10 冷たい校舎村9
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[んでさ。いろいろ話したあとで
突然シンの様子がおかしいわけ。]
………えぇ……
んなん、意味あるに決まってんだろ
[当たり前だったけど、特別だったよ
でもさ、特別だったけど当たり前過ぎて、
俺にはたぶんやっぱりシンの気持ちは全部読めない
だから俺からは
感動させるような名台詞でも、
心を揺さぶるようなクサイ台詞でもなくて、
至極ふつうの感想しか、出てこなかったんだ。]
[たとえば自分が「みんな」のうちの
ひとりだって思ってた、ってちゃんと言葉で聞いてたら
んなわけねーだろ!シンだから!いいの!って
食い気味に反論してたと思う。
シンが消えて泣いたやつ?はい!俺、挙手!
シン以外のやつの人形見ても泣かなかった俺がだよ
お前の人形見て、動けなくなるくらい泣いたの。
メイに心配されちまうくらい、泣いたの。
メイと話し終わっても、離れられないくらい泣いたの。
全力でアピールするね。
もしも声が聞こえてたら、だけど。]
[でもさあ、聞こえてこないから、
俺にとってはいつもの「日常」の延長で、
その中でも特別なシンがさ、
ひどくアタリマエのことを、喋ってる。
んでもさあ、ようやくシンが理解してくれたなら
さっきのこと、ちゃんとシンに向けて話せるよ ]
さっきの話もさ、
変に気遣う、とかじゃあなくて、
別に悩みを解決してやる!とかもできねーけど
ペットボトル持ってやるわ、くらいの感じでさ
シンのこと、楽にできてたらうれしーの。
俺にできるの、そんくらいだけど、
馬鹿話することでさ、
俺がシンの役に立ってたんならさ
俺、すげーうれしいんだからね。
なんだこんなことでいいのかって、笑っちゃう
[へらへらの笑みのシンに、
こっちもへらへらの笑みをむける。
なんかできることなかったのかなって
すげえ、すげえ、悩んだんだよ
全部、上手く行ってなかったって思ったから
俺、なんもできなかったって、思ったんだから
だから、いつもの俺のまんまで
大事な友人の役に立ててたことがとても、嬉しいし、]
[なによりも、シンの「みんな」の中にも、
ちゃんと俺が居たんだなあって、改めて知って
俺、それが一番、嬉しい。
もう、隣にいるからさ、俺寂しくなんかねーよ。]
[静かな夜の中で足音がふたつ、止まる。
シンからのお願いは、他愛のないもの
特別なんかじゃない、普通の日常のこと。
きっと食ってばっかなんかじゃなかったよ。
俺らには文化祭以外にも、体育祭も球技祭も
それからなんだろうな、普段のガッコーも?あってさ
たぶん羅列してくと挙げきれねえから、
どうしたって食ってばっかのことになっちまうけど
俺たちの日常はさ、
こんな狭いワンシーンじゃ描ききれないものばかりだし
別に喜怒哀楽どれでもねーような、つまんねーコト、
だけどどれも大切なコトばっかりだっただろ。 ]
おう。当たり前だろ。
ふつーのこと、いつだってしようぜ。
食ったり、食ったり、食ったり…って、オイ!
[笑う。あ、手始めにバスケ部vsサッカー部で
最後のバレンタインチョコの個数対決でもする?
俺万年モテない組だから結果は目に見えてるけど……
義理チョコも数えていいね??いいよね??? ]
そのかわり。
シンがさ、疲れたときには
遠慮なく、無理!って言ってな。
俺も何できるか、そんとき考えるから。
俺も、言うから。
[大それた祈りは、お互いさまで。
それからさらに一歩、踏み出した願いを
俺は欲張りにも、添えてみる。
きっと叶うんだろ?ううん、違ぇな。
叶えるのは、俺たちだから。
俺たちならきっと、叶えられるだろ?って。
俺も、夜空の下で、笑った。 ]**
― 院内・待合室付近 ―
[普段病院に来る機会が
そうそう多いわけじゃない。
ましてや集中治療室なんて縁もない。
うろうろしていれば
遠くから手を振る見知った人影]
あ、綿見ちゃん!
[思わずほっと表情を緩め、
手を振る彼女に小走りで駆け寄る。]
………ちゃんと帰って来てたんだ。よかった。
[なんせ調理室で見たマネキンの姿が
脳裏には色濃く残っているものだから。
ついつい腹部にまじまじと視線を落としてしまう。
自分だって別に何ともないんだから
現実の彼女まで怪我してたりはしないと思うけどね。
やっぱりあれ見ちゃうとちょっとね。]
綿見ちゃんもやっぱりメッセージ見てここに?
その、副会長は……。
[何か容体に変化はあったのだろうか。
少し聞くのが怖いような気持と共に、言葉を詰まらせる**]
── 現在・病院外 ──
[ どうしてなかなかすれ違っちゃうね。
「言えよー」って叫んでるの見ても、
「言わなきゃ伝わらない」と教わっても、
自分の内側に持ってる当たり前の感覚は、
どうやら根深すぎてなかなか見せ合えない。
慎一だって、考えてたわけじゃなかった。
わざわざ思ったり考えて出した結論じゃない。
ただ、いつの間にか存在していた。
その形を意識することさえなく。
だから────、]
……そっかぁ。
[ なんだか気の抜けるような声に、
慎一もとぼけた声でそう言おう。
俺の人形見て泣いた人、はーい。
なんて、口が裂けても言うわけなかった。
いると思ってないんだから当然だな。
だから、校舎での出来事を振り返って、
そんな大騒ぎをするのは、
またいつか機会があったらにしよう。]
……うれしいし、助かるよ。
ペットボトル持ってくれるのも、
日常の、ほんのしょうもないことで、
一緒にゲラゲラ笑ってくれるのも。
レンには「こんなこと」でも、
俺にとってはそうじゃないから。
[ いつものままの鳩羽憐に、
実は救われていた人、はーい!
……ってされたら、
はーい! って素直に手を挙げたってよかった。
けど君はそれをしないだろうから、
少なくとも慎一にとっての「なにか」だったよ。
それはここにだけ書き記しておくね。]
[ いざアレもコレもと挙げだすと、
きっとキリがない愉快な日常。
けれど、かけがえのなかったそれが、
この先にもずっと続いていけばいい。
些細なこと、しょうもないことだとしても、
慎一はそれを大切に持っていくから。
食ったり、食ったり、食ったり。
ふざけた口調で言った鳩羽につられて笑う。
手始めに、そうだなあ。
バレンタインチョコ対決もいいけど、
お互い補欠になるんじゃ切なくない?]
いいじゃん。食って食って食って。
今度さ、あのアタリ棒交換しにいこう。
冬にアイスも、たまにはいいだろ。
……アタリくらいまた引いてやるし、
それにたぶん、そんな棒っきれより、
俺とつるんでるほうが、ご利益あるよ。
[ ふふん、と強気に笑ってみたけれど、
正直ちょっと照れ隠しも入ってた。
「わかった」と笑ってうなずけば、
それは祈りというより約束だった。
この寒い12月の夜から、朝に、昼に、
そしてまた次の季節へと、この先ずっと、
それが続いていけばいいと夜空に祈って。
……祈るんじゃなくて叶えるんだっけ?
もう少しと言わずがんばらなきゃなあ。
大丈夫、息はしやすいよ。今は。
疲れたときはまた言うからさ、
ちょっとだけ立ち止まって待っててほしい。
慎一もちゃんと目を見て耳を傾けて、
ペットボトルだって代わりに持つ準備はしとくから。]
……あ!
そろそろ飲み物届けてくる。
カフェオレ冷めちゃった?
[ それで──目の前の話。
思い出したように慎一は言う。
なんなら右に左に持ち替えてた、
ぬるめのコーラの方が気がかりだが、
まあ……オマケだし。お代はいいから。]
[ 鳩羽からそれを受け取れば、
再び院内へと戻ってそれを手渡そう。
あ、お使いしてくれるならそれでもいい。
たぶんそのほうがはやいだろうしね。
慎一も相手を告げて渡すだろう。
誰かと話し込んでいるなら、
またあとにするけど──、さてはて。**]
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[ 暮石には悪いと思っている。>>161 母親がどうして亡くなったとか、 どんな夢を抱いていたのかなんて知っていたら。>>162 もう少しだけ、気を遣うよう努力したと思う。
それから生死の話。 暮石にとっては、自分でいられなくなること。>>1:528 それが、彼女の死なのだろうが、 暮石が自分でいられなくなる切欠を俺は知らない。 だから、余計に暮石に気を遣えなくて申し訳ない。
それから、黒沢も自分を棚に上げて言う。>>152 心を大切にする為に切ったとしても、 身体のことは大切にしていないじゃないか。 ]
(186) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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……分かった、善処する
[ 欲張りな暮石と、自分勝手な黒沢に謝罪しておこう。 ]
(187) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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[ 全てを曝け出した黒沢は>>154、 手遅れだと言う。>>153
俺はようやく黒沢と話したことを思い出し、 父親のことだったのかと気付く。>>0:1173 それに、黒沢は俺とは違う言えない¢、の人間だ。 内に秘めて、グレーゾーンを受け入れようとする。 黒沢は言ってくれるだろうという自負が、>>1:267 きっと俺の中の誤算だったのだろうな。
それに、父親への依存は、>>157 必ずしも黒沢だけではなかった。 俺だって、父親に依存して寄生して生きている。 父親の進行方向へ右へ倣えの生活だった。 それは同じな筈なのに。 ]
(188) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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[ 炭蔵家では父親の方が過ちを犯し、 それが俺の人生にとっての汚点だと思っていた。 でも、父に依存していた俺は切り捨てられなくて、 何もなかった時間に巻き戻したかったんだ。
……もう、本当に手遅れなんだろうか?>>158 ]
(189) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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[ 俺の言葉選びが下手なこと、よく知ってるだろう? 口説き文句だと勘違いされても別に構わなかった。 男女の仲など関係もなく、黒沢を信頼しているし 尊敬もしていて、人として好きだから。 俺が俺でいられるのも、こうやって俺を認めてくれる 黒沢がいるおかげでもあるんだ。>>159 ]
それはありがたいよ
[ 物腰柔らか仕様にもしもなれていたのなら、 両想いじゃないか、くらい言えただろうか。 ]
(190) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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[ そうして、暮石に視線を向けた時には、 彼女は少し表情が柔らかくなっていた。>>169 物腰柔らか仕様の返答は、暮石に任せよう。
多分、俺とは違う黒沢をずっとよく知っていて、 今も見えている世界が違うんだろうと、思う。
暮石が包むように掌を重ね、>>169 文化祭の思い出を語り出すのを静観していた。>>170
この世界に来てから、 確かに見ていて惨いこともあっただろう。 でも、この世界に来てからいいことはあった。>>172 俺もそうだ。鳩羽も同じ気持ちだろう。>>4:221 それに柊のことも知れたし、>>4:230 向井と本音で話せたのも、>>2:414 この世界に来れたから、この世界じゃなければ、 きっと俺は、知らないままのことが多かっただろう。 ]
(191) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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[ 頭に伸びた掌が、今度はピアノに向かう。>>173 暮石がピアノを得意とすることを知らなかった。 その音色を聞いたこともなかった。
魔法というにはあまりにも雄大で、>>176 お世辞にも完璧とは言い難い一曲だった。
しかし、音楽に詳しい訳ではないが、 技巧の高さだけでは乗せきれない思いが確かにあった。
一直線に黒沢に向かっていく、圧倒する何かが。 ]
(192) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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[ 鍵盤から指が離れ、暮石の眸に涙が溢れる。>>179
きっと、親を亡くした暮石にしか 分からない感覚なのだろうと思う。>>180 黒沢に向けた懇願のような言葉の数々を耳にして、 もう前髪で隠されていない俺の表情も、 ほんの少しもらい泣きしそうになっていただろう。 ]
(193) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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[ 俺も聞きたかったこと。>>184 仮説の話、───もしも手遅れじゃなかったら? ]
もしも、この世界が黒沢の最後のSOSなら 手遅れなんて言わせない、間に合わせてみせる
それに、少しくらいわがまま言ったって ここには誰も咎める人はいないだろ?
俺たちに気を遣う必要だってない 俺たちはいつだって対等な関係にあるんだ
[ 暮石のように、友達≠ニ俺の口からは 自信をもって言えなくてこんな言い回しになる。 ]
(194) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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俺もこのまま、黒沢を思い出にしたくない まだ黒沢の知らないところがたくさんあるんだ
でも黒沢は聡いから、このまま戻れても その先はどうして生きたらいいのかって悩むだろう
でも、俺も暮石も、 それに先に帰ったみんなもいる。 黒沢からのSOSはしっかりと受け取ったから、 もうひとりで悩まなくていいんだ
黒沢の生きる場所は俺たちに作らせてほしい
(195) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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