17 【半突発身内村】前略、扉のこちら側から
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[ 手紙を書き終えてから 私はアシモフに、あの空の色の意味を 聞いていた>>0:88
私が知っている灰色とは違う 暗くて、でもどこまでも広がるような 小さな光の瞬く黒い空。
宇宙という言葉は聞けただろうか>>0:#1 聞けたのなら、知らない概念に 不思議そうな顔をして 上を見上げていたことだろう。]
(85) どあ 2022/03/12(Sat) 15時半頃
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[ どんなに眺めていても飽きが来ないような そんな空を見つめていれば ひらり、と白が視界の端 舞い落ちるのが見える。 手紙を出したとはいって 私とアシモフ以外見当たらない世界で 返事が返ってくるとも思っていなかった。
だから、その紙を引き寄せて 目を通した時に、私の手紙への返答だと 気づいた時は目を瞬いて驚きを表した。 ]
(86) どあ 2022/03/12(Sat) 15時半頃
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[ 知っている青よりも淡く>>69 でも薄いわけではない、不思議な色。
それで書かれた文字はきれいに整って見え 綴った本人の人柄がわかるようだと思った。
ゆっくりと、目線を落として 改めるように文字を追う>>70 私が書いたものと同じ書き出しから始まる 手紙の相手は、同じ時にいないのに、 同じような世界で生きているようだ。 ]
(87) どあ 2022/03/12(Sat) 15時半頃
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[ 真っ白で真っ黒な世界>>71 私の住んでいる場所も、色で形容するなら そう表現するだろう。
けれど、彼、あるいは彼女は 私の知らない色を知っているらしい。
この不思議に鮮やかな色が空に広がって 枯れていない木々が生い茂る きっと、素晴らしく美しい世界。
そんな景色を私も見たかった。 知りたかった。 でも、もう不可能で、どうしたって 終わった世界を、もとに戻すことなんて>>2:46 ]
(88) どあ 2022/03/12(Sat) 15時半頃
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───。
[ 見えた心≠ノ、ぱちりと瞬きをひとつ。 そうしてから、言葉を飲み込むように 二度、三度と読み返した。
もとに戻すことを夢見ている。
そんなこと、考えたこともなかった。 どうにかできなかったのか、 どうしようもなかったのか。 思うのは過去への無責任なものばかりで 自分がどうにかしようなんてこれっぽっちも。 ]
(89) どあ 2022/03/12(Sat) 15時半頃
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[ 指を這わせれば文面をなぞる。 嗚呼、この人は……諦めていないんだ。 無理だとか、できないとか、不可能だとか。 そんな言葉を並べずに、いや 思うことがあったとしても。 いつかできると、夢≠見て。
ただの紙に書かれた文章でしかない 相手が誰だかもわからないのに 私にはとても眩しく見えた。 少し悩んだあと、新しい紙を取り ペンを手に文字を走らせる。 ]
(90) どあ 2022/03/12(Sat) 15時半頃
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『 前略、扉のこちら側から 名前も知らないあなたへ。
お手紙、ありがとうございます。 返事が返ってくると思ってなかったから 驚き、嬉しくなりました。 』
(91) どあ 2022/03/12(Sat) 15時半頃
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『 あなたの世界は、私の世界に似ている。 それなのに、夢を見て生きるあなたが 強く、羨ましいです。
どうしてそんな心で在れるのでしょうか。 どうして、前を見て進めるのでしょうか。
問いかけばかり重ね、すみません。 私は、 ……私も。 そう在れたら良いと思います。 』
(92) どあ 2022/03/12(Sat) 15時半頃
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[ 白米も、ピザも、カルピスも>>0:130 幸福と永遠のくりぃむそぉだも>>1:144 ここに訪れてから、私は何にも出会っていない。
知っているものは、濁った水と、固いパンと それから灰色の世界だけ。
でも、今。 そんな特別ななにかではなくとも 初めて見る色を教えてもらった。
青に似た、青じゃない。 きっといつかにあったはずの、空の色を。 ]**
(93) どあ 2022/03/12(Sat) 15時半頃
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[ 手紙を再び送ってから 返事が返ってくることをじ、っと待っていた。
先程までのようなに返ってこないとは思わない。 きっと返事は来る。 保証もないのに信じた私はただ黙って 静かに椅子に座っていた。
カウンターの上ではかりかりと アシモフがチーズと格闘していただろうか。
やがて、期待に応えるように 白い紙が一枚、はらりと舞い落ちる。 ]
(157) どあ 2022/03/14(Mon) 18時半頃
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[ 届けられた手紙を受け取れば ゆっくりと咀嚼するように 紙の上の文字を目で追っていこうと。 そのインクの色は、先程と同じく 晴れやかなどこかの空の色をしていただろうか。
さて、最初に書かれていたのは。 ]
好き、だったから。
[ ─── 抱いた疑問への、答えだった。
想像より随分と簡素に書かれた内容に>>98 虚をつかれたように言葉を繰り返してしまう。 ]
(158) どあ 2022/03/14(Mon) 18時半頃
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[ ……もし、他の理由を述べられていたら>>95 私にはその気持ちはわからない、と。 ただ夢を見ることができる相手に対して 羨む気持ちだけを持ち続けていたことだろう。
でも、実際に書かれていた言葉は、心の内を そのまま吐き出したように、素直な言葉だった。 だから私は、立ち止まることなく その手紙を読み進めることをやめなかった。 ]
(159) どあ 2022/03/14(Mon) 18時半頃
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[ 私が好きなもの。 私が大切にしたいもの。 ……私が、手にしたい、世界>>99 返すように問いかけられて>>100 想像するように、ひとつ、息を吸う。
思い出すのは、温かなてのひら。 大きな背中、抱きしめてくれた腕。 分けてくれた、美味しくないのに どうしてか、胸がいっぱいになったごはん。 ]
(160) どあ 2022/03/14(Mon) 18時半頃
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[ 好きなもの、大切にしたいもの 思っていたより色んなものが過ぎって くす、と小さく笑みを零してしまった。
生きていた世界は、過酷で、苦しいことが多くて 決して手放しに好きだとは言えないけれど。
もし、昔にあった姿を取り戻せるのなら。
─── いつの間にか、前向きになった思考。 少し前までと変わったものに、また 笑みを深めて、ペンをとった。 ]
(161) どあ 2022/03/14(Mon) 18時半頃
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『 フーデリア。手紙をくれたひと。 もう、見知らぬひとではありませんね。 私は、あなたの名前を知れたから。 』
(162) どあ 2022/03/14(Mon) 18時半頃
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『 いつか。
いつか、世界が夢見たように 元通りになったのなら。
それが難しくても 元通りになる、その一歩を踏み出せたら。
また、あなたと言葉を交わしたい。 今度は手紙ではなく、顔を見て 声を響かせて。
この夢は、望みすぎでしょうか。 』
(163) どあ 2022/03/14(Mon) 18時半頃
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『 扉の向こう側だとしても。 心を、夢を教えてくれたあなたに。
どうかお元気で。 いつか、空の色が あなたの知っているものと交わりますように。
ジリヤ 拝 』
(164) どあ 2022/03/14(Mon) 18時半頃
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[ 相手の形式を真似た名書きは 礼を失していやしないか、少し心配ではあるけれど。
さて、この手紙は届くだろうか。 ……きっと届く。 だって、この世界では 願ったことが叶うのでしょう?>>0:4 ]
(165) どあ 2022/03/14(Mon) 18時半頃
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[ 白いネズミの顔に目を向けて ……ふと、手の中になにかがあることに気づいた。
扉のノブも回さなかったから、 鍵がかかってるなんて知らなかったけれど それを何に使うかはなんとなくわかった。 ]
(166) どあ 2022/03/14(Mon) 18時半頃
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さようなら。 ……ありがとう。
[ アシモフへ別れを告げる。また、 ここに来ることはあるのか、ないのか。
こつ、と足音を響かせて、扉へと向かう。 それでも、名残惜しくはない。 過酷な日々、未来が見えない世界だとしても。 夢を見ることは、できるから。 ]**
(167) どあ 2022/03/14(Mon) 18時半頃
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[ 戻ってきた世界は、あの不思議な白い空間に いたことなんて夢だったみたいに いつも通りの日常を描いている。
でも、ひとつ変わったことはあった。 ]
これが……花?
[ 枯れ木の隙間、灰色の土の上 顔を覗かせるのは白い房を持つ植物。 過酷な地で、それでも力強く咲く いつかの世界の野花。 ]
(199) どあ 2022/03/14(Mon) 22時頃
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[ 今私は、元いた場所を離れて とある学者先生の下で生活している。 この荒廃した世界で学者なんて 随分な変わり者だと 人からバカにされてはいるけれど。
昔、確かに存在していた 植物や生物、それらの写真を撮ったりして。 いつか、もっと人が生きやすいような そんな世界にしたいと言っている。 ]
(200) どあ 2022/03/14(Mon) 22時頃
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[ 彼に出会うまでにも色々あったものだけれど それは余談。 いま大切なことは、小さな歩幅だとしても 少しずつ、前に進んでいる、ということ。
本当に進めているのか、全然そんなことないのか それは結果が出るまでわからないものだけれど。
見たこともないものを見る機会が増えたのは あの頃の情景が想像できてよかったこと。 ]
(201) どあ 2022/03/14(Mon) 22時頃
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[ びゅう、と冷たい風が吹く。 今まで生きてきたなかで当たり前なものだろうに 私は慌てて花に手をかざし、風を遮った。
小さな生命はお礼を言ったりはしない。 それでも、風が止めば安堵の息を吐いて まつげを揺らし、可愛らしい姿を見下ろした。
こんなふうに、生き残っているものは 探せば確かにあった。 それらを見もせずに、嘆いてばかりいた私は 他の人となにも変わらなかった>>2:46 ]
(202) どあ 2022/03/14(Mon) 22時頃
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[ 世界は簡単には変わらない。 たくさんの人が苦しみ、嘆き、 生きることを諦める人さえいる時代。
それでも、……いつかの未来 きれいな風景が視界に広がることを 夢′ゥて。
私は今日も、息をする。 ]**
(203) どあ 2022/03/14(Mon) 22時頃
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