4 【突発R18】痴☆電車
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さぁ……どうだろうな。
[答えをはぐらかして唇を塞いだ。 濃厚なキス、くちゅくちゅと互いの唾液が混ざり合う水音。]
……どうだと思う?
[一度に何でもかんでも飛び越えるのは難しい。 伝えられた奇跡を受け入れることで今夜は精一杯。 いつか普通の恋人の様に、いつか普通の夫婦の様に、愛を口にする日がくるかもしれないが、きっとまだそれは先のこと。]
(83) 飛行機雲 2021/01/30(Sat) 20時頃
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[部長にはネチネチと責められた。 部下に手を出したこととか、孕ませておいて今の今まで認知してなかったのかとか、余りにも煩かったので『産休とりますよ』と脅しておいた。
陽子の両親には思い切り白い目で見られた。 お叱りは主に陽子の方へと向かったが、終始ニコニコと営業スマイルを貼り付けて見守った。 なお、その場での痴漢行為はやめておいた、もしも陽子のお腹が大きくなければ……という妄想だけにしておいて。
逆にうちの両親のことを聞かれれば。 『とうの昔に縁を切った』とだけ。]
(84) 飛行機雲 2021/01/30(Sat) 20時頃
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[それから、痴漢はすっぱりとやめた。 いや、とうにやめていた。 陽子のことが好きだと自覚したあの時から、電車に乗っていても、女に視線をやることは無くなり、その手が他の誰かに触れることはなくなっていた。
未だ自身の歪みは強い。 だが、それも少しずつ普通になりつつある。 大切な妻と子が、真人間へと変えてくれる。
ふと、駅で見上げた智閑線の案内。 かつての居場所に二度と戻ることはないだろう。 そこは、洋子と出会った場所としてだけ記憶に残される。
ただ、それだけ────]**
(85) 飛行機雲 2021/01/30(Sat) 20時頃
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ん………………、ふ、ぁ…………っ。
[久々の口付けに甘く声が漏れる。 はぐらかされての事とは思ったが、今までとは違った心持ちなのは、今まで一人で背負おうとしていた事を受け止めてもらえたと分かったからだ。 口付けが解かれ、ツウと二人の唇を銀糸が繋ぐ。 久々のことに恥ずかしくなって頬を染めた。 もう、泣きながら不安に暮れる女はここにはいない。]
…………ふふ、言いません。だから、いつか応えてくださいね。
[もう答えを急がない。 その代わりに微笑みかけて、またもう一度唇を重ね合わせた。]
(86) 卵 2021/01/30(Sat) 21時頃
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[ちなみに、皆には詳細を伝えていないのはもちろんのことだ。 表向きに相手にも"こう言うことにしている"と説明したのは、付き合ったが酷いケンカをしてしまい、その後に妊娠が判り伝えるに伝えないまま一人で産む決心をしたが、流石に落ち着いて話し合いになり………と言ったもの。
そして、相手が実の両親と縁を切っているのならと、婿入りの話が出たりもした。 女が館本になったのか。 男が古平になったのか。 女としては拘りはない。それに入籍したなら館本の部屋に移動するか別に部屋を借りるなどして実家から離れるつもりだった。 勿論、館本が此方の実家で暮らして良い……などと言うのなら要相談だ。 娘としては親から離れたい反面、これから出産する事を考えると離れすぎるのも辛そうだったからだ。 そうして産休を迎え、出産準備に念を入れながらのひと時を過ごしていた頃。]
(87) 卵 2021/01/30(Sat) 21時頃
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[ある平日の昼間の事だった。 仕事中の相手の元にメッセージが届く。
臨月に入り、あと数日で予定日という日。 破水したので病院に向かうという事と、慌てなくて大丈夫だろうという予想のものだった。]*
(88) 卵 2021/01/30(Sat) 21時頃
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[慌てなくても大丈夫と言われて慌てずに済むのなら、世の中から慌てて失敗するような人間はいなくなる。 その知らせを受け、それでも務めて冷静に抱えている仕事を引き継ぐと、大慌てで病院へと向かった。
陽子は無事だろうか。 お腹の子は。 病院へ向かう間、悪いことばかりが頭をよぎる。
これまで真っ当に生きてきたとは言い難い。 その報いが、陽子や子に行くのではないかと。
そんな漠然とした不安ばかりが募っていく。 病院へ辿りついたとき、陽子の様子はどうだったのだろうか。]*
(89) 飛行機雲 2021/01/31(Sun) 09時半頃
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[彼が辿り着いた時、此方は陣痛の真っ最中だった。 長く息を吐き出し、その合間の一瞬に息を吸う呼吸法は、ラマーズ法のそれとは違うが痛み逃しに産院で教えられたものだ。 点滴が繋がっているが、破水が先だった為の感染予防。痛みが一時遠のいてふと意識を周囲に向けると彼の姿に気づいた。 肩で息をしながら安堵に頬が綻ぶ。]
やか…………、進さん。来てくれたんですね…………。 ふふ、この子も頑張ってますよ。 …………私も、頑張りますね。
[彼に伸ばした手。きっと握り締められるだろう。 ただもう陣痛の感覚が狭く、そうこうしている間にもまた「うぐぐぐぐ………!」と痛みに呻いて余裕がなくなってしまうのだが。 どうやら進行は良好。看護師が来て様子を見ると、分娩室へと連れていかれる。
それから、バタバタと慌ただしい。 彼は外に居ただろうか、中にいただろうか。 元気な産声が聞こえるまで、もうすぐ。]**
(90) 卵 2021/01/31(Sun) 10時頃
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[陽子の手を握りしめた。 かつてはあれ程に自信があった自慢のこの手も、今はこうしてただ握りしめることしかできない。
漏れそうになる本音を噛み殺す。 頑張らなくていい、子はまた作ればいい。 それがたとえ奇跡のような確率でも、陽子を失うことに比べれば。 子ができたから陽子との関係を変えたのではない、陽子への想いが変わったから父親に寝ることを決めたのだ。普通になることを決めた。
だけど、自分の無力感も、その不安感も全て押し殺して言葉を絞り出す。]
……頑張れ……
[祈るように、縋るように。 誕生の瞬間まで陽子の側に居続けた。]*
(91) 飛行機雲 2021/01/31(Sun) 11時頃
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[きっとその飲み込んだ言葉を聞いたなら、女は馬鹿と男を睨んだことだろう。 好きな人の子だから産みたいのだ。大切にしたいのだと。 目を閉じてはいけないと指示され、まだいきんではいけないと指示され無理だと思った。 もう塊が降りてきている。妬けるように熱い命の塊。 男の応援に頷いて、その手を握り返す。 良いですよ、の言葉とともに何度かいきむと、ずるりと脚の合間から出ていく感覚がして。
一拍遅れて、ほにゃああ、うにゃああ、と声が響く。 元気な男の子ですよ、との声にホッと力が抜けた。]
はぁ、はぁ、…………よかった……………。
[赤ん坊は直ぐに生湯に浸かり身を清められる。 テキパキと処置をされていくのを深く呼吸をしながら受け入れ、女は男に微笑みかけた。]
(92) 卵 2021/01/31(Sun) 11時半頃
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進さんが隣にいてくれて、嬉しい。
[処置がひとまず済んだ後、生まれたばかりの我が子を恐る恐る腕に抱える。 心の奥底から愛しさが込み上げてくるのを感じた。]
…………進さんも、抱っこしてあげて?
[ね、と笑いかけて我が子を差し出した。 二人の子。元気に生まれてきてくれた愛しい子。 約3キロと軽い筈なのに、緊張しているからかとても重く感じる命。 彼はどう感じただろうか。 名前は、彼につけてもらうつもりだった。]*
(93) 卵 2021/01/31(Sun) 11時半頃
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[我が子が腕の中にいる。 想像できないような確率を超えて生まれてきてくれた小さな命。 頬を触ろうとしたらキュと指を掴まれた。]
……陽子……見ろよ、指を掴まれた。
[今自分はどんな顔をしている? はっきりとわかることは、今まで一番幸せな顔をしているだろう。]*
(94) 飛行機雲 2021/01/31(Sun) 14時半頃
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ふふ、本当。可愛いですね………。 生まれてきてくれて、ありがとう。
[我が子と、幸せそうな夫とに涙が出そうなほどに幸せを感じている。 寄り添ってこれから生きていく。 母として、父として、夫婦として親子として。 出会い方は褒められたものではなかったし、ここまでの経緯もあまり人に言えるものではなかったけれど、今確かに女は幸せだった。]*
(95) 卵 2021/01/31(Sun) 15時半頃
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[そうして、数年。
子供はすくすくと成長し、女も母として不慣れながらも懸命に子育てをしていた。 仕事に戻り、時に人を頼りながらも懸命に家庭を守っていく。 ある晩、すやすやと眠る子供を隣に、男へと囁きかけた。]
進さん。…………好きです。
[ささやかながらも毎日毎日愛を囁く。 そんな穏やかな日々が、これからも続きますように。]**
(96) 卵 2021/01/31(Sun) 15時半頃
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ああ……好きだ、陽子。
[いつからかそう素直に言えた。 何よりも誰よりも大切な二人。 いつまでも守り続けると胸に誓って、最愛の妻に口付けた。]**
(97) 飛行機雲 2021/01/31(Sun) 15時半頃
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