10 冷たい校舎村9
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[保健室に乃絵ちゃんは戻ってきてたかな。 ひとつのベッドから掛け布団が消えて>>106、 昨晩綿見さんも参加してくれたお茶会>>522で食べた ドーナツとチョコの残りがテーブルに纏められている。
こんなに4人の形跡が残るのに、 もうここにはわたしと乃絵ちゃんしかいない。]
乃絵ちゃん。
[もう寝るという頃かな。 わたしは乃絵ちゃんの名前を呼んだ。]
……お腹空いた。
[わたし、結局今日一日何も食べてないんじゃないかな。 どんなに悲しくても、どんなに寂しくても、 他人事だと思ってた感情がわたしを呑み込んでもお腹は 空く。眠れないのはそのせいってことにしてほしい。]
(291) 2021/06/13(Sun) 01時頃
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空いた、から……、
[わたしは制服のポケットを漁ってぼたんに触れた。 これはひとみちゃんが渡してくれたお守り。 手のひらの真ん中に入れてぎゅっと握りしめる。
反対の手はポケットから取り出して傍らに置いていた お財布に触れる。鈴みたいに振ると乱雑な金属音がする。 この中のひとつだけ、銅の音だ。……どれだろう。
樫樹くんにまつわる物はわたしの手にない。 言葉を躊躇う理由がなくなってしまった。]
(292) 2021/06/13(Sun) 01時頃
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一緒にクレープ、作らない?
[わたし、昨日は聞いたのに、 今日は乃絵ちゃんのご飯聞いてなかった。
だから乃絵ちゃんが 朝から最後のクレープ>>3:33を食べたことも、 夜パンケーキ>>282を食べようとしたことも知らない。]
……綿見さん、からね。 教えてもらったレシピがあるの。
[クレープが残っているかも知らないわたしが 最初から作ろうと言ったのはそれが理由だ。 文化祭の時に綿見さん>>0:884が教えてくれたレシピ。 夢の形が壊れないようにって言い訳して、 結局は1人で料理することが怖くて眺めるだけだった わたしのガラスの靴>>1:270。]
(293) 2021/06/13(Sun) 01時頃
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……どう、かな。 今日も一緒にワルイコト、してくれる?
[わたしは乃絵ちゃんの様子を伺った。 だって、いろいろあったもの。ありすぎたくらい。 乃絵ちゃんが辛そうならすぐに撤回するつもりで、 わたしは乃絵ちゃんをまっすぐ見ている。]**
(294) 2021/06/13(Sun) 01時頃
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夜笑国 メイは、メモを貼った。
2021/06/13(Sun) 01時半頃
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―― 調理室へ:柊君 ――
死に損なったら悲惨って言ってたから、 試し始めたら、もう止まる気はなかった気がする。 ワンチャンかけて、かあ。 綿見さんならないとは言い切れない……気もする。
[ 歯止めがきかなかったっていうのは なんだか違う気がした。>>284 綿見さんはやり始めたら やり遂げようとする人の気がした。 わかったようなことを言ったけど、 全部推測だし、真相は闇の中。 ……ううん、帰れば、聞けるかもしれない、よね。 忘れてた。そういう未来の可能性、忘れてた ]
(295) 2021/06/13(Sun) 01時半頃
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うん、見たことのある写真ばっかりだもの。 こうやって見ると、いっぱい撮ったよね。
[ 文化祭での出し物が屋台に決まって、 広報係が始動してから、文化祭打ち上げまでの写真。 夏休み中の準備の写真。当日の写真。 カメラ目線の写真、 クレープに目を落としてデコレーションしてる様子、 目玉(物理)商品の写真もあるし、 準備が一段落して休憩中の写真もあったりする。 カメラを向けられてるのに気づいてない、 お仕事中の写真もあったよ。 我ながらいい仕事をしたって 私、胸を張って言えると思う ]
(296) 2021/06/13(Sun) 01時半頃
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[ これは過去のことなのに、 今、私たちは文化祭の校舎を歩いてる。 なんだかとっても不思議な感じ。 柊君が、もの悲しいって思ってること、>>285 私は気づかない。気づけない だって私には、そんな発想がまるでないから ]
(297) 2021/06/13(Sun) 01時半頃
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[ 私は、やさしくなんかないと思う。 マネキンと代わることが帰る方法なのだとしたら、 そのために死ななくちゃならないのだとしたら、 そんな帰還方法ってどうなのって システムに理不尽を感じてるだけ ]
(298) 2021/06/13(Sun) 01時半頃
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[ だってみんな、痛い思いなんてしたくないでしょ? 私と違って。 私?私だって、死ぬほどの目に遭うつもりはないけど。 だから手首以外の場所は切れずにいるんだし ]
(299) 2021/06/13(Sun) 01時半頃
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……そうなんだ。
[ ちょっと意外だった。>>286 だって次のチャイムの後は 3人になっちゃうかもしれないのに。 そんな世界に、ずっといてもいいかななんて。
見限られたくない。 そんな、私の持ってる気持ちと同じものを、 柊君も持ってるらしい。 だから? 柊君も疲れちゃった? ……って、思ったけど ]
(300) 2021/06/13(Sun) 01時半頃
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そっか。苦しくても、帰る、か。
[ 柊君は、帰りたい、帰るって言いきった。>>288 帰るためには、 この校舎で死ななくちゃいけないとしても。 痛かったり、苦しかったりするかもしれなくても、 それでも ]
きっと、大丈夫だよ。
[ ヤなことも多い現実。 見限られないように、捨てられないように、 必死で生きなきゃいけない現実 ]
(301) 2021/06/13(Sun) 01時半頃
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痛い思いして死んででも、帰りたいって思うんでしょ。 文字通り死ぬ思いをしてわざわざ帰るんだもん、 そんな柊君が、現実でやっていけないわけがない。
[ 現実に、そこまでの価値を見出したってことでしょ。 それなら、きっと大丈夫。 我ながら、何目線?って感じだけど ]
(302) 2021/06/13(Sun) 01時半頃
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……わたし?
[ そう問い返されて、>>289 私、初めて気づいた。 帰るってことについて、 今すごく他人事みたいに考えてたことに。 だって、全然ぴんと来ない。 この校舎で死んでしまう自分が思い描けない ]
(303) 2021/06/13(Sun) 01時半頃
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帰るためには、この世界で死ななきゃいけないとしたら、 やっぱり、ちょっと怖いな。
[ それは嘘じゃない。私、死ぬのが怖い。 殺されるのも、自殺も、どっちも怖い。 だけどそれって、 厳密には帰りたいかどうかの答えにはなってないよね。 柊君に気づかれちゃうかな。 気づかれそう。だって柊君は聡い。 だから、私は先手を打った ] ……ところで、 さっきからちょっと気になってたんだけど、 柊君、手、どうしたの?*
(304) 2021/06/13(Sun) 01時半頃
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[ 食堂のパンケーキには、 綿見さんの字で食べてねってメモが添えてあった。 私、それを食べながら、 クレープと違ってお礼が言えないなって思った。 帰ってから伝えればいい。 そんな発想は、やっぱり私から出てこない ]
(305) 2021/06/13(Sun) 02時頃
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[ 認知のゆがみ。 窓から降りこんでた雪は、すぐに掃除したのに、 私は一度だって、廊下に散らばるカッターナイフを 掃除しようとは思わなかった。 こっそり使ったカッターナイフを、 紛れ込ませるように捨てることさえ、した。 物を踏んで歩くなんて行儀が悪い。 それなのに、上履きの底を信じ続けた ]
(306) 2021/06/13(Sun) 02時頃
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―― 夜:保健室 ――
[ 昨日は4人いた保健室に、今日は芽衣と2人。 芽衣は黒板を見た?>>290 まだ見てなかったら、私が伝えた。 いくら待っても、綿見さんは来ないってこと。 保健室には、まだ番代さんや、 綿見さんが確かにいた痕跡が残ってるのに、>>291 もう2人はこの校舎のどこにもいない。 私も芽衣も、そんなに賑やかなタイプじゃない。 昨日は賑やかなパーティーをしたのが嘘みたいに、 今日は静かだった ]
どうしたの?
[ 私も芽衣も、明日の話をしない。明日の朝の話をしない。 名前を呼ばれて顔を向けたら、 思わぬことを言われて、私は目を丸くした ]
(307) 2021/06/13(Sun) 02時頃
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え、芽衣、ごはん食べてないの?
[ それとも、食べたけど小腹が空いた? わからないけど、おなかが空いたっていう芽衣に、 我慢しよ?なんて私は言わない。 今日は夜抜け出すつもりはないよ。 そんな下心なしに、私、いいよって頷こうとして ]
(308) 2021/06/13(Sun) 02時頃
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……ワルイコトじゃ、ないでしょ。
[ 夜のもう遅い時間に、 母が夜食を持ってきてくれることがあった。 受験勉強の合間にそれを食べるの、 私、少し楽しみだった。 夜食を食べるのは私だけだったから。 母が私のためだけに作ってくれたものだったから ]
(309) 2021/06/13(Sun) 02時頃
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でも、芽衣となら、ワルイコトでもいいよ。
[ 調理室は綿見さんの縄張りだから、 食堂に行く?って私は立ち上がる。
明日の朝、チャイムが鳴ったら、2人減るかもしれない。 そんなことは何度も考えた。 でも、私、自分がいなくなるかもしれないとも、 芽衣がいなくなるかもしれないとも、思えないの。 どうしてかな、って考えそうになって、やめた** ]
(310) 2021/06/13(Sun) 02時頃
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……あー、わかる。
[向井くんが広げた両手と、ふわっとした説明。
よくわかんないけど、わかる、と相槌を打った。
自分の手の届く範囲がもっと広いなら、
きっと自分のことだけじゃなく、いろんなものを背負えただろうって。
向井くんの意図は分からないけど、そんなことを思ってばかりだ。]
そうだね。
また閉じ込められちゃった時は試してみる。
[笑っている向井くんに頷いてそう言って、
あ、これは我ながらすごいブラックジョークだなって思い至った。
今後の人生でまた暗くて狭い場所に閉じ込められる機会、
どれくらいあるんだろうね、ほんと。
また緊張と混乱が込み上げて、
顔や手が冷や汗まみれになるのは避けたい。
女の子としての顔が台無しになるんだもの。]
[向井くんと反省部屋にて気を紛らわす会話を広げて、
集中治療室前の張り詰めた空気を少し溶かした気がするけど、
乃絵ちゃんの母親のほうをチラリと見れば、気まずさが返ってくる。
だから無意識のうちに歩きながら話しつつ、
待合室のほうを覗いてみれば、
茉奈ちゃんもそこにやって来てたのかな。
気まずそうにしているのにはあえて気付かないフリ。
私も出来る限りの笑顔を浮かべて、
おかえり、と言って迎えよう。**]
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── 現在:3-9教室 ──
[ 相手に合わせた言葉を選べと、 黒沢に言われていたんだったな。 すまない、鳩羽はもう少し賢いと思っていたんだ。 でも、10割分かった顔をしているんだから、 炭蔵が勘違いしても仕方ないだろう?>>271
本当に正しいのだろうか。>>272 人より少し賢いからと押しつけてはいないか? 残り4割分の信頼に見合えるほどの働きを 炭蔵はちゃんと出来ているのだろうか? ]
(311) 2021/06/13(Sun) 09時頃
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[ でも、4割足りなくても行き着く先が同じだったこと それを知ることが出来たのなら、>>273 炭蔵のこの不安も、少しは解消されただろうか。 ]
(312) 2021/06/13(Sun) 09時頃
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[ もしも北風と太陽で例えるのなら、 炭蔵自身は北風のような存在だと思っていた。
太陽のような暖かさというよりは この言葉は風のように冷たいものだろうと。 ほら、ロボットと間違われるくらいだから 人間の心の温かみだってあるのかどうか。
─── それなのに、 太陽と形容してくれると言うのか。 一方的に照りつけるような存在でないと良いが、 あまりにも眩しすぎたら教えてくれ。 ]
(313) 2021/06/13(Sun) 09時頃
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俺たちはまだ、 この世界の主がどうしてこの世界を創り出したのか それを聞けてはいないだろう?
最終的な結果がどうなるとしても、 何もわからないまま諦めるより 少しでも近づきたいと俺は思うよ
[ 確かに不安がゼロかと言えば、 そうではないと炭蔵も思う。
こうして炭蔵たちが互いを知ったように 世界の主も話をしたかったんだろ? 鳩羽が言ったんだ、 知って欲しかったのかもって。>>224 ]
(314) 2021/06/13(Sun) 09時頃
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[ 鳩羽や炭蔵がこの世界の主なら、 きっととっくに元の世界に帰れてるような気がする。 だから、 まだ話せていない誰かの 悩みごとや苦しみを知る必要があるんだろう。
炭蔵に癖がある訳ではないが、 つい左手首を右手で握ってしまっていた。 ]
(315) 2021/06/13(Sun) 09時頃
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ああ、どちらかが次のチャイムで消されても 少しでも役に立てるように努力しよう ──…… 約束だ。
[ 連れて帰れないという選択肢は、 鼻から炭蔵の頭にはなかったものの。 予防線だけ、張らせてくれ。
連れて帰れなくても恨みっこなしで頼む。 **]
(316) 2021/06/13(Sun) 09時頃
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── 3-9教室・ユーガ ──
[ユーガにさ、心の温かみが無いって言うなら。
たとえば俺が無断欠席したときに、 俺の気持ちを考えて >>1:122 言葉を選んでくれたりはしなかっただろ
たとえば最初の日、 俺らにカッターナイフの危険性を わざわざ伝えてくれたりはしなかっただろ>>1:67
誰かのために、今できることをしたい、なんて そんなふうに思ってくれたりはしないだろ >>2:35
俺ン中ではさ、十分ユーガの心は暖かくって いつだって、クラスメイトに寄り添おうとしてくれていて。 だから、俺だって、信頼してるし、 大切な友人の、ひとりなんだよ。]
(317) 2021/06/13(Sun) 10時半頃
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