32 Zug Zwang
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霊
全
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― 現実 ―
[フラフラとした足取りで暗い廊下を歩く。 施設内に他に人は居なかった。 それ自体も願ったからだ。
何があろうと邪魔が入るのも、 知らない人間に知られる事も、 ……そもそもに、人と遭う事が憚られた。
運営とのやり取りは全て画面上であったし、 あのふざけた監視役の本当の顔も俺は知らない。
人間の顔に興味も無いし、見たくもない。]
(6) 伽藍堂 2023/12/24(Sun) 11時半頃
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[保管庫であるからか季節がそうであるからか、 廊下であろうと底冷えする程冷たく。 それでも上着も羽織らずそのままの格好で 目指すべき場所へと身体を引き摺り向かう。 目指したくなどない 近寄りたくもない 思い出したくも
口元を抑える 元から無くもあったが 既に全てを吐き出した後なれば
もう一度 ただ喉を焼くだけで済んで 済まされて ]
(7) 伽藍堂 2023/12/24(Sun) 11時半頃
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[操作盤でその部屋の扉を開ける。]
(8) 伽藍堂 2023/12/24(Sun) 11時半頃
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[幾つものカプセルが並ぶ室内を牛歩する。 視たくもない面持ちの顔を中に浮かべるそれは 静かに稼働し、中で眠る人間に 確かな永遠を齎している。
________ ______ _
気狂いだ 呆れる いっそ 全部 ]
(9) 伽藍堂 2023/12/24(Sun) 11時半頃
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[目的地点に着き、足を止める。 其処にあるのは一つのカプセル。 見下ろせば中では ]
(10) 伽藍堂 2023/12/24(Sun) 11時半頃
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[中身の廃棄を円滑に行う為に、 カプセルの全電力を落とすスイッチは カプセルの外壁に設置されていた。
うっかり誤作動させない為に 透明なカバーで守られてはいるそれは、 然してそれさえ外してしまえば容易に押せる 物となっており。
個人的な恨みが発生すれば 容易に死人を出せてしまう状態であり。 そんな状況下に大切な参加者を置くこの運営は やはり狂気と悪意に満ちていると言えるのだろう。]
(11) 伽藍堂 2023/12/24(Sun) 11時半頃
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[だから簡単だ。殺すのは ]
(12) 伽藍堂 2023/12/24(Sun) 11時半頃
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[…徐々にまた呼吸が荒くなるのを感じる。 その最中に思い出すのは、してしまったのは
問題無い。 あと1回、 千日手には余裕がある。]*
(13) 伽藍堂 2023/12/24(Sun) 11時半頃
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[ ボタンのカバーは既に外した。 後はもうボタンを押すだけで良い。 流石に触れたくらいでは押せないので、
もう後は押すだけで ]
(22) 伽藍堂 2023/12/25(Mon) 09時頃
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………っは、ぁ、……は…、っ…―――
(23) 伽藍堂 2023/12/25(Mon) 09時頃
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[幾度目かの過呼吸状態となっていた。 ボタンを押す為でもあるがその場に座り込み 全身が震え出しているのをただ指先だけは抑えて。 それでも殺しきれない振動がボタンの表層を カタカタと揺らしている。
いっそ、押してしまった方が何もかもが楽だった。
指先が支点を得られる。 そもそもに震えを抑える必要が無くなる。 過呼吸の原因であるストレス対象を排除できる。
部屋の冷たさのお陰か思考は妙に冷静で 状況の把握も最適手もその後の展開すら描き、 対処と封殺の手筈迄全て考え尽くせていた。
だから押すだけなんだ。 なのに ]
(24) 伽藍堂 2023/12/25(Mon) 09時頃
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[あの時言われた言葉が何度も頭の中で蘇った。
今自身が行おうとしている行為が正にそれであり、 且つ自身も言葉の上で嫌がった行為でもあって。 だというのに決行しようとしている自身が 相当に馬鹿らしく、また相手の思惑通りの行動を 起こしている様に感じられてしまっていた。
押せば楽になれるのに 押せば生涯の屈辱を得る事になる
それが堪らなく不愉快で苦痛で悔しくて仕方なく 最後の一押しが出来ないまま数分も数十分も 膠着したままその場で頽れていた。
そうして。]
(25) 伽藍堂 2023/12/25(Mon) 09時頃
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……‥っ、う…、…っ ぅあ
(26) 伽藍堂 2023/12/25(Mon) 09時頃
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[気付いたら涙が止まらなくなっていた。]
(27) 伽藍堂 2023/12/25(Mon) 09時頃
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[最初はボタンを押せない理由に苛立ち、 また更なる殺意を沸かせもしていたというのに。
途中から、ぼろぼろと涙が零れ落ちていた。 呼吸の苦しさからだろうか、それとも 苛立ちのあまり脳の何らかの機能に支障をきたし 涙が出るようになってしまったのか。
理由が一切見いだせないまま 床に幾つも水滴を生じさせる。
何がこうさせてしまったんだろう。 どうしてこんな事になってしまったんだろう。 何もかもがわからない、わかりたくもない それなのに止まらなくて、呼吸が苦しくて 何度も何度も嗚咽を溢して泣き続けた ]
(28) 伽藍堂 2023/12/25(Mon) 09時頃
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[スイッチから指が離れて ]
(29) 伽藍堂 2023/12/25(Mon) 09時頃
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[また暫くの時間を経過させてしまってから ふらふらと立ち上がり
口元に笑みを作り浮かべた。]
(30) 伽藍堂 2023/12/25(Mon) 09時頃
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[涙はとうに枯れて 気付けば呼吸も落ち着いていた。 もしかしたら少し気絶していたのかもしれない。 頭がまた妙に明朗としていて楽で、 ・・・・・ だから最も良い手も浮かべられていた。
いくつか記憶が抜け落ちてる中 しっかりと記憶しているそれらを思い出す。]
(31) 伽藍堂 2023/12/25(Mon) 09時頃
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………あんた、死にたがってたよな?
俺の手を取るのも拒んで 何よりも自分を殺したがって 今の状況より更に深い眠りを欲しがった。
俺の駒 はは、随分と潔癖だな。僧侶サマ。
果てに罪人を裁けた気分はどうだ?
[一度首をさする。其処には何の痕も無い。 真っ白な首元があるだけで。 幻の残り香すら 今や ]
(32) 伽藍堂 2023/12/25(Mon) 09時頃
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[その場で踵を返し、 思い止まる事も無く部屋を立ち去る。
外したボタンのカバーはしっかりと戻しておいた。 追々、その時が来たとしても簡単には外せないよう 細工すらしに来たかもしれない。
GM用の部屋へ戻り犬の目を覚まさせる。 操作をすれば痛みなど無く戻せるのだ。 それは参加者についても同様で。 操作をすれば眠る様に仮想空間を離れられる。
再度死んだ事も自覚できぬまま。 もし目覚める事があれば、正しくその地点から 休みも安らぎも与えられぬまま目覚められるように。]
(33) 伽藍堂 2023/12/25(Mon) 09時頃
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[ ああそうだった。 アレはただの敗者だ。 願いを叶えてやる義務など発生せず 最期をどう弄んだところで構いもしない。
こうして委員会に金額を積めば また幾らでも目覚めさせる事も可能で
いっそ眠りを奪う事すら可能で
安らかさなど与えてやろうものか ]
(34) 伽藍堂 2023/12/25(Mon) 09時頃
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・・・ どんな顔するんだろうな、あんた。
(35) 伽藍堂 2023/12/25(Mon) 09時頃
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[ 操作盤へ手を伸ばす
キーを打ち込むその様は、 得意の早打ちチェスを愉しむかの様に軽快で
打ち込み終われば 痛みも無く其方へ眠りが訪れただろう
眠りに落ちた感触も無く 次の目覚めに地続きの地獄が広がる様に 最後に愛おしげに操作盤を撫でながら 設けてしまったモニターに向け 愛でも告げる様に囁いた ]
(36) 伽藍堂 2023/12/25(Mon) 09時頃
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・・・ またな
**
(37) 伽藍堂 2023/12/25(Mon) 09時頃
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[スイッチを切る。 何度も何度も何度も音声のスイッチ切り続ける。 もう既に作動もさせてなかった筈なのに その声が聞こえてしまった気がして 聞いてしまった気がして 忘れてしまえた筈のあの声を 忘れてしまえた筈のあの_を わすれてしまえたはずのあの_______ ]
(46) 伽藍堂 2023/12/25(Mon) 19時頃
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コツ、
(47) 伽藍堂 2023/12/25(Mon) 22時頃
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[盤の上を兵卒が走る 或いは飛び越え 或いは轢いて 王の首を 狙う]
(48) 伽藍堂 2023/12/25(Mon) 22時頃
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