32 Zug Zwang
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10時間……。 [長くも短くもない、というのが青年の感想だった。 それより早くに彼の気が済めば、その時点で 終わるのだろうことも想像できる範囲ではあった。 しかし首を傾げられる理由は掴めず、 訝しげに眉を寄せ] なんです、その顔は。せっかくの機会です、 ぼくも無意味に過ごしたくはないのですが。 [抗議めいた言葉を吐き、窓へと視線を戻した]
(0) 2023/12/19(Tue) 22時頃
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[それから一歩、窓辺に向けて踏み出して、 また足を止め] ……達せられそうですか、あなたの目的は。
[横目で見やって問いかける。
10時間のうち幾分かはもう使った後だろうが、 正確に確認せずとも、 まだ半分以上は残っているとは思えた。 しかしその時間で足りるものなのかは、 純粋に疑問だった。
彼にはまた首を傾げられるのかもしれないが、 青年にとっては確かめておきたいことだった]*
(1) 2023/12/19(Tue) 22時頃
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[凝視の理由は察せず、 今度は青年が首を傾げることになった。 白銀の盤について語り始めるのを聞けば、 一旦は言葉を挟まずに聞き] もっと残り少ないかと思っていましたが…… 9マスですか。 それだけ死ぬかどうかは作りによるんでしょうね。 [とはいえ完成するように作るのだろうとは思えた。 開催を繰り返しているのなら、 知見も増えているだろうと。 詳細まで思い浮かべる気には到底なれず、 視線を窓の向こうへ戻したが]
(6) 2023/12/19(Tue) 23時頃
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……ぼくが尋ねたのは、 あなたがぼくを起こした目的、のことです。 何かしら用があったんでしょう?
疑問があるなら解決していってください。 協力はするつもりです。 また後で起こされてはたまりませんから。 [気にしたのは白銀の盤ではないことを伝え、 応接室で唐突に問われたことが用件かと 予測の上で告げる。>>0:45 ここで永遠に眠るつもり、と告げた思いは 今でも変わってはいなかったから]
(7) 2023/12/19(Tue) 23時頃
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[窓に歩み寄ると、食堂の裏手の風景を眺めて] ここから白銀の盤が見えるのか、 興味が湧いて来たのは事実ですが。
興味があったのはそれだけですね。 [話題に上る程度ならそれほど気にはならずとも、 あれは血塗られたものであって、 持ち主は本心からそれを綺麗と称する。 その事実は青年にとって、やはり受け入れ難いもの。 それもまた、変わってはいなかった]*
(8) 2023/12/19(Tue) 23時頃
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[彼が悩む様子を見せた末に出した結論は、 青年にとっては投げ遣りさを感じるもので] ……本当にいいならいいのですが……、 気が変わるなら早めにしてくださいね。 ……、
(14) 2023/12/20(Wed) 08時半頃
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[届くかも定かでない呟きを漏らす。 この静まり具合なら届くのかもしれないが。 白銀の盤が見えると聞いて窓の向こうを探すと、 極夜の闇に閉ざされた中、彼の言う通りに チェス盤の最後列がかろうじて目に入った。 その向きで置いてあったのか、と 今更な感想を抱きもしたが、 見えることが確認した以上、青年の興味は失せ] 本当ですね。 煌々と照らされよく見える、 なんてことにならず幸いでした。 [淡々と言って窓辺を離れた]
(15) 2023/12/20(Wed) 08時半頃
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[好きに過ごせと言われてちらりと彼に目を向け、 続く言葉を聞きながら座る席を選ぶ。 結局、彼らから数席離れた 斜向かいの位置に腰を下ろして、再び頬杖をつき] 望むことですか、……そうですね。 あなたが現実に戻った後、 ぼくの体を殺しておいてくれませんか? [要望しながらも、叶うとは思っていない様子で。 何の期待も籠もらない瞳を彼に向け、 そのまま食堂内へと視線を流した]**
(16) 2023/12/20(Wed) 08時半頃
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[恨みがましい視線と苦々しげな声音が、 青年に共感を抱かせた。 文脈や程度は違えど、青年も彼に対し そのような感情を抱いたことはあったから。 たとえば嬉しさを感じてしまう言葉を かけられたとき、などに] ……あれは断片です。 あなたへの思いは一言では表せない。 なかには、あなたにとって わかりやすい思いもあるんじゃないですか。
[伝えたものだけが全てと思われるのが不本意で 青年は補足を試みるが、果たしてどう響くのか]
(23) 2023/12/20(Wed) 14時頃
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[青年の要望に、彼は“わらった”。
当然の事実を指摘する言葉に引かれるように 青年の視線は再び彼に向いて、 その言葉と笑みから読み取れるものを探し]
……、気が進みませんか。 [少なくとも軽く考えての返答ではなさそうだ、と 感じた末の問いかけを呟いたが、 返答には期待しないまま、少し視線を落とした。 テーブルが邪魔しなければ、 彼の犬が見えたかもしれない]
(24) 2023/12/20(Wed) 14時頃
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別にあなたでなくともいいのですが、 他に頼める相手がいませんので。 ぼくに命があれば あなたと心中でもよかったのですが、 そのときは犬たちを先に送らねばなりませんか。 …… [彼らの向こうにある壁を視界の中心に移し、 ある種の夢物語を日常会話のような軽さで呟いて、 ふと、何か思いついたように言葉を切り]
(25) 2023/12/20(Wed) 14時頃
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……ヴィーシャ。 ぼくは父に復讐をするつもりでした。
どんな風にかは以前もあなたに 語ったことがあるはずですが……、 父を殺す気は無かったんですよ。 なぜだかわかりますか? [言葉を重ねながら彼に視線を戻す。 脈絡のない話と思われるのかもしれないが、 青年の中では繋がっている話だった。 青年が死を望む理由。 それを彼に話しておきたい気分になったのだ]**
(26) 2023/12/20(Wed) 14時頃
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……ええ、そういった思いもありますね。 それだけでもありませんが。 恨み言は……、あれ以上は特にありません。 [嫌悪や不快感などはかつての決別の折に すでに充分語ったと青年は感じていた。 今から改めて言いたいような追加の思いも 芽生えてはいない。 ゆえに視線も向けずに聞いてやると言われても 追加で言い足すことはしなかった]
(32) 2023/12/20(Wed) 20時半頃
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[彼が笑みを浮かべながら語る言葉を聞くと、 なるほど、と納得したように呟く。 次いで頬杖を外し姿勢を正して、彼に向き直り] そう聞こえましたか、それは失礼。 ぼくの息の根を止めようが、 社会的に罪になることは無いのではと 勝手に思っていたんですが……、違うんですかね。 まさかこのゲームが法的に許可されたもの なんてこともないでしょうし。 [敗者を永久睡眠の形で保存し続ける理由を 青年は理解してはいないが、殺したところで 殺人の罪を被ることにはならないだろうとの想像で。 彼と運営陣との関わりには想像が及んでいなかった]
(33) 2023/12/20(Wed) 20時半頃
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それと……、あなたは使い終わった駒を ひとつ殺そうが気に留めないかとも 勝手に思っていました。 ぼくの思い違いであれば謝罪しましょう。 [いかに気に入っていようと、 ゲームが終わるたびに総入れ替えする駒。 気にかかることがあったから会おうとしただけで それほど大きな思い出というわけではなかろう、 というのが青年の想像だった。 そうでないなら相当に悪辣な侮辱となったろうと。 それはさすがに青年の意図しないことだった]
(34) 2023/12/20(Wed) 20時半頃
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……真面目なんですね、あなたは。
[ぽつ、と彼の思い詰め方を見た感想を呟きもして]
(35) 2023/12/20(Wed) 20時半頃
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[仮定の話でも犬を守ろうとする彼の言葉には 青年は目を瞬き] ええ、彼らに罪は無いでしょうが……、 あなたが言ったんですよ。 「犬たちを看取ってやれなくなるのは困る」と。
ですから、あなたの命を奪う前に 叶えて差し上げようかと。 心残りは無いほうがいいでしょう。 [あるいは、それは 全ての希望を絶つことかもしれないが。 とはいえあくまで仮定の話。返答があればともかく、 青年がこの話を無理に続けることはないだろう]
(36) 2023/12/20(Wed) 20時半頃
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[最後に尋ねてみた問いへの答えは無かった。
先の彼の追い詰められたような様子を思えば、 今無理に続けるべきでない話題と青年には思えて。 一旦この話題は保留にしておくか、と 青年もまた沈黙で応じた]*
(37) 2023/12/20(Wed) 20時半頃
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……そんなことはありませんが、…… 聞きたくないなら言わずにおきましょう。 [それ以外の感情と言われて呟きを返しつつ、 視線は自然と逸れた。 青年自身も認めづらい感情だから、ではあるが この流れでは別の意図に伝わるかもしれない。 そうは思っても、そこまでの配慮をする気は 青年にも起こらず、そのままにして]
(42) 2023/12/20(Wed) 22時半頃
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[開催者側の事情を聞けば納得した様子で]
罰則ですか。あなたには不都合でしょうね。 ……さほど影響が無いだろうと 思ってのことだったんですよ。 そもそもあなたが生真面目に叶えるとも あまり思っていなかったのもありますが。 [彼の無表情には心を閉ざされた思いがした。 その思考から目を背けるように視線をずらし]
(43) 2023/12/20(Wed) 22時半頃
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[敵意の籠もった言葉を受けて再び彼に視線を戻し、 睨みつける視線を少しの間見つめ返した後、 薄い笑いを浮かべて肩をすくめた] そもそも仮定の話ですよ。 ここでやっても意味がないでしょう。 あなたに与えられるのは仮初めの死でしかない。 それに、ぼくが本当にその気なら、一切仄めかさず 友好的に振る舞って不意を打ちます。
[彼にもその愛犬にも、何もする気が無い。 そういう意図の言葉でもあり、 ここまでの態度は裏に何か考えてのことではないとも 伝えたつもりの言葉ではあったが、 意図通り伝わらずとも諦める気は青年にはあった]*
(44) 2023/12/20(Wed) 22時半頃
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え、…… [言わずにいられなかったと言わんばかりに 返ってきた言葉の内容に青年は目を見開いた。 叶える気があったのか、 たとえ「命を奪え」という願いでも。 その考えに至ったときになってやっと、 彼にどのように思われていたかを理解した気がして] ……ヴィーシャ、……
[名を呼んでみたが、続く言葉は口から出なかった]
(48) 2023/12/20(Wed) 23時半頃
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[その話し相手が胸の辺りを強く掴み、 呼吸を乱すのを見れば、さすがに安否が心配になり]
大丈夫ですか? ヴィーシャ…… [青年も席を立ちかけたが、 自力で動けるらしいのには気付き。 追い込んだのは自分だろうという思いもあって 彼の後を追うことはせず、 食堂から出て行く姿を見送る。 その後を犬がついていかないのなら、 食堂内やキッチンを見回して犬の姿を探し求め、 見つけたなら彼の後を追うよう促すだろう。 言葉が通じるかはともかくとして]
(49) 2023/12/21(Thu) 00時頃
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[しばらく後で彼の様子を見に行くつもりはあったが、 今は放っておくことにして、食堂の中で時計を探す。 しかし今更見ても、それまで見ていなかったため どのくらいの時間が経ったのかはわからず、 残り時間は体感で推測することになった。 彼の様子を見に行こうと思い立つ頃には、 残り時間はちょうど半分ぐらいだろうか。 当分は食堂の中に留まり、 何かしらで時間を潰すだろう。 窓の外をただ眺める、だとか]*
(50) 2023/12/21(Thu) 00時頃
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[キッチンにて見つけた犬は 青年を見るや、威嚇して逃げ去っていく。
あの様子なら飼い主の元へ向かったろうと 安堵の表情を浮かべ、 青年は散らかされたキッチン内を見渡した。
時間潰しを兼ねて片付けながら、 思い起こすのは幼き頃、生家での話]
(57) 2023/12/21(Thu) 12時頃
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[青年は日頃、キッチンに立ち入らない。 調理も洗い物も、雇われ人がやっていたからだ。 ゆえに内部は物珍しく、片付けながら ちょっとした探検気分でもあった。 中には元々あった場所がわからず そのまま出しっぱなしになったものや、 犬が触れたならと洗うことになったものもあったが。 概ね片づいて食堂に戻り、もう一度時計を見ると 時計の長針は半周ほど動いていた]
(58) 2023/12/21(Thu) 12時頃
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[そろそろ彼は落ち着いたろうか、と考えつつ もう少し間をおきたくて、結局窓辺に向かう。 青年がかつてここに顔を出したときは 大勢が集っていて窮屈とさえ感じたが、 他に誰もいないとずいぶん広大に感じるもので。 あのときの和やかさと その裏で起きていた不穏な出来事を思い返すと、 それを起こしたのが彼以外考えられないことも 当然のようについてくる思考だった。 窓の向こう、少し離れた場所には 白銀の盤の端が見える]
(59) 2023/12/21(Thu) 12時頃
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[風景を眺めながら考え事を続けた結果、 湧き上がった思いへの抵抗感が高じるあまり 青年は窓ガラスを殴りつけていた。 幸いにして割れることは無く、 ただ硬い音を鳴らしただけに留まったが。 拳に痛みとガラスの温度が滲むのを感じて、 そっと手を離し、窓を視界から外す。 何か気を紛らす飲み物でも無いかと思いついて もう一度キッチンへと向かい、 お湯で溶くだけで飲めるココアを見つけ。 暫し迷った末、ポットにお湯を数杯分とカップ2つ、 それからスプーン2つとココアの小分け袋数個。 それらをトレイに載せて応接室に戻ることにした]
(60) 2023/12/21(Thu) 12時頃
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[青年が応接室の扉をノックして開けたのは、 彼が食堂を去ってから1時間ほど経ってからのこと。 そこに彼がいると確信していたわけではなかったが 姿があることには少しの安堵と、 同じぐらいの緊張とを感じ]
ヴィーシャ、少しは落ち着きましたか? ココアでもいかがです、毒は入っていませんよ。 [平静を装って発した声は幾分か硬かったろう。 青年は元々座っていた席に歩み寄って、 トレイをテーブルの上に置いた。 トレイの位置は互いに手の届きやすい位置に整え、 席に腰を下ろすと、まずは彼の様子を窺った]**
(61) 2023/12/21(Thu) 12時頃
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[部屋に立ち入った途端に睨まれ、 席に着くと精一杯の距離を取られ、拒絶を感じ取る。 仕方なしに自分の分だけココアを用意し始めると、 彼から話の続きを告げられ] ……そうですか、 逆に取り下げようかと思っていましたが。 あなたの望むようにしてください。 [取り下げるのなら、かえって 願いを叶えることにはならず好都合なのだろうか? 彼の内心は窺い知れず、ただカップに湯を注いで スプーンでココアの粉を溶き]
(66) 2023/12/21(Thu) 19時頃
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[漸くいくらか心が知れた気がしたときには もう修復など不可能そうで、 結局、それだけ相容れない仲ということなのだろう。 そう思えば青年の心には虚しさすらなく、 ただずっと胸中にある絶望と諦観が色濃くなるだけ。 ココアに口をつけてみたが、 薄めすぎたことはなかろうに 今の青年にとっては白湯の如き味だった。 理由を追及することもなくテーブルに戻し、 カップを両手で包んで熱だけを感じていた]*
(67) 2023/12/21(Thu) 19時頃
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…… [心を閉ざしたかに思えても、 まだその二人称を使うのか、と 青年の視線は一度彼に向いた。 彼の虚ろな瞳には何も映らないように思え、 すぐにカップの中身に視線を戻す。
まだ願いを叶える話にこだわっているのか、 それとも青年がここを訪ねた理由が そのぐらいしかないと思われているか。 そのどちらかなのだろうと推測し、 青年の口からは小さな溜息が漏れた]
(69) 2023/12/21(Thu) 20時半頃
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……いえ。 何も叶えていただかなくて結構です。 それから、ここにいる間、ぼくが あなたやその子の命を狙うことはありません。
油断させて隙を突く気もありませんよ、 それだけ警戒されてはもう無理でしょうから。
[殺意を失くしたなどと言うより、 実行が現実的でないという話のほうが 余程信用できると思うのはあくまで青年の価値観。 彼に通用するものかは知らない。 事実、青年は害意を喪失したわけではない。 その点を偽る気は起きなかった]*
(70) 2023/12/21(Thu) 20時半頃
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[殺しはしない、とは伝えても 青年の害意が消えていないことも伝わったのだろう。 ここで死ぬことの苦しみがいかなるものかは 青年は既に2度体験した後。
わざわざ説明されずとも身に沁みているものを 言い連ねられると、煩わしさを感じて ぼんやりと空席に置いた上着類を眺めた。 彼からは顔を背けたようにも見えたかもしれない。 ただ、彼の犬に向ける愛情と思いやりは 本心からのものなのはよく伝わってきて、 そこに彼の人間らしさ ──情の深さを見出しもした]
(75) 2023/12/21(Thu) 22時半頃
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[口を挟む気にもならず彼の言葉を聞き続ければ、 まさにその通りとしか言いようのない内容に移り、 青年はじっと耐えるように目を閉じた。 彼の吐露で、何がそんなに衝撃を与えたのかを 包み隠されず聞くことになり。 自分だけは対象にならないとでも思っていたのかと、 烈しく後悔する姿を無様だと、 嘲笑いたくなる思いが青年の内に生じもして]
(76) 2023/12/21(Thu) 22時半頃
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[何か言葉を発しようかと青年が彼のほうへ 視線を向けようとしたのより一瞬早く、 彼が手の中の温くなったカップを奪っていった。 唖然として見つめる中、大部分残っていた中身は すっかり飲み干されてしまい] ……ふ、……ははっ……! [なんとささやかな反抗なのか、と思った瞬間、 青年は笑い声を漏らしていた。
耐えきれない様子で笑う姿に嘲りの意図はなく、 相当に和まされたがゆえの笑いで。 子どもの悪戯を見て楽しんだようなものであったが 彼の気分をさらに害す可能性は頭の隅にはあった]
(77) 2023/12/21(Thu) 22時半頃
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あなたもその子も殺さないと言っているんですよ。 仰る通り、ここで殺しても無意味ですので。 何度も殺すという楽しみ方はあるかもしれませんが その子に対してそうする趣味はありません。 ぼくがここから出ることは叶いませんし、 残された時間もあと僅かです。 どうぞご安心を。 [笑いはすぐに落ち着いて、その後。 警戒を続けていた彼へと改めて伝えると、 青年は席にもたれかかって天井を眺めた]
(78) 2023/12/21(Thu) 22時半頃
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あなたの言う通り、ぼくは“そういう人間”だ。 それを思い知ったからこそ、 もう生きていきたくはないのです。 父のことも、自分で殺す気は無かったのは、 極限まで……再起不可能な状態まで追い詰めたら あの人が何を選ぶかを見たかったからなんです。 自殺してくれれば一番いいと思っていました。 死が最良と思ってはいましたが、あの人のために 殺人犯になどなりたくないですしね? ですがそれ以外でも、最後に自分で どんな道を選ぶのかを見てみたかった。 それで思ったんですよ。 高みの見物を決め込むあなたと変わらない、とね。
(79) 2023/12/21(Thu) 22時半頃
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[何も気負うことの無い気楽そうな様子で 秘めていた思いを吐き出すさまは、 彼にどう映っただろうか。 彼以外に見せることはない姿だろう。 青年はずっと好人物を装い続けていたのだから。 その全てが偽りであったわけではなく、 今青年が語った思いだって一面でしかないのだが。 青年の絶望と諦観の根源は自己嫌悪。 青年が忌み嫌う人種のなかに 自分自身が入っていることに気付いてしまったのだ。 あのゲームに参加したのをきっかけに。 それが始まりであり、終わりだった]**
(80) 2023/12/21(Thu) 22時半頃
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ぼくは甘いものが飲みたい気分だったんですよ。 水が飲みたいなら自分で持っていらっしゃい、 それともお湯を冷まして召し上がりますか?
[人の飲み物を奪っておいて不満を述べるさまが 青年にはなんとも微笑ましく感じられて、 満足げな微笑を浮かべながら トレイの上に残ったカップに湯だけを注ぐ。
毒見をしろと言われるのなら 口をつけもするだろうが、 今のところ手は出さないままにして]
(85) 2023/12/22(Fri) 09時頃
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[“敬虔”と表現されて自分の駒を思い浮かべたか、 青年は不愉快そうに眉を寄せた]
まさか。鏡だなんて思っていませんよ。 あなたの嫌いな部分の一部が ぼくにもあると感じるのは事実ですが、 あなたを殺したい理由はまた別です。
とはいえ、それも言わば逆恨みなんでしょう。 あなたがいなければこんなゲームに 参加することはなかったし、 自分の見たくない面に気付くことも なかったのに、という。
[自分で言っていても馬鹿馬鹿しさを感じるのか、 呆れたような溜息を吐いた]
(86) 2023/12/22(Fri) 09時頃
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[やることがある、と生きる意志を見せる彼の姿は 青年にとって好ましく思えた。 その『やること』に目を瞑れば、の話だが。 そのひとつは白銀の盤の完成であろうし、 それは青年には受け入れ難い行為だから]
ぼくはもうほとんど何をする気も起きないのに、 なぜあなたを殺すことにだけ こんなに執心できるのかは 自分でもなかなか答えが出ませんが……、
唯一、手の届きそうな未練…… ということなのかもしれません。
[青年は自分の感情の答えを探るような言葉を呟き、 手持ち無沙汰にスプーンを弄ぶ]
(87) 2023/12/22(Fri) 09時頃
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……なぜ最期にあなたに あんなことを言ってしまったのかは、 未だに自分でもよくわかりませんが……。
あなたの言葉が嬉しいことがあるのは本当です。 でも、言わずに眠るつもりでいたんですよ、 ……あなたに知られたくなかったので。
あなたが言ったように残念だったのでしょうか、 とうとう嫌われたかとは本当に思いましたから。
[それは青年にとってはほとんど独り言で、 聞く相手を求めての言葉ではなかったが。 未だに青年自身解せない部分であると同時に、 今ならいくらか説明がつきそうな部分でもあった]*
(88) 2023/12/22(Fri) 09時頃
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[彼が手を伸ばさないのを確かめれば、 青年は湯を注いだカップを自ら手に取り口に運ぶ。
先刻ココアの味を感じられなかったことを思えば、 元々味のしない飲み物はとても気楽だった。 逆恨みに関して答える言葉を聞いて] それは違いますよ、ヴィーシャ。 恨むべきは過去の己の選択です。
本当に嫌だったら、ゲームに参加せず 逃げ出す道を見つけられたはずなんですよ。 [結局、青年の行き着くところは自己嫌悪なのだ。 殺す優先順位は、自分以外の誰もが二の次だった]
(93) 2023/12/22(Fri) 14時半頃
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[興味の無さそうな淡々とした声音と、 見慣れた彼らしい態度。 それ自体は安堵さえ覚えるような光景だったが、 告げられた内容は青年にとって実に可笑しい内容で] あなたひとりがいなくなった程度で 世界が平和になるわけがないでしょう。 他人のために命を捧げる気があるのでしたら、 ぼくのために殺されてくれてもいいんですよ? ……殺しませんけどね。
[此度の邂逅では初めて嘲笑じみた色を声に滲ませたが 青年はこの話題を続ける気があまり起きず、 その気の無さを現すかのように のんびりと湯を一口飲み足した]
(94) 2023/12/22(Fri) 14時半頃
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[独り言のつもりだった呟きに 彼の言葉が差し挟まれると、 青年は驚いたように目を瞬いて彼を見つめ、 ゆっくりと視線を動かしてぼんやり卓上に向け] ……そうであってほしかったんですけれどね。 どうやら、そうではないみたいです。 ここで再びあなたに会ってから、 どうやら嫌われてはいなかったらしいと察して ……いくらか気が楽になった覚えもありますし。 [一喜一憂というほどの心の動きではないにしろ、 心のどこかにあるその感覚を青年は自覚していた。 ずっと認めたくなかっただけで]*
(95) 2023/12/22(Fri) 14時半頃
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[すっかり調子を取り戻した彼の嘲笑に刺激され、 青年は冷めた薄笑いを浮かべた] なんです、そんなに殺してほしいのですか? 一時はあれだけ取り乱しておいて。 さすがのぼくも罪悪感が刺激されたので やめようと思ったというのに。
リクエストなら仕方ありませんね。 ぼくが手を汚すところが見たかったそうですし。 [言いながら襟元に手を伸ばし、 ボウタイの片端を引っ張って結びを解く。 長い紐となったそれを襟から引き抜いた]
(100) 2023/12/22(Fri) 20時頃
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[「嫌い」と改めて宣言されると、 心のどこかに少しばかり落胆のような思いはあれど。
やはりそう大きく響くものではないことに 安堵のような、そうでないような奇妙な感覚を覚え 青年はじっと目の前の彼を見つめて、 彼が手に籠める力の強さに気付いた。
その意味まで正確には窺えずとも、 どこか彼の必死さを感じ取る]
(101) 2023/12/22(Fri) 20時頃
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……ヴィーシャ。 殺意は、どうでもいい人間相手には そうそう長く続かないんですよ。 だいたい、嫌いな相手を殺して 罪を被るなんて……馬鹿らしいじゃないですか。 ここでは罪にならない、なんて話はナシですよ?
[そんな曲がりくねった思いを彼に告げたところで、 正確な意図など伝わるまい。
当の青年とて、他人にこんなことを言われても 意図を推し量れはしないだろう。 伝わらないことが前提の言葉遊びをして]
(102) 2023/12/22(Fri) 20時頃
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[叶えなくていいのか、とまだ確認する彼へ そんなに言うなら何かを告げてやろうかと 思いつきが浮かび] ……そうですね。 少し考えますから、保留でいいですか? [そう宣言して席を立った。 果たして彼の叶える気はいつまで残るものか。 青年はすぐに彼に向けて一歩足を踏み出す。 片手には解いたボウタイを握り締めて。 彼がどんな反応をするのかを眺めながら、 間近まで歩み寄ってみるつもりだった]*
(103) 2023/12/22(Fri) 20時頃
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[状況を理解していない様子に和まされ、 青年の表情は微笑みを形作る。 歩み寄ってみれば目を見開かれ、 必死に犬を庇おうとする様子が愛らしく、 さらに近寄って後退るさまを眺め。 もう一歩近寄ると同時、 逃げ出そうとした彼の首を 両手でそれぞれの端を持ったボウタイで 引っ掛けて捕らえようと試みたが、 果たしてどうなることか。 成否によらず、彼の威嚇するかのような様子は 怯える仔犬にも似て見えて、 青年は愉しげな微笑を浮かべていた]*
(106) 2023/12/22(Fri) 21時頃
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[彼の首を捕らえるのに成功すれば タイが外れないよう絡め、 彼の息を奪わってしまわない程度に絞め上げた。 触れるぐらいは叶うだろうが、 ここで逃す気は青年には無く、 床へ降りた犬の吠え声もBGMぐらいにしか感じずに。 呻きながらもこちらを睨もうとしたか、 視線を向けて目を丸くする姿に、 今更何を驚くことがあったのか、と 青年は首を傾げた]
(109) 2023/12/22(Fri) 22時半頃
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[さほど強く締め上げたわけではないのに 彼は随分と苦しげで。 また先ほどの発作が起きかけているのか、と気付けば 青年の心には哀れみが浮かんだ] 殺してくれと言わんばかりの弱々しさですね。 虚勢を張るからこんなことになるんですよ?
あのまま話だけして終わっても良かったのに、 あなたが余裕ぶって挑発するから。 [お前が悪いのだ、自業自得だと言い聞かせる声は 人を殺そうとしている人間にあるまじき穏やかさで。 棘がないどころか、慈しみさえ篭められていた]
(110) 2023/12/22(Fri) 22時半頃
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[だがこのまま絞め殺しても、 現実に戻った彼が青年を終わらせるだけと思えて。 ・・・ それよりはもう少し残された時間を有意義に 使えないものかと数瞬、思考を巡らせ]
ああそうだ……、願い事が保留でしたね。 何にしましょう。 [言いながらタイを引いて、 彼の首を絞める力をもう少しだけ強めようとした。 このまま発作を起こさせてしまえば、 タイを解いても逃すことはなかろうと考えて。 何か邪魔が入れば青年の気が散ることはあるだろう。 彼の犬が噛みついてくる、だとか]**
(111) 2023/12/22(Fri) 22時半頃
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[いったいどこにそんなに 衝撃を受ける要因があるのか、 彼は再び目を見開いて、 その末に身体を震わせ始めた。
さっきもこんな風に苦しんでいたのか、と 青年はただ見送ってしまったことを惜しむ。
その当時何かを思っていた気がするが、 それが何だったか、もう思い出せはしなかった。
知られまいと思っていたことがある気がするのに、 それさえももう朧だった]
(117) 2023/12/23(Sat) 10時半頃
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[不意に足元で服を引かれる感覚があった。 タイが解けぬよう力を保ちながら、 ちらりと視線を落とすと、青年の視界には 必死の抵抗を試みる彼の愛犬の姿が入った]
そんな可愛らしい抵抗の仕方では 大切な主人を守れませんよ?
[飼い犬は主人に似るのだろうか── 青年はそんなことを考えながら足元に声を投げた。
吠え声は騒々しいが、彼を見つめていれば 青年の気には留まらない。
仮に力一杯足を噛まれでもすれば、 さすがに意識はそちらに向くだろうに]
(118) 2023/12/23(Sat) 10時半頃
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[仮に強く噛まれたところで、 青年が犬にやり返しそうなことといえば せいぜい振り払う程度だろう。
忌ま忌ましく思いはするだろうが、所詮、犬。 青年にとってはどうでもいい存在だ。
ショック死の可能性を言われれば興味は湧いても それで彼が嘆く姿を見られるわけではなく、 そこまで爪痕を残したいほどの恨みもない]
(119) 2023/12/23(Sat) 10時半頃
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[青年が犬を眺めていたのはほんの一瞬のこと。 そしてすぐに彼へと視線を戻した。 彼の苦しみぶりに目元を和ませながら、 身体が触れ合うほどすぐ傍まで歩み寄り、 タイを握り締めたまま、彼へと両腕を伸ばした。
もし彼の身体に両腕を回すことが叶ったなら、 そのときには片手をタイから離し、 彼の首元を緩めるだろう。 それがなくとも充分に息苦しいのだろうから、 今はその弱り切った姿を抱き締めて眺めようと。
それが叶わなかったなら、 青年は引き続き彼の首を締めつけるが。 息の根を奪うような強さには変えようとせず、 現状維持のまま眺め続けるだろう]**
(120) 2023/12/23(Sat) 10時半頃
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[青年が彼から視線を逸らしたのは ほんの一瞬のことではあった。
が、視線を戻そうとしたとき、 不意に彼に蹴りつけられた。
酸欠状態で繰り出される蹴りに さしたる威力はなかったのかもしれないが、 青年とて別段鍛えているわけでもない。 不意打ちに驚いたこともあって身体がよろめいた。
が、青年にタイを離す気がなかったことが災いし、 彼の首は一瞬、逆に絞め上げられてしまう。
その一瞬で命を奪うことなどまずありえないし、 骨や筋に異常が生じるほどでもなかろうが、 息ができなかった瞬間はあるかもしれない]
(124) 2023/12/23(Sat) 12時半頃
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あ──
[意図せず強く絞めてしまったことに焦り、 青年は片手をタイから離し、彼の頬へと伸ばす。
タイは一度絡めただけで結び目はない。 今なら解いて逃げ出すのは容易だろう。
彼が逃げ出す姿を見たならば、青年も 彼を再度捕えるべく抱き締めようとするだろうが。
もし彼が逃げ出さないとしても、 青年はやはり彼を抱き締めようとするだろう]**
(125) 2023/12/23(Sat) 12時半頃
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[強く咳き込む姿を見れば、 不測の死を与えずに済んだことに青年は安堵する。
今や、彼の常の傲慢さなど見る影もない。 汗を滲ませ涙を溢す姿は青年の心を深く満たし、 咳とも嗚咽ともつかぬものは青年の耳に心地よく、 微笑みながら見守るうちに数秒が過ぎた]
(128) 2023/12/23(Sat) 19時半頃
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[やがてよろめきながら動き出す彼は まだ逃げ出すことを諦めてはいないようだった。
青年が両腕を伸ばして彼を抱き締めると、 彼は怯え切った様子で弱々しく抵抗を繰り返す。 その無力な姿が青年の心を温めた。
粟立った肌からは相当な嫌悪や拒絶が見てとれるが 青年には毛を逆立てる小動物を思わせただけで]
(129) 2023/12/23(Sat) 19時半頃
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[青年は何事か囁いた後、 彼をその腕の上から抱き締め直そうと試みた。 両腕を封じるために。
だがそれ以外の一切は頭になく、 現状の弱々しさを理由に彼を侮り、 彼以外の存在も全て意識から消え失せている。
もし彼が青年の腕の中に収まったまま抜け出せず、 言葉を交わそうともしないなら、 そして青年の意識の外からも邪魔が入らないなら、 青年は彼の喉へ手を伸ばすだろう。 彼の息を完全に奪うために。
それは所詮、仮初めの死でしかないのだが]*
(130) 2023/12/23(Sat) 19時半頃
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[必死に腕を張って抵抗を試みる彼の姿と、 その腕に籠もる力の弱さ。 それらが齎す充足感に、青年はただただ微笑んだ。 ──が、漏れ聞こえた小さな声には目を見開き、 暫し彼の表情をまじまじと見つめた]
(134) 2023/12/23(Sat) 20時半頃
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[苦しげな姿を見せ続ける彼へと 青年が囁いた声は優しく、 彼の喉へと伸びた片手は慈しむように肌を撫でた。 彼に抵抗する力が無いのに気付くと 邪魔になったタイを解いて放り捨て、 両手で彼の首を覆い、正面から彼の顔を見据える。 意識を保てなくなりつつあるらしい彼の首を 絞める力を少しずつ強めながら、 青年はじっと彼の表情を見つめ続けた。 微笑みを浮かべながら。 掌に脈動を感じなくなるまで]*
(135) 2023/12/23(Sat) 20時半頃
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