14 冷たい校舎村10
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── 回想:真梛という同級生 ──
べつに優しくない。普通だろ。
[クラスが違っても全校集会や廊下で遠目に見た>>196 車椅子の女子生徒が、同級生だと言うことは知っていたし。 誰もいなかったから背負って階段を上がっただけだ。>>195 なぜおんぶにしたかと言えば、 無難に顔を合わせそうな体勢を避けたに尽きる。]
そもそも、行く方向もそう変わんねぇし。 他に手を貸す誰かがいたら、通り過ぎてる。
[手を貸してる間も、口にしたのだって名前程度で 話題を振られても適当に相槌をうつだけだっただろうに。 優しいとか、言われることをした覚えはない。]
(494) 2021/11/06(Sat) 21時頃
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[これが、優しい兄だったなら。
普段から率先して手を貸すだろうし、 間を持たせるように話題を振ったりするんだろう。 そうする気もない俺は、優しいとは程遠いはずだ。
どうしたって俺は、兄になれやしない。]
(495) 2021/11/06(Sat) 21時頃
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[辿り着いた教室から、律儀に見送る真梛へ 表情を変えず手を振り返しながら。 ああして笑顔で礼を言って、周りに頼れるやつなら 手を貸す生徒や友達だって多いはずだ。>>423
だから俺が、もう関わることもないだろう。 なんて、思っていたのに。]
…………。 俺が見てるってそれ、なんか意味あるのか。
[居ても居なくても変わらなくないかそれ。>>199 ぼやきながらも動かないのは、 単に今座っているのが俺の席だからだ。]
(496) 2021/11/06(Sat) 21時頃
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[3年1組のクラスメイトになってから 顔を合わせることが増え、たまに話すようにもなった。 といっても、大体振られた話題に応えるのが精々で 噂話が湧いたとしても俺の一睨みで消える程度のもの。>>456
屈託ない称賛。>>192 自然と零れたような笑み、素直な感謝。>>196 礼儀正しくしっかりしてるように見えるそれが、 両脚にハンデのある生活故のものなのか。 単に彼女生来のものなのか、俺は知らない。 知ってるのは毎度素気なく返しても、 懲りずに声を掛けてくる変なやつってことくらいだ。
見張り役って何すればいいんだと思いながら、 真剣にスマホと奮闘する姿をぼんやり眺めていれば。]
(497) 2021/11/06(Sat) 21時頃
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……うわ。 何をどうやったらそんな画面になるんだよ。
[真梛の手元には、 見たことない画面が鎮座していた。>>199]
とりあえず、電源落として再起動してみれば。 そしたら最初からやり直せる。
[ため息をついて、電源の落とし方からレクチャーして 結局ひとつひとつ、グループ参加までの手順に口を出す。 ついでに絵文字とスタンプの出し方も。]
(498) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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お前は、もっと周りに頼ればいいんじゃないか。
[いつだって礼儀正しく周囲へ振る舞うその口で言えば 喜んで助けてくれるやついっぱいいるはずだ。*]
(499) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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── 朝の通学路 ──
[言葉はアレでも、 河合が悪口を言ってるようには聞こえないし。>>439 ハチャメチャ評価には全面的に同意するが。]
……副委員長って、フォロー下手なんだな。
[わざわざ言い直す様子には思わずツッコミを入れながら 苦笑に口元を歪ませた。 荒く使われたことも、阿呆と言われても、 俺が怒っていないことは伝わっていると思う。たぶん。]
(500) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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―― 回想・お人よしの副委員長 ――
和歌奈ちゃんさー、
[ あたしがなんで話そうと思ったのかっていうと、 和歌奈ちゃんが面倒見のいい性格だっていうのもあるけど 気の迷いっていう部分も大きかったと思う。 うん、気の迷い。 その時あたしは多分あたしにしては珍しく、 ちょっとばかし弱音を吐きたい気分だった ]
もう希望の進路とか決まってんのー?
[ そう、その日は進路希望調査票なんてものが 配られたのだ。 ご丁寧にも第一希望から第三希望まで 書く欄があって、見ただけでちょっとげんなりした ]
(501) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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みんな、どこの大学に行きたい―とか、 どこに就職したい―とか、 もう決まってるのかなあ……。
[ あたし、そういうのないんだよね。 あたしはなんていうかさ、 両親に心配かけなかったらそれでいいっていうか。 幸せそーに、悩みがなさそーに見えたら、 それでいいんだよね。 でも、希望の進学先も就職先もなかったら、 きっとお父さんとお母さん、心配するんだよね…… ]
(502) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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将来のことなんて考えられないなー。 和歌奈ちゃんはさ、将来の夢って何? ……って聞いていいー?
[ 高校までは良かったんだ。 頑張って勉強して、 充実してるっぽい学生生活を送ってれば 両親は安心してくれた。 学区内トップの進学校である望月に入ったのだって、 その副産物みたいなもん。
あたしの将来、って何だろう。 だってあたし、今こうして生きてる今だって、 余生を生きてるような気分なんだよ ]*
(503) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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七星拳 ナツミは、メモを貼った。
2021/11/06(Sat) 21時半頃
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[そうして校舎前。 返信を打つ河合を待って、俺も昇降口を潜る。>>441
直後、外の風音が少し遠くなった気がした。
建物の中に入ったからか? 若干の違和感は覚えても、あまり気に留めることはなく。 靴を履きかえたなら、河合の声に振り返り。>>443]
んー……職員室に生活指導いると面倒だし。 俺は教室行く。
[髪を染めたのは高1の半ば。 地毛で通せるわけもなく、さすがに親を呼び出された。 結局現在進行形で、注意されても適当に流し続けているが 以来、生活指導しっかりと目をつけられているので 必要最低限以外、職員室には近寄らないようにしている。]
(504) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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じゃ、またあとで。
[手をひらひら振り。 河合と別れれば、静かな廊下を教室へ歩き出した。*]
(505) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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── 回想・衣装係と ──
[ ノリがいいなあなんて、 自分でやらせておいてわたしは笑う。]
もうよい。面をあげよ。 ……あはは、りのきち最高〜
接客はどうだろー 調理のほうも忙しそうだからなあ。
でも、彼氏が来るから、 わたしもかわいい格好したいー
[ 煩悩を隠すことなくわたしは頬を緩める。 えへーと頬に手を当てて数秒。 いえ、委員長らしいことも言っておこう。]
(506) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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[渋い顔をしたのは別に手渡されたチョコ>>493がビターチョコだったからではないだろう。 真面目にどうしちゃったの、と聞かれても困るんだ。]
調子悪かったんだよ、調子が! あと運!
[無理矢理話をぶった切る。
そうだ。 単なる悔しさへの照れ隠し。 俺はいつもと何も違わねえ。]
(507) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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あ、でも、ほら、 耳つけて教室と調理室の間走ってたら、 ある意味宣伝にならない? だめ?
[ きっと当日は調理室との往復になるだろう。 そう考えると、全員猫耳案はありじゃないか?
全員猫耳姿になったら女子はかわいいし──、 ハルミチーに注目したいのはもちろん、 個人的には会計殿もなかなかおもしろいと思う。
おすみは似合っちゃいそうだし、 コジローは虎だ。たぶん似合うだろう。]
(508) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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[ なんて、交渉前から妄想を膨らませて。 わたしたちは立ち上がる。資金確保のため。]
じゃ、最後の舞台かあ。 りのきちは裏方に専念するのねー うんうん、集大成、見に行くー
[ もしやチケット制ですか? 前売りください! そんな勢いでうなずきながら、 わたしも会計担当の元へ向かおうとして、]
(509) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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……ふふ、ありがとー わたしもね、気に入ってるんだー
[ か細くて頼りのないわたしの一部。 ほめ言葉を素直に受け取って、わたしははにかむ。*]
(510) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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[ 校則に縛られるわたしたちには、 少しばかり不便なこの一部分たち。
見るがいい! と言わんばかりに提出したソレが、 お仲間の笑いを誘ったならば幸いである。>>484
噴き出す音が聞こえてわたしは振り返り、 これがお兄ちゃんでー、こっちがわたしでー、 皺くちゃ顔でベロ出して見切れてるのが姉ですと、 面白おかしく説明してみせたことだろう。
代わりに君のも見せてよって、 ねだれば見せてもらえただろうか。
であれば、ちっちゃーい! と彼女を指し、 続いて傍らの女性を指して楽し気に問うた。 これ、お母さん? どことなく似てる気がするー*]
(511) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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[ さて、話を現代に戻せば、 我らが衣装係が勢いよく宣言している。>>487
ここはわたしも頭を下げるべきだろうが、 どうしよう、言葉にされると結構おもしろい。]
は、ひひ、 会計様〜〜!! 委員長からもお願いです! 会計様の猫耳が見たいんですー!
[ 演技慣れしていないもので、少し笑っちゃった。*]
(512) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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[ 結論から言えば、きみは文化祭に来なかった。 直前のことではあれど、事前にきちんと申し出があり、 しきりに謝るきみはどうにも苦しそうだった。]
(513) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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[ きみが来なくても文化祭は楽しかった。]
(514) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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── 回想・文化祭当日 ──
っひゃー、予想以上の客入りだねえ。
焼き菓子が余ったら、 打ち上げに回そうと思ってたのにー うちの宣伝にゃん達がかわいすぎたかにゃー
[ 黒猫まなちに──我らが広告塔は、 一体どんな猫になりきってくれたんだっけ。 会計様の審査が下りれば猫だらけの我がクラスである。
当日、調理に回っていたわたしは、 調理室と教室とを駆けずり回っていたはずだ。]
(515) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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[ ぷっくり肉球の浮かんだマドレーヌ。 猫型クッキーはいくつかの生地を合わせて、 いろんな模様の猫ちゃんにチョコペンで顔を描く。 市販のシートを使ってラテアートにも挑戦した。 にゃんこパンケーキは少しお時間をいただきます。
ええ、わたし、自慢の俊足で、 調理室と教室を往復いたしますので。 (※廊下は走っちゃいけません)
かわいく出来上がった試作品を写真に撮って、 かわいいメニューを作って! だなんて、 わかにゃんに強請ったりもしたかもしれない。]
(516) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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どうしちゃったのはこっちの台詞だっての。 ろこにしちゃ随分しっかりしてんじゃん。何か良いことでもあったん?
[ある意味酷い台詞だ。古香だって、徹底的にやる時はある・・・・・・のか?
心許なくなってしまったサイフを見やるのだった。]
(517) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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[ 忙しなく過ぎる一日が順風満帆に終わったか、 事件のひとつでもあったかは神のみぞ知る。
教室での出来事は、 これからおいおい思い出すとして、 ここでするのはそれ以外の時間の話。
部の屋台に顔を出したり、 よそのクラスの様子を覗きにいったり。 みんなの部活も見に行っただろう。
ずっと陸上部の輪に混ざっていたり、 あるいは休憩時間のかぶったクラスの誰かと、 出し物巡りをしたってよかったんだけれど、
めぼしいところを回り終えたころ、 わたしはなんとなく上階へと向かった。 文化祭の賑やかさから距離を置くように。]
(518) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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[ 3階の隅にある物置みたいな部屋や、 たまの授業でしか使われない教室の並びは、 ほとんど文化祭の気配がなく、人気もなかった。
人の目のない道とか廊下とか、 見るとつい適当なステップを踏んでしまう癖。
それでも、壁や床、窓で一枚遮られて、 くぐもって聞こえる喧噪に、 わたしはふわりふわりと窓への近寄って、 校庭の特設ステージがよく見えることに気づく。]
(519) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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[ カラカラと窓を開いてみれば、 風と一緒にステージの音が廊下に流れ込む。]
──お、特等席。
[ いい場所を見つけたと言わんばかりに、 窓際にあった大きな箱にえいっとよじ登る。 ……避難用のシューターが入ってるんだっけ。
その上に乗って見下ろす光景は、 天気に恵まれたこともあって本当に気持ちよかった。 目を細めて、わたしはただそこにいた。]
(520) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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[ 願わくば誰かと。 ……叶うのならきみと分かち合えたら。 一瞬よぎった思考を吹き込む風がさらっていく。*]
(521) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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[河合和歌奈が坂を転がり落ちるように『普通』じゃなくなってしまったのは、 小学校四年生の時だった。
両親が離婚して、母が家を出ていった。 そのことが和歌奈の生活の何もかもを変えた。 当時小学校でそのことが大っぴらになることはなかったが、 授業参観に親が来ないことを訊かれはしたし、 まあ、結局、子供らしい好奇の眼差しからは逃れられなかった。
和歌奈はそれらから逃れるように本の世界へと逃げ込んだ。 家のことを自分でやらなきゃいけなくなったから、 友達と遊ぶ時間もめっきり減った。 そもそもこんな状態の私と遊んでくれた友達はいたんだっけ]
(522) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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[だから、五年前に父が再婚して、料理を日常的にやらなくなった今も、 それなりにできる自負はある。 ただ一点、卵を綺麗に割ることを除いては。 力加減を間違えて、中の黄身をしょっちゅう潰してしまう。
調理を手伝おうという気になれなかった理由はそれだった。 喫茶店で出すメニューの味見にありつきながら、 誰かに零したことはあったかもしれない。卵のことを。 ……たかが卵ととるか、されど卵と取るか。 これも考え方の違いというやつだろうか]
(523) 2021/11/06(Sat) 21時半頃
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