10 冷たい校舎村9
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―――……ありがと。 ちょっと考えてみるよ。
[本当に居場所がないのか。 本当に存在しないのか。>>162 炭蔵の言葉は更に続く。 今までそこまで掘り下げて考えてみたことが無かった。
傷ついて、怖くて。更に傷つくのを恐れた。 もう一歩踏み込めば、何か変わっていたんだろうか? すぐに答えは出せないけれど。
だから炭蔵の問いにはそう返し。 ああ、あくまで思考実験ってていだったなって笑って。]
(229) 2021/06/12(Sat) 22時頃
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……、 あと。
惚れはしないけどさ。 好きな人枠の方は善処しますんで。
取りあえず、無事に帰れたら どっか遊びにでも行ってみる?ユーガくん。
[精一杯茶化してみたけどまだ耳は赤い。 俺も真面目にこんなこと言うの恥ずかしいから! この年になって、お友達になりませんか?みたいなのさあ!
言ってからこれ死亡フラグだなって思ったけど まあ、まあ、許してね。
調理室に入る少し前のお話。*]
(230) 2021/06/12(Sat) 22時頃
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── 現在・病院 ──
……あ、でも、
本当にすごいことになってそうなとこは、
俺、見てねえから! 布団被ってたし!
[ 少なくともあっけらかんとした感じじゃなかった。
そのときの番代の笑い方の話。
それをどう取ればいいのか。
慎一がとっさにしたのはそんな弁明。
ほら、おなかの部分とかね。
被せられていたのが布団というのもあって、
慎一がめくるのってどうなんだろって思ってさ。]
[ 不要かもしれない弁解をしながら、
あのときのことを思い出して、ひとつ気づく。]
……そういえば、あれ。
黒沢の字だったなあ、張り紙してあったの。
キツかったはずなのにな。
こんなことになっちゃうくらい。
限界だったとか書いてたくせに。
[ そんなときに気を回さなくてもいいのに。
残されてた張り紙を思い出して、
「えらいなあ」より先にそう思ってた。]
[ 落第生ばかり肩を並べて、
おしゃべりしながら試験官の帰りを待つ。]
……うん、ヒントか。
答えがわからなかった、というより、
見ないフリしてた気がする、俺。
[ ぽつぽつとそんな言葉をこぼす。
落第生同士なんだから、
少しだけ反省点を述べさせてほしい。
慎一や番代に答えられなかった答え。
それに誰かがたどり着いてくれることを祈って。]
ユーガか。確かに。
[ 誰か、と言ったって、
あの場所には顔も名前も知っている、
クラスの友人らしかいないのだから、
名前を挙げてみることだってできる。
真っ先に、当たり前に炭蔵の名前が出て、
なぜか慎一は少しばかりうれしい。
やっぱり隠し事が上手だなあ。
くやしさは特にない。でも、どうだろう。
ふと、慎一は一歩二歩とベンチから離れて、
番代のほうを見ながら大きく手を広げてみる。]
……案外近いなあ。
[ その手の届く範囲の話。
両腕を広げた長さは身長と近いと聞いたから、
たぶん、これより5cmくらい狭い範囲。
黒沢がその中にいてくれればいいけど、
でも、もしも今、あのなめらかな両腕が、
炭蔵自身をぎゅっとするので忙しくても、
慎一は失望なんかしないんだけど……、
はて、あのかんぺき人間はわかってるかな。
それとも、そんなことになったら、
自分で自分を許せなくなっちゃうんだろうか。]
[ 何事もなかったかのように元の位置に戻り、
慎一はほかの名前を挙げてみたりもする。]
レンがさ、すげえ考えてた。
何をしてほしいんだろう、
なんなら教えてほしい、って。
……今思うと、アイツ、
自分が張本人の気、全然なかったな。
[ 伝えれば、きっと助けになってくれる。
寄り添ってくれる。力を貸してくれる。
鳩羽だけじゃなくて、あの場にいたみんな。
それ以上アレコレ名を挙げることはないけど。]
[ ふいに、「ズルい」と言われて、
慎一は少し驚いて自分の手元を見た。
ファスナーの表面は、
凹凸がざらざらとして触り心地がいい。
あまり意識もしていなかった行為を指摘され、
ボタンを摘まむ番代を見て慎一は笑った。]
ヤだよ。あげない。
[ ……ダサいウィンドブレーカーだしね。
今度は意識的に。自分を落ち着かせるために。
その感触を繰り返し指先でたどりながら。]
[ しゃべってて気づいたんだけど、
自転車を飛ばしてきたせいか喉が渇いた。
あとで外の自販機を見てこようかなんて考えて。*]
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―深夜・鳩羽と―
えー、 難民になりそうだったから助けてやったのに。 ユキ大明神にその言い草。
[そんな軽口も何だか随分と懐かしい気がした。>>201 廊下に貼られている写真は 鳩羽と俺が一緒に映っているやつも多かった。
ピースサインしてたり、 変顔してたり、小突きあってたり、 何処にでもいるような他愛ない男子同士の馬鹿なやつ。 楽しかったな。って通りすがりに眺めるだけでも 何となく思い出せる、そんな感じの写真群。
楽しい思い出ばかりだったな。 恋愛が出来なくてもお前といるのは楽しいよ。 いつかそんなことを言おうとして結局言わなかったけど、 その言葉に嘘はないんだ。本当に。]
(231) 2021/06/12(Sat) 22時半頃
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[嗚呼、その分。 辛いことや苦しいこと、悩みなんかも 大して話したことは無かったな。
深い所に踏み込まなくたって、 楽しくやって居られれば 別にそれでもいいのかもしれない。 そう言う形の友情だって確かにある筈だ。
――――でも、多分俺は このままじゃダメなんじゃないかなあ。 漠然とそんなことを思ったんだ。
人で溢れている>>162、って言われて思い浮かべるのは 何だかんだこいつなわけだよ。だから。]
(232) 2021/06/12(Sat) 22時半頃
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[鳩羽はいい奴だよ。 真っ直ぐに人の為に怒って泣いて、 真面目に落ち込めるいい奴だ。
そんな奴のことまで信じられないのさ、 俺も俺で自分にちょっと嫌気がさしてたのかもなあ]
(233) 2021/06/12(Sat) 22時半頃
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[時々他愛ない話をしながら昇降口まで歩き、 ホットミルクティーを買った。 これ在庫はなくなるのかな、どうなんだろうな。 真面目に考えても仕方ないんだけど。
あつあつの缶を両手で転がしながら、 芯から冷えるような寒さに身を震わせる。]
……なんか、忘れちゃったな。 ここに来てから色々ありすぎてさ。
[鳩羽の声に頷いた。>>206
良く知ってる奴の筈なのにね。 こんな状況で改めて話す鳩羽は 何だか知らないやつみたいだ。]
はは。何だその二択。
[笑う彼に調子を合わせて目を細め。>>207]
(234) 2021/06/12(Sat) 23時頃
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まじめな話って、どんな話すんの? あ、実は俺がこの世界の主だーとか 衝撃のカミングアウト?
[ここに来てからずっと 真面目な話してる気がするから あえてふつーの話ってのも捨てがたいけどね。
でもなんかどんな話はじめても 結局まじめになっちゃうんじゃないかなって そんな気もしたからさ。 せめて出だしくらいは軽い調子で。*]
(235) 2021/06/12(Sat) 23時頃
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―― 調理室 ――
[ 慰めて欲しい感じなら>>167 その言い回しも割とオブラート破れてませんか。 私、やっぱり笑っちゃう。 笑って首を横に振っちゃう ]
いらないいらない。 そういう気遣いは無用。
[ 心にもない慰めの言葉なんて 言われたくもなければ言わせたくもなかった。 背中をさすってくれる手に、 柊君の気遣いは十分感じてたから、それで十分です ]
(236) 2021/06/12(Sat) 23時頃
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[ カーテンをっていう柊君の気遣いが、 薄っぺらいとは思わない。 気遣いの対象が違うだけだと思う。 柊君は、マネキンを見るかもしれないみんなへの気遣い、 私は、マネキンと代わってしまった綿見さんへの気持ち、 だったら対応は変わって当然だと思う。 というか、気遣いの度合い?なんて、 比較するようなものでもないんじゃないかな。 カーテンでもいいって思ったのに、 お布団をかけたいっていう私の意思を尊重してくれる、 それも気遣いじゃないのかな。 ……なんてことはわざわざ言わないけど ]
(237) 2021/06/12(Sat) 23時頃
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[ やっぱり柊君は、保健室にも付き合ってくれた。>>168 ぽつりぽつりと綿見さんの話をする私に、 柊君は相槌を打ってくれる。 ぼんやり綿見さんのことを思い出していた私は、 柊君が手首を後ろに隠したこと、 この時は気づけなかった。
保健室で、綿見さんが使ってた掛け布団を回収する。 昨日の夜はここで4人でお菓子パーティーしたのに。 半分になっちゃった。
調理室に戻る道の途中、 柊君は、もう一体マネキンを見たことを教えてくれた。 多分それが、向井君に似ているであろうことも ]
(238) 2021/06/12(Sat) 23時頃
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……じゃあ、もう、ここにいるのって、5人?
[ 本当に半分になっちゃったんだ。 明日の朝、きっとまたチャイムが鳴る。 そうしたら、また誰かがいなくなる? チャイムが鳴るたびに人が消えて…… 最後、どうなるんだろう ]
(239) 2021/06/12(Sat) 23時頃
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……うん。 綿見さんって、なんていうか、 達観してるみたいなところがあって、 底が見えないというか。
[ 柊君は、綿見さんが絶望したわけじゃないだろうって 言った。>>169 私は、綿見さんのことをよく知らない。 わかったような口はきけない、けど ]
絶望してっていうよりは、 冷静に試してみたっていう方が、しっくり来るんだけど。 ……でも、現実じゃないとは言っても、 試してみよう、って気持ちで自殺なんてできる?
[ 私、2階の窓から地面を覗き込んだことを思い出してた。 絶対無理だって思ったけどな。 でも、綿見さんは違ったのかな ]
(240) 2021/06/12(Sat) 23時頃
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[ 柊君が足を止めたから、私も足を止めた。>>170 廊下中に貼られた、よく知っている写真を眺める ]
……文化祭の思い出を大事にしてるのは、 嫌ってくらい伝わるね。
[ みんな、一生懸命だったり、楽しそうだったり、 笑ってたり、変顔してたりしてた。 その写真を撮ったのは私と柊君で、 その顔はつまり、 カメラ越しに私たちに向けられた顔だった。 私たちが切り取った一瞬だった ]
(241) 2021/06/12(Sat) 23時頃
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帰れるとしても、きっと、痛かったよね。 痛かったり、苦しかったり、したよね。
[ 首を切り裂かれていたり、おなかをつぶされていたり、 包丁で刺されていたり。 楽な死に方なんてきっと一つもなかった。 そんな苦しい思いをしないとどうして帰れないんだろう ]
(242) 2021/06/12(Sat) 23時頃
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柊君は、早く帰りたい?
[ 柊君は、脱出って言い方をした。>>171 私たちはこの校舎に閉じ込められていて、 だからその表現は全く正しいんだけど、 言われるまで、あんまり私、 そういう発想がなかったなって気が付いた。 いつ帰れるんだろう、 いつ終わるんだろうとは思ってたけど ]
(243) 2021/06/12(Sat) 23時頃
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明日の朝、きっとまた、チャイムが鳴るし、 そうしたら……また2人いなくなるなら、 ここに残るのは3人になっちゃうんだよね。 柊君は、どっちがいい?
[ 現実に本当に帰れてるかわからないいなくなる方か。 3人だけになってしまってこの校舎に残る方か。 そして、全然ぴんと来ないけど、 その3人の中にこの世界の主がいるってことになる。 柊君、もし選べるならどっちを選ぶのかな。 ふとそんなことが気になった* ]
(244) 2021/06/12(Sat) 23時頃
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― 調理室・その後 ―
[綿見のマネキンに布団を被せた後。 やっぱり特に行く当てもないから、 うろうろと校舎を見廻っていた。
樫樹に番代に向井。 自分が見てないマネキンの様子もさ、 気になったりはしたんだけど、 掘り返すのもなんかなってそのまんま。
そんな時だったかな、 何処からか音が聞こえたのは。>>199 ぽん、ぽん、ぽろん。
足が自然と音を辿る。 春からもうすっかり通いなれた道のり。 音楽室の前で足を止めた。]
(245) 2021/06/12(Sat) 23時頃
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…………
[たどたどしいメロディー。 テンポも転げるようにまばらで 途中で半端に終わったり変わったり。
それでも俺はこのピアノを知っている。
何だかこの空間だけが切り取られて 日常に戻ってきたみたいだった。
音を立てないように そっと音楽室の扉を開け、中に入って閉めた。 何も言わず佇んで、静かに演奏を聴いている。*]
(246) 2021/06/12(Sat) 23時頃
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── 現在:3-9教室 ──
パンケーキなら、まだ残ってるだろう クレープが食べたければ、俺が作ってやろう
[ 何せ、文化祭で大量にクレープを作成したんだ。 ちょっと四角い作品にはなるだろうが。 なんて、食べてないと言うから提案した。>>214 もちろん、調理室で起こったことは知らないまま。 ]
(247) 2021/06/12(Sat) 23時頃
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[ 今でも頼れる炭蔵祐駕だと、 思って貰えていることを知れたなら>>215 きっと柄にもなく、 気恥ずかしそうに振る舞っただろうに。
鳩羽は、そんなこと口にも出してくれないから、 炭蔵はいつも通り、感情の読めない顔の儘だった。 ]
(248) 2021/06/12(Sat) 23時頃
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[ それから、質問への答え。 鳩羽の中で正解だったんだろうか?>>216
昨日、託された答え探しの解答自体は、 結局のところ先延ばしの儘ではあるけれど。
何が良かったのかは分からないし、 この先も分からないままかもしれない。 けれど、きっと悪いことではないんだろ? ]
(249) 2021/06/12(Sat) 23時頃
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ああー…俺たち、受験生だったよな 俺、今まで学校は学び舎だからって 問題解決には動くけど、必要以上に 誰かとこんな風に話すことはなかったんだ
それに考える時間と場所を与えられなければ、 きっと気付けないことも多かったから 俺も、此処に来たことが悪かったとは思わない ……むしろ、俺のことも招待してくれた 世界の主に感謝の気持ちすら覚えるよ
[ なんて、鳩羽の言う言葉には全面同意。>>220>>221 ]
(250) 2021/06/12(Sat) 23時頃
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