無駄だとでも言わんばかりの確定。 死神という名の聖母は、優しく緩やかに僕を胸に抱く。
なんて甘怠くーー吐き気がするような感覚だろうか。
運命から逃れられない憐れな子羊である僕は。 ーー嗚呼、僕は。
(3) 2023/11/10(Fri) 04時頃
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死ぬんだ。
(4) 2023/11/10(Fri) 04時半頃
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乾恵一という矮小な存在について、周囲の人間が知る事実はなんであろう。
中学時代を知る者なら"練習熱心な野球少年"だろうか。 だが、僕は肩を壊し野球を止めてしまった。ピッチャーを続けるのは無理だった。
そんな僕を兄に誘われて、去年から天文部に所属している。
今の僕は高校二年生だ。 身長はさほど高くもなく、割りと痩せ気味。顔は目付きが悪いフツメンで女子にはモテない。 性格は疑り深くて生真面目だ。 成績は普通。つまり大して良いところがない。
表面上のデータはこんなところか。 もっと奥深く掘り下げれば、僕の最低な人格やら行いも出てくるわけだが。
(5) 2023/11/10(Fri) 04時半頃
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天文部での僕はどう思われているだろう。 天体に詳しくもないのに入部し、部室でも星に関係ない本を読んでいる不熱心な部員、だろうか。
または、兄にべったりな金魚の糞。
なんにせよ、良い評価など1つもない。僕を善きと思ってくれているのは、優しい両親と慈悲深い兄ぐらいのものだ。
こんな僕だから、僕がいつ死んでも、消えても地球には1ミリの損失はないけれど。
しかし、僕は死にたかった訳ではないのだ。
知らぬ内に、地球を護る為だかの闘いに巻き込まれた。
(6) 2023/11/10(Fri) 04時半頃
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そう、始まりは今年の夏合宿であった。 去年と同じ海辺の宿泊施設に僕らは来た。 天体観測をし、花火をしてーー合宿を終えるはずだったのに。
地元の少年を名乗る者にゲームのモニターにならないかと誘われた。
疑うことなく僕らはその契約をしてしまったが、あれはーー
ゲームなんかじゃなかった。 ゲームだったら、どんなに救われたかわからないのに……。
翌朝のことだ。巨大な敵のロボットが何もない空間に忽然と現れて、少年が乗るロボットとの戦闘が始まった。
テレビ番組のどっきり企画かと思ってしまうほどそれは非リアル、荒唐無稽で。
だがーー戦闘により町に被害が出た。少年が命を落とした。
現実の出来事だったのだ。
僕らはーーそのロボットに乗り闘うパイロットとしての契約をさせられてしまったのだ。
(7) 2023/11/10(Fri) 04時半頃
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闘って負けたら地球が消滅する。 勝ったら地球は無事だが、パイロットは死ぬ。
こんな理不尽なルールを強いられ、僕らの仲間が既に二人コックピットにて命を落とした。
僕はーー繰り返すが、僕という存在は本当に価値がなく、ゴミクズに等しい。
地球を護るために死ぬには相応しいとある意味言える。 要らないんだから。
去年の僕なら。そう、野球が出来なくなり絶望し、兄の恋人を寝取るなんて最低をした時の僕なら、死を受け入れたかもしれない。
でも、今の僕は。 僕には。
"どうしても生きたい"理由があった。それはーー。
(8) 2023/11/10(Fri) 04時半頃
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ーー大和の激闘の後/外ーー
大和戦の後、コックピットから排出される。 僕の手には壊れた録音機が握られていた。もうなんの意味もなさない、役に立たないものだ。
足元に投げ棄てる。
なんで、なんでこんなに早いんだ?七尾さんの時も、大和の時もすぐではなかったじゃないかッ もっと時間の余裕があったのに。
どうして僕に対する死の宣告は早い?
まるで僕の努力を嘲笑うような結果だ。無駄な抵抗は止せと。
僕は新聞記者である雨竜先輩の父親を通じて、マスコミとの接触を謀っていた。 証拠となる録画や録音素材を消してしまったから、交渉は決裂するだろうけど。 それでも時間があれば、他の策だって出来たじゃないか?
畜生ッ……
(9) 2023/11/10(Fri) 04時半頃
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みんなは大和の死を悼んでいるだろう。まさか、もう次のパイロットが選ばれたなんて、思ってもいないはずだ。
ーー僕は彼を探した。
姿を見つけたら近寄り、袖を掴む。
「……コウ。」
柊木康生。僕の最愛、僕の全て。僕のーー僕の恋人。
声の震えを抑えるのに苦労した。この場で抱き着きたい衝動に駆られたが、我慢する。
「ーー傍に、いて。」
喉から絞り出せたのはそんな言葉。事実を告げるのを僕は躊躇った。
抗いようがないのはーーわかっているのに。*
(10) 2023/11/10(Fri) 04時半頃
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─二心同体の親子─
[私達父子の関係は、世間一般で言う所の“普通”とは掛け離れたものだろう。仲が良いどころか、一つの身体を共有してるのだから。意思疎通こそ出来ないものの、私は康生の事は知り尽くしてると言えるし、考えている内容も概ね予想が付く。常に一緒に居るからだ。]
[当然ながら、最初からこんな状態だった訳ではない。康生が生まれつき心臓に欠陥を持っていた事を除けば、私達は極普通の家族だった。康生は病にもめげず素直な子に育ってくれたし、そんな康生を支えるのが私と妻である明日香の生き甲斐だった。]
[全てが一変したのは四年前、私が交通事故に遭ってからだ。脳死状態に陥った私の心臓は、事前にしていた親族優先提供の意思表示に従い、息子の康生へと移植された。普通なら、そこで私の人生は終わった筈だ。だが何の因果か、こうして意識だけの存在として、私はまだ生きている。]
[──そう、生きているのだ。]
[康生が、私を生きた存在として扱ってくれているからというだけではない。心臓がまだ動いているという理由でもない。思考が可能だからという訳でもない。]
(11) 2023/11/10(Fri) 06時頃
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[日常に降って湧いた理不尽──アストロと名付けられたロボットが、康生と私を別個の命だと判定したからだ。契約した者の数だけ用意される、コックピットの椅子。それが、康生の分と私の分の両方存在したのだ。今、康生(とその中に居る私)は康生の為の椅子──病院ベッドに座っており、私の為に用意されたであろう書斎椅子には天道縁士という少年が座っている。]
[要するに、傍から見れば康生が一人で二重に契約している状態であり、代わりに天道縁士が契約をしていない事になる。当然、私だけでなく康生もその事実には気付いている。気付いた上で、康生は口を噤む事を選んだ。知られれば、パイロット間の火種になると考えたからだ。]
[私と康生、そして天道縁士の三人が最後に残るなら、この事実を隠し通せると踏んだのだ。確率としては6%しか無いものの、ゼロではない。これが一番、穏便に事を済ませられる方法ではある。万一を考え、パイロットでない加賀先生にだけ真実を明かして。]
(12) 2023/11/10(Fri) 06時頃
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[それはつまり、康生の親友であり、好意を寄せてくれている乾恵一に対しても、全てを秘するという事を意味していた。契約の件は勿論、真相に気付かせかねない心臓の件も、父親である私についても、何もかも。それが、彼にとって一番良いと判断したのだろう。]
[康生がそう決めた以上、私に出来る事は何も無い。生きていると同時に、私は死人だ。口など無いのだから。]
(13) 2023/11/10(Fri) 06時頃
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─大和命戦後 外にて─
[積尸気の輝きがまだ網膜に残る中、全員がコックピットから外へと転送された。事前に処遇を任されていたのだろう、ハロは大和命の遺体と共に姿を消した。康生は、アストロへと視線を向ける。また、光点が一つ減っていた。]
[背後から袖を掴まれ>>10、振り返る。乾恵一の姿を認識するのとほぼ同時に「コウ」と呼ばれた。彼は精神的に不安定な面があるが、今はいつにも増して何かを押し殺した様な陰を背負っていた。康生も、それは感じ取ったのだろう。僅かな疑問と、それ以上に安心を与える温かさを含んだ声で応えた。]
ケイ……? ん、わかった。ちゃんと居るよ、傍に。 何なら、家送るし。ほら、ここ突っ立ってんのもアレだろ?
[「な?」と笑顔を向ける。部屋にお邪魔した事はまだ無いが、もし彼が望むなら付き添うだろう。康生の母親は仮住まいの方に居るから、うちに招くという選択肢もあるにはあるが。いずれにせよ、途中で一度遅くなる旨をLINEで母親に伝えるだろう。**]
(14) 2023/11/10(Fri) 06時頃
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私たちの平々凡々とした穏やかな日常が崩れたのは、天文部の合宿の行われたそのすぐそばで未知の出来事が起きてからだった。 街中に現れた巨大な…ロボット? 戦闘自体は海の方で行われたけど、合宿に参加したメンバーも無事だったけど、それからはあの謎の物体が何なのか、そんなニュースばかりが流れていた。 その次に戦闘が起きたのは私たちの学校のすぐ近く。 避難訓練が役に立つ時が来るなんてと、今までちょっと遊び半分でも受けていたそれのおかげで冷静に避難出来たことに感謝したり、巻き込まれる理不尽に悲しくなったりもした。 あのロボットたちはなんでこんな街中に急に現れるのだろう? どうして私たちの街を壊していくの?
(15) 2023/11/10(Fri) 09時頃
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でも、そんな中でも私たちは日常を過ごしていた。 花火大会にも行ったりして。 ──その帰りに命くんとお付き合いすることになった。 命くんは復興のお手伝いをしてるし、私は私で家で色々してるし。 復興支援は大切なことだから危ないけどやめてと言えなかった。 言えなかった、けど。 でも、まさか命くんの家のあたりが吹き飛ばされるなんて!? 大急ぎで連絡して命くんを探しに行って、再会した時はお互いに泣きながら抱きしめあった。 そして今は彼は私の家に連れてきている。 …だって、家がなくなっちゃったし。 これからはここで泊まってもらうって父さんにも連絡入れたしね。 お風呂に入って、ご飯を食べて。 お片付けをして、やっと…やっと、気持ちが落ち着いてきたんだ。
(16) 2023/11/10(Fri) 09時頃
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ソファに並んで座って。 こんな平和な時間が、これからも続いてくれたら良い。 ロボットの戦闘なんてもう起きないでほしい。 いつ巻き込まれて死ぬかもしれないなんて。 そんなこと考えたくなくて。 私は、命くんと手を繋いでその温もりに和んでいた。**
(17) 2023/11/10(Fri) 09時頃
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ーー自宅へ/外ーー
後輩である千映が亡くなった時も、僕は酷く取り乱した。 同級生の珊瑚の葬式では泣き崩れ自分では立てなかった。
そんな僕であるから、康生に死の宣告は気取られなかっただろう。 大和の死に動揺していたのも事実であったし。
恋人である珊瑚の血を吸った学生服で死んでいった彼の最期は壮絶だった。 まさに死闘の末、勝利をもぎ取り命の炎を燃やし尽くした。
僕ならば、愛する人が既にいない地球など護る価値があるかと、放り出したかもしれないのに。
彼は勇敢であった。 それは間違いないし、尊敬の念が絶えない。
ただ、僕はそんな彼を褒め称えたり、感謝を捧げたりもしたくもないのだ。
そも、こんな運命に巻き込まれた事自体が可笑しいーー
(18) 2023/11/10(Fri) 10時頃
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瑠璃川珊瑚と大和命。 何もなければ、二人は末永く寄り添い幸せな生活を送ったはずである。
そんな未来を何故奪われなくてはならなかったのかーー。
余りに、酷すぎる。 こんなのが赦されていいはずがないのに。
「……うん。ありがとう、コウ。」
家へ送ると言ってくれた彼に弱々しく微笑む。
大和への想いと、次のパイロットに選ばれた時のショックを抱えたまま僕達は場を離れた。
重たい脚を引きずるようにして。
千映は天文部のミーティングで、大和は黒板に文字を書いて、パイロットに選ばれた事を告知した。
本来他のメンバーも関わることだから一刻も早く知らせるべき事柄だろう。 だが、僕はまだその決意が出来ないでいる……
(19) 2023/11/10(Fri) 10時頃
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ーー自宅/応接間ーー
僕の自宅は両親が経営する洋食レストラン『どんぐり亭』に併設されてた二階建て木造家屋だ。
両親は兄がいる海外に避難している為、今はレストランは休業中。
よって、僕は広い家に一人で暮らしていた。
珊瑚や真弓はどんぐり亭に来たことがあったが康生はない。
それは彼が特殊な体質を持つからであるがーー。
「ーーもう少し一緒にいたい。お茶を出すよ、上がって?」
話がある、と切り出したら聡明な彼はすぐ察してしまうかもしれない。
どちらかが選ばれたらお互いに隠さず話す、と僕らは約束をしていたから。 でもーーいざその時を迎えて僕は、酷く狼狽えていた。
誰も迎える者がない室内はには静寂が満ち、何処かひんやりとしている。
(20) 2023/11/10(Fri) 10時頃
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彼を応接間のソファに案内した。
壁には優秀な兄が得た学習塾の表彰状が幾つか貼られている。 兄の成績は学校でも塾でもいつも一番であった。
対して僕のものは、野球大会優勝の時の小さなトロフィーが1つだ。
また、家族写真も棚の上に置いてある。小学生の時のキャンプや、温泉旅行のもの。四人揃っている。父と母の夫婦仲はとてもいいので寄り添って肩をくっつけており、ちょっと恥ずかしい写真だ。
父母と僕はあまり顔は似ていないが(お臍の形だけ何故か遺伝した)、父は兄と顔がそっくりだ。
ちなみに掃除はあまりしていないが、特に散らかってもない。 僕はほとんどの時間を二階の自室に籠って過ごしていたから。 ーー珊瑚が亡くなってから。
(21) 2023/11/10(Fri) 10時頃
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「えっと、お茶をーーいや、君は駄目なんだったね。ミネラルウォーターのペットボトルでいい?」
つい普通の感覚で珈琲紅茶なんて聞こうとしたが、未開封のものの方が良いと考えたが。 彼が望むなら勿論お茶を用意するけど。
「……珊瑚は、大和の事が好きで。僕はそれを珊瑚から聞いていて……二人は多分付き合ってた。
その二人が、こんな、形で。
……愛し合う二人の未来がこんな風に終わる、なんて……」
僕は康生の向かいではなく隣に腰掛けた。震えが止まらない。唇は死人みたいに青白いだろう。*
(22) 2023/11/10(Fri) 10時頃
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[奇跡なんてものは通常は起こらないことだからそう呼ばれるものだ。 人が為せる範疇を超越した事柄という意味では或いはアストロと呼ばれるロボットたちの戦いも該当するかもしれないが、>>2分岐した世界に生きている大和 命にとっての奇跡とは唯一瑠璃川 珊瑚と出会えた場合に初めて生じる。
仮定の話となるが、出会っていなかった場合は合宿に参加もしていないだろうし>>16築60年以上木造二階建てアパートが粉砕された際にその生に幕を降ろしていたことだろう。 どちらかがパイロットに選ばれた時もほぼ変わらない。 大和 命がパイロットになった場合は>>14地上に星座を作り出して僅かな達成感と共に息絶えてしまう。
可能性の多くは世界に存在した証も何も残せずに潰えてしまう。 存在するかもわからない。 人知れずいつ消えてもわからない六等星の灯が一等星の様に瞬くのは、それは奇跡だろう。
だから――]
(23) 2023/11/10(Fri) 10時半頃
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――瑠璃川家のリビング――
『こうしていられるだけで僕は幸せだな。』
[>>17隣り合って座っているだけで幸せを感じられる。 手を繋いでいると生きていることを実感できる。 今だけはテレビもつけずに外のことも忘れてこの部屋にただ二人きりで存在できることを喜びたい――これは事実だ。 その気持ちに偽りはなく、幸せを感じているし喜びも感じている。 それと同じくらいにいくら『落ち着け』と念じても治まらない動悸が大和の心の準備不足を物語っていた。
繋いでいる手は汗が滲んでしまわないだろうか。 目覚めてから続く緊張が温かなお風呂とご飯で落ち着いたことで生じた心の余白に、珊瑚の半袖シャツとショートパンツ姿が別の意味で突き刺さっていた]
(24) 2023/11/10(Fri) 10時半頃
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あの、さ……。 僕は珊瑚さんのこと、どうしようもないくらいに好きなんだ。 これからも一緒に過ごしたいし、 ずっと、毎日一緒に居たいんだ。
[吊り橋効果というのだろうか。 それとも種の保存本能というものなのだろうか。
同じシャンプーやボディソープも使ったはずなのにいい香りがする珊瑚に脳がやられてしまっているようで、それを振り切るように呼びかけてその蒼い瞳を見つめてはそう言葉を紡いで一端口を閉じた。 視線を右に、左にと動かして意を決するとまた瞳を見つめると――]
これからも、ずっと一緒に暮らしてくれたらさ。 嬉しいな――、その……好きだから。
[世情は不安定で先の見通しが不明だけれど、何かが起こって伝えられないままになるよりもこの想いは伝えたい**]
(25) 2023/11/10(Fri) 10時半頃
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奇跡と言えば、こうして命くんと思いが通じ合った事だと思う。 好きな人とお互いに好きでいられると言うことは、人々の営みの中で日常的に感じられるかもしれなけど──やっぱり奇跡だ、と思うの。 だって命くんと巡り会ってなかったら。 同じ部活に参加していなかったら。 同じ学校じゃなかったら。 巡り会うことすらできていなかったと思う。
巡り会えて想いが通じたのだとしても。 どこかの世界線の私は、理不尽な出来事で将来を閉ざしてしまっていたかもしれない。 事故、事件、病気──様々な出来事が私たちの命を脅かしてくるから。 そして今も、あのロボットたちの争いがあんなに近くで起こっていたのに無事に再開できたのは奇跡。 だからその奇跡を大切にして、これからも生きていけたらなんて考えていた。
(26) 2023/11/10(Fri) 12時頃
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「私も、命くんのこと、大好き。 会えないと寂しいし、ずっと一緒にいたい。 特に今はあんな──危ないのがいつ来るか分からないし だから一緒に居ようって、言えるけど。 そうじゃなくても…一緒にいたい。 一緒に暮らそ、命くん。」 こんなことが無かったら、一緒に暮らすのはもっと遠い未来だったと思う。 少なくとも高校を卒業してからとか、一人暮らしを視野に入れた頃? 命くんを見つめていると視線が揺れて、それでも視線がこちらに戻ってくる。 それを真っ直ぐ受け止めながら、私は微笑みを浮かべていた。
だって、もう一人で危ない目に遭ってほしく無いんだ。 そばに居られなくてもしかしたら、なんて、そんな想像もう2度としたく無い。 もうあのロボットが来なければ良いのにと、あのロボットの存在意義がわからない私は勝手に考えてしまうけど。
(27) 2023/11/10(Fri) 12時頃
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何かを言おうと思って唇を開きかけて──閉じる。 ほんのりと頬を染めながら、なんだかお互いにプロポーズみたい、なんて恥ずかしくなって。 「…大好き。」 ぽつりと呟くと、私はそっと目を閉じた。 まだ手を繋いで歩くだけでドキドキして、こう言う事を進めた事はなかったけど。 私、だってとっても命くんのことが好きで。 あんな大変な事があったからか、もっと近くに居たいなんて思ったんだもの。**
(28) 2023/11/10(Fri) 12時頃
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[奇跡的に交わった二人の人生の路はこれから先は違えることがないだろう。 如何なる困難があったとしても二人で乗り越えていけると珊瑚の返事を聞いて大和は確信できた。 会えないと寂しいのは同じだった。 目覚めてから実際に顔を合わせるまでは無事かどうか不安で仕方がなかった。 一緒にいると安心できて離れると不安なのだ。 願いが同じならばから確信したのは当然のことだ]
うん、えと……本当はさ。 もっとロマンチックな方がいいかもしれないけれど、 僕は珊瑚さんと結婚したいって想ってるから、 そこまでも考えてくれたら、嬉しいな。
[浮かんだ珊瑚の微笑みに頬に熱を感じてしまう。 好きと伝えあうだけで幸せで、同時に恥ずかしさを感じてしまう。 発したのは正真正銘のプロポーズの言葉だ。 指輪も何もないけれど伝えておかないといけないと衝動が止まらない。 心のどこかで伝えられないことを恐れて怯えているのがわかる]
(29) 2023/11/10(Fri) 14時半頃
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僕も、大好きだよ。 その……。
[伝えることで安心できるし想いが通じていることは幸せだ。 それでも続く言葉を紡ぐのには少し、かなり、思い切りがいることだった。
また視線を揺らして、目蓋を閉じて、ぐ、と何かを飲み込むように意気を固めるとまた目蓋を開くとそこには瞳を閉じた珊瑚が見えた。 何かを言いかけていた唇の動きを思い出す。 それは同じことを願ってくれたのか、そうだと嬉しいけれど――]
(30) 2023/11/10(Fri) 14時半頃
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……絶対に幸せにする。
[そう囁いて、閉じた目蓋の向こう。碧の瞳に誓いの言葉を投げかけて唇の距離を近づけていく。 最初は鼻先が触れ合って、少し首を傾げると閉じた唇にそっと自分の唇を触れ合わせた。
ほんのりと甘い香りがする行為。 僅かに触れ合った柔らかな感触に心臓の音が一際高まりその音が耳に届く。
唇を離すと少し瞳の距離を離し、代わりに背に腕を回していた]
困ったな……好きで、大好きだったのに、 もっと好きになってるんだ。ねぇ……。
[困ったように眉根を下げてから耳元に唇を近づけてそっと言葉を囁く]
(31) 2023/11/10(Fri) 14時半頃
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結婚。 その言葉を聞いて更に私の頬が熱くなる。 とっても嬉しいし私もそう願っているもの。 大好きな人と一緒にいたい。その一番の形はそれだと思うから。 ロマンチックとかは関係なくて。
「嬉しい。私も…。」
私も大好きで、一緒にいたくて。 絶対に幸せにする。 その言葉も嬉しいけれど、幸せにしてもらうだけじゃなくて幸せにしてあげたいな。 目を閉じてキスを待つ。 鼻先が触れて、ビク、と一度体を震わせてしまったけど。 柔らかな感覚が唇に伝わって私はすぐに体の力を抜いた。 同じシャンプーやボディソープを使ったのに、不思議。ううん、同じのを使ったからより分かるのかな? 命くんの香りが鼻先に届いて、なおさら私はドキドキする。 唇が離れて目を開けると命くんが至近距離にいて、抱きしめられると尚更近い。
(32) 2023/11/10(Fri) 15時半頃
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「私も、命くんのこと幸せにする。したい。 一緒に幸せになろうよ、命くん。」 コツン、と額を合わせて。 耳元に囁かれた言葉に真っ赤になったけど…嫌なはずなんてないもの。 私も、好きで大好きで、なのにもっと好きになっちゃって…困っちゃう。 こんな時にこう言うことしていて良いのかなって気持ちがなくも無いの。 でも、想いが通じ合った好きな人が、消えちゃうかもしれない!なんで、あんな想いがあったからかな。
私は両手を命くんの頬に添えて、今度は私からキスをする。 ちゅ、と小さな音を立ててすぐに離して。
(33) 2023/11/10(Fri) 15時半頃
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「私も…大好きって気持ちが止まらないの。 どうしよう?」
困っちゃう。でも止められなくて。 ──そう言うつもりでうちに泊まって、と言ったんじゃないけど。 じわりと涙が滲むのは安堵と幸福とが一気に押し寄せてきたからだと思う。 なんだかそわそわと落ち着かない気持ちで、彼の頬に手を触れさせたまま囁いた。
(34) 2023/11/10(Fri) 15時半頃
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[想いが通じ合っていることは幸せなことだと知る。 珊瑚の言葉に大和は頬が綻んでいくのを感じていた。 緩んでしまうと言ってもいい現象が生み出すのは普段引き締めて一文字になっていることが多い唇の変化だ。 珊瑚と一緒の時、珊瑚のご飯を食べている時、そうした時よりも明白に唇は緩み笑みを浮かべていく。
幸せにしてあげたい珊瑚に同じように思われているのだからこれが今、この時がこの世の春なのかもしれない。 両手に触れる珊瑚の手指が冷たく心地よく感じるのは大和の頬がそれ程に熱を持っているからに他ならない。
二度目の口づけは珊瑚から。 小さな音と触れ合う感触はすぐに離れていってしまう。 もどかしくて仕方がなくて、もっと触れ合いたくなってしまう。 抱く欲に、感じる幸せに、想う気持ちには底が存在しないようにどこまでも深まっていくばかりだ]
(35) 2023/11/10(Fri) 16時半頃
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うん、うん……幸せに、なろう。
[世界で一番幸せになろう。 どんな世界でもなく、この世界の二人で一緒に、だ]
それは……。
[思わずに『困ったね』と言いそうになるが言葉を止めた。 本当にそれは困るのだろうかと首を傾げ潤む瞳を見つめたままにそっと伝える]
(36) 2023/11/10(Fri) 16時半頃
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……いいんじゃ、ないかな。 僕はもっと珊瑚さんを好きになりたい。 どこまでも、いつまでも。
[際限なんてものは設けない。 限界なんてものは存在しない。
だから、そわそわと落ち着かない様子の珊瑚にまた優しく囁きかける]
(37) 2023/11/10(Fri) 16時半頃
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─どんぐり亭への道中─
[この時点で彼が死の宣告を既に受けているとは、想像もしていなかった。私も、恐らくは康生も。]
[七尾千映の死を目の当たりにした時の彼は、康生に声を掛ける事すら出来ずに場を立ち去っていた。瑠璃川珊瑚の葬儀に出席した後は、自宅に引き籠ってしまった。そんな彼だったから、今回は比較的平静を保っている様にさえ思えたのだ。短期間に繰り返される死に、多少なりと耐性が付いて来たのかも知れないとさえ考えていた。]
[彼が弱いと言うつもりは無い。友人を亡くして狼狽するのは、思春期の子供の反応として正常なものだからだ。普通から逸脱してるのは、康生の方だった。]
(38) 2023/11/10(Fri) 16時半頃
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[人の死に何も感じない冷血漢、或いはサイコパスと呼ばれる様な気質を持っている訳ではない。康生は、学友達の死を悼む心を確かに持っている。にも拘らず、事が終わって一番に目を向けたのは、アストロの光点だった>>14。個々人の死よりも、その先を見ているのだ。彼等の死を、無駄な物にしてしまわない為に。]
[結果的に、康生は──七尾千映戦後、告白の電話を受けた時と同じく──不自然な程に“いつも通り”だった。親友を気遣い、重い足取りに合わせる形で歩を進める。声を掛けるのは得策でないと判断したのか、言葉数こそ少なくはあったが、彼を安心させる為の微笑みさえ浮かべていた。]
(39) 2023/11/10(Fri) 16時半頃
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─乾恵一の自宅にて─
[乾恵一の自宅は、小さなレストランに併設されている木造家屋だった。どんぐり亭という看板が見える。話には聞いてたが、康生が実際に訪れるのは初めての事だった。]
[康生は自分の、特に病気に関する事を説明するのを苦手としている。説明が下手で伝わらないのに加え、伝わったら伝わったで相手の顔を曇らせるからだ。だから、必要を感じない限り自分から明かそうとはしないし、そうなりそうな場面も(露骨にならない程度にだが)避ける。今回「送る」と言い出せたのも、彼の両親の不在を事前に聞いていたからだろう。衛生面への配慮が必要な上に、口に出来ない食品も多い康生は「良かったら食べて行って」等と言われてしまうと、場を切り抜けるのに苦労するに違いないのだから。]
ああ。お邪魔します。 へぇー……ケイんちって、こんななんだな〜。
[親友以外誰も居ないと知りつつも、康生は律儀にそう挨拶した。靴を揃えて上がると、興味深げに辺りを見回した。乾匡の名の書かれた賞状が幾つかと、小さなトロフィーが飾られている>>21。だが、それらより康生の興味を惹いたのは、棚の上の写真達だった。]
(40) 2023/11/10(Fri) 16時半頃
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あ! もしかしてこれ、ケイの父さん母さん? この写真じゃ、臍が似てるかはわかんねーけど。 ……なんかいいな、こういうの。 俺、こういう家族旅行ってしたことなくてさ〜。
[屈託の無い笑顔で、康生はそう溢した。妬み等は一切感じられない、明るい声だ。純粋な憧れから発せられたのだろう。康生が普通に近い生活を送れる様になったのは、私が康生の心臓になったからだ。旅行先で私達家族全員が写真に納まるなんて事は、後にも先にも有り得ない話だった。]
あ、沸かしたお湯で淹れるお茶とかは大丈夫だぜ。 でも、外暑かったから水頼んでいいかー?
[まだ半袖の季節とは言え、戦闘終了後の時間帯だ。言う程には暑くもなかった。暗い表情の親友にお茶を淹れる手間を掛けさせるのを、康生は良しとしなかったのだろう。「サンキュ」と受け取り喉を潤しつつ、彼の言葉を待った。]
付き合って…………そうか、だから……。
[この時点でまだ、康生は校舎の一角を訪れてない。描かれた獅子座と蟹座に込められた意味を、正確には把握していなかった。けれども、瑠璃川珊瑚の葬儀で彼女の父と共に斎場を後にしていた姿を思えば、二人の間に特別な絆が在った事は疑い様も無い。]
(41) 2023/11/10(Fri) 16時半頃
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ケイ、…………。
[隣に座った震える親友を見つめ、掛けるべき言葉に迷ったのだろう。康生はやおら左腕を伸ばし、彼の肩を抱いた。その薬指には、シルバーのリングが嵌まっている。彼の主観では、康生と彼もまた『愛し合う二人』なのだろう。結婚式の真似事をして、誓いの言葉まで交わしたのだ。疑いの余地など、普通に考えれば有る筈が無い。]
命も瑠璃川も、こんな風に終わるのは…な。 瑠璃川なんて、本当なら死ななくてよかったはずなのに。 生きててくれたら、命だってもっと、なんか……。 …………理不尽、だよな。うまく言えねーけど。
[けれど私は──私にさえも、解らなかった。康生が、乾恵一の抱いた不安を正しく汲み取れているのかどうかが。則ち『愛し合う二人』という言葉>>22に、康生が自分達二人の未来を重ねているのかどうか、判断が付かなかった。**]
(42) 2023/11/10(Fri) 16時半頃
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確かに、困るって言う言葉はちょっと違うかも。 好き過ぎて困ると言うのは、自分の心臓が保たなくなる気がするから。 キュンッと切なくなったり、ドキドキと激しく打ったり大忙しになっちゃうんだもの。 それだけ命くんのことが好きって事で、それは絶対に悪いことなんかじゃない。 「ん…。」
だから私たちはまた唇を重ねあって。 瞼を下ろして、何度も何度も。
(43) 2023/11/10(Fri) 19時頃
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ーー自宅/応接間ーー
初めて訪れる僕の家を彼は珍しそうに眺めている。 何にでも興味を示す彼だから、特に僕の家である為、ではないのだろうけど。
きちんと写真立てに入れて飾ってある家族写真は、僕にとっては日常生活の一部だから特段最近見返す事はなかった。
あれは確かーー。
仲睦まじい四人がいる場所が近隣ではない、つまり旅行の際の写真であるのは見ればわかったのだろう。
「うん、父さんと母さん。僕が小学生の時かな?鬼怒川の温泉に行ったんだ。
川下りをしたり、日光東照宮を見に行ったり楽しかったよ。 広い温泉にも入ったし。
ーー……。」
彼が家族旅行をしたことがないのは知っている。海辺デートの際に訪れたリゾートホテルを随分物珍しく見ていたから。
(44) 2023/11/10(Fri) 19時頃
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身体にハンデがある彼はそんな、普通の家族の当たり前の幸せを知らない。
僕は改めて、自身が健康体に恵まれ育った事を考えた。
彼のリクエストに応じて冷蔵庫から冷えたペットボトルを取り出して渡す。 彼の気遣いに僕は気付かなかった。こういう所、康生は他人を思い遣る優しさに溢れている。 僕はそれを今まで、当たり前に享受してきた。
それがどんなに幸せな事だったか。
僕らは教会で愛を誓いあった。 未来があれば、そのとびきりの幸せが続いたはずなのだ。
珊瑚と大和にしても、生きていたら結婚し家庭を作り、家族旅行に行ったりしただろうに……。
ーー僕らは。
(45) 2023/11/10(Fri) 19時頃
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僕が吐露した想いに、普段通りの笑顔を見せるも流石に彼の言葉も沈んで。
そしてーー……。
「……ッ」
あらかさまに動揺した。 彼が腕を回してきたから。 僕の、肩に。
震えを鎮めようとするかのよう、それは優しく僕を包む。
一瞬彼とのふれあいは良くないのではと考えたが、粘膜が触れたり唾液が行き交う訳ではない。だが、大丈夫な範疇とわかっても僕の鼓動が裏返る。
どくん、と。
きっと康生はただ、僕を慰め元気づけたいだけ。 相手が僕でなかろうと、落ち込んでいる人間を目の前にしたらそうする。
(46) 2023/11/10(Fri) 19時頃
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僕が特別だからじゃ、ない。
そんな残酷な優しさが彼の本質と知りながら。
僕はーー愛を誤認した。 その温くて弛い誘惑に勝てなかった。
だから、赤面する。 肩に置かれた手にときめく。
人は当たり前に自分の期待を、希望を他人に見るから。 ーーすがるから。
「そう、だよ……そうだ。」
嗚咽を漏らす。涙が頬を伝う。 千映、珊瑚、大和。彼らの死だけでなく、僕らの運命に。
愛し合う二人の未来が奪われるなんてーー。
(47) 2023/11/10(Fri) 19時頃
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「いや、だ……僕は、嫌だ、ーー死にたく、ない。 死にたくなんかない……。
僕は君が好きだ。君と恋人になれて、今までの人生では考えられない程幸せだった。
君に愛されて……価値を、得て。僕みたいなつまらない人間だって、生きていいって思えたのに。」
拳を握り手の甲で目を拭う。それでも溢れる涙は止まらない。
「ーーコウ。逃げよう。何処か遠くに二人で。 あの強制転送がどこまでも届くかなんてわからないよ。
僕はーー闘いたくない、パイロットなんかなりたくないッ
死にたくないんだッ!!」
(48) 2023/11/10(Fri) 19時頃
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堰を切ったように感情が爆発した。惨めに、憐れに僕は涙した。虫けらが騒いだところで何も変わらないと何処か知っているのに、すがる。
彼の愛がそこにあると信じて。
「コウ、君だって僕と一緒に生きたいよね?死にたくなんかないよね?
……僕が死ぬなんて、嫌だよ、ね……?」
僕と康生の決定的な価値観の違い。彼は、ここで闘いを止めたら今までの犠牲が無駄になると考えている。 僕は犠牲が増えれば増えるほど、こんな闘いを止めなくてはならないと思うが。
どちらが正解でも不正解でもなく。ただ、人はそれぞれに異なり、違った方向を見据えているのだ。
(49) 2023/11/10(Fri) 19時頃
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僕らの視線の先はーー交わらない。
僕は両手で顔を覆った。そして震える声で彼に、告げた。
「……次は、僕だ。僕なんだよ、コウ。」
顔を上げる。涙でぐしゃぐしゃの汚い顔を彼に向けて。
「助けて……助けてよ、コウ。」
薄暗く仄かに。あり得ない希望を僕は彼に見ている。*
(50) 2023/11/10(Fri) 19時頃
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─乾恵一の家 応接間─
一回の旅行で、結構あっちこっち行くもんなんだな〜。 ちっちゃい頃のケイ、なんか可愛くね? 今は可愛いって言うより、カッコイイ寄りだけど! なあ、川下りってどんな感じ? やっぱ速い?
[彼が心中を吐露するまでは、そんな風に康生は“いつも通り”だった。まるで、学校帰りに立ち寄っただけの様な。他愛ない雑談である自覚は康生にもあったから、彼が隣に座ればその話は一度途切れた。]
……?
[彼の動揺に、康生は僅かに首を傾げた。動揺自体は察せど、その理由までは解らなかったのだろう。康生に他意は無いのだから。親友が震えていたから、支え、慰め、元気付けようとした。出来る範囲で温めようとした。 ──それだけだ。人間の皮膚というのは存外丈夫だから、傷口や粘膜を露出しない限りそう感染の心配は無い。例え、極端に免疫力を下げていたとしても。]
つまらない人間だなんて、言うなって……。 あ、えっと…………ほら。
[康生は空いている右手で自分のポケットをまさぐると、ポケットティッシュを差し出した。足りなければ応接間を見回し、ティッシュ箱に手を伸ばして彼に渡した筈だ。自分では、拭う事さえ出来ないから。]
(51) 2023/11/10(Fri) 21時半頃
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───……。
[感情を爆発させる親友に、康生は眉を下げた。康生は、私の前でさえ「死にたくない」と口にした事は無い。契約騒ぎに巻き込まれる前、幼少期から常に死の危険に晒され続けてたにも拘らずだ。それが全部偽りなのかも知れないと想像する事は、私には出来なかった。]
……、……前にも少し言ったけど、さ。 俺は死ぬわけにはいかないし、死にたいとも思ってない。 ケイだって、生きててくれる方がずっといいって思ってる。 けど、それは……、……。
[康生が見てるのは、過去の犠牲だけではない。此処で戦いを止めれば、地球が滅ぶ。そうなれば、パイロットだけではなく全員死ぬ。自分や周囲という個の安寧より、世界の──その他大勢の存続を見据えていた。少なくとも、この時点では。だから、彼の視線と交わる筈も無かったのだ。]
ケイが、次……? 呼ばれた、のか?
[康生は恐らく、彼の救いには───なれない。]
そっか、次が…………ケイ、か。
[私がそう確信したのは、彼が死の運命を康生に打ち明けた時だった。大粒の涙を溢す彼を視界に映したまま、康生は安堵の笑みを浮かべたのだ。]
(52) 2023/11/10(Fri) 21時半頃
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俺、ケイのこと助けたいと思ってるよ。 ケイの助けになることで、俺にできることは全部したい。
[もしそれが“次に死ぬのが自分でないと知った事から来る安堵”であれば、まだ理解して貰える可能性があったかも知れない。彼は康生から「死にたくない」という言葉を引き出そうとしていた様だったから。けれど、そうですらなかった。そうであれば、こんな事は言わないだろう。]
ケイが俺に傍に居て欲しいってんなら、傍に居る。 一緒に逃げてほしいってんなら、どこまでだって逃げるし。 ケイが「闘いたくない」「パイロットになりたくない」 「死にたくない」って言うなら…………全部は無理だけど、 「闘いたくない」って願いくらいは叶えられるかも。
[康生の声は穏やかで、微笑みさえ浮かべている。だからこそ、私は戦慄した。初めてこの子を……実の息子を、怖ろしいと思ってしまった。]
……ケイは、どうしたい? 俺は、何をしたらケイを助けられる?*
(53) 2023/11/10(Fri) 21時半頃
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ーー自宅/応接間ーー
避けようがない死が迫っていなかったら、実に楽しい会話になったはずだ。
カッコいいなんて褒められなれていないから、大袈裟に照れただろうし、川下りについても身振り手振りを交えて説明したはずだ。
なんなら自室からアルバムを引っ張り出してきて、もっと沢山の写真を彼に見せたかもしれない。
しかし、今の僕にはそうは出来なかった。 曖昧な笑みを浮かべ、結構流れは速かった、という事だけは答えたが。
差し迫る死の恐怖に怯えれば怯えるほど彼は暖かく。 それがただの友情だなんて思えなくて、僕は涙した。
渡されたティッシュすら特別なもののように思える。
彼は僕を心配してくれている。 ーー僕を、愛しているから。
こんなにもみすぼらしい存在の僕を、闇にすらなれないただ踏まれるだけの影のような僕を。
(54) 2023/11/10(Fri) 22時半頃
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光そのものと言える彼が包み込んでくれる。
ーーだから僕は全てを晒した。 弱い部分も、恥ずかしい気持ちも全てを。
みんなが勇敢に闘い死んでいったのにに対して、僕はピイピイと雛みたいに泣いて、ただ弱音を吐いた。
彼はきっと、僕の死が確定したのを知ればショックを受けるだろう。悲しみに暮れるはずだ。
それが愛と言うものだから。
もしも死が避けられず、僕が彼を置いて先に亡くなろうとも。 僕という存在を愛し、それに胸を傷めてくれる人がいたなら。
ーー僕はきっと救われ る はず
「ーー……」
(55) 2023/11/10(Fri) 22時半頃
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その表情はなんと表現したらいいんだろう。僕は彼が顔を歪め僕のために泣いてくれると思っていた。
思っていたのに、彼は。
ーー嗤った。
嘲るとかではない。愉しいとかでもないだろう。 強いて言えばアルカイックスマイル。彼の見目麗しさを際立たせるような笑みに僕は戸惑う。
「コ、……ウ?」
彼はそんな僕を置いてきぼりにするように、言葉を重ねた。
僕を助けたいと。なんでもする、と。
それは勿論嬉しい言葉ではある。だけどーーこの胸騒ぎと違和感はなんだ?
さわ、と首筋に寒気が走る。 僅かに粟立つ肌。
(56) 2023/11/10(Fri) 22時半頃
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一緒に何処までも逃げるのは、とてもロマンチックだ。 二人で手を繋いで、行き先のわからない電車に乗って。
僕らを誰もが知らない土地へ。 二人きりになれる場所へ。
だけどーーその幸せな時間は永遠には続かない。 いや、むしろ死刑の瞬間までの猶予に近いのではないか。
そんなこと、聡明な彼がわからぬはずがない。 だったら何故言う?
(57) 2023/11/10(Fri) 22時半頃
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彼の物言いはまるで。
"君が死ぬ瞬間まで望みを叶えるよ"と言っているようで。
「違、う……」
声が掠れる。彼は驚くかもしれない。だって、両手を広げるような慈愛に満ちた態度で僕の願いを聞き入れようとしていたのだから。
「君の、気持ちは嬉しい……けど。でもそれは、その献身は、さ。」
何のため?
ーー死に逝く僕へのせめてもの手向け?
それともーー嗚呼、そうだ、彼の性格を考えたなら、答えなんか1つじゃないか!
地球やみんなを護る。 その為に。
(58) 2023/11/10(Fri) 22時半頃
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死にたくない、は叶えられなくとも。 闘いたくない、は叶えられる。
組合わさったパズルの答えは?
「……コウ。闘いたくないって僕の願いを、君は。」
ごくり、と唾を飲む。愛する彼が、恋人である彼がこんなにも傍にいるのに。僕らは身を寄せているのに。
どうして冷や汗が止まらないんだ?
「それを僕が願ったら、どうやって叶えるつもりなんだ……?」
聞いてしまえば、後戻りは出来ないかもしれない。 しかし僕は迂闊に足を踏み入れる。底無し沼のような問答の先に救いがあると思えないのにーーそれでも。*
(59) 2023/11/10(Fri) 22時半頃
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─乾恵一の家 応接間─
[乾恵一がどれ程みっともなく泣き喚こう>>54>>55と、康生は彼を軽蔑したりはしないだろう。軽蔑なんてするわけないと、彼がどんな人間でも味方だとはっきり宣言したのだから。この子は約束を違えない。慈愛の様な何かを湛えた表情を、彼へと向けていた。彼が、否定の言葉を絞り出すまでは。]
───違う?
[不思議そうな声を出しながら、僅かに首を傾げ、康生は彼の言葉を待った。彼の希望を汲み取る為に。きょとんとした表情は、無垢な幼子と変わらない。瞳に映る彼の顔は、私が抱いたのと同種の恐怖を形作っていた。]
献身ってほどじゃねーけど……。 んー……や。やっぱ献身…になんのかな、これって。
[私に語り掛けた訳でもない、珍しく本当の意味での“独り言”を呟いた後、康生は彼の疑問に答えた。]
……もしケイが本気で願うなら、の話だけどさ。
(60) 2023/11/11(Sat) 00時頃
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俺は、ケイを殺すよ。闘ったりなんてしなくていいように。 そんで、ちゃんと代わりのパイロット候補見つけて来る。 世界のこと、ケイがなんも心配しなくて済むようにさ。
[康生は再び微笑みを浮かべたが、先程までとは少々意味合いの異なるものだった。苦痛を堪えて無理に微笑む様な、泣くのを我慢している様な表情をしている。]
献身だとは、思ってなかった…んだけどな。 俺は、俺がキツくても、ケイの願い叶えたいなって。 これって、献身になんのか? ……ま、キツいっつっても“俺にできること”ではあるし。
[加賀先生の前で泣いていた康生を思い出す。自分と同じパイロットという宿命に誰かを引き摺り込む時、この子は同じ様に心を痛めて泣くのだろう。親友を手に掛ける時が来れば、それ以上に心を痛めるのかも知れない。]
(61) 2023/11/11(Sat) 00時頃
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けど、無理にはしないよ。 ケイは、「死にたくない」とも言ってたしさ。
……人はいつか必ず死ぬし、俺は神様じゃないから そっちの願いは、どうしたって叶えてやれねーけど。 今、ケイがパイロットになっちまってるって事実も多分、変える事はできないだろうけど。 どうしたってできねーこと以外は言ってくれたらするから。
[口にした以上、康生は必ずそれを成そうとするだろう。約束を違えない子だから。康生にとって“できること”であるから。親友の為に、世界の為に、為すべきと判断した事をする気なのだ。]
[ただ、それが乾恵一の救いになるとは、私にはどうしても思えなかった。**]
(62) 2023/11/11(Sat) 00時頃
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ーー自宅/応接間ーー
殉教者、という言葉がある。 キリスト教の聖人などによく用いられる称号だが、自らの信仰のために命を失ったとみなされる者のことを差している。
信仰と信念は外にあるものを信じるか自らの内にあるものを信じるか、そういう差であると言えるが、共通しているのはその考え方以外を排除している、という点だ。意図的でも、そうでなくとも。
要するにそこに迷いは存在しないのだ。 しかしーー
人とは本来複数の考えを持つものである。迷い葛藤し揺れ動くのが人だ。
何か1つの考えを貫く姿の方は、まるで真っ直ぐに伸びる竹のようであり”強い自我がある”様に映るし、実際に実行するのなら”強い人格”ではあるがーー
それは”人”であろうか。
神と神の子イエスの差は、人であるイエスが迷い悩み苦しむ事だ。
神は真っ直ぐに美しくしなやかでありながらーー残酷な行いを平気でする。
(63) 2023/11/11(Sat) 11時頃
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信じるものに殉ずるとは、そういう違いだ。
僕はキリスト教なんか詳しくない。両親も平凡な日本人で、お正月に神社にお参りに行けばお賽銭を入れて祈ったりはするが、葬儀はお寺で行うし。
神様なんているんだかいないんだかわからないし、世の中で起こる戦争なんかを見ていると、 いないんじゃないかなと思う程度。
恋人が嗤った。
それだけでは何か可笑しいの予感でしかなかったけど。 身体はダイレクトに悪寒を感じて、僕は彼から少し身を引いた。
いつも僕から彼に触れ、ビニール手袋をしてまで手を繋いだり、触れない口づけを望みまでしたのに、だ。
僕が死ぬと告げたのに。 僕はもうすぐ死んでしまうのに。
(64) 2023/11/11(Sat) 11時頃
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彼はーー。
“献身”という僕が使った言葉に彼は違和感を感じたようで。 勿論それは僕の主観に基づく印象でしかないけれど。
“献身”でないなら……?
そして僕は聞いてしまう。 その先を、見てしまう。
彼という人間が、どういう人間なのかをまざまざとーー。
「……僕を、殺、す?」
淡々と語られた彼の思惑は、事実や状況から判断しての最適なんだろう。自分の出来る範疇で、相手の望みを叶え目的を達成する道筋。
迷いなく、淀みなく紡がれた。
表情こそ僕を殺すとか僕が死ぬ事への苦しみや悲しみが現れているけど、至極合理的なその結論に僕は。
(65) 2023/11/11(Sat) 11時頃
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心底、震える。
冷ややか何かが、撫でるのではなくまとわりついた。 僕の頬に。
「何、言ってんだよ……何を言ってる?
自分の言ってる事の意味、わかってんのか?」
動揺と混乱は、少しずつ僕をまた激昂へと導く。彼は一度も僕みたいに声を荒げたりはしないのに。
だけどーーこんなの、こんなのってあるか?
なんで僕は恋人からさらりと「君を役割から解放するためなら殺せるよ」なんて言われてる?
僕が次のパイロットを心配する? そんなの、知ったことか!
僕は騙されて契約させられたんだ。こんなゲームを仕掛けた側が黒幕であり、契約させた少年らに罪や咎はなくとも、僕に地球のために死ぬ意思などなかったんだ。
(66) 2023/11/11(Sat) 11時頃
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そんな僕が何故補充パイロットの心配をしなくちゃならない?
まるで機械と話しているようだ。規定数が勝利しなくちゃ地球は救われず、そこには僕の家族も含まれるのだから、結論から辿れば全うだとしても。
そんな先回りをして欲しいんじゃない! 嬉しくなんかない……!
「僕だって、君がもし助からない病で苦しくて痛くて仕方ないなんて状況ならば、君をーー君を楽にすることを考えるよ。
だけど、僕は君を愛してる。愛してるからきっとーー君の命を奪うギリギリ、凄く悩んで”出来ない”かもしれない。
いや、出来ない。きっと出来ない。
理屈じゃないから。君が死ぬのが、何より嫌だからだッ」
どちらが正解でもない。しかし、彼の行為や選択にちらつく”博愛”や”使命感”が僕を苛つかせる。
握った拳でソファーを叩く。 そんな行為は無意味でも、何度も。
(67) 2023/11/11(Sat) 11時頃
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「いずれ死ぬからなんだ!だったら死にたくないと叫ぶ僕は馬鹿か? 避けられない事にだだをこねる子供か?
君はーー君は、さ。」
彼がぐにゃりと歪んだように見えた。
僕が泣いているからじゃない。彼が何か変化したわけでもない。
彼はずっと、こういう人間だ。
親友であった時も。 海辺で愛を交わし誓った時も。
変わらない、変わっていない。
そういう意味では彼は何も悪くないし、僕はある意味そんな彼を本質を知っていたのに。
それはある種の”愛”ではあるし、彼が僕を嫌いなわけでも、大切にしていないわけでもないのに。
(68) 2023/11/11(Sat) 11時頃
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ーー大丈夫、ごっこだから。
(69) 2023/11/11(Sat) 11時頃
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僕は教会でそう言った。 嘘でもいいから結婚式を挙げたかった。 彼との幸せな一時が欲しかった。
崩れていく。
積み上げられた砂は乾いていてさらさらしているから。 ほんの少しの風にも耐えられない。
「……僕は。
僕の望みを人形みたいに頷いて叶えて欲しかったわけじゃ、ない……。」
過去形なのは、今だけを指しているわけではないからだ。
ずっと、ずっと。
それが彼の最大限の思いやり優しさであっても。
(70) 2023/11/11(Sat) 11時頃
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「君はッ!」
あのブナの木の下で。 彼に感情を僕はぶつけた。
フラッシュバックする光景。
お願いだよ、もう。 僕をこんな風にしないでよ。 惨めにしないでよ。
認めたくないんだ。 自分がーー。
彼の両肩を掴むと、ソファーに押し倒す。スプリングの軋みが耳障りに響く。
頚をはねられるぐらいなら自分で頸動脈を切ってしまえ?
違うよ。 もうとっくに僕は。
(71) 2023/11/11(Sat) 11時頃
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「愛してないだろ、僕のこと。」*
(72) 2023/11/11(Sat) 11時頃
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─乾恵一の家 応接間─
[康生私の息子、つまり紛れもなく人の子だ。人並みに迷いも悩みもする。けれど、乾恵一の目に、そうとは映ってないだろう。その点に於いて、私は彼を責める気になれない。理由は二つ。悩む時間が非常に短いからというのと、悩んでいる過程が外から見えないからだ。]
[キューブラー=ロスモデルというものがある。避け得ぬ死を宣告された時、人は否認→怒り→取引→抑うつという四段階を越え、やがて五段階目の受容へと至るといった内容だ。乾恵一は恐らく“取引”──どうにかして死なずに済む方法を探ったり、何かに縋ろうとしている様な段階の筈だ。]
[半面、康生は幼少期から宣告されていたも同然だったから、最初から“受容”の段階に居た。私の件もあり、理不尽な死が突然襲い掛かって来る事をこの子はよく知っている。モデルは逆行しない。今更怒り抗うなんて、康生には出来ないのだ。]
[それに加え、康生は頭の回転が速い。親の欲目もあるかも知れないが、常に二手三手先を考えている。今、乾恵一が悩み苦しんでいる内容はとっくに考え終えた後で、康生の中では何かしら折り合いが付いているのだろう。]
(73) 2023/11/11(Sat) 16時頃
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[折り合いが付くまでの過程も、外からは見えなかった筈だ。悩んだ時、康生が頼り相談する相手は“私”なのだから。傍目には、一人で結論を出している様にしか見えないだろう。実際、その認識は合っている。私は、康生からの相談に対して何かしらの返答が出来る訳ではないのだから。ただ、だからと言って、この子が悩みを持たない訳ではないのだ。]
[二人の認識は、今や完全に擦れ違った。]
[彼は康生から身を引き>>64、康生はその様子に戸惑いの表情を浮かべた。彼の様子がおかしい事には、気付いたのだろう。]
ああ。意味はちゃんとわかってる。 ケイに、すげえ酷いこと言ってんなって自覚もあるし。
(74) 2023/11/11(Sat) 16時半頃
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…………、……。
[彼の言葉に、今度は康生が表情を凍らせる番だった。彼が「できない」と言ったからではない。康生への愛を告げたからでもない。それらはまだ想定出来た。彼の持ち出した喩えが、致命的に悪かったからだ。康生の右手が胸元へと置かれる。]
……ケイは、そういう風に考えるんだな。 ・・・・・・ 楽になりたいなんて、俺は一度も望まなかったのに。
[呟きは静かなもので、内に居る私にこそ届いたが、ともすれば彼がソファーを殴打する音>>67に紛れそうな程だった。]
[「助からない病で苦しくて痛くて仕方ないなんて状況」は、康生の嘗ての日常だ。そして一度だって、康生は「闘いたくない」等の弱音を吐かなかった。闘病から逃げるというのは、死ぬ事と同義だ。彼の語った内容は「君が望まなくても、僕は君の苦しむ所を見たくないから殺す事を考えるよ。実行は出来ないけど」と言っているのと変わらない。康生は果たして、何を想ったのだろうか。]
(75) 2023/11/11(Sat) 16時半頃
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───、……。
[私にもわからない。康生は───それこそ人形の様に無抵抗で、激昂する彼に押し倒されてしまった>>71からだ。ソファーは軋みつつも康生の身体を受け止めたから、以前とは異なり、顔を歪める事も無かった。浮かべている表情は、悲しみか傷心か諦念か……火の消えた様なそれであるのだけは確かだった。何処か空虚な視線が、相手を見上げる。]
愛してるよ。 でもきっと、ケイが……恵一が望んでる愛じゃ、ない。
[左手はとっくに彼から離れていたが、押し倒されて尚、右手は自らの胸元に当てられたままだった。*]
(76) 2023/11/11(Sat) 16時半頃
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ーー回想ーー
小さな頃から兄の後ろに隠れ、その背を追い掛けて生きてきた。
兄は僕の友達であり、保護者でり、理想であり、全てだった。
兄の言うことはみんな正しいから考えなくて済んだし、兄がいてくれたら同学年の友達なんかいらなかった。
他人は怖い。 僕が何か気に入らない事を言えば変な顔をする。 何を考えているかわからない。 いつ嫌われるかわからない。
そんな不確かな関係を築くぐらいなら、兄と二人でいた方がずっといい。
兄はいつも大きくて温かな手で僕を撫でてくれるのだから。
『恵一はボールを投げるのがとても上手いな。 野球をやったら活躍出来るかもしれない。』
(77) 2023/11/11(Sat) 17時半頃
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キャッチボールをしていた兄が、ある日そう言った。
野球ってみんなでやるんだよね?……ちょっと怖い。
だけど僕は中学で野球部に入部した。褒められたように出来るのか、試してみたいと思ったから。
僕はピッチャーの才能を見い出だされた。 肩が強く、スピードの乗った球を投げられる僕は将来有望だと。
『頑張ったら甲子園だって目指せるかもしれないぞ。』
監督の言葉に目を輝かせ、僕はがむしゃらに練習に励んだ。 ただひたすら鍛練に明け暮れ、やがてチームメイトたちとも仲良く出来るようになった。
コミュ障だった僕に出来た初めての友達。
ピッチャーを務めエースと呼ばれて期待されている三年間、僕は兄から離れていても寂しさを感じなかった。
でもーー
(78) 2023/11/11(Sat) 17時半頃
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悲劇は突然訪れる。練習中に僕は急に倒れた。マウンドの真ん中で、握っていたボールを落として。
意識が回復した時は病院でーー 僕は、肩に致命的な爆弾を抱えてしまったことを聞かされる。
投げられないわけじゃない。 だが、もう速い球は無理。 勿論ピッチャーは……。
他のポジションになり、打撃に力を入れる選択肢もあった。 しかし、僕は病院のベッドで虚ろな目をしていたんだ。
チームメイトは誰も見舞いに来なかった。 向こうの立場で考えたら、元気に野球が出来る人間が平気で顔を出す方が無神経と考えたのかもしれない。
僕の元に来てくれたのは、兄だけだった。
兄の優しい手が僕の手に触れた時、僕は思い切り泣いた。 泣いて泣いて、弱音を吐いて。 無理をさせた監督が悪いと八つ当たりをして、口汚く喚いた。
(79) 2023/11/11(Sat) 17時半頃
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そんな僕を兄は黙って抱き締めてくれた。全て、受け入れて肯定してくれた。
そうだ、僕は何故この温もりを忘れてたんだろう。 僕みたいな何をやっても中途半端なウジ虫が、兄の元を離れたのが間違いだったのだ。
僕は知らなかったが、兄と両親は僕が幼い頃に密かに兄弟がべったりすぎることに懸念を抱いていた。 だから野球を勧め、野球部に入り友達が出来るまでは上手くいっていたのだがーー。
全部元の木阿弥。僕はまた、兄におんぶされて生きることになる。天文部に入ったのは、そうしてまた兄に護られて生きるのが、自分みたいな矮小にはお似合いだと考えたから。
兄以外に僕は、心を曝した事がなかった。 必要がなかったから。 兄がいれば僕の精神の支えはそれで満ちていたんだ。
ーーそんな兄との関係を、僕が自ら壊してしまうまでは。
僕は兄の恋人に手を出した。 彼女を抱き、兄を心底傷つけた。
(80) 2023/11/11(Sat) 17時半頃
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いつも優しく僕を護り導いてくれた兄を、だ。 兄が僕から去るように留学を決めたのは当然の結果だった。 康生は「匡先輩は怒ったり嫌ったりしているわけじゃないよ」と言ったが、そうであったとて、僕が寄り掛かる場所を失ったのは事実だったのだ。
一年間、僕は根なし草のように生きて。 ただ呼吸を続けて。無意味に食べて、無意味に排泄して、いらない存在を維持してきた。
僕の傍には、兄と同じぐらいーー兄と変わらぬ魂の輝きを持つ人物が二人いた。
瑠璃川珊瑚と、柊木康生。 みんなに必要とされる、眩しくてたまらない二人の横で僕はいつも卑屈に笑ってたんだ。
そして、僕は。 合宿で花火が行われた日。 康生に秘密を打ち明けた。
(81) 2023/11/11(Sat) 17時半頃
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ずっと悩んで抱えていたこと。 苦しくて堪らなかったこと。 誰にも言えず、誰にも頼れなかったことを。
ーー楽になりたかったんだ。
僕は強くない。弱くてみすぼらしく、路上の草にも劣る価値しかない人間だから。
その重みに耐える力はない。
もし康生や珊瑚が僕の立場なら、もっと強く自身の問題に立ち向かっただろうけど。
辛ければ逃げたいし、重荷があれば放り出したいのが僕なんだ。
ーーだけど、最低な僕を。 康生が受け止めてくれた。
嫌いじゃないといい、励ましてくれた。 その一生懸命な姿に僕は強い思慕に溢れる。
(82) 2023/11/11(Sat) 17時半頃
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嗚呼、兄さんみたいだ。 兄さんみたいに僕を肯定してくれる人がここにいるじゃないかって。
それはーー強い執着、依存、欲望。
失った兄の代わりを求めた僕は、彼に狂ってしまったんだ。
ーー愛とはなんだろう。
様々な歴史において、賢人たちが議論してきてもその結論は様々だ。正解などない、人それぞれは軽い解答になるが、広すぎて千差万別すぎて、定義など出来ない。
1つ言えるのは求めている愛が得られない場合、愛情に飢えた人間は激しく苦悩する、という事だ。
相手が、相手なりの誠意や優しさで最大限の愛を示そうとも。 むしろそんなものはいらないとはね除けてしまう。
だから、これは自分が得たかった愛なのだと、無理矢理に納得する。
愛なんか幻想だとよく言うけれど。現実や事実より、幻想は優しくて甘いから。
(83) 2023/11/11(Sat) 17時半頃
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ーー僕は目を逸らしてきた、だけ。
(84) 2023/11/11(Sat) 18時頃
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ーー自宅/応接間ーー
彼の告げる言葉は酷く冷たく響いた。親友であり、恋人のような立場の相手を殺すなど、彼が”出来る”として辛くないはずはない。考えた末の結論。
だが、僕にはそう見えない。 そんな答えはどんなに考えても愛しているなら出てこないだろと、思っているから。
彼は胸元に手を当てる。いつもの仕草だ。 僕は置いていかれたような、突き放されたような気持ちになった。彼にそんな意図はなくとも。
まるで、僕以外の誰かの方が余程大事で、彼の胸にいるみたいに感じるのは何故?
「強いんだね、コウは。」
楽になりたい、は弱音だ。
病や困難に毅然として立ち向かう彼は、最期まで戦い抜いた千映や大和と同じように立派である。
兄もきっと彼のような立場になったらこんな風になるんだろうか。
(85) 2023/11/11(Sat) 18時頃
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そんな高みから僕を見下ろす彼が、僕を愛するなんて、あり得る?
信じられない。
もう、信じられない、信じられないッ
みんな、嘘だ、嘘だったんだッ
遊びだ茶番だごっこだ、 そしてーー
憐れみだッ
信じていたかったのに。 信じて、いたかったのにーー
「ーー……黙れ。お前は、僕を騙した。騙したんだッ」
違う。彼の愛は形が違うだけ。
(86) 2023/11/11(Sat) 18時頃
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「赦さないッ僕をなんで傷付ける?なんで苦しめる?
ふりをするなーー愛してるふりなんか、するなッ!」
肩を押さえつけていた右手で拳を握る。ソファーの上で僕は彼に馬乗りになり、その凶器を振り下ろす。
顔面に。
ーーやめろ!!
鈍い音がして、骨に痛みが走る。でも、止めない。 二発、三発と続けたら彼の美しい顔面はどうなるだろう。
「はぁッ、はぁッ……これでも僕を愛してるかい?コウ。こんな僕をッ
抵抗しろよッ嫌だと逃げろよッ 僕なんか嫌いだと言ってみろッ
ーー君を赦さない。僕は絶対に君を赦さないッ」
(87) 2023/11/11(Sat) 18時頃
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肩が熱かったんだ、あの日。 ボールを投げようとしたら、力が入らなくて。
ぽとり、と地面に落ちて。 僕は倒れた。
そう、簡単なんだよ、人なんか。 簡単に壊れるんだからね。
ーー駄目、だ。駄目だよ……
僕の脳内に僅か残る理性が薄れたのは。 彼を殴りながら僕の身体が変化していたから。
熱く、硬く、滾る。 脈動が伝わる。
生きている証拠。 雄としての欲望。
(88) 2023/11/11(Sat) 18時頃
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力、勢い、支配、漲って満ち満ちて充足する。
弱さをはね除ける。
「ーー壊してやる。」
ーー僕は、勃起していた。*
(89) 2023/11/11(Sat) 18時頃
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─乾恵一の家 応接間─
[「強いんだね」と彼は言った>>85。]
[康生は強い子だ。けれどその強さは、天賦の才ではない。恵まれているから得られた物ではない。 ──真逆だ。強く在れるのは、弱くては生きられなかったからだ。純白で居られるのは、穢れを知らないからだ。真っ直ぐで居られるのは、曲がる事が出来なかったからだ。希望だけを瞳に宿すのは、絶望を映す余地が無かったからだ。]
[弱る事も穢れる事も曲がる事も絶望する事さえも、康生には許されていなかった。それらは簡単に死へと直結し、命を奪うから。生まれ育った環境が、この子をこうしてしまった。綺麗な世界で育った、綺麗な子供。“普通”の生き方が許されない子供。だから康生は、強く穢れなく真っ直ぐで、希望に満ちているのだ。]
[……傍から見れば、さぞ眩く輝いて見えただろう。輝く事しか出来なかっただけだと言うのに。]
そんな、つもり──……。
[「騙した」と言われ>>86紡ぎ掛けた否定が、「赦さない」という言葉で途切れた。胸元の手が、ぎゅっと握り締められる。康生は今、彼の言葉で明確に傷付いた。傷付けられた。]
[なのに──足りないと言わんばかりに、拳が振り下ろされた。]
(90) 2023/11/11(Sat) 21時半頃
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最初は確か、俺からだった。
高校生になって、天文部の扉叩いて。 そしたら、同じ入部希望の新入生が何人か居たんだ。 そん中で俺が真っ先に話し掛けたのが、ケイだった。
『あ! 同じクラスの奴だよな!? えーっと、確か……乾! そう、乾だ! 合ってるよな? 俺、柊木康生! あ、折角だしLINE交換しようぜ!』
入学直後の俺は今以上に遠慮がなくて、距離詰めんのも早かったから、一気に捲し立てちまってさ。 ケイは、助けを求めるように匡先輩の方を見てたっけ。 匡先輩の説明で二人が兄弟だって知って、じゃあ下の名前で呼んだ方がいいなってなった。 「仲良くしてやってくれ」って匡先輩に言われて、仲良くする気しかなかった俺は「はい!」って二つ返事で答えたっけ。 ケイ本人には、ちょい引かれちまったかな〜って思ったけど、LINEしたらマメに返してくれてさ。 友達ができたの嬉しかったし、クラスも部活も一緒だったから、俺らが仲良くなんのは結構すぐだった。
つまり、最初からそんな感じだったからさ。 何となくだけど、わかってたんだ。
(91) 2023/11/11(Sat) 21時半頃
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──ケイが俺に、匡先輩がしてた役割を求めてたってこと。
でも多分、俺は失敗した。うまくできなかった。 俺は匡先輩じゃないし、昔のケイを知ってるわけでもない。 匡先輩がケイにしてたようにケイを愛そうなんてしてみても 失敗すんのは当たり前で、失敗するってわかってた。 ……騙すつもりなくても、ケイがそう感じるの当然だよな。
それでも続けてたのは、ケイが親友だってのもあるけど 俺がケイにしてやれることなんて、これくらいしかなかったからってのが大きい。
これは、献身ってより“贖罪”だ。
(92) 2023/11/11(Sat) 21時半頃
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ケイが今悩み苦しんでるのは全部、契約しちまったせいだ。 本当ならケイは、契約なんてしなくてよかったんだ。 するはずもなかったんだ。 他の誰より、ココペリに不信感を抱いてたんだから。
『……コウがそうするなら』 ──俺さえ居なければ。
だから、この痛みは罰なんだ。 抵抗しろ? 逃げろ? ……そうする権利、俺にないだろ。 そうすればケイが助かるってんならするけど、違うし。 それに俺、言ったんだ。『嫌わねーって。約束する』って。
俺、ケイとの約束、ちゃんと守るよ。壊されたって。 だってもう、そんくらいしかしてやれねーから。
……ごめんな、父さん。 俺のこと、壊される為に生かしてくれたわけじゃないって、わかってんのに。
(93) 2023/11/11(Sat) 21時半頃
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[左手の爪が、ソファーに立てられる。抵抗してしまわない為に。そうまでして康生が自ら抵抗を封じる理由がわからない。彼の言う通り>>87反撃までせずとも、逃走を試みるくらいしたっていいだろうに。]
ッ、う、ガ……ゲホッ、っは……!
[結局、康生がしたのは顔を背けて咳き込む事くらいだった。鼻っ柱でも折れたのか、血が気管に流れ込んで噎せたのだ。口の中にも鉄の味が染み出してるから、口内も何処かしら切れていそうだ。]
[康生は勿論、私も暴力に慣れている訳ではないから、今どうなっているのか判らない。視界を共有しているから、鏡でも無ければ顔の状態を知る事さえ出来ない。痛いと言うより、熱かった。後で腫れるかも知れない。明日香が見たら、どう思うだろうか。そんな心配が過る。]
(94) 2023/11/11(Sat) 21時半頃
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[……だが、単なる暴力だけでは終わりそうになかった。視線が其方へ向かないから、康生は気付いてないのだろう。「壊してやる」という言葉>>89、獣の如き息遣いが持つ意味に。]
[──やめろ。もう、これ以上この子を傷付けないでくれ。確かに康生は、君の求める愛を返せてなかったかも知れない。だが君だって、康生の求める愛をくれてはなかったじゃないか。この子の不在を否定して、生きているという価値観を押し付けて。「愛してる」と口では言いながら、康生を傷付けてばかりだったじゃないか。あたかも自分だけ傷付いた風に言うな!]
…………、……ごめんな、ケイ。
[心の声を荒げる私とは対照的に、康生は唯、静かに呟いた。*]
(95) 2023/11/11(Sat) 21時半頃
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人間の価値とは何によって決まるのだろうか。
その行いか、功績?偉人と呼ばれる人間を基準とするならそうかもしれない。 客観的な評価としての価値は。
では、自己評価による自分の価値はどう決まるのだろうか。
自分視点だけで価値を見出だせる者は少ないし、独り善がりであるとも言える。
この場合も往々にして、他者評価が大いに影響するものだ。
何をして他人からどう評価されたから。 そして、どういう自分であるから、他人からどう好かれたか。
僕は。
乾恵一は、幼い頃に兄の庇護下でぬくぬく育ってしまった為、自身の意思で何かをするのが苦手だった。
何だって困れば兄がやってくれた。その甘やかしを庇護と呼べば有り難くもあるが、自分でやらなければ人は何も出来なくなるものだから。
(96) 2023/11/11(Sat) 23時半頃
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友達を作らなかった。 兄がいればいらなかったから。
否。それは真実ではない。 誰も僕に魅力を見出だすことがなかったんだ。近寄ってくることがなかった。
僕に価値なんかないから。
ちやほやされたのは中学時代、野球で活躍した間だけ。 それだって皆、僕が壊れて野球を出来なくなったら離れていった。
路傍の石を笑うことが出来ない。それが僕。
必要とされない無価値な人間。
そんな僕に声を掛けてくれ、つまらない僕を友達として、親友まで想ってくれた康生に僕はどれだけ感謝したかわからない。
僕は瑠璃川珊瑚、柊木康生との出逢いにより、野球という遣り甲斐を失って沈んでいたどん底から引き起こされた。
ーー救われた。
(97) 2023/11/11(Sat) 23時半頃
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ただある意味の残酷はここにあったと言える。
僕が自身に”もしかしたら価値が少しでもあるんじゃないか”と勘違いしてしまったこと。
彼らの輝きのおこぼれを錯覚したこと。
二人が悪いわけでは決してない。兄ですら、甘やかし過ぎたのは弱い僕を護るのにそうせざるを得なかっただけだし。
結果出来上がった心の隅々まで腐った汚水みたいな僕は。 ただの自業自得。
今になって漸く吐いた息が溝臭いだろうけど。
ーー元々こんなだ。
誰もが目を背ける、鼻をつまんで顔をしかめ遠ざかる。 それが普通、当たり前。
他人から愛されるなんてあり得なかった。 大切にされる価値がなかった。
(98) 2023/11/11(Sat) 23時半頃
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判っている判っていた判ってるんだ、判ってるんだから!!……どうか。
暴かないで、欲しかったのに。
(99) 2023/11/11(Sat) 23時半頃
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ーー自宅/応接間ーー
殴った方が痛いと感じるなど随分勝手だろう。 僕の拳には僅かに血が付着していた。 勿論彼の血である。
じんじんと響く痛みは、彼が感じるものと比べ物にならないほど小さいはずなのに、僕は顔を歪める。
「汚れちゃったじゃん……手が。」
手の甲を口許に運び、ペロッと舐める。よく血の味は”錆びた鉄のよう”と表現されるし実際そんな味なのだが、何故か美味しいと感じて。
「……ははッ、甘い。」
嗤った。僕は嗤った。 彼がさっき嗤ったのは全く違う歪んだ笑顔を浮かべる。
殴られた彼が苦しそうに咳き込んでいるというのに。
(100) 2023/11/11(Sat) 23時半頃
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僕は彼に口汚く喚いた。もう何度も彼の誠意を穢すような、傷付けるような言葉を十分に吐いているのに。 彼を理解しようとせず、心を閉ざしたままに叫んだ。
「なんだよ、こんなことされても聖人ぶるの?無抵抗主義ってやつ?
ーー”強い”なァ、コウは。
強くてカッコよくて、頭も良くて、みんなに好かれてさ。
ほんと羨ましいね。」
壊れて、し
むしろこの時彼が言い返してくれた方が救われたなんて、我が儘過ぎるだろうか。 しかしそれが事実なのだ。
この期に及んで謝罪を口にする彼が、契約の時の事を考えているなんて僕にはわからない。
まるで取り繕ったように感じたからカッとなる。
(101) 2023/11/11(Sat) 23時半頃
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「黙れッーー偽善者。」
再び伸ばした手で前髪を掴む。
サラサラして手触りのいい彼の髪。 いつか指ですいてみたいなんて憧れた金糸のような柔らかを、僕は乱暴に引っ張る。
彼の身体の上に僕がいるから、ある程度までしか持ち上がらない。
それでも、僕が殴った為に赤く腫れた顔が間近になった。
こんなになっても彼は。 いや、むしろ血に染まった彼はむしろ普段より、美しい。 神々しいまでの美が暴力により引き立つなんて。
だが、そんなにも美しい彼は、 僕のものではない。 未来永劫僕のものにはならない。
(102) 2023/11/11(Sat) 23時半頃
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「……キスしたらどうなるんだっけ、君。 なんて言ってたっけ……忘れちゃったけどさ、実は初なふりしてるだけだったりしない?
だってこんなに気持ちいいんだよ、キスは。」
康生が合宿直後に倒れたのが僕とのキスのせいであるのを聞いてはないが、薄々気付いてはいた。
彼と性的な接触をすれば致命的なダメージを与えると。
僕はその後彼への愛に気付き、そういう交わりがなくとも彼を愛せる、傍にいたいと思ったけれど。
ーー壊せるんだ、こうすれば。
髪を掴んだまま、僕は前屈みになり唇を奪った。 彼の小さくて形のいい柔らかを乱暴に、強引に。
否応なしに舌を捩じ込む。唾液を求めて内部を蹂躙する。
雨竜先輩と初めてのキスをした時、僕は全身滝に打たれたみたいな衝撃を受けた。 唇から広がる甘い痺れは極上だったんだ。
(103) 2023/11/11(Sat) 23時半頃
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ーーそこに愛がなくとも。
彼の舌を吸い唾液を啜る行為はすなわち僕の唾液をも送り込む事になろう。
それは強力な毒となるのだ。 彼の体内に回れば彼を蝕みーー壊す。
血の味が混じる。僕は恍惚の表情を浮かべて深い口付けを成し遂げる。
「ーー、はぁ、」
呼吸が苦しくなるまで続け、僕は彼を解放した。ただし、優しくソファーに寝そべらせてなんかやらない。いらなくなったボールを投げるみたいに、叩きつける。 ソファーの木製部分、肘かけに彼の後頭部が当たるように。
(104) 2023/11/11(Sat) 23時半頃
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やっぱりキスはいい。 ブナの木の下ではゆっくり味わえなかった康生の唇を堪能し、僕は満足の息を吐く。
気持ちが昂り全身が熱くなった。
もっと、もっとだ。 気持ちよく壊したい。
僕を愛してくれない彼を壊してーーそう、楽になりたい。
僕は弱いから。
そうだ、壊してしまえば楽になれるんだ。 そうしたら辛いことはなくて、愉しいことばかりで、気持ちよくて。
最高じゃないか!
ーー僕の救いは、こんな形であったんだ。やっとわかったよ。
存在が堪えられないほどクズな僕は、既にまともに働かなくなった頭でそう結論づける。
(105) 2023/11/11(Sat) 23時半頃
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“まともでいるなんて、堪えられない”
(106) 2023/11/11(Sat) 23時半頃
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ふわふわしてきた。可笑しくて仕方ない。 僕は無意味にゲタゲタと嗤う。 さぞ不気味であったことだろう。
「ああ、なんか愉しくてたまんないや。……さァて。」
鼻唄を歌いながら彼の上から降りる。逃げるなら最後のチャンスだ。勿論、走り出した瞬間に腕を掴んで引き摺り倒すだろうけど。腕力でも体力でも瞬発力でも僕は負けないから。
彼が逃げないなら、僕は彼の足元に移動する。
「コウ、右足と左足、どっちがいい?」
カラリとした口調にて問う。 彼はその意味を悟るだろうか。*
(107) 2023/11/11(Sat) 23時半頃
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─乾恵一の家 応接間─
[咳き込む合間に見えた彼の表情は、まるで悪魔の様だった。血を啜り、それを「甘い」と宣う>>100のだから、実際悪魔と変わらない。康生の謝罪は悪魔の逆鱗に触れた>>101らしく、前髪が引き抜かんばかりに掴まれた>>102。]
い゛ッ!! 俺、は……
[痛みに滲んだ視界が薄く開けば、間近に彼の顔が在った。何事か言い掛けた康生の声が、告げられた内容>>103に止まる。引き攣る程に見開かれた瞳が、康生の衝撃を物語っていた。吐息が掛かる距離で、震える言葉が紡がれる。]
なんで────ケイ、誓うって……ゃ、ッ!
[制止の言葉は、音にならず塞がれた。康生が自分の体質について打ち明けた時、彼は言った筈だ。「君を生命の危機に曝すような事を、しないと誓うよ」と。今の彼は、悪意を以て康生の生命を危機に晒そうとしている。幾ら激昂したにしてもやり過ぎだし、人が変わってしまったかの様だった。]
(108) 2023/11/12(Sun) 01時頃
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んッ……! んん、っふ……!
[これまでの関係や信頼を全てひっくり返す如き振る舞いに、康生はどれだけショックを受けただろう。目を見開き、身を硬くし──それでも、康生は抵抗しなかった。私は、この異常事態に混乱する。ブナの木の下でキスされた時、康生は事態に気付く事さえ遅れたものの、気付くと同時に彼を突き飛ばした。正しく拒めていた。]
ふ…………ん、ぐっ
[今は右手で胸元を握り締め、左手はソファーに爪を立てたまま、持ち上げようとさえしてない。口内の傷を舌先でなぞられても、血混じりの唾液を啜られても>>104。送り込まれるまま、自身にとって猛毒に等しい唾液を飲み下す。]
う……んぅ…………んっ、ふ……
[執拗に繰り返される内に、身体から力が抜けて行く。右手は胸元から滑り落ち、左手ももう爪を立ててはいなかった。痺れる様な感覚が口から広がり、肌が粟立った。こんなに早く発熱する筈が無いにも拘らず。]
(109) 2023/11/12(Sun) 01時頃
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ふぁ…………あぐッ!
[解放される頃には脱力しきっていたから、後頭部を強かに打ち付けた。もしかしたら康生は、僅かな間、意識を飛ばしていたかも知れなかった。ゲタゲタと嗤う声が鼓膜を震わせても、視界を閉ざしたまま動きが無かったから。]
…………、……みぎ、あしと……ひだり?
[ただ幸か不幸か、彼からの問い掛け>>107に薄く視界が開かれた。確認する様な呟きと共に、軽く頭が振られる。当然だが、打ち付けた後頭部が痛んだ。康生は自ら痛みを与える事で、意識を保つ助けにしたらしい。 ──やはり、この子は強い。その想いは、問いへの答えを聞けば増々強まった。]
……選ばせてくれんの?
(110) 2023/11/12(Sun) 01時頃
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なら、両方頼んでいいか? そっちのが、ケイも楽しめるだろ。
[……私の推測が正しければ、彼は「どちらの脚を折られたい?」という意図で質問を投げた筈だし、それが解らぬ康生でもないだろう。事実、質問に対する回答としては噛み合っている。]
合ってるよな? そういう意味で。 違うんなら、言ってくれ。
[だが、噛み合っているというだけだ。選ぶ選択肢としては最悪に近い。何か、策でも有るのだろうか。雑談でもする様な軽い口調も、いつも通りと言える笑みも何もかもが、この場にそぐわない物だった。*]
(111) 2023/11/12(Sun) 01時頃
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ーー自宅/応接間ーー
それはさながら小さな獲物をいたぶるようであったろう。
彼に勝る力で支配することなたより、僕は”強さ”を鼓舞した。 何としても崩れない、そう、まさに殉教者が堪え忍ぶような彼の態度に苛立ちを高めながら。
加害者の本質は弱さだ。 弱い犬程よく吼えるとはその通りで、弱いからこそ必死に自らを強く見せようと振る舞う。
動物が背伸びしたり毛を膨らませて身体を大きく見せようとするのもそうだ。 元々強い動物はあんなことはしない。弱いからこそ、弱い側だからこそ、するのだ。
僕は知ってしまった。 彼との歴然とした差を。
元々眩しいと感じていたし、僕はそれに及ばないと判っていたのだが、その差を見せ付けられた。
(112) 2023/11/12(Sun) 08時頃
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彼はまだ僕を信じていたらしい。危害を加えないと。
確かに彼の病状を聞いた時に僕は誓った。当たり前だ、ただの友人ですらそれは真っ当な行為だから。
けれど僕が、彼の言葉から思い出した”誓い”は別のものだった。
「誓い?ーーああ、教会でのやつ?」
ーーキスは寸止めするよ。 僕を信じてほしい。
あの時そんな風に言ったっけ? そうだ、僕は言った。 手袋を用意し、食べ物に気を使い、彼を最大限に労った。
そして茶番に及んだのだ。 偽りの結婚式というーー
「なんか僕ら誓ったね?子供みたいに。 君は女の格好をして、僕を受け入れるふりをした。
(113) 2023/11/12(Sun) 08時半頃
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心の底ではどう思ってたの? 馬鹿馬鹿しかった?
愛し合う二人がする行為を、君は穢した。 ーー君は僕を愛してなんかないのに応え、騙したんだッ」
彼の誠意は最大限相手に応える事。応えられる範囲ならば。 だから、僕の願いをあの時も精一杯叶えた。
僕はあの時だってそれが、本当じゃないのは判ってたのに。
だけど、何処か。 本当ならいいなって。 本当に彼が僕を愛してくれていたら、どんなにいいかって……
家族以外、誰からも愛された事がない僕は一抹にすがっていたのだ。
嗚呼、頭の奥がチリチリする。焼け焦げる。段々それは広がって、僕は前後不覚になっていく。
“考えてたらやってらんねぇ”
(114) 2023/11/12(Sun) 08時半頃
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強引なキスに彼は抵抗を示さなかった。あまつさえ、その後僕が彼をソファーの硬い肘に叩き付けても、逃げることすらしない。
こういう振る舞いが、彼は本当に聖人そのものだ。 理不尽な暴力に屈しない、毅然とした態度ーー。
彼が握りしめる胸元、奥底には明らかに僕より大事な何かがある。信念か、信仰か。
それさえ護れたらどうなっても良いみたいなふてぶてしさ。
僕はハッキリ、脚を折ると宣言した。頭の回転が速い彼が理解しないはずがない。
逃げる気はないのを示す彼に、そんなの信じないと言ったのだ。
あくまでも僕より高見に位置し、僕を見下し、降りてこない彼をーー引き摺り下ろす。
泣き叫ぶまでメチャクチャにしてやる。 僕は、強いんだーー強いんだ!
(115) 2023/11/12(Sun) 08時半頃
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「両方?判った。僕は優しいから、君のお願いを聞いてあげる。」
果たして僕は愛する彼の脚を折れるのか? それが出来たら、命を奪うーー殺める事だって出来るかもしれない。
僕は彼を愛してるから、彼みたいに躊躇いなく出来る、とは言いきれないがーーやってみよう。
「良いのかなァ、もう逃げられなくなるけど。」
彼はまだソファーの上に寝そべる姿勢だろう。二の腕を掴み無理矢理に起こす。身長はあるが細身だから、軽いもんだ。
僕は彼を床に叩きつける。 床には絨毯が敷いてはあるが、それほど衝撃を吸収してはくれないはず。 位置としては、ソファーとローテーブルの隙間に彼は倒れる感じか。
ごくりと唾を飲み込む。
(116) 2023/11/12(Sun) 08時半頃
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大切な彼。好きで好きで堪らない。彼が傷付くなんて嫌だ、傷付けたくないーー
だけどさァ
僕はソファーとテーブルに片方ずつ手をついて、彼を跨ぐようにした。一度軽く脚を踏んであたりをつける。
「まず、右。」
ただ踏むのでは力が足りない。だから、僕は。
ーー跳んだ。
ピョンと軽く、ウサギみたいに。片膝を突き出すように折り曲げて、相手の体へ真っ直ぐに落とす。
狙う位置は彼の膝下あたり。
プロレス技のニードロップ、またはニースタンプをイメージして欲しい。
高く跳んで体重を掛けることによりダメージは倍加する。 骨が折れるかどうかは結果次第であるが。
(117) 2023/11/12(Sun) 08時半頃
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骨と骨がぶつかり合ったから、鈍く嫌な音が響いた。
「ふぅッ」
兄とプロレスごっこをしたのを思い出す。勿論兄は加減をしながら遊んでくれたし、僕に怪我をさせぬように細心注意を払ってくれたわけだが。
「痛かった?大丈夫?」
自分で危害を加えて聞くことじゃないが、僕は彼にそう尋ねた。でも、僕の膝だって痛いし。
まだ終わりでは、ない。
「ちゃんと左もやるから……いや、もっと確実な方がいいか。待っててね。……どうせ逃げないんだろ?」
(118) 2023/11/12(Sun) 08時半頃
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脚を引き摺れば逃げられる。 なんならスマホで通報する、助けを呼ぶなり手段はいくらでもある。
しかし僕は彼がそうするとは思えなかった。
そわそわ、ウキウキしながら離れる。海辺デートや結婚式なんかよりずっと楽しい。
高揚は下肢に集まっており、もし彼が僕のジーンズを眺めるなら明らかな膨らみが見て取れただろう。
早く、早く。いいやでも、まだじっくり楽しみたくもある。
花嫁に初夜を迎えさせるのはもう少し後だ。*
(119) 2023/11/12(Sun) 08時半頃
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─乾恵一の家 応接間─
ほんと、ケイは心配性だな。 俺から頼んでんだから、いいに決まってんだろ。 どこまでされたら壊れんのか、ちょい興味も出て来たし。
[苦笑すら浮かべつつ、康生はそう言った。実際、脚を折った程度で康生の心は折れないだろう。この子の場合、単純な下肢の骨折よりも感染症の方が命の危険を伴う。変な話、骨を折られるよりキスをされる方が、被る身体的損害は大きいのだ。唾液を飲み下した時点で、骨を折られるのを拒む理由は既に無くなっていた。拒みたいと願うのは私だけだ。]
それに、言ったしな。「傍に居る」って。 だから逃げねーよ。
[二の腕を掴まれ、今度は床に叩き付けられる。一体、何処まで康生を痛め付ける気なのか。彼の求める愛でなかったとしても、康生はこんなにも彼を愛してると言うのに。荒事が得意な訳ではなかったが、もし身体が在ったなら、私は彼に掴み掛かり殴り付けていただろう。その程度には怒りを覚えていた。]
(120) 2023/11/12(Sun) 13時半頃
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[先程、彼は結婚式ごっこの時の事を持ち出し康生を詰ったが、私に言わせれば彼の方が康生を騙した様なものだ。抑も、騙し討ちの様な形で連れて行かれたのだ。けれど康生は、彼を受け入れた。振り等ではない。康生は素直で正直な子だ。本心から誓って──と、此処まで考えて気付いた。嗚呼、この子は本当に約束を違えない。]
[今の彼は……乾恵一は間違いなく病んでいるし、康生は彼によって心身共に傷付けられている。「病める時」と言えるだろう。それでも康生は、彼を愛し敬い、慈しんでいる。パートナーとして。誓いの言葉の意味を康生は康生なりに理解し、実践していたのだ。恋愛自体は解らなくとも。]
おい、まさか……待ッ、
[そんな康生だが、彼が足で踏んで当たりを付けると慌てて制止の声を上げた。同時に右脚に力が入る。避ける為ではなく、絨毯に踵を押し付け、固定する為に。]
うあ゛ぁッ!!
[鈍い音と、激痛。弁慶の泣き所とすら呼ばれる部位だ。生理的な涙が滲む。歯を食い縛り、隙間から荒く息を漏らす。視線は、彼を睨み上げた。]
痛てぇ、けどな……この、バカッ!! 俺のこと、信じすぎだ……!
(121) 2023/11/12(Sun) 13時半頃
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ちょっとでも避けてたら…砕けてんの、ケイの膝だぞ!?
[その言葉に気付かされる。康生が彼を止めようとしたのは、危害を加えられたくないからじゃない。彼が怪我をする可能性が高かったから、止めようとしたのだと。]
[彼の手はソファーとテーブルに在る。康生の脚は、固定されていなかった。避ければ勿論、避けずとも僅かに逸れただけで、砕けるのは康生の骨でなく彼の骨になっていた筈だ。それに気付いていながら、康生は真正面から受け止める事を選んだ。骨を砕かれ、痛みに脂汗を流し、肩で息をしながら彼を叱った。その姿は、彼の目にはどう映っただろうか。]
そうだな……リクエスト、いいか? 次は、もっと確実で……ケイが絶対怪我しない方法で頼む。 ……優しいケイは、俺のお願い聞いてくれんだろ? 待ってっから、さ。
[見上げる視界の端には彼の膨らんだジーンズも映り込んでいたが、康生が見ていたのは彼の顔だった。愉し気に歪んだその顔を、彼が立ち去るまで。]
(122) 2023/11/12(Sun) 13時半頃
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[足音が遠退くと両眼が閉じられ、深く息が吐かれた。全身から力が抜ける。それから、右腕が持ち上がり、私の上へと手の平が置かれた。]
…………俺は、大丈夫。 今キツいの、ケイの方だからさ……。
[怒りに我を忘れそうな鼓動を宥める為の静かな声が、応接間に響いた。*]
(123) 2023/11/12(Sun) 13時半頃
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ーー自宅/応接間ーー
僕が早急に彼の脚を折ったのには理由があった。 彼が紡ぐ言葉を聞いていると頭が可笑しくなりそうだったから。
いやーー僕は既に狂い始めていたのだから無意味と言えば無意味だが、少なくとも彼の言葉はまだ言語を理解する僕を刺激する。
「煩いッ友達面すんなッ
……そんな、言葉、信じないッ」
傍にいる?傍に? 今の僕は完全な加害者であり、彼をいたぶるだけの存在だ。 それでも傍に……
一瞬僕は揺れた。もう馬鹿げた行為を止めようと。 まだ間に合う。彼に謝り赦しを乞い、傷の手当てをするんだ。
何時だって彼は傍にいてくれたじゃないか。 こんな虫けら同然の僕の傍に。
(124) 2023/11/12(Sun) 16時半頃
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ーー虫けらがァ。
いて、くれたーー
違うッ
勘違いして、また。
頭はぐわんぐわんとしていた。 視界が揺れている。 そんな所に彼の説教めいた物言いが飛んできたから、はぁ?と首を傾げて。
「なに言ってんの?僕の心配するみたいに…… もう、ふりはいいって言ってんだろ。」
彼は僕の身体を案じ、自身の怪我などに無頓着な様子だった。
でも、こんなにも僕を心配するなんて、やっぱり彼はーー
騙されるなって。
(125) 2023/11/12(Sun) 16時半頃
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信じたい僕と、信じられない僕はまだせめぎあっている。
僕の内部に巣食う影は濃い。べったりと背中に張り付いて常に囁いている。
『お前みたいな無価値な人間が愛されるわけないだろ?』
それは僕が尤も納得する答えだ。そうだ、彼が何を言おうが僕の価値は変わらないのだから。
兄にすら見離されるような事をした、僕なんだから。
こんな自分とずっと付き合ってきた。 自分の事は自分が一番よく判っている。
判りたくなくとも。
彼は僕を案じるふりをしているだけではないか。 そうして僕を懐柔する気なんだーー
でなければ。
(126) 2023/11/12(Sun) 16時半頃
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彼は気が触れている。
まともな人間は、危害を加えようとする相手の心配などしない。 しかし気が狂っているのなら話は別だ。
おかしいのは、彼。 そうだ、こうして彼を壊そうとしている僕の方が、余程しっかりしていて正気かもしれない……。
(127) 2023/11/12(Sun) 16時半頃
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僕は左足に取り掛かる為に彼から離れようとした。
まさか呼び止められると思わなかったから、キョトンとして振り向き。
「何だって?……意味、ワカンネェ。まあいいけど。心配しなくても大丈夫だよ。」
頭のおかしい彼との会話は噛み合わなくて当然かもしれない。 端から見たら僕らはどんな風に映るのだろうな。二人とも狂人だったら面白い。
「アハハハ、はははッ」
こうして僕は一度応接間を後にする。向かうのは廊下の先にある物置だ。壁に引戸があり、開けると掃除用具他、雑多なものが仕舞われている。
「あった、あった。」
僕はそこから工具入れを取り出した。それを小脇に抱えると彼の元に戻る。
「ただいま〜コウ。寂しかった?ごめんね……愛してるよ、ギャハハッ」
脚を怪我し、顔面や後頭部に傷を負う彼に言う台詞じゃないなあと考えて、自ら笑った。
(128) 2023/11/12(Sun) 16時半頃
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そして彼に工具入れを見せる。
「これなんだかわかる?
昔これを使って、兄さんと滑り台を作ったんだ。出来たのは小さなものだったけど、ぞうさんの絵まで描いてね。いい出来だった。 何度も遊んで楽しかったなァ。」
こんな話を聞いて、彼がもし普段通りのリアクションをしたら、まさに狂人コンビになりそうだ。
二人で精神病院に入るかな? 僕は今、彼をいたぶる事に夢中でパイロットに選ばれた事や、死の恐怖を一時的に忘れている。
工具箱を開き取り出したのはーー金槌である。金属部分は黒光りし、手持ち部分は木製だ。クラシックな形。 釘などを打つ時に用いられる。
(129) 2023/11/12(Sun) 16時半頃
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これならいいでしょ?と上機嫌に彼に見せた。 僕が怪我する事はありえない。
「……どんなに痛くても泣かない、康生くんは強い子なんでちゅよね?
じゃ、大人しくしてね。動かないで。行くよ?」
脚の何処を狙ってもいいが、今度は脛にしようかな。
僕は構えた金槌を頭上に上げ、それを思い切りーー彼の左足に振り下ろした。
最高だ、この感触。僕が彼を壊す! そうーー愛する彼を、壊す。
こんなにも、こんなにも愛してるから。
ーーもう苦しめないで。 もう苦しみたく、ない。
僕の愛は止まらない。*
(130) 2023/11/12(Sun) 16時半頃
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──if・私が合宿に居たのなら──
合宿の日、私は沢山の焼き菓子とお弁当を持って集合場所に向かったのだろう。 勿論、柊木くんの事情も知ってるから市販品のおやつなんかも混ぜて、一緒に食べられる様にしておくんだ。 お弁当は無理でも、飴とかチョコとか、摘みやすいものね。 参加するのが意外だった本郷さんともお話しして、七尾ちゃんとも一緒にガールズトークしたりして。 縁士くんとも話すだろうけど、誘ったりした手前──そしてその頃にはもうすでに好きになっていた大和くんに話しかけたりして、合宿を楽しく過ごしていたんだ。 七星くんとも話をしたけど、本当に他愛もない話。 星座の話、場所の話、色んな人と色んな話をして──加賀先生とは挨拶くらいだったごめんなさい。補修組は先生に苦手意識が拭えないんですっ…!
(131) 2023/11/12(Sun) 17時半頃
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花火は火に注意しながら、それなりに楽しんでた。なんだかんだ綺麗だし、ドキドキするもんね。 私が好きなのは線香花火。 みんなで誰が長くできるか勝負したりね! 私は60(0..100)x1秒だったけど、大和くんはどうかな?なんてチラッと見てしまったりした。 星空もよく見えて、星座版を出しながら星を探す。ほら、これがあの星だよ、とか教えてあげたり、教えてもらったり。 本当に楽しい合宿で終わりそうだったんだけど。
「テストプレイヤー? 時間がある時に…って、うーん…?」
七星くんが言うゲームのテストプレイヤー登録のお願い。 私はよく分からないし、時間があるともないともいえなくてチラッと大和くんを見た。 柊木くんは真っ先に登録しちゃってる。
(132) 2023/11/12(Sun) 17時半頃
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「私はゲームとかあんまりやったことないし 役に立てないと思うけど…。 アクションとかなら尚更、難しいもん。」
でも、大和くんもガラケーしかなくても参加できると聞いて、流れで参加することになった。 私はまだ渋っていたけど、大和くんも参加するし、縁士くんがきっと何か後押しする様なことを言ったんだろう。 登録だけして見たらとか、モニタリング役としてとか? 私はそれで、登録だけなら…と永くんに連絡先を渡して。
そして、訝しげにしながらもそれに登録を行なった。 直後──狐狸に化かされたかのように周囲が変わる。 みんなが混乱して。 私は何かとんでもない事をしてしまったんじゃないかと気が気ではなかったけど、私以上に混乱した恵一くんが居たから少し冷静になれた。 落ち着くために温かいお茶を淹れようとか、先生に声をかけようとか、みんなを落ち着かせるために動いて。 でも、怖くて怖くて、何か恐ろしいことが起きそうな──そう、悪魔の契約をしてしまった気がして。 それでもそんな動揺を見せない様にって頑張って笑顔で居たけれど。
(133) 2023/11/12(Sun) 17時半頃
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ロボットの中に呼び出された時。 私は七尾ちゃんのそばに寄り添ってたと思う。 ハロ?と言う謎生物は友好的には見えたけど…私はなんだか受け付けられなかった。恵一くんみたいに叩き潰そうとは思わなかったけど、生物だし大和くんに賛成してそのままにしておく。 でも、本郷さんには"中身は私たちと同じ年齢の人間"なんて言うし…本当、どう言うこと? 謎が謎を呼ぶ。 でも答えは十分じゃないまま戦闘が始まって。
そう。 戦闘が始まって──それで──。 恵一くんはびっくりモニター?とか言ってたけど、私にはそうは思えなくて。 ただひたすら不安だった。 でも、不安だってこぼすと七尾ちゃんが怖がってしまうと思って、言えなかった。 ただ硬い表情をしてその戦いを見守っていたと思う。 気持ち悪さを耐えながら。 七星くんは怖いことを言う。
(134) 2023/11/12(Sun) 17時半頃
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『そっか。
別に、みんなをロボットから降ろしてもいいんだけど。
そうすると、みんなはこの後、
ルールも何も分からない状態で戦う事になって、
初戦でこの地球を含む宇宙は、消滅すると思うけど。
……それでいい?』
(135) 2023/11/12(Sun) 17時半頃
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地球を含む宇宙?消滅?
「わ、私、ゲームとかしたことないし アクションとか絶対難しいし、 た、戦いたくない…のに…?」
騙された。契約だけで済む話じゃなかったの? そんな気持ちが漏れた。もしかしたら私の思い込みで、そんなこと言わなかったかもしれないのに。 震える声で、それでもダメなのかと七星くんに聞いたけれど返答があったかどうか。 でも本郷さんが騙されたのかと聞くと、そうだと口にする七星くんに怒りを覚えなかったわけじゃない。 そんな訳じゃないけど。
──戦闘が終わって。私たちは現実を目の当たりにする。
(136) 2023/11/12(Sun) 17時半頃
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恵一くんは吐いていた。 七尾ちゃんは気絶した。 縁士くんは冷静で、本郷さんと大和くんは先生を探し始める。 柊木くんはひたすらに謝罪の言葉を──。 恵一くん、吐いた直後に七尾ちゃん抱えるのはどうなのとか突っ込む暇もなかった私は、真っ青になりながら先生や七星くん、ハロを探すために大和くんと探索をすることにしていた。
(137) 2023/11/12(Sun) 17時半頃
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でも。本当に戦いが起こっていて。 七星くんが死んでいた。 人の命を使って動くのだと聞いた。 ──そのパイロットになんで選ばれたの? なんで私たちだったの。 そんな恨み言が出そうになるのを必死に噛み殺す。 私は、大和くんみたいに花を手向ける事はしなかった。 ただ無心で手を合わせる。無心じゃないと、呪ってしまいそうだったから。 だって。ひどい。ひどいひどいひどい! なんで私たちだったの。なんで大和くんまで! そう怒りを覚えた時。私はさあっと青ざめる。 いつも忙しい大和くん。大和くんを合宿にあんなにも誘ったのは。
「………………あ。」
私だって、気づいてしまった。 せめて誘わなかったなら、こんなことに巻き込まれるのは私だけで済んだはずなのに。**
(138) 2023/11/12(Sun) 17時半頃
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─乾恵一の家 応接間─
[下卑た嗤い声を立てながら、悪魔が戻って来る。小脇に抱えられた工具箱>>128を見て、康生のリクエストが最悪の形で聞き入れられてしまった事を悟った。]
寂しくはねーけど、ケイは俺のこと…………や。 聞くまでもねぇから、いいや。
[何処か諦めた様な言葉を零しつつ、康生は彼の思い出話に耳を傾ける。そして“いつも通り”に……ならなかった。 いや、康生は“いつも通り”に振舞おうとした筈だ。それが、途中で崩れた。]
そっか……よかった。 匡先輩との思い出は、ちゃんとケイの中に残ってんだな。 俺との思い出は歪んで、言ったこと忘れちまっても>>103 友達と思えなくなっても>>124、一番大事で綺麗なもんは ケイの中に、しっかりそのまま残ってる。 それって……っ、いいこと…の、はずだよな……?
[懐かしげに語る彼へと向けていた微笑みが、歪む。目頭が熱くなり、声が震えて詰まる。 ──康生は泣いていた。 顔を殴られるよりも脚を砕かれるよりも、辛かったのだろう。彼にとって、自分の存在がその程度だと知った事が。]
(139) 2023/11/12(Sun) 19時頃
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[……いや。“知った”のではないのかも知れない。私は、康生が人に好かれる子だと知っている。乾恵一は柊木康生に恋愛的にも性的にも惹かれているのだと、当たり前の様に思っていた。だが、康生にとってはそうでなかったとしたら?]
[記憶を探る。彼に告白された時、康生は「ケイが俺のことめちゃくちゃ好きで、それは友達としてじゃなくて恋なんだって言ってるのはわかった」と答えた。「言ってるのは」だ。彼自身も気付いてない本心がその奥に在るのではないかと、薄々察していたとしたら。図らずもそれが証明されてしまった今、涙を流す程に傷付いたのだとしたら。]
(140) 2023/11/12(Sun) 19時頃
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[乾恵一に惹かれていたのは、柊木康生の方だったのでは?]
[康生本人にすら自覚が無かったというだけで。仮に恋愛的な意味でなかったとしても、康生が彼の“一番”を望んでいるのは確かだ。でなければ、此処で涙する理由が無い。]
[康生は狂ってなんかない。可哀想な程に正気を保ったまま、狂った男を愛してしまっただけだった。]
(141) 2023/11/12(Sun) 19時頃
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……さっきも言い掛けた>>108けどさ。 俺、強くなんかねーよ。今もだけど、普通に泣くし。 立ち直んのが、普通よりちょい早いだけ。
[嗚咽が治まると、康生はそう言った。幼い頃から、この子が周囲に掛けられて来た──私が掛けてしまっていた言葉が次々と思い出され、駆け巡る。『康生くんは強い子だね』『柊木くんは本当に強いお子さんで』『康生は強いな』 ……きっと、そうではなかったのに。嬉しそうに笑う姿に、私でさえも誤解していた。解ってやれてなかった。]
(142) 2023/11/12(Sun) 19時頃
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けどさ、安心してくれ。 大人しくすんのも、動かねーのも、すげえ得意だから。
[苦しみ藻掻く幼い康生が「動かないで!」と大人に抑え付けられるのを、幾度目にして来ただろう。耐える事ばかり上達させてしまった。そんな康生にこれ以上我慢をさせないのが、私の存在理由である筈なのに──。]
ぐああぁぁッ!! ぅ、ぐ……!
[無情にも金槌は振り下ろされ>>130、苦悶の声が上がった。歪めた顔にも鈍い痛みが走る。殴られた衝撃による麻痺も抜け、腫れ始めてもいるのだろう。直後はあれでも痛んでなかったんだなと、要らない知見を得る。胸の上には今や、重ねられた両手が在った。鼓動の無事を確かめる様に。]
[当然だが、康生は私が痛覚まで共有していると知らない。もし知ってたなら、命以外も大事にしてくれただろうか。 ……そんな益体も無い事を、考えずには居られなかった。**]
(143) 2023/11/12(Sun) 19時頃
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青い星 地球は、メモを貼った。
2023/11/12(Sun) 19時頃
青い星 地球は、メモを貼った。
2023/11/12(Sun) 19時半頃
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ーー回想ーー
1つ歳上の兄さんは僕の友達であり、保護者であり、憧れであり、全てであった。
ずっとずっと兄の傍に居られると僕は思っていた。 だって結婚しようがどうなろうが、兄弟は一生”家族”なんだから。
兄も同じように思ってくれていると信じていた。 でもーー本当は。
同学年の友達が僕に出来ない事を、兄と両親は心配していたのだ。
親離れならず兄離れの出来ない僕の形を健全とは考えなかった。
野球を薦めることにより一時的に僕は兄から離れて仮初めの友達を得た時、兄は寂しいんじゃないかとか僕は多少思ったのだが、実はほっとしていたのである。
(144) 2023/11/12(Sun) 20時半頃
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別に纏わりつく弟が疎ましいとかではなく、弟が正しい人間関係を築けるようになったのに安堵した、という意味で。
そして兄は、僕が野球に熱中している間に違う道を歩み始めていた。 天文部に所属し、自分の好きな事を始め、友達を作りーー恋をした。
弟はもう大丈夫、友達とやっていけると踏んで。
しかし僕はーー野球を続けられなくなり、再び兄の元に戻る。
兄の傍は僕が唯一安心できる場所。どろどろした生暖かな沼にまた首まで浸かろうとしたのだ。
そこがもう、以前とは違うのに気付かずに。
(145) 2023/11/12(Sun) 20時半頃
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恋人がいると聞かされた時、僕は耳を疑った。 兄は異性に対する興味を見せたことがなかったから、恋愛など必要としていないと考えていたから。
対して僕はーー小さな頃から性衝動が異常に強かった為、女子を見ればいやらしい妄想をしたし、夜は猿みたいに自慰を繰り返していたんだけど。
兄は聖人だからそんな下世話には興味もなく清らかにずっと生きていくのだと信じていたのだ。
雨竜先輩は、腰まで伸びたストレートヘアの美しい女性だ。 スタイルもいいし、ちょっとおっちょこちょいな部分も可愛くて、天文部員男子は惹かれている者が多かった。
僕も例外ではなく彼女のセックスアピールにはやられていて、彼女が近寄った時に薫る甘い香にドキドキしたもので。
(146) 2023/11/12(Sun) 20時半頃
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そんな彼女と兄が恋人同士だった。 兄に、大切な人が出来た。
兄は勿論、恋人が出来たからと僕を構わなくなったわけではない。部でだらしなくイチャイチャすることもなかったし(兄は周囲に気遣いの出来る人だから)、むしろ僕や康生の面倒を見るのにかまけていたぐらい。
でも。
僕はモヤモヤした。二つの意味で。
いいな、と思っていた雨竜先輩を兄に奪われたような気がしたし、逆に雨竜先輩に兄を奪われたようなーー。
僕の入る余地が何処にもなくなったような。
当然僕はそれを表面上は出さずに二人を祝福したわけだが、ずっと燻っていたんだーー
どす黒く濁った想いは。
(147) 2023/11/12(Sun) 20時半頃
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去年の合宿にて、雨竜先輩に誘われた時。 兄の恋人に手を出すなどあり得ないと考えたのに、僕は事に及んだ。
僕にはもう、何もない。 野球だって勉強だって、僕なりに頑張ってきた。
頑張ってきたんだ!
なのにーー兄も憧れの人も、僕を一番とはしてくれなかった。
囁いた悪魔は。 多分ずっと僕の中にいた。 それは僕自身。
『お前だって(僕だって)好きにしてもいいんじゃない?』
彼女から誘われたんだ。 抱いて何が悪い? 先に裏切ったのは兄さんだッ
(148) 2023/11/12(Sun) 20時半頃
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ーー全ての痛みを、快楽で塗り潰す。
雨竜先輩の豊満な肉体を貪り、僕は男としての強さを鼓舞しながら、生を、存在を実感した。
人は結局過ちを繰り返す。
僕は雨竜先輩との失敗をあれだけ悔いたが、本質が変わっていないから。
(149) 2023/11/12(Sun) 20時半頃
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僕はまた、失敗して。大切な人を失うのだ。
(150) 2023/11/12(Sun) 20時半頃
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ーー自宅/応接間ーー
兄との思い出を語ったのは何故だろう。家族写真を先程彼と見たからだろうか。
結局、柊木康生は僕を愛してなどいないーー全て偽りだと思ったからだろうか。 兄に恋人がいると知った時と、同じように。
僕には自尊心というものがまるで存在しない。
両親からも兄からも愛され大切にされ育ったが、それは僕が”家族”だからで。”僕だから”ではないのを知っていたからだろうか。
他人から好意を向けられる事が全くなかったわけではない。 しかし、僕は根強く”自分が愛されるわけがない”と思い込んでいたから、それが塗り替えられることはなかったのだ。
彼は、康生は誰にでもフレンドリーだ。その中で自分が某の意味で特別であるなど、考えたこともなかった。
眩しく光輝く彼がそんな想いを抱いていたなんて…… 今も、昔も。愚かな僕は気付かない。 それがどんなに彼を絶望させているかも知らずに、ただ。 凶行に及んだ。
(151) 2023/11/12(Sun) 20時半頃
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「……忘れたらなんだっての?嫌味か?そも、君の体質や病気が本当かなんて、僕はわからないし。」
これは嘘だ。真実は、僕は覚えていた。全部を、何もかもを。 ただ彼との思い出に、彼の気持ちが伴わないのだと考えたらーー否定しないではいられなかっただけ。
彼が涙を流す意味を僕は理解できない。僕を憐れんでるのかな、と卑屈に捉えたぐらい。
「強い人間がさ。弱い人間に向かってそういう風に言うの、煽りにしかなんないよ。
……死にたいとか、漏らした時。強い人間は言うんだ。『自分だって辛かった事はある。それを耐えて今を生きている』みたいに。
まるで、弱い人間と同じだ、理解できるみたいに振る舞うのーー……
ふざけてるよ。」
(152) 2023/11/12(Sun) 20時半頃
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左足も破壊した。右足より先に強い打撃が彼を襲っただろう。
こんな仕打ちに堪える彼は、やっぱりまともには見えなかった。悲鳴を聞くと、やっと僕のざわついた心が少し落ち着いた。
苦しみたくない。 もう、苦しみたくないんだ。
「……んでぇ?御高説はもう終わりかな? もっと僕を蔑んだり馬鹿にしたり、呆れて突き放してもいいんだぜ?」
……お願いだよ、僕を
脳内の僕は明らかに分裂して騒がしいが気にしない。
僕は金槌の先で彼の顎をくいと持ち上げる。殴った部分は赤黒く変化し腫れていた。
「綺麗だ……こんな風にしても、君は綺麗だよ。
遊ぼうか、ごっこの続き。」
(153) 2023/11/12(Sun) 20時半頃
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この金槌で頭を叩けば、彼の頭骨は柘榴のように裂けてピンクの綺麗な脳みそを見せてくれるんだろう。
珊瑚が亡くなった時みたいに。
動かなくなれば、話すこともない。 もう僕を苦しめる存在はいなくなる。
だけど……握った金槌を振り上げる事は出来ない。
チッと舌打ちをして僕は彼を抱き上げた。所謂姫抱きだが、彼の手が胸にあるならそんな風にはならないか。
「僕の部屋に行こう、コウ。 」
階段を上り二階へ。二階には兄の部屋と僕の部屋がある。 片脚で扉を開く。肘で電気のスイッチを押した。
(154) 2023/11/12(Sun) 20時半頃
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僕の部屋は平凡極まりない。本棚、学習机にベッド。テレビにはゲーム機が接続されている。
彼をベッドに放り投げた。 物のように。 脚が動かない彼が逃げる心配はないから、僕はまた部屋から出て幾つかのアイテムを取りに行く。
母の部屋にそれがあるのは知っていた。
戻ってきた僕はそれらを机の上に置き、彼を見据える。
「結婚式の後、夫婦となった二人は何をする?
新婚旅行だよな〜缶カラがいっぱいついた車で走り出して、二人きりで……そして、素晴らしい初めての夜を迎える。
ははッ君は男だし、ただのなんちゃってだけどね〜?」
身体を折るほどに笑う僕は、もう。ただーー
目の前の彼を壊す事だけを考えていた。 はやくそうしなければきっと。彼が声もあげられないぐらいにしないと。
(155) 2023/11/12(Sun) 20時半頃
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もう堪えられない。*
(156) 2023/11/12(Sun) 20時半頃
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ーーif/珊瑚が合宿に参加した場合ーー
『──そのパイロットになんで選ばれたの? なんで私たちだったの。』>>138
珊瑚がそう思ったのを僕は聞いたわけではない。 しかし、僕も同じ事を考えた。
何故、僕らでなければいけなかったのか。僕らである必然がないなら、どうして僕らなのか。
たまたまでは済まされない。 パイロットなんてものの適正もない、ただの高校生なのだ、僕らは。
地球の命運などいきなり背負わされても普通は受け止められない。
死という運命を突き付けられたら誰だってそう思う。
そんな理不尽に納得できないと。
高校に入り僕は、兄の薦めにより天文部に入部した。
(157) 2023/11/12(Sun) 21時半頃
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そこで再会したのが瑠璃川珊瑚だ。
康生とは高校で初対面だが、僕は珊瑚を知っていた。小学生の時にずっと同じ学校だったし、珊瑚はどんぐり亭によく来ていたから。
僕が兄にべったりのコミュ障でなければ小さな頃に仲良しになっていただろう。
高校生になった珊瑚は女らしく、可愛らしく変化していた。
そんな彼女がモテモテだったのは当然であり、僕は康生とはまた別の輝きを間近にしながら眩しく眺めていたものだ。
とはいえ、僕のような糞雑魚ナメクジが光輝く彼女に見合うとは一ミリも考えたことがないから、僕は彼女に恋をしなかったのかも。 (雨竜先輩の本質は僕と同じ糞だから、僕はそれを見抜いていたのかもしれない。
同じ溝の匂いに惹かれて。)
僕と珊瑚はそんな関係。 眩しくてたまらない憧れ。
(158) 2023/11/12(Sun) 21時半頃
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そんな二人と一緒に参加する合宿は、去年同様楽しいものになるはずだった。
ーーはずだったのに。
訳もわからず巨大ロボットで闘う契約をさせられた僕らは、ほうほうのていで東京に帰ってきた。
康生は救急車にて運ばれてそのまま入院。
親が迎えに来れない大和、珊瑚の二人をどんぐりワゴンに乗せての帰路となった。 両親がいるから車内では話が出来なかったが、帰ってから珊瑚に通話をみる。
「珊瑚、大丈夫?……こんな事になるなんて。
本当に僕らがあんなロボットに乗らなくちゃならないのか? 乗ったら死ぬなんてーー信じられる?
僕はまだ混乱してるよ。」*
(159) 2023/11/12(Sun) 21時半頃
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――IF・珊瑚が合宿にきた世界線――
[合宿の日、大和 命は有り体に言えば浮かれていた。 楽しみにしていたと言い換えることもできる。 何か変われるかもしれないとか、居場所から逃げ出したかったとかではなく普通に瑠璃川 珊瑚に誘われて合宿に行くことを楽しみにしていた。 瑠璃川 珊瑚に話しかけられると普段の調子とは違い分かりやすく機嫌良さそうに受け答えしている姿が見れる程に>>131合宿を前のめりに楽しんでいた。 暗さとか陰りとかどこに消えたのだろうかと不思議になってしまう程には世界に絶望はしていなかったろう。
そんな合宿では瑠璃川 珊瑚との会話を皮切りに皆と話していけた、といいと思う。 最後尾を歩くのではなく適当な位置にいるようになったろうし花火も楽しんでいた。 線香花火チャレンジは17秒で、>>132ちらりと見られているとはにかんでしまったくらいである]
(160) 2023/11/12(Sun) 22時頃
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[ただ、線香花火があまりにも無惨でその後すぐにスンと真顔になってしまったのだけれど。 星座のことはよくわからなかったから教えてもらうことができたろうか。 星座板と見比べながら獅子座は夏の星座なのに今の時期に見えないことを知り驚いたことは間違いない。 冬前くらいから見えるらしくその時は蟹座と一緒に見えるそうだ。 その時にまた星座を見たいねと話をすることもできたろうか]
(161) 2023/11/12(Sun) 22時頃
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[楽しく過ごせた合宿で、帰るとまたしんどい生活が続くだろうがそれでも希望を持って生きることが出来そうだった帰り道。 誘われて寄り道した先で、疑い深いものだから最後に登録した大和だったけれど――。
それが運命の分岐点だった。 正直な話、何がどうなっているのか大和は理解が追い付いていなかった。 ゲームもしたことがないし宇宙が消滅するというのもわからなかった。 >>136珊瑚もそれは同じようでその中でも戦いたくないという言葉が耳に刺さる。 どうにかして何とかしてあげたい。 そう願うが今の大和には何もしてあげられることがない。 >>137一緒に探索する中でも、そうやって一緒に居ることしかできない無力さはこれまでの人生の中でもずっと味わってきたことだった。
死した七星に花を手向ける。 そこに含むのは独りの寂しさを知っているからのもので、何を想って戦って、何を想って死んだのかはまだ知らないことだ]
(162) 2023/11/12(Sun) 22時頃
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……うん、どうかした?
[>>138突然に声をあげた珊瑚に声をかける。 ずっと黙して祈っていたようだったから何かあったのかと小首を傾げる。 大和自身よりも社交的で、同じくパイロットに選ばれてしまった珊瑚に投げかけられる言葉は少なくて、多少の今の不穏を尋ねるくらいだけだった**]
(163) 2023/11/12(Sun) 22時頃
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──if・大和くんと──
>>163大和くんに声をかけられてビクッと肩を跳ねさせた。 だって気づいてしまったんだもの。 私がしでかしてしまったこと。 だって気づいてしまったんだもの。 柊木くんがなんであんなに謝罪の言葉を口にしていたのか。 騙されていた。確かに騙した方が悪いけど、大和くんはきっと誘わなかったら来なかった。 誘わなかったら、合宿に来なかったら、こんなことに巻き込まれることだけはなかったのに──!
「…っ。」
咄嗟に何かを言おうとする。でも、喉がきゅっと締まって声が出ない。 泣くのは卑怯だ。謝る時には相手の目を見て、涙をこぼさない様に謝るのが誠意ある謝罪だと思う。 泣くのは、ずるい。そうだと思うのに、狼狽えて笑うことも出来なかった。 すう…、と深く息を吸う。 ふ、と小さくそれを吐いて。
(164) 2023/11/12(Sun) 22時半頃
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『ごめん。ごめんなさい、大和くん。 私が合宿に誘ったから、 こんな変なことに…巻き込まれて…。』
そう、言えればよかった。 でも私、言えなかったんだ。 どうして? だって、そのことをわざわざ暴いて、嫌われたくなかった。 それにきっと言ったら言ったで絶対に大和くんは許してくれると思うから。 だってそうでしょ、誰もこんなこと予想してない。できない。なのに謝ってもそれは私の気持ちが楽になるだけ。 私の重荷を大和くんに押し付けるだけになる。 ──勿論そのことで柊木くんを詰るつもりは無いよ。だって、柊木くんだってそんなつもりはなかった。私だって柊木くんを責めるつもりは無いし、一番悪いのは七星くんとハロだって思ってる。 でも。 私は許されたくなかったのかもしれない。 本当に死ぬのなら。本当に戦うのなら。 だって。 七星くんは死んでしまったけど、私たちは大丈夫…かもしれないし。 もしかしたらこの後戦闘なんて起きないかも知れない。起きたとしても数十年先で、今日のことを忘れてしまうくらい先のことだとか。
(165) 2023/11/12(Sun) 22時半頃
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そうなら良いけど、七星くんが死んでしまったその事態と、街の惨状にどうしても楽観視できない。 許されることで楽になるのは、違う。 そう思ったからこそ、私は何とか笑みを浮かべて首を緩く横に振った。
「…なんでもない。 ハロが、前に見た黄色いナマコに似てるなって。 ちょっとだけそう思っただけ。」
でも、胸がつきりと痛む。 好きな人に嘘をついた。謝ることをしなかった。 そして、本当に死んでしまうなら。
(166) 2023/11/12(Sun) 22時半頃
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「…大和くんは大丈夫? あれなら、うちでご飯食べてかない?」
この恋を叶えるつもりは、私には無い。 だってこんな状況で、本当の気持ちを教えてもらえるかなんてわからない、なんてワガママな気持ちが芽生えてしまったんだ。
死んでしまうから、叶えてあげる。 好きって言ってあげる。 行ってあげないと可哀想だから。 そんな、惨めな恋の叶え方ってある?
優しい大和くんだから。 そんな事はしないで誠実に答えてくれると思うって気持ちと、優しいからこそ全てを受け止めてくれるんじゃ無いかと言う気持ち。 同時に、同じ立場になるからこそ自分の思いを叶えにいくんじゃ無いか、その相手が自分じゃ無いかもしれないという臆病さから、私は絶対に自分から気持ちを伝えまいとその時は決めてしまっていた。
それと同時に。
(167) 2023/11/12(Sun) 22時半頃
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「父さん、病院で今日は忙しそうだから。」
──私はこの地球を守りたいのかな? 父さんはもう私のことも忘れてしまってるのに。 私の年齢のことも忘れて、新しい恋人と過ごしてるのに。
そんな、苦しい気持ちが芽生えて。 ほんの少しだけ、語尾が震えた。**
(168) 2023/11/12(Sun) 22時半頃
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ケイは壊れちまった──俺が、パイロットにしたことで。 でも、これだけ壊れても、一番大事なとこは残ってた。 小さい頃の大事な思い出。ケイにとっての宝物。 俺には兄弟が居ないから、どっか間違えてるかもだけど。 ケイが匡先輩に向けてる想いは、何となく“普通”とは違う気がしてた。
違和感が形になったのは、ケイがキスして謝って来た時だ。 俺のこと、雨竜先輩と同じように好きなのかって聞いたら ケイの答えはこうだった。
『ーー…同じ、ではないと思う。 むしろ兄さんに対する気持ちに近い、かな……。 僕の事を心配し、傍にいてくれるのが嬉しくて』
ケイが必要としてたのは、最初から匡先輩だった。 匡先輩みたいにケイを心配して、守ってくれる相手。 それは別に、俺じゃなくてもよかったんだ。 もし瑠璃川があの夏合宿に参加してたら、瑠璃川だったかも しんねーなってくらいに。
(169) 2023/11/12(Sun) 22時半頃
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そう思う根拠は、一応ある。 今まで俺が何人と付き合っても、ケイは別に普通だったけど 匡先輩に雨竜先輩って恋人ができたら、ケイは二人の関係を壊そうとしたし、壊しちまったんだから。 けどもし今俺が恋人作ったら、ケイはその子に嫉妬するか、 雨竜先輩としたみたいなことして、関係壊すんだろうな。
──だって、今の俺は匡先輩の代わりだから。
何度も「愛してる」って言って、結婚式をやったのも。 指輪をくれたのも全部、同じことを繰り返さない為だろ? 俺が──俺まで、恋人作ってケイを置いてかないように。 “絶対にケイから離れない匡先輩”が欲しかっただけ。 別に、俺じゃないといけない理由なんてなかったんだ。
性欲の方は正直わかんねーけど、匡先輩は兄弟だから向けるわけにいかなくて、そんで膨らんじまったのかもなって。 ケイが本当に性欲を向けたい相手は、俺じゃない。 雨竜先輩も俺も、匡先輩の代わりでしかなかったんだ。 だから、俺の事情を知ったケイはあっさり引いたし引けた。 漸く見つけた“代わり”を失う方が困るから。 本当の想いじゃねーから、抑えるのも難しくないんだろ?
(170) 2023/11/12(Sun) 22時半頃
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何となくだけど、全部わかってた。 それでも俺、ケイのこと大好きだからさ。 代わりでも何でも、俺にできることでケイが笑ってくれるんなら、それでよかったんだ。 好きだって言ってもらえるの、嬉しかったし。
言っただろ? 「俺に何か求めることがあるなら、叶えたいって思ってるよ」ってさ。 匡先輩の代わりをケイが俺に求めるなら、叶えたいんだ。
……代わりでいい、って思ってたのにな。 なんで今、こんなに苦しくて悲しいんだろ。 俺が契約させて、ケイ壊しちまったからかな。 久し振りに、痛い目に遭ってっからかな。 わかんねーや。
父さんなら、わかんのかな。わかるなら教えてくれよ。 こんなんで俺、ケイのこと助けられんのかな。
(171) 2023/11/12(Sun) 22時半頃
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─乾恵一の家 応接間─
嫌味じゃねーって。でも、そ…だよな。 ……俺、言ってなかったし。 ケイだけじゃねーよ。みんな、言ってた。 俺の言うこと、ほんとかどうかわかんねーってさ。
[「みんな」と言うのは、今まで康生と付き合って来た女の子達を指している。彼女達の手作り料理も口にしない。キスも出来ない。そんな康生に、彼女達は言った。「柊木くんってよくわからない」「本当に私の事好きなの?」と。康生が振られる時の、お決まりのパターンだ。好意を問い質されれば、恋愛感情が解ってない康生はしどろもどろになるしかなく、破局にはそれで充分だった。]
……気に障ったなら、ごめんな。 ケイのこと、ちゃんと理解してやれなかったのも。 でも、俺は……ケイがもし本当に「死にたい」って言うなら 無理に「生きろ」って言ったりしねーよ。
────言っただろ。「殺すよ」って>>61。
俺は、どうしたってケイの全部はわかってやれねーからさ。 代わりに、ケイが俺に望むことで、俺にできることは全部してやろうって思ってる。
[卑屈に捉える彼に、今は何を言ったって無駄だろう。康生も、それが解らない訳ではない筈だ。それでも、律儀に言葉を返した。]
(172) 2023/11/12(Sun) 22時半頃
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でも、今さ。ケイは「してもいい」としか言わねーじゃん。 してもよくて、しなくてもいいなら…さ。 俺はケイのこと、蔑むのも突き放すのもしたくねーんだよ。
ただ、ちょっとだけ呆れてさ。「バカだなー」って笑って そんで、傍に居られたらいいよなー…なんて、思うだけ。
それをケイが「ふざけてる」って言うんなら……。 きっと、ふざけた人間なんだろうな。俺って。
[金槌の先で顎を持ち上げられ>>153、それでも康生は笑って見せた。顔のあちこちが痛んでも、尚。そんな姿に増々苛立ったのか、彼の舌打ちが響いた>>154。このまま頭でも叩き割られるのかと思ったが、予想に反して彼は康生を抱き上げた。どうやら場所を移すらしい。]
い゛ッ、あぐ……っ!
[この抱えられ方は、砕かれた右脛と左膝に堪える。呻く康生の両手は、変わらず胸元に在った。]
(173) 2023/11/12(Sun) 23時頃
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─乾恵一の部屋─
[一歩一歩の振動に耐えるのに必死で、道中を確認する余裕は無かった。ただ、移動前の言葉と投げ出された場所から察するに、乾恵一の部屋であるのは間違いないだろう。彼が何処かへ行っている間、康生は胸に手を当て浅い呼吸を忙しなく繰り返していた。視界に、ちらちらと星が舞う。痛みのせいで気分が悪くなる事があるのだと知った。]
[戻って来た悪魔は、打って変わって上機嫌だ。康生を傷付けておいて、一体何がそんなに楽しいと言うのか。理解に苦しむ。康生は嗤う彼を見ていたが、私は彼が何を持って来たのかの方が気になった。絶対に碌でもない物に違いない。]
新婚旅行、二人で…………男だから、なんちゃって…か。 ……ケイ、さ。一つ、聞いていいか?
[静かな声色と凪いだ表情に、私は再び恐怖を覚えた。乾恵一が、康生の口を塞いでくれないかとさえ願った。具体的な内容が事前に解った訳ではない。ただ、康生が何かとんでもない事を言い出すのではないかという予感がしたのだ。私の願いが届かず、彼が何も行動を起こさないなら、康生は言葉を続けるだろう。]
(174) 2023/11/12(Sun) 23時頃
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もし男でも、兄弟でもなかったら……匡先輩だったんだろ? ケイが、そういうことしたかった相手。 俺でも、雨竜先輩でもなくて。
本当に欲しかったのは───匡先輩なんだろ、ケイ。**
(175) 2023/11/12(Sun) 23時頃
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人はよくこう言う。自分の事は自分が一番よく判っている、と。これは勿論1つの正論だ。 自分に隠し事は不可能だし説明も不要だから。
では人は自分を全て間違いなく理解しているか。
それは否だ。人間とはそんなに単純な構造はしていない。
感情の1つ、行動の1つも複雑な意味を持つ場合がある。 自分はこうだと思い込んで行動していても、実は深層は違うなんて事も。
自分すらよくわからない人格を他人が理解するハードルの高さは語るまでもない。
あくまで存在するのは”その人はこう見える”というだけだ。
柊木康生は本当に説明下手なのか? 何故ここまで、乾恵一の暴虐に堪え忍ぶのか? それはただ、約束と誓いを護りたいという一心だけなのか?
(176) 2023/11/13(Mon) 01時頃
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ーーそして。
乾恵一は柊木康生を愛していないのか? 兄に対する強い想いは、指摘の通り性愛であるのか?
答えは明らかになるか、ならないか。
(177) 2023/11/13(Mon) 01時頃
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ーー自宅/応接間→自室ーー
「そうだね、君は本当に何も判っちゃいないよ。
僕が”死にたい”と思ってるなんて、まだ言うんだもんな。
……僕が君に言って欲しかった言葉を、君は決して言ってはくれないんだ。」
ーー君と生きたかった。 幸せに過ごしたかった。 死にたくなんかない。 僕は、死にたくなんか。
僕らに生きる道がないのは わかるけど。 「殺す」なんて言って欲しくなかった。 言って欲しかったのはーー
(178) 2023/11/13(Mon) 01時頃
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僕の頭がまだ正常ならば、そう言えたかもしれない。 そして彼と二人抱き合って咽び泣いて、こんな悲劇を避けられたかもしれない。
でも僕は、何言ってんだよコイツって顔しか出来なかった。 今の僕は彼も、そして僕自身も全く信じてないから。
そんな僕を彼は、まるで僕を愛してるかのような言葉で抉り続ける。
僕が特に強い反応を示したのは、彼が先程も言った”あの言葉”に対して。
ぴくり、と額に青筋を走らせて眉を寄せた。
>>120 『それに、言ったしな。「傍に居る」って。』
>>173 『そんで、傍に居られたらいいよなー…なんて、思うだけ。』
(179) 2023/11/13(Mon) 01時頃
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「……思ってもないことをぐちゃくちゃ言うなッ 聞きたくない……お前がそれを口にする度、イライラするッ」
ーー傍に。
きっと彼は、僕が何に怒ったかはわからなかっただろう。
僕はもう、ありもしない希望を見たくないんだ。
その為に彼を壊すと決めたのは名案だ。これ以上の答えはない。
愉しく最期を過ごそう。 僕らがこんな風に”傍にいるのは”きっと今日が最後なんだから。
部屋に戻ると彼は大人しく僕のベッドに居るままだった。 呼吸が荒いようには見えるが。 身体のあちこちが悲鳴をあげているのだろう。
僕の心はもう決まっていた。 彼を壊す最適な方法が判っていたから。
(180) 2023/11/13(Mon) 01時頃
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外傷を与えるより、もっと死に近く彼が苦しみーー彼を僕のものに出来るやり方を。
早速準備に取りかかろうとすると、彼が問い掛けてくる。
それはーー余りにも意外で。
「……え、?」
虚をつかれた僕は目を丸くする。 まさか、そんな事を言われるなんてまるで思わなかった。
だから。
「ぷっ……アハハハッ! コウ?何を言ってるんだ君は。正気か?冗談だろ?そうだと言ってくれよ!」
目尻に涙が滲む。腹を抱えて大笑いする僕は、真面目に問い掛けた彼にどこまでも、不誠実だ。
(181) 2023/11/13(Mon) 01時頃
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「僕が一番好きなのが兄さんで、兄さんを性愛対象にしてたと言いたいのか?
はは、はははッ!
確かに僕は性欲の塊みたいな、最低な下衆だよ!
でも流石に兄さんにこんなことしたいと思わない。
兄さんを好きなのは間違いないけどーー。」
こんなこと。そう言いながら僕はベッドに片膝を乗せ彼に近付く。荒い息を匂わせながら、彼の衣服に手を掛ける。
「……見せてよ。
僕が見たいのは、触れたいのは、君の肌だよ。」
脱がすなんて生易しいから、破いてでも剥ぎ取る。 彼の薄い胸板を曝すために。
上半身だけでは済まさない。彼の下半身も履いているズボン、下着も取り払ってしまおう。
(182) 2023/11/13(Mon) 01時頃
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抵抗するならば殴ってでも。
僕はドキドキして堪らない。 彼を一糸纏わぬ姿にするのに夢中になった。
ふと考えてみる。 これが兄だったら? 兄の裸は飽きるほど見てきたが、やはり、こんな高揚を覚えた記憶はないし、その先なんてーー。
「君は今夜初夜を迎えるんだよ、コウ。
兄さんでも雨竜先輩でもない。僕は君を抱きたいーー君の処女が欲しいんだ。
そして、君を。
ーー壊す。」
(183) 2023/11/13(Mon) 01時頃
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キスですら、彼をあれだけ壊したのだ。もし粘膜の激しい摩擦と、体液の注入を行えば彼はどうなるかーーそんな事はわかりきっている。
なんでも望みを叶えると言えど、犯されると知れば彼は嫌がるだろうか。
それとも、兄の代わりではないと僕がハッキリ言ったのだから、むしろ喜ぶのか。
僕には彼がわからない。 彼が僕を判っていないように。*
(184) 2023/11/13(Mon) 01時頃
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─乾恵一の自室にて─
ケイは、きっと俺より俺のことわかってるよ。 ケイが言ってほしい言葉、なんで俺が言えないのかもさ。 ……わかってるから、壊れちまったのかもな。
[康生は、彼の救いにはなれない。「彼のしてほしいことをしたい」という子供の情緒と、「できないことはできない」という大人の判断力を持ち合わせているから。つまり、康生自身が壊れてバランスを崩しでもしない限り「できることしかできない」ままなのだ。]
俺は、思ってることしか言ってないよ。 ……聞きたくないことしか言えねーんだろうな、もう。
[諦めた様に、康生は呟いた。何がどう逆鱗に触れたかは解らずとも、彼の苛立ちの原因が自分の言葉の中に有るのは理解したのだろう。こうして諦めが早いのも、康生の説明が下手な理由の一つかも知れなかった。説明しても解ってもらえない事が多過ぎたのが原因だとも言えるので、鶏と卵だが。]
(185) 2023/11/13(Mon) 03時半頃
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[康生の問い掛けに、彼は盛大に噴き出した>>181>>182。大笑いしてくれるなら、まだ良い。私は、康生が彼を激昂させやしないかと冷や冷やしていたのだから。性愛を含まないにしろ、乾恵一が康生に乾匡の代わりを求めているのは事実であろうから。]
俺は、多分まだ正気。 ケイは、心配して傍に居てくれる人がほしかったんだろ? 別に、俺じゃなくてもよかったんだ。 匡先輩みたいな人なら、さ。
[この子は、物事の本質を真っ直ぐ見過ぎる。人には触れられたくない部分や暴かれたくない事があるのだと悟るには、対人経験が少な過ぎるのだ。康生自身にそうした部分が無いから、余計に。]
俺は代わりでもいいって思ってた、けど……。 ────……違う、のか?
[彼が、康生の衣服に手を掛けた>>182。「見せてよ」と言われ、視線が彷徨う。僅かな逡巡の後、康生は胸元に置いていた両手をそろりと下した。]
……、……見て、触るだけ…なら。
[それだけで済まないであろう事が解らない程、康生も愚かではない。戸惑い揺れる声色と表情が、不安を物語っていた。彼は、構わず衣服を剥いでいく。]
(186) 2023/11/13(Mon) 03時半頃
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ひぐッ……! あ゛あッ!!
[下肢の衣服が取り除かれる際、康生は悲鳴を上げた。右脛は腫れ上がりスラックスを内側から圧迫していたし、左膝周りは乾いた血で貼り付いていたからだ。嫌な汗が流れ、裸体を晒す頃には青色吐息だった。]
はぁ、はぁ……、……。
[顔と両脚は無惨な状態だが、他の部位は白く滑らかだ。それだけに、正中線に沿った縦10cm程の胸元の縫い目と、臍の右下に在る抉れた様な痕が目を惹くだろう。視線から庇う様に、康生は右手を胸元の手術痕へと乗せた。]
っ、ケイ……。 …………、……。
[何事か言おうとして、康生は結局口を閉ざした。そして胸を上下させながら、迷子の子供の様な顔で彼を見上げた。]
[私は幾度も「逃げてくれ」と願ったが、康生はその場から動こうとはしなかった。まるで処刑を待つ罪人の様に。**]
(187) 2023/11/13(Mon) 03時半頃
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─IF 瑠璃川珊瑚が合宿に来た世界─
[瑠璃川珊瑚も大和命も合宿に参加出来ると聞いて、康生は大層喜んだ。特に、大和命は去年の合宿には来ていなかったからだ。“全員揃って合宿に行ける事”を何より喜んだのは、もしかしたら小中学と康生がずっと“参加出来ない側”だったからかも知れない。勿論、そんな自分の事情を口にはしなかったが。]
あ! 瑠璃川、こっち!! アレ売ってる! 瑠璃川が集めてるやつ! えっと……ギティちゃん!
[目的地に着くなり、売店の前で彼女を呼んだ。店先に下げられている黒猫のストラップは彼女が自分で買ったろうから、妙な火種になりはしなかった筈だ。康生がこうして周囲に声を掛けるのはいつもの事なのだから。]
[もう少し康生が色恋に敏ければ、彼女自身ではなく大和命にこっそり教えたのかも知れないが、残念ながらそうはならなかった。彼が常より浮かれている様子なのも、「合宿に来られたのがそんな嬉しかったんだな〜」くらいに思っていた。と言うか、そう言った。我が子ながら、鈍くて申し訳なくなる。]
(188) 2023/11/13(Mon) 03時半頃
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[康生は、きっと何処の世界でもそうである様に、夏合宿を楽しんだ。天文部の同級生や後輩、部外から参加してくれた同級生達や、案内人の少年と共に。もし僅かに違いがあるとすれば、瑠璃川珊瑚が用意してくれた市販品のおやつ>>131を有難く頂戴していた事と、ロケット花火で騒ぐ際に、大和命に声を掛けなかった事くらいだろうか。その時彼は、瑠璃川珊瑚と線香花火を楽しんでいた>>132>>160だろうから。]
[つまり、康生がいの一番に契約した事も。それが原因で乾恵一を──或いは他の面々も──契約させてしまった事も。直後のワープで動揺した親友を宥める内に、キスをされてしまった事も。戦闘中からその後に掛け、体調を崩した事も。発熱から取り乱し謝罪を溢し、救急車で搬送され瑠璃川海星の治療を受けた事も。何一つ変わらなかった。]
[この時点での私達は、まだ“二人とも契約してしまった”事を知らない。私は、契約したのは既に死んでいる自分ではなく康生だろうと考えていたし、康生は逆に、康生自身ではなく私が契約している可能性を考えていた。真実に気付くのは、私達の椅子を目にした後だ。]
(189) 2023/11/13(Mon) 03時半頃
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俺……もう、高校生だし、今回は、大したこと、なさそうだから、さ。 そんな、付きっ切りじゃなくて、大丈夫だよ。 それに────父さんも、居るからさ。
[康生は胸に手を当て、病院に駆け付けた母親へと微笑んだ。見送った後は乾恵一からのLINEに返信し、大和命以外にはLINEで、大和命には電話で(咳き込みつつ)無事を報せた。瑠璃川珊瑚には先に瑠璃川医師から連絡が行っていただろうし、彼女は全員に共有してくれただろうから、改めての連絡はもしかすると不要だったのかも知れないが。]
[連絡こそ取れるようにしてあるものの、真実を知らない私達の入院生活は、次の戦闘まで続いただろう。**]
(190) 2023/11/13(Mon) 03時半頃
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よく勘違いされるが、愛は万能ではない。
幾ら相手を愛そうと、人はその相手を理解出来るとは限らない。
よって、愛する人の望みを叶えられるとは限らない。
また、人は得てして愛される事には鈍感だ。
自分が愛されている事には気付かず、むしろそれを否定してしまったりもする。
相手が求める愛を返してくれない場合。 自分に自信がない時。
つまり。
形は違えど人は愛し合う事は出来る。 しかしそれが沢山のすれ違いを生めば噛み合わずーー
互いをただ、傷つけあうのだ。
(191) 2023/11/13(Mon) 08時半頃
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ーー僕の部屋ーー
諦めたような口調で彼は呟く。
実際僕らはどれだけの不理解を重ねて傷つけあっただろうか。 お互いに疲れ果てている、心も身体も。
それでも彼は僕から逃げず、僕は彼を離さない。
傷を刻み、踏みにじり、身も心も悲鳴をあげ続けるまでーー彼が言うように”傍に居た”。
ーー僕らは。
兄の話は僕の大笑いで終わりかと思いきやまだ続く。
僕の望むことは言えないと自負しながらも続ける彼は天然か?
いやそれは前から判っていた。 彼は天真爛漫だ。天使そのものだ。子供のように無邪気に人の傷を抉る。そのナイフは大人の頭脳にて精製されたものだから、非常にたちの悪い行為だ。
(192) 2023/11/13(Mon) 08時半頃
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「ーーあ?……だったらどうなんだよ。僕が乳離れ……じゃねーや、兄離れ出来ない餓鬼だって言いたいの?」
そうではなかろう。康生が言いたいのはその先だ。
“兄の代わりになる人”のこと。 それが自分であるのはまだしも、誰でも良いのか、違うのか。
僕は目を細くして答えた。
「カガセンはさ、兄さんに似てるんだよ。しっかりしていて大人で……。
だからイライラした。嫌いだったんだ。つまりさぁ、僕は別に兄の代わりなんか求めてねーよ。」
嘘だ。僕は加賀先生にも甘えたかった。ただ教師と生徒という立場ではそれが上手く出来なかったに過ぎない。 もし僕が素直に彼に甘えていたら、彼は僕の頭を撫でてくれたに違いないのに。
(193) 2023/11/13(Mon) 08時半頃
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彼がこれで納得するかはわからない。しかし僕はこれ以上兄の話を続けたいと思っていなかった。
お楽しみはこれからなのだから。
僕はまるで愛する妻に語るように、ねっとりした視線を注ぎながら彼の肌を求めた。
『男同士だから別にかまわねえよ?』
元気な彼ならこんな風かもしれないと思ったが、存外にしおらしい態度。 そこに羞じらいのようなものまで見えたのは、ただの僕の願望か?
しかし、行為そのものはほぼレイプだ。彼を脱がせるには、どうしても傷つけた脚に触れぬ訳にはいかなかったから。 彼の脚に再び激痛が走る結果となる。
部屋に響く鋭い悲鳴。 女の卑猥な声よりもそそる。
「……はっ、生ッ白い。女みたいだな!」
(194) 2023/11/13(Mon) 08時半頃
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胸には大きな手術痕が広がっていて僕は一瞬顔をしかめ、眼を逸らした。 そこに刻まれているのは彼が今まで苦しみながら懸命に生きてきた証。そんなものを見たらーー僕は挫けてしまう。
彼を壊すという目的を、達成出来なくなる。
だからわざと嘲るように言ったのだ。彼が運動もろくに出来ず、日に焼けるはずがないのは病気のためであるなんて判っていても。
「おっと悪い、初夜なんだから君は女でいいんだ。
むしろもっとちゃんと色っぽい仕草をして、股を開いて僕を誘って?
ひゃははッ」
それは妻ではなく娼婦だと何処からツッコミが来そうな冗談を言う。
「愛してるよ、コウ。君の全てが欲しい。」
(195) 2023/11/13(Mon) 08時半頃
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ベッドの上を四つ足で這うと彼に近付く。彼は起き上がることすら叶わず仰臥したままか。
その顎をグイと持ち上げる。
「ちゃんと花嫁の演技をしろ、この馬鹿。萎えるだろがッ」
彼は言った。僕が傷を負うような事をするなと。 そして幾ら彼自身を傷つけてもヘラヘラとしている。
ならば。
ガン、と強い一撃。僕はキスするほど、吐息が触れあうほどの距離で彼に思い切り頭突きをかます。
「ヒャハハハッ」
一回ではない、二回、三回狂ったように繰り返す。
僕の額は割れた。鮮血が迸り激痛に見舞われる。
「嗚呼痛い、痛くてたまらないよ、コウ……ふふ、あははッ」
(196) 2023/11/13(Mon) 08時半頃
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彼は僕が殴った上に更にダメージを食らうわけだから、フラフラになるかもしれない。
「はぁ、はぁ……」
漸く僕は離れ、額から溢れる自分の血を舐めた。不味い。
彼がまだ僕の心配をするなら笑うしかない。
「……っと。コウがぐたぐた下らねえ話をするから、準備が滞るじゃんか。 僕はちゃんと、君が花嫁になれるものを用意したんだぜ?」
そう言い、僕が机の上から取ってきたものは真っ白なヴェールだった。
これは母が結婚式の時に使ったものである。以前見せて貰い、タンスの奥にしまってあるのを僕は知っていたのだ。
僕はヴェールを恭しく彼の頭に乗せる。そんなものがあろうと、数々の暴力でボロボロの見た目が変わるわけでもないのに。
(197) 2023/11/13(Mon) 08時半頃
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「いいねぇ、似合う。 あ、そうだ……お化粧もしようか。これで。」
口紅も拝借してきたら良かったが、僕は忘れてしまったから。
自分の額に滲むものを人差し指につける。
その指先をひたりと、彼の唇にあて、左から右にゆっくりと塗った。
真っ赤な血を。
「……とっても可愛い。」
僕の血で彩られた唇。彼は勿論、こんなの望んでいないだろうが。
興奮が頂点に達した。
ーー彼に覆い被さる。その唇を再び奪うため。野獣のように僕は、彼を喰らおうとした。*
(198) 2023/11/13(Mon) 08時半頃
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――IFの物語――
[>>164何かを言い出そうとして珊瑚は言葉に詰ってしまった。 碧い視線だけが真っすぐに向いてくる。 瞳が震えているようだがそれは気のせいだろうか。
楽しかった時間が一瞬で書き換えられてしまった。 >>189ロケット花火は誘われなかったけれど柊木とは合宿中には別の事柄で話す機会もあったろう。 その時ではなくても持とうと思えば機会などいくらでもあるものだ。 そんな合宿の思い出の最後の一項が筆舌に尽くしがたい状況なのだけれど――別にそれは珊瑚が悪いわけではないだろう。 後になってハロから聞いた話で言えば『数多の可能性の中でこの世界線ではこうなる運命だった』のだと知れる。 たまたま僕らの世界では僕らが選ばれる、そんな世界だった。
割り切るには未だに心は追い付いてはいない。 けれど思うのだ。 何もかも秘密なままで知らずに終わるよりも全部を知って仲間として終われるなら――それもまた独りぼっちじゃないだろう]
(199) 2023/11/13(Mon) 11時半頃
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[結局珊瑚は何も言わなかったから大和もまたそれ以上尋ねることはしなかった。 ただ>>166思ってもしなかったことを言われて目蓋を瞬いてしまったくらい。 浮かべた笑みは弱々しいものだったし、黄色いナマコに似ているらしいけれど大和はナマコを見たことがなかったからそうなんだって言えるくらいだったけれど。
>>159帰り道、乾の実家の車――という名のどんぐりワゴン号に乗せてもらえることになった。 相変わらず乾の両親には丁寧に挨拶をして乗る前も降りた時もお礼をしっかりと伝える。 乾は何か思うところがあったろうか。 こんなにもいい両親がいるのに――家族の愛も知っているのに。 戦って死んでしまわなければならないなんて。
病院に送られた柊木はどうだ。 彼のような陽キャに見える存在は悲しんでくれる人多いだろう。 それ以前に無事かどうか心配すぎるのだけれど――確か乾と? その時の話はやはり大和には理解しにくいものだったかもしれない]
(200) 2023/11/13(Mon) 11時半頃
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うん……うん?? 迷惑じゃない?
[>>167どんぐりワゴン号から降りた後で尋ねられた言葉にまたも目蓋を瞬かせる。 ご家族に迷惑ではないだろうか。 そこが心配だったのだけれど>>168父親さんは忙しいらしい。 あんなことがあった後だから帰る暇もないとし、その他の事情も知らないけれど――]
(201) 2023/11/13(Mon) 11時半頃
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迷惑じゃないなら、お願いしていいかな。
[このまま家に帰っても100均の三束蕎麦を一束塩で茹でて食べるだけの生活だもの。 合宿のご飯と比べても、瑠璃川 珊瑚のご飯と比べてもそれはとてもひもじいものだ。
それに――何も言ってくれなかったことが気になった。 そこまでの仲ではないのはわかっているけれど、ほら、仲間なら、気になる相手のことなら、ノースリーブでどきどきしてしまう相手なんだから知りたいって思ってしまうじゃないか。
頷いてからこのままでいいのかなと視線で問いかける。 荷物もあるし洗濯もしないといけないけれど――このまま一人で帰すのも危うそうではあるしと好ければそのまま家まで一緒に帰ろうか*]
(202) 2023/11/13(Mon) 11時半頃
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─乾恵一の部屋─
[彼に真正面から向き合う康生は、自身がナイフを向けている事に気付けないまま言葉を重ねた。]
それがガキなら、ガキでいいんだよ。 俺だって全然親離れできてねーし、一生できねーもん。 全然、ダメなことなんかじゃないんだ。
[七尾千映に言ったのと同じ内容だ。康生の中には私が居り、命を共有しているのだから、文字通り“一生”親離れなんて不可能だ。親離れや兄離れ出来ない相手を否定する事なんて、出来る訳がなかった。]
……違うだろ。 カガセンのこと、嫌いなんかじゃないだろ。ケイ……。 頼りにしてただろ、俺が熱出した時も。
[加賀先生が合宿所へと戻って来た時、真っ先に立ち上がり玄関に駆けて行ったのは彼だ。その姿を思い出したのだろう康生はそう訴えたが、彼がそれに答える事はなかった。]
[肌を暴かれる>>194。確かに普段の康生なら、もっとあっけらかんとしていただろう。だが、度重なる暴力と向けられた害意により、康生は少しずつだが確実に弱っていた。康生は無敵でも超人でもない。幾ら回復が早くとも、繰り返し殴られれば罅は広がり、いつか壊れる。既に、拡がる不安を取り繕えない段階まで来ているのだろう。]
(203) 2023/11/13(Mon) 14時頃
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[されるがまま顎を持ち上げられ、康生は力無く訴えた。]
……いくら女みたい、でもさ。 女じゃないの、見たらわかるだろ? わかっただろ? 俺は、ケイの欲しいもの持ってねーんだって。 挿れるとこないから、処女とかもない。 俺の全部はやれねーけど、もし仮に全部をやったとしても ケイの言うみたいに、色っぽい仕草して誘ったとしても 俺が持ってないもんは、やれねーんだよ。
[この答えが彼を刺激したのか、それとも元よりそのつもりだったのか。彼は頭突きをかまして来た>>196。至近距離で避けられる筈も無く、まともに食らう。人の額は中央が凹んでいるから、漫画等で表現されているのとは異なり、一度の衝突で左右二ヶ所がぶつかり合った。だが、そのまま繰り返すだけでは、彼が額を割る事は無かっただろう。]
いぎッ!? バっ、やめ……!
[一度目は事態を把握出来ず、二度目は間に合わなかった。三度目、康生は手を翳す。自分を守る為ではなく、彼の額を受け止める為に。胸元に置いていた右手ではなく、空いている左手を。]
(204) 2023/11/13(Mon) 14時頃
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────ぁ、……。
[……それがよくなかった。左手には、彼から贈られた指輪が嵌まっていたから。硬い金属は康生の指を守りはしたが、代わりに額の皮膚を傷付けた。康生のだけではなく、彼の物まで。]
ごめ、ケイ…………ごめん……。
[追い打ちを掛ける様に、彼は「痛くてたまらない」と抜かした。痛くて堪らないのは此方の方だと言い返してやりたかったが、康生は違った。自分の行動で彼を傷付けてしまった事が、余程ショックだったのだろう。半ば放心状態で、譫言の様に謝罪を繰り返した。]
[後はもう、彼の為すがままだ。ヴェールは勿論>>197、悪趣味な化粧を施されても>>198、康生は抵抗しなかった。抵抗する事で、彼を傷付けてしまうかもしれないと怖れているのだろう。他人の血液を粘膜に塗られるなんて、絶対に拒まなければならない程に危険な行為であるにも拘らず。]
……ん、ぅ
[野獣に覆い被さられても、康生は身動き一つしなかった。右手を胸へと乗せたまま、彼の額から流れる赤が近付くのを瞳に映し────奪われ、喰らわれた。**]
(205) 2023/11/13(Mon) 14時頃
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ーー僕の部屋ーー
彼の言葉は僕に聴こえていないわけではないし、僕はそれを理解できない程は狂い切れてはいなかった。
それは彼が、どうしても僕が言って欲しい言葉を言わないのに、希望を感じさせるような事をポロリと言うから。
すがりたい僕と諦めたい僕がせめぎあう。 それだけで狂えたら良かったが、簡単には楽になれないようだ。
彼が壊れるまできっと、僕の苦しみが終わることはない。 そして、彼が壊れたら……僕は。
彼は何故、言葉を紡ぎ続けるのだろうか。 そのせいで僕は揺れたり躊躇ったりしているのを考えると、暴力的な僕を止めるためか。
そんな事をしても無駄だと、立て籠りの犯人に訴える警察みたいだ。
「……そんな事、判ってる。」
彼は僕の言葉を、なんに対する返答を捉えるか。
(206) 2023/11/13(Mon) 16時頃
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女のような身体ではない。 胸もない、性交を行う孔もない。
“持ってないもんはやれねーんだよ” >>204
「僕が欲しいのはさ、そんなパーツじゃない……
そうだよね、でも、君はやっぱり持ってないんだ。 持ってないから、言えないんだ……ッ
愛してる?傍にいる? なのにッなのにッ」
愛して欲しい、 傍にいて欲しい。
でも一番欲しかった言葉は
”一緒に生きて欲しい”だ。
(207) 2023/11/13(Mon) 16時頃
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望みがなくとも、運命に逆らえなくとも、
理屈じゃないッ 愛情があるならば、 僕を愛してるなら、 殺すなんかよりそう望むんじゃないのかッ
愛する人から「シネ」と言われたも同然の僕は。
君を壊すしかない。 君を壊すしかーー
狂ったように頭突きをしたのは、僕自身も傷つくためだ。
まさか、彼がしていた左手薬指の指輪により額に傷がつくとは思わなかったが。
「僕の事愛してないくせに、まだ付けてたんだ? なんでだよ、なんでだ?
……やっぱり僕の花嫁でいたいわけ?はは、もう、ワケわかんね。」
(208) 2023/11/13(Mon) 16時頃
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まるで壊れたラジオみたいに謝罪を繰り返す彼はもう抵抗を止めていた。
僕は自身の左手薬指を見る。 そこには勿論指輪が光っていてーー
「最後までしよう、コウ。 もうワガママ言うなよ。 僕は君が好きだ、好きなんだ。」
ーーこれが僕の最期。 僕と彼のおしまい。
彼は手に入らない。 僕の欲しい彼の心は、手に入らない。
『気持ち良くなろうよ、恵一くん。 いいじゃない?恋人じゃなくたって。
想い想われるとか怠い。 ただ溺れたいの……。』
(209) 2023/11/13(Mon) 16時頃
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雨竜先輩の囁きが、あの時の甘い吐息が、思い出される。
僕が得られるものなんて、所詮……。
そうかァ?
目の前の花嫁は待ちわびてるじゃん? やっちまえ!
彼の唇は乾いていた。長く暴力に曝されて緊張が続けば誰でもそうなるだろう。血を塗ったところで潤いにはならない。
僕が包んであげる。 美味しい唾液で喉を潤してあげるよ!
唇の合わせを深くし、顔を角度を斜めにしながら舌を奥へ。 彼の歯茎すら愛しくて舐めまくる。逃げ腰な舌は恥ずかしいのかな?のがしはしない。
ぬるぬるとたっぷり粘膜を摩擦させ、呼吸すら奪うように激しく、狂おしく。
ーー彼に溺れる。
(210) 2023/11/13(Mon) 16時頃
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僕の額からは血が垂れた。彼が目蓋を閉じなければ眼に入るかもしれない位置。
彼にとっては唾液も血液も毒だ。それを知りながら、僕は遠慮なく彼を染めていく。
逆上せたみたいに顔を赤くし唇を離すと、唾液がつ、と糸のように二人の間を繋いだ。
「凄くいい……君の唇は極上だ。柔らかくて温かだ。
君は、胸とかアソコとか、そんな女のパーツがないと気持ち良くなれないと思ってんのかもしれないけどさ……
こんな素敵な唇があるじゃん。」
彼の下肢は僕の強引に反応してはなかろう。しかし僕の中心はもう張り詰めて苦しい。
彼を跨いで膝立ち姿勢は僕はジーンズと下着を一気に下ろす。 露出した陰茎は赤黒く暴力的な大きさを誇りながらそそり勃っている。
彼はそれを見て反応を示すとは想えないが。
(211) 2023/11/13(Mon) 16時頃
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「ねえ……舐めてよ。君の唇で気持ち良くなりたいんだ。」
彼はノーマルだし、これも粘膜接触だからゾッとする提案でしかないはずだが。
にじにじと膝で前に歩き、さっきまで愛を交わすように重ねていた唇に性器の先端を押しあてる。
「口を開けよ……ほら。咥えて、僕のちんぽ。
なあ、ほらーー 言うことを聞けよッ」
鼻でも摘まめば捩じ込むのは可能だろうが、僕はもっといい方法を思い付く。
彼の左手をパッと掴むと、先程僕の額を傷つけた血濡れの指輪を抜き取ったのだ。
「返して欲しい?なら、奉仕しろッ」
そんなものはいらないと言われたらただ嗤うだろう。むしろ一抹の希望を棄てられてせいせいするかもしれない。
(212) 2023/11/13(Mon) 16時頃
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僕は自虐に浸りながら彼の答えを待つ。
「……君がいいんだ。愛してよ……愛して。」
苦しくて、苦しくて。 非道に及びながらも僕は。
こんなにもーー彼が愛しい。*
(213) 2023/11/13(Mon) 16時頃
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──if・大和くんと──
「迷惑じゃないよ。むしろ…。」
──一人になりたくない。 そんなわがままな気持ちを伝えかけて唇閉じた。 私が引き止められるのはご飯だけ。 それ以上はきっとダメ。そこまで親しくない。そこまでの関係性じゃない。 私は好きだけど、大和くんは…わからない。 だから、ワゴンから降りた後に誘いかけて、その癖思いを押し殺す。 こんな時にまで。
「ほら、前に言わなかったっけ。 一人ご飯だと、作る気無くしちゃうんだもん。 でも、こんな時にご飯を食べておかないと 鬱々と…考え込んでしまいそうで…。
ほら、七星くんのこととか…。」
(214) 2023/11/13(Mon) 19時頃
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私たちを騙した人のこと。 私はこの時点ではハロに全く心を許していなかった。その造形から受け入れられなかったし、七星くんと同じ私たちを騙した側なのだから。
──私たちを巻き込んだ側。
そう思うと心に暗いものがこぷりと溢れてきそうで、私はきゅっと唇を噛む。 拳を握りしめたけど、それをあえて開いた。
(215) 2023/11/13(Mon) 19時頃
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「…簡単なものになるけど良いかな?」
なんて誘いかけながら、私の家に向かう。 家に戻ったなら荷物を置いて、洗面台を案内して。 手洗いうがい。エプロンをつけて冷蔵庫を開ける。 合宿前になるべく使い切っていたから、冷凍のほうれん草をかるくソテーしてそれに卵を絡めて一品。 常備菜のきんぴらに、冷凍アスパラにベーコンを巻いて焼いてそれでお肉分にしてもらおう。 お豆腐のお味噌汁も作って、ご飯も炊いて。 いろんな美味しい匂いが部屋を満たしていく。 それらを作る作業が、私を日常に戻していく。
(216) 2023/11/13(Mon) 19時頃
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戻していくのに。 >>159その合間に電話があって、私は恵一くんと少しだけ話をして。 でも。 …それで少し泣いたんだ。 だから少しだけ目が赤かったかも知れないけど。
「どうぞ、お野菜とかお肉とか、 家に残ってたのしかないけど…。 食べてくれると、嬉しいな。」
いつも通りの元気が出ないのは、七星くんの死体を見たから。 街の惨状を見たから。 それに狼狽えていたから。
(217) 2023/11/13(Mon) 19時頃
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私もいただきます、と手を合わせてお箸を手にする。 でも、口に運んだご飯はいつも通りの味のはずなのに。
私にはなんだか味を感じられなかった。**
(218) 2023/11/13(Mon) 19時頃
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─乾恵一の部屋─
[乾恵一は、康生に救いを求めた。そして期待通りの救いが得られない事を怖れ、壊そうとしている。康生は私の息子だから、当然壊して欲しい等と思う筈も無い。]
[だが仮に、私が全く関係の無い赤の他人であったなら。乾恵一はもっと早くに柊木康生を壊すか、若しくは離れておくべきだったと言っただろう。彼はどうしようもなく生を望んでいて、自分を生へと引き上げてくれる相手を求めていた。けれど柊木康生は、他者を生へと引き上げる事は出来ないのだ。天地がひっくり返ろうと、「一緒に生きて」なんて言う筈が無い。]
……そうだよ、ケイ。俺、持ってない。 持ってないから、言えねーんだ。
[康生の心臓は、四年も前に止まっているのだから。]
[椅子が康生の生を証明した所で、コックピットに在る以上、早晩消えるのは確定している。死の床の形をした椅子に座る康生は、誰より早く運命を理解し受容した。抗う事無く諦めた──否。潰えたら其処までだと、運命を突き付けられる前から受け入れていた。]
(219) 2023/11/13(Mon) 19時半頃
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愛してるから……。 ケイの求める愛じゃねーのは、わかってるけど。
[その瞳が映す希望も、魂の輝きも“死ぬまでは”という限定付きだ。乾恵一が生臭い溝なら、康生は消毒液の川だ。どんなに美しく澄んだ色をしていても、其処に命は無い。生を奪う事しか出来ない。流し込めば、溝の命は終わる。康生にはその自覚があるから“できることしかできない”のだ。激しく求められようとも。]
……ごめんな。ケイのこと、好きで。 好きで、好きなのに。ごめん。 俺、ケイのこと傷付けるしかできなくて、きっと──。
[血液は乾くのが早い。塗られれば水分を奪う。言い淀んだ言葉は、零れる事無く共に喰われた。縮こまっていた舌は簡単に追い付かれ、絡め取られる>>210。]
んーっ、んー……!
[垂れる赤>>211に、康生はぎゅっと両眼を閉じた。視覚を自ら遮った事で、与えられる感触がより鮮明になる。舐め回される歯茎に、ぞくり、ぞくりと背を走るものを感じた。息苦しさに鼓動が強まる。酸欠の頭が生んではいけない多幸感に浸かり始めた頃、漸く唇が離れた。]
(220) 2023/11/13(Mon) 19時半頃
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ぷはっ……はぁっ、はぁっ…………
[頬が熱いのは、殴られた箇所が腫れてきたせいだ。熱っぽいのは骨折したせいで、悪寒は衣類を身に着けていないせいだ。若干兆している様に感じるのは気のせいだし、仮にそうだとしたら生命の危機に陥っている事による本能的な反応だろう。そうに違いない。]
舐め……?
[掛けられた言葉>>212に薄く開かれた視界は、すぐ丸くなった。唇に押し当てられたそれから顔を背ける事で、康生は何とか言葉を紡ぐ。]
んッ……! ダ、ダメだ、ケイ……! それしたら、ほんとに俺、傍に居られ──!?
[言葉が途切れたのは、指輪を抜き取られたからだ。何が起きたのか把握すると、康生は愕然とし……みるみる内に視界がぼやけた。]
ッ、だから……だから俺、聞いたのにィッ! ほんとに俺が貰っていい物か、って。 いつかこうなるって、でもこうなってほしくなくて ケイに後悔してほしくないから、ちゃんと聞いたぁッ!!
(221) 2023/11/13(Mon) 19時半頃
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[幼子の様にぐずり、わんわんと泣き出す。康生が言っているのは、指輪を貰った時の事だろう。あの時点で、彼の言う「プレゼント」が指輪である事は、私も康生も知らなかった。けれど、態々「受け取って欲しいんだ」と前置きされたそれが重要なものだというのは察せたのだろう。康生は、確かに念押ししていた。]
『プレゼント、さ。 それ、ほんとに俺が貰っていい物? 渡すの俺で、後悔しねぇ? ケイが、本当に俺でいい、 俺に渡したいって言うなら ──貰うよ』
……でも、やっぱ俺じゃダメなんじゃん!! ケイが渡したの後悔して、俺から取り上げるってんなら 「返してほしい」なんて言えるわけないだろッ!?
ケイの「愛してる」も「好き」も「欲しい」も やっぱ、お、俺じゃダメで、俺じゃなかったんじゃん! 取り上げるなら、なんでくれたんだよ?! なんでだよ、ケイのバカァ……!
(222) 2023/11/13(Mon) 19時半頃
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[宝物を取り上げられた子供の様に、涙と鼻水を流して身も世も無く泣き叫ぶ様は、彼が期待した反応とは恐らく違っていただろう。指輪を取り上げるという行動は、彼の想定以上に康生にダメージを与えたし、康生はもう限界に近かった。あと一押しで、壊れてしまいかねないくらいに。]
──……ほんと? ほんとにケイは、俺がいい? 俺がいいのか?
[彼が溢した言葉>>213は、康生にとって蜘蛛の糸だった。千切れると解り切っていても、手を伸ばさずには居られない程に。]
ほんとに俺がいいならさ……。
(223) 2023/11/13(Mon) 19時半頃
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“これ”で俺が死んだら────死んでくれよ、一緒に。
[彼の返事を聞かずに、康生は死を齎す陰茎を咥え込んだ。独特の臭いと苦味が口に広がる。喉を突きかねないそれを、悪戦苦闘しつつ頬張る。]
ふぐっ……んー……、…………?
[咥え終えた所で、其処からどうしていいか判らなくなったのだろう。少し困った様に眉を寄せ、彼を見上げた。**]
(224) 2023/11/13(Mon) 19時半頃
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──if・恵一くんと、料理中>>217──
「恵一くん?どうしたの?」
この会話、私側は大和くんに聞かれていてもおかしくない。 でも、隠すような相手でもないから料理をしながら普通に出てたんだ。
「うん、大丈夫…今は、ご飯作ってるとこ。 混乱はわかるよ、わかるけど…。」
私はグッと言葉を飲み込む。 そして深呼吸してから、お味噌汁の鍋の水面を見つめながら続けた。
(225) 2023/11/13(Mon) 19時半頃
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「私は──全て真実として受け止める。 それで何もなければ笑い話で済むけれど もし、全てが真実だったとしたら。 もし、その一人目に選ばれていたのだとしたら。
…覚悟を決めておかないといけない、でしょ?」
言っていて、私は少し声が震える。 じわりと涙が滲んできて、そっと涙を手の甲で拭いた。 ふつふつと、お味噌汁の薄茶の水面が動き始める。 もうそろそろ火を止めないといけない。**
(226) 2023/11/13(Mon) 19時半頃
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――IF・瑠璃川 珊瑚と――
……そう、それなら。
[>>214お誘いに乗ってしまってもいいだろうか。 正直誘われることは嬉しい。 一緒に居られると心が温かくなる人で――この気持ちが何なのかはわからないけれど、珊瑚も一人でいると悩んでしまうなら猶更にと応じることにした。 悩まないはずがない。 自分の生命がかかっていて、そこにさらにこの世界の運命ものしかかってきているのだ。
七星に対する反応もハロに対する反応も各々異なる気持ちを抱いているだろうしけれど大和はそこまで皆のことを知らないので尋ねることもできない。 それは珊瑚に対しても同じで深くは知らないのだ。 ただ、そう、誕生日にプレゼントを贈るくらいの仲で――]
(227) 2023/11/13(Mon) 20時半頃
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えっ、う、うん、いいよ! えっと……作ってくれる料理は全部美味しいからさ。 簡単なものでもすごく美味しいと思うよ!
[珊瑚の家はマンションで、中に入ると自分の家とは異なる匂いがする。 親父さんと一緒に住んでいるはずだけれど珊瑚の匂いしか感じない気がする。
荷物を置いて手洗いうがいをすると一瞬で手持ち無沙汰になる。 台所に立つ珊瑚を惚けたような眼差しで見つめていると手際よく料理を作っていってくれる。 きんぴらはいつでも美味しいしアスパラベーコンなんて御馳走で、ほうれん草が絡んだ卵なんてもう優勝決定である。 それだけでも十分なのにお味噌汁もご飯もある。
大和が手伝えることは少ないのでお皿を出したりくらいはできるけれど、そこは全部珊瑚の指示に従うことにした]
(228) 2023/11/13(Mon) 20時半頃
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そんなことないよ? すごく美味しそうだ。 えっと……珊瑚、さんはさ。 料理が上手だし、うん!
[>>225先程掛かってきた電話は乾からのものだったことはわかる。 連絡をしあって情報を交換して――少しずつ折り合いを付けていくことを大和は聞いていたけれど言葉を挟むことはなかった。 ただ、珊瑚が泣いていたことだけは気づいてる。
手を合わせて元気な声で『いただきます』と唱えると作ってくれた料理に箸をつけていく。 卵はとろりとしている中に香りのいいほうれん草が入っていて触感もいい。 アスパラベーコンはアスパラのシャキシャキ感とベーコンのしっとりしながらも塩味と脂の味、肉感がとても美味しい。 一口食べるたびに、美味しい、と言える。 きんぴらはいつ食べても美味しい。 ご飯と一緒に食べてもいいし、合間に挟んでも美味しい。
大和は美味しいと感じながら食べていたけれど珊瑚は>>218表情が浮かないままだった]
(229) 2023/11/13(Mon) 20時半頃
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……本当に、おいしいよ。 こんな味噌汁だったら毎日飲みたいくらい、美味しいよ。
[でも、それは贅沢かなって苦笑して見せる。
死は間の当たりにしたし街の惨状も見たけれど――今の自分はまだ生きていて、何のために戦うのかも考えられてはいなかったから**]
(230) 2023/11/13(Mon) 20時半頃
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ーー君を好きだと自覚するまでの僕は ーーみんなのように振る舞えない、 前向きになれない、 卑屈で意気地無しで、 男らしさも強さも欠片もない僕は
機会があるなら何時死んでもいいと思ってたんだよ。
僕に生きる価値なんかない。 僕が死ねば兄も喜ぶと思っていた。
ーー僕が死にたくなくなったのは
(231) 2023/11/13(Mon) 21時頃
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君を愛したから。
(232) 2023/11/13(Mon) 21時頃
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君を愛し僕は、人生初めて生きたいと願った。 生に焦がれた。 なんとしても幸せになりたいと、 天に祈った。
僕の最愛、唯一無二。 君だけを愛してる。
ーー君と生きたかったよ、コウ。
(233) 2023/11/13(Mon) 21時頃
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ーー僕の部屋ーー
彼の言葉に僕は今更落胆はしない。判っていたことだから。 心臓の意味までは理解はしていないが、望んだ答えが得られないなら結果は同じだ。
でも、愛してるとか好きという言葉を、結ばれる事がない関係で聞き流せるほど僕は強くはなかった。
眼を臥せて、見ないようにするしかない。 僕らは決して交わらないのだと言う事実から。
二度目のキスの際、彼の反応がやや変化したことに僕は気付く。抵抗がないのは同じだが、彼は何処かーー。
唇を離した際に赤みが差す頬を見る。殴られて腫れているにも関わらず、その朱は白磁の肌に引き立ち、まるで秋の紅葉を思わせる美しさでーー見惚れる。
怪我した顔に美を見出だすなど異常だ。でもそれだけ僕は彼が好きなのだ。
(234) 2023/11/13(Mon) 21時頃
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ちらと下に視線を向けた際、彼の男性自身が緩く鎌首をもたげているように見えたのは気のせいか?
彼は当たり前に口に押し付けられたものを拒絶した。 僕が指輪を奪ったのは、いじめっ子みたいな気持ちと、彼の想いを試すためだ。
そんなのいらないって言われたら、愛してるも好きも嘘だとわかるから僕は、楽になれるんだ。
ない所に希望を見出だすのが一番辛いのだから。
ところが、彼は僕の予想外に騒ぎ立てた。
「……ッ、コウ?!」
なんで泣き出す?!やだやだと玩具を取り上げられて泣く子供みたいな彼に僕は気圧される。
その必死さ、火がついたみたいな喚きと嘆きに冷徹を貫く事が出来ない。
(235) 2023/11/13(Mon) 21時頃
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「違うよッちゃんとすれば返すって言ってるじゃないかッ 奉仕だよ、奉仕ッ」
子供同士の言い合いみたいになる。 馬鹿馬鹿と責め立てられた僕は眉尻を下げ困惑を深める。
そんなに大事なの?! なら、僕の事ーー
だから僕はポツリと漏らしたのだ。
君がいい、と。
愛して欲しい。それはーー それは僕がずっと求めてきた根幹だ。
ただ、彼の反応はまた、なんとも言えないものだった。
彼は言葉の裏と言うものをいつも全く読まない。まんまの意味を飲み込み、すぐに喜ぶ。
(236) 2023/11/13(Mon) 21時頃
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なんで普段はあんなに頭がいいのにたまに赤ちゃん返りみたいになるんだ!
……可愛い。
違うだろ!剥き出しで怒張した性器を口に押し付けながら考える事じゃない。
そうだけど、こんなのどうしろと?!
思わず僕が脳内ボケ突っ込みに夢中になっていると、彼は聞き返してきた。
僕は彼を陵辱しようとしている。花嫁だ初夜だとプレイめいたことに興じ、乱暴で残虐に徹しなければ壊すなんて出来ない。
弱虫でウジ虫な僕は。 強がり、自分を鼓舞してやってきたが、彼の前にそれが崩れていく。
「……君が、いーーあッ」
答えようとしたのだ、僕は。 だけど彼はもう子供みたいではなかった。
(237) 2023/11/13(Mon) 21時頃
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彼が言った言葉の意味が、快楽の上を上滑りする。
柔らかでぬるりとした肉はふっくらした唇。それが根元を咥え締め付けている。
押し寄せる怒涛の快感に全身が震えた。
「は、ッーー……」
駄目だ蕩ける。雨竜先輩はしてくれなかった行為だ。僕は腰を捩って息を荒げた。
ーー彼は言った。自分が死んだら死んでくれと。 勿論それは自殺ではなく、パイロットとして死ねという意味だろう。
コックピットでもみんなが言っていた。
(238) 2023/11/13(Mon) 21時頃
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頑張れ!(頑張って死ね) ありがとう!(死んでくれて)
死ね死ね死ね死ね死ね。 地球のために、みんなのために。
お国のために万歳。 立派だね!
嗚呼やっぱり彼は僕と。 ーーいや、みんなと僕は違うんだ。
でも、彼は自身の死を掛けて言っているのだから。 そこまで彼が、僕を殺してみんなを救いたいなら。
「待って、待ってコウ。 止めて。止めて良い。」
奉仕を、という意味だ。 このまま快楽に沈んだら有耶無耶になる。
(239) 2023/11/13(Mon) 21時頃
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僕は僕の意思で答えたかったから、行為を中断させて言った。
「……良いよ、それで。」
君が僕より地球やみんなが大切でも。
「君を殺して、僕も死ぬ。
パイロット席という死刑台で、散ってやる。 ……一緒に死のう、コウ。それでいいんだろ?」
僕は微笑んで彼の頭を撫でた。 殴ったり引き倒したりしたから綺麗な髪がボサボサだ。
彼は僕のイチモツを咥えてどうしたらいい?みたいに上目遣いで見つめてるから。
「指輪、返すよ。君にあげたものだからーーほら。死ぬまで付けといて。」
そう言い、指輪をベッドの上、彼の肩口の上あたりに落とす。
(240) 2023/11/13(Mon) 21時頃
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そして彼の口から陰茎を引き抜いた。
「コウ、君は言ったね。僕に抱かれたら死ぬんだと。
ーー死んで。
僕の腕の中で。 僕に犯されながら。
僕と繋がり、1つになりーーセックスして、死んで。」
僕の言葉の意味を彼は理解するだろうか。*
(241) 2023/11/13(Mon) 21時頃
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──if・珊瑚と>>225──
彼女が自宅で料理中であり、すぐ傍に想い人である大和がいるなんて僕はまるで知らない。
合宿中の様子だけでは二人の関係を察する事は出来なかったし、どんぐりワゴン内でもそんなイチャイチャは多分なかったはずだ。
もし二人がそんな関係なのを聞いたなら、諸手を挙げて祝福する。ただそれはーー僕らがパイロットになるなんて運命になければ、だ。
もし僕らが全員死ぬのなら、それはむしろ悲劇でしかない。 愛し合って結ばれたのに、直ぐ様死に引き裂かれるなど。
ともかく僕はまだ彼女と大和の事情は知らない、現段階。
(242) 2023/11/13(Mon) 21時半頃
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「覚悟ーー珊瑚待ってよ、死ぬ、覚悟だよ? 僕らはまだ高校生だよ? 人生半ばまでも生きていない。 君がーー君やコウみたいな人間が死ぬなんて、駄目だろ!」
こういう言い方なのは、この段階僕自身はまだ康生に対する恋心が確定しておらず、告白もしていないからだ。
むしろ無理やりキスをし康生を病院送りにした最低野郎だから(※ついでにお漏らしもした)僕なんて死んだ方が良いわけで。
とはいえ、騙された形でワケもわからない敵と闘い死ぬなんて簡単には受け入れられないが。
「珊瑚、諦めたら駄目だ。あんな契約なんか破棄しよう! クーリングオフとか出来ないかかな?」
馬鹿な事を口走る僕。 しかし、まだ様々な情報が足りないから仕方ない。
(243) 2023/11/13(Mon) 21時半頃
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「君は……君が死ぬなんて、絶対駄目だ。
もしパイロットの交代が出来るなら、僕が死んだ方がましだよ……。
君が死んだらみんなが悲しむ。」
彼女の決意は立派だ。康生も珊瑚も、何故こんなに光輝いているんだろう、強いのだろう。
僕は、そんな二人を失いたくなくてそう言った。 だがーー彼女がパイロットとなるなら僕は、止めることは出来ないのだ。 今はまだ、それを知らないけれど。*
(244) 2023/11/13(Mon) 21時半頃
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──if・大和くんと──
味はしなかった──けど。 >>229本当に美味しそうに大和くんが食べてくれるから。 だから、少しだけ味が戻った。笑顔になれた。よかった、と思えた。 思えてしまった。
思えてしまったから、また味がしなくなる。 ──私は救われちゃいけないのに。
「それなら毎日食べに来る? この騒動が毎回近所で起きるんなら 父さんの仕事、無くなりそうにないし…。 多分、鉢合わせることも無いもの。 鉢合わせたとしても、仲良い男子って言えば 多分大丈夫だから。」
(245) 2023/11/13(Mon) 22時頃
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──大和くんがそう望んでくれるならそうしたい。 そんな気持ちが私にあった。 それが、私が唯一望むことで、唯一の贖罪…かも知れない。 彼を巻き込んでしまったことと。そして。
「ね。大和くん。 ──宇宙が消滅しちゃうまで、そうしない?」
穏やかな顔でそう提案する私は、何かズレてるんだろうか。
だって。 私には戦う理由が、見つからない。 戦ったとして勝てるビジョンが見えない。 私が死んでしまう世界に。
私は価値を見出せてなかった。**
(246) 2023/11/13(Mon) 22時頃
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