27 【crush appleU〜誰の林檎が砕けたの?】
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―現在:美術館長室―
[それは、次に現実世界に帰る、目が覚める人が誰なのかを伝える声が頭に響く、その少し前。]
わんわ。
[田端が目を覚ました第一声がこれでした。 ツンツンと何かで突かれて>>227くしゅっと眉を寄せながらぼんやりと目を開いたのです。 その手足は短く、胴体ももちろん小さくて胸も平らになっていました。 着ているのは、スイカの柄を模した袖なしのワンピース。 少しヨレヨレですが、それは寝ていたせいもあるでしょう。 小さくて少し湿っぽい手で狐の鼻先を撫でました。 恐る恐る、それでも躊躇わずに。
今の田端の背丈は一メートルもありません。 ただ、大人の田端と同じ色の髪と瞳と、この年頃には不似合いかもしれない紫色の髪留めが、確かに田端なのではないかと思わせるかもしれませんでした。 なでなで、と"わんわ"こと狐を撫でてみます。]
(6) 2023/08/02(Wed) 00時半頃
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[その宣言>>0のタイミングでは狐はまだ目の前にいたのでしょうか。 それとも、一度消えていたのでしょうか。 ビクッと体が大きく跳ねます。 その内容を分かっているのでしょうか。 それともただ、頭に響くその声に驚いたのでしょうか。 大きく目を見開いた後、その目に薄く水の膜が張りました。 そして、しくしくと泣き始めました。 静かに、なきじゃくることもなく、ほろほろと涙が溢れて来ていたのです。]
まま……。
[ほてほてと、頼りない足取りで田端は部屋を出ていきます。 先ほどまでとは違って、子供の視線の高さでは何もかもが大きく見えています。 部屋を出ていく、と一言で言っても、ドアノブに手をかけるのもやっとの高さでした。 でも、怖くても、ままを探さなくてはなりません。
ここは家と違ってとても広いから、ままだって迷子になってしまったのかもしれませんよ。]**
(7) 2023/08/02(Wed) 00時半頃
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水商売 タバサは、メモを貼った。
2023/08/02(Wed) 00時半頃
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[そのメッセージに今の田端は気づくことができません。>>18 今は、ほてて、ほてほて、と、小さな体で見知らぬ場所を歩き続けています。 時々隅っこにしゃがみ込んだり、怖い絵があるとパッと走ったり、時には後戻りしたりしながら。]
まま………。
[時々、自分を守ってくれるはずの庇護者の存在に呼びかけながら。]**
(20) 2023/08/02(Wed) 06時頃
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水商売 タバサは、メモを貼った。
2023/08/02(Wed) 06時頃
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[彼をアリババと呼ぶのは、だいぶ前のグループラインで共有していたはずでした。>>1:324>>1:325 だいぶ前の混乱期のことですから、読み落とされてしまっていたのでしょう。>>40 それとももしかしたら……と、邪推するのは不粋というものです。]**
(44) 2023/08/02(Wed) 14時頃
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―現在:あーたんといっしょ!―
[わんわ、こと狐は田端について来てくれていました。>>38 近くにいなくてもそっと見守ってくれているようです。 なのでいつのまにか"あーたん"と命名されました。 隣にいなくても、何となく話しかけているのです。 例え相手が呼ばれて消えてしまっていても、そばに居る気がして。]
あーたん、おなかしゅいた?
[お腹が空いているのは田端の方です。 だからか、いつの間にかカフェに到着していました。 なんだかとても良い匂い。 でもここはしらないお店です。 こっそり中を覗いても今は誰もいないようです。 おなかがくうぅと鳴りました。]
(51) 2023/08/02(Wed) 17時頃
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あーたん、おなかしゅいたねえ……。
[でも、勝手に食べてはいけません。 だってここはお店ですから。 だから小走りにそこを走っていきました。 今度見つけたのはお土産屋さんのようです。 お菓子や飲み物、ぬいぐるみやキーホルダーなども売られています。 つい、手近の飴を手に取りました。 だけどじっと見つめて元に戻します。]
(52) 2023/08/02(Wed) 17時頃
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どぼろー、ばつだよ。 ……ばつ。
[でも、お腹が空いてしまっています。 また同じ飴を手に取りました。 一つだけなら良いかしら。 でも、勝手にとったら怒られちゃう。 小さい体でしゃがみ込んでより小さくなって、手にした飴をじっと見つめていました。 じゅる……と涎が垂れて来てしまいます。 ぽた、とそれが床に落ちて、それでも見つめ続けた後。 飴の包み紙を剥がさないまま、それを口元に持っていってしまいました。 食べたいけど、いけないことはいけないのです。 子供なりの葛藤がそこにありました。]*
(53) 2023/08/02(Wed) 17時頃
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―現在:おねえちゃんといっしょ?―
[大丈夫です。まだ、飴は口の中に入っていませんでした。 だって包み紙は食べられないんですよ。 だけど食べたくて、つい口元に寄せてしまっていたのです。 べたあ……と商品に涎がついてしまったのは今の田端には反省することができません。 勝手に食べなかったのです。だからそれだけでえらいはずなんです。
だから急に現れたお姉さんにびっくりしてしまいました。 手にしていた飴が落ちてカツンと音が鳴ります。
小さな田端は突然現れた大人の人に固まってしまいました。 今の田端から見て仁科は十分大人のお姉さんなのです。 口に入れる前だったから、ごめんねと抱きしめてくれたようですが>>58その途端に弾かれたように泣き出しました。]
(59) 2023/08/02(Wed) 18時半頃
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やあーーーー!!!!ままがいいーーー!!!! まぁまぁーーー!!!!
[顔を真っ赤にして反り返ります。 その勢いは危なっかしいもので、抱き止めてもらえていなかったら頭からひっくり返る勢いでした。 両手を突っぱねてそんな事をしておいて、もし仁科が抱きしめ損ねてひっくり返ってしまったら、それはそれで痛過ぎて声が出ないほどに震えた後、うわあんと大泣きしてしまうのです。 もしかしたらあーたんが受け止めてくれるかもしれませんが、それはそれでひっくり返ったことに驚いて同じ結末でした。]*
(60) 2023/08/02(Wed) 18時半頃
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―現在:おねえちゃんたちといっしょ…―
うわあああああん!!!!
[なんて失礼な事を言うのでしょう。 田端が迷子な訳ないではありませんか。>>64 ママが迷子なんです。探してあげてるんです。 なのにびっくりしてしまったから涙が止まりません。 そんな認識なので首をブンブン横に振ります。 子供心とは大人にとっては不可解なものなのです。 ままが今そばにいないのは事実ですが、そうじゃ無いんだと言う気持ちで心がぐしゃぐしゃです。 転ばないように手を添えてくれているのに>>65離せと思っている程度には理不尽なのですから。 ぱっと仁科の手から離れて身を捻ります。]
(69) 2023/08/02(Wed) 19時頃
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あーたん!あーたん!!!
[そしてギュッと狐に抱きつきました。 よだれと涙といろんなものでせっかくの毛皮がベトベトです。 大人の田端が見たらその毛皮の惨状を鼻で笑った事でしょうが、子供の田端としては必至でした。 抱きつく腕の力がそれを証明しています。 でも、抱きついたところで気持ちが落ち着いたのも確かでした。 大泣きが、すん、すん、と啜り泣きに変化したくらいには。]
…………。
[そして静かになったかと思えば、じいいいいいい………と、あーたんに抱きついたまま二人のヤウズを伺います。 涙に濡れた真顔ですが、今確かにお姉さんはたばたと言いました。>>67 でも、せんぱい、はわかりませんでした。]
(70) 2023/08/02(Wed) 19時頃
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………ままのおともだち?
[だから、お姉さんたちをママのお友達だと思いました。 だって、たばた、は田端のおうちのことでしょうから。]*
(71) 2023/08/02(Wed) 19時半頃
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―現在:おねえちゃんたちといっしょ…―
[さとみちゃん。>>73 名前を呼ばれました。どうやらママのお友達のようです。 それに、ごはんとおかし。 くううぅ……とまたお腹が鳴りました。 相変わらずあーたんの首に縋り付いてはいますが、ママのお友達で、一緒に遊んでくれる人と食べるならきっと良いのでしょう。]
………さとちゃん、きない?
[でも、恐る恐るそんな事を聞いてしまったのです。 だってさとちゃんがきたら、ママも他の人もみーんな、そちらにかかりきりになってしまうんです。 出来ればままだけに来て欲しい。パパも一緒だと嬉しいけど、ワガママ言いませんから。 でもさとちゃんには来てほしくなかったのです。 一番美味しいものも、一番好きなものも、さとたゃんはとるか壊すかしてしまうんです。 ごはんやおかしはとられてしまうでしょうし、あーたんが叩かれるのはかわいそうでしたから。]*
(74) 2023/08/02(Wed) 19時半頃
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やん!
[仁科の忠告>>75は残念ながら田端には届きませんでした。 より一層あーたんの首が締め付けられることになります。 とは言えおよそ2歳児の腕力です。 多分大丈夫でしょう。たぶんおそらくめいびー。]
(76) 2023/08/02(Wed) 19時半頃
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―現在:おねえちゃんたちといっしょ…―
[頭を撫でられる瞬間>>77拒絶したわけではありませんでした。 ただ、ギュッと目を閉じて身構えてしまいましたが、頭は撫でてもらえたのでしょうか。 撫でられたとしても、やめてしまったのだとしても、田端は当たり前みたいな顔をしていました。]
うん。ごはんたべゆ。 さっちゃんは、おやさいだいしゅき、よいこ。
[そしてちょっとだけ元気が出て来たようです。 えへんと少しだけ胸を張りました。 さとちゃんが来ないなら怖いことはたぶんありません。 でも、さとちゃんのことを聞かれたようで>>78眉がふにょっと寄りました。]
(79) 2023/08/02(Wed) 20時頃
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さとちゃんやん……。
[でもこれは言ってはいけないのです。 だってママのお友達ですからね、こんなことを言ったらママに怒られます。 あーたんに抱きつくのはやめましたが、小さな湿っぽい手でむんずと毛皮を掴んでいます。 連れていくことは確定のようです。]*
(80) 2023/08/02(Wed) 20時頃
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―現在:おねえちゃんたちといっしょ…―
[肉じゃがはどんなものなんでしょう?>>86 わからなくて何も答えられませんでした。 ママはあまり料理が得意ではありませんでしたし、さとちゃんはたくさん食べるけどお野菜はダメでした。 だから、茹でたお野菜を食べると褒められるのです。 トマトやきゅうりは茹でなくても食べられるんですよ。 さとちゃんは、白いご飯とお肉ばかり食べていました。お野菜は嫌いなんです。 だから、お肉は、さとちゃんのもの。 でもまだお肉と肉じゃがが頭の中でつながりません。 あと、卵を食べたこともありませんでした。 さとちゃんは卵を食べると赤いぶつぶつが出るらしいのです。
子供用の椅子を用意してもらい、手招きされるととたたたと軽い足音と共に駆け寄りました。 あーたんも一緒です。 あーたんが離れるとまだ嫌がるので仕方がないかもしれませんね。 あーたんの毛皮は犠牲になりました。]
(89) 2023/08/02(Wed) 21時半頃
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うん………。 さとちゃん、叩くの。きらい。 でもね、がまん。ばんがる。
[唇を少し尖らせての告げ口です。 言葉足らずでしょうが、さとちゃんへの不満は通じたことでしょう。 でも我慢しなくてはなりません。 頑張らなくてはなりません。 だってママとの約束です。
大きくなったらさとちゃんを助けてあげないといけないんです。 元気なさっちゃんは、なんでもできる子だもの。]*
(90) 2023/08/02(Wed) 21時半頃
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あーたん、いーこ、ねー?
[すっかり懐いているさっちゃんは、ご機嫌であーたんを撫でています。 べたべたぼろぼろでもお構いなし。>>88 ふさふさしっぽをなーでなで。]*
(91) 2023/08/02(Wed) 21時半頃
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[でも、その小さな田端は、本当の子供ではありませんでした。
えらいね。 お兄ちゃんのために頑張ってるんだね。 お母さんを支えてあげてるんだ。 えらいね。 すごいね。
私だったらとてもそんなことできないわ。
そんな言葉を支えにして、生きて来たのです。 自分がしていることは正しいこと。 あいつを支える為に生まれて来たの。 そうじゃなかったら私は生まれてこなかった。]
(98) 2023/08/02(Wed) 22時半頃
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[分かっています。 今更何を言ってもどうにもならないこと。 分かっています。 何にも悪いことは言われていないこと。 分かっています。
助けを求めなかった自分が悪いんだと言う真実を知らないふりして、強がって生きて来たことも。
弱みを見せられず虚勢を張って生き続けたことが、自分の首を絞めるのだと。]
(99) 2023/08/02(Wed) 22時半頃
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―現在:おねえちゃんたちといっしょ…―
[頭を撫でられる瞬間>>97どうしても体がびくっと震えてしまいます。 ギュッと目を閉じて衝撃に備えますが、与えられるのは優しい手のひらの感覚です。]
うん。ばんがる。
[神妙な顔で繰り返します。 ママのお友達にも言われました。もっと頑張って、ままに褒められるようにしましょう。 我慢することはえらいことなんです。]
(100) 2023/08/02(Wed) 22時半頃
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[その後にご飯が出てくると、スプーンやフォークを使ってなんとか食べられたのでしょう。 肉じゃがのお芋は味が染みていてとても美味しかったです。 ゆっくり、ゆっくり、丁寧に食べました。 でも丁寧に、お皿からテーブルに落ちたお芋を手で掴んで、スプーンに乗せてから食べたりもしていました。 肉じゃがのお肉はあーたんの口元にべしゃりです。 「はい、あーたんあーん」が阻止されない限りそうなってしまうでしょう。 おにぎりよりはパンがあったほうが食べたでしょうが、あったでしょうか。 食べていると元気が出て来たのか、ぱたぱた短い足が揺れていました。]*
(101) 2023/08/02(Wed) 22時半頃
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水商売 タバサは、メモを貼った。
2023/08/02(Wed) 22時半頃
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―現在:おねえちゃんたちといっしょ…―
いたまーしゅ。
[そうそう、ちゃんと食べる前には両手を合わせていただきますをしました。>>115 仁科を見てちょっと慌てて付けつした感はありましたが、それでもちゃんとしましたよ。 美味しいと聞かれたら嬉しそうに頷いて応えました。 もぐもぐ、おいもにひとまず夢中です。 卵サンドの残りがあったら、両手で持って食べました。 お味噌汁もあったらゆっくり飲むでしょう。 お椀がやたらと大きく見えて、両手で持って飲むと顔がほとんど隠れてしまいました。 どれもこれも、温かくてとても美味しいのです。 ハンバーグも食べた瞬間、ぱあっと目が輝きました。美味しいね、とまたあーたんにべしゃりしたのですがもう今更止められません。 あーたんが素直に食べてくれたら話は別ですが食べてくれたでしょうか。]
(125) 2023/08/03(Thu) 07時頃
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にげる?じぶんの?
[そこそこ食べて、デザートに手を伸ばしたくらいでしょうか。 お姉さんが不思議なことを言いました。>>103 好きな色、と言うことでピンクのマットを敷いてくれたお姉さんです。 叩かれたら痛いと言って良いともう一人のお姉さんと言いました。>>116 ちょっとだけ田端の眉がくしゅっと寄せられます。 ママには言いました。>>117 それに応えて、こくんと頷きました。]
でもまま、さとちゃん、いちばんなの。
[それが2歳の田端に言える最大限の訴えでした。 いつだってママの一番大事はさとちゃんです。 視線が下を向きました。 下唇がちょっと出て来て、泣くのを我慢する口になります。]
(126) 2023/08/03(Thu) 07時頃
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さっちゃんは、なんでもできるから、にばん。
[でも、なんだって一番が良い年頃です。 そんなの不満たらたらです。 美味しいものをあーたんと分けっこするのは楽しいですが、取られたら取られたまま、壊されても叩かれてもあーたんが一番なのに、納得できるわけがありません。 でもそんなことを言ったら、さっちゃんも"ないない"されてしまう気がしていました。 さっちゃんも手を繋いで欲しいのに。]
さっちゃんも、いちばん、いーな。
[ぽた、とこぼれ落ちたのはよだれではありませんでした。 でもたとえかけっこで一番になったとしても、てすとで百点とっても、一番にはなれませんでした。
あの日。あの時。 初めて美術館を訪れた時もそうでした。>>0:281 でも、一番じゃなくて驚いて、他の素敵な絵を描く子が沢山いることにホッとした事もまだこの田端は知りません。 ただ、その心の奥底に秘められてはいました。]
(127) 2023/08/03(Thu) 07時頃
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ままも、ぱぱも、さとちゃんも、やん。 きらい。
[だからこの言葉は、過去の田端には言えなかった事でした。 だって、そんなこと言う相手もいませんでしたし、言えば責められます。 庇護者はままとぱぱしかいないのに、ままとぱぱはさとちゃんが一番なのに、明確に言葉で言えなかったことでした。 ママが一番なのに。 一番好きで、一番嫌い。]
さっちゃん、ままがいい……。
[しくしく、小さな声で泣き出します。 さっちゃんだけのママなんていないのに、さとちゃんのままないやなのに、助けを求める相手はやっぱりままになってしまうのです。]**
(128) 2023/08/03(Thu) 07時頃
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水商売 タバサは、メモを貼った。
2023/08/03(Thu) 18時頃
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―現在:おねえちゃんたちといっしょ…―
[さみしい。そう、それは寂しいと言う感情でした。 最初の孤独の記憶は3歳の頃でしたが、この時にはもう寂しいと思っていたのです。 回谷に寂しいと言葉にされて>>131それが分かってしまって田端の胸は球っと締め付けられるようでした。 その手が優しいので尚更でした。
辛いことを頑張らなくても良いとも言ってくれましたが>>132頑張って一番になれるなら、辛く立って我慢するのです。 頑張っても頑張っても報われないこと。 特にこの頃は、その自覚さえもなくて辛い時期でした。 上手に描けたと褒めてくれた絵を破く手。 それを止めてくれないのですから。]
うん……いちばんがいい……。
[撫でられて、心地良さに目を閉じます。 ごしごしと涙を手のひらで拭きました。]
(152) 2023/08/03(Thu) 19時頃
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さみしいのやん……。 でも……。
[ママを探すか>>143と言われたら戸惑います。 本来の子供自体の田端なら、一も二もなく頷いたでしょう。 でもこの田端は違うのです。 子供時代を模した偽物なのです。]
(153) 2023/08/03(Thu) 19時頃
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ぽい。まま、ぽい。 ぱぱもままもぽいする。
さっちゃん一人でだいじぶ。
ありがと、おねえちゃんたち。
[優しくしてくれてありがとう。 構ってくれてありがとう。 そんな小さな幸せを胸に、生きていきましょう。 下を見てばかりいるときりがないから、上を見上げて胸を張って。 子供椅子からよいしょと降りました。 そして、ぺこりと頭を下げます。]
(154) 2023/08/03(Thu) 19時頃
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ありがとう、またね。
[そのまま、子供の瞬発能力の高さのまま、意外なほどの速さでその場を駆け抜けます。 部屋から出ようとするその瞬間、田端の周囲の景色が変化しました。 見渡す限りの金色の稲穂。 ばさささっと響くのは何かの羽撃き。 涼しげな風が吹き甘い香りが漂いました。 ざざん……と波の音が響いて、気づけば田端の姿はもうありません。 遠くに聞こえた小さな歌声も直ぐに消えました。 アラセイトウの花を一輪だけ残して。]*
(155) 2023/08/03(Thu) 19時頃
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―福原に送られたかもしれないメッセージ―
『卵サンド、美味しかったわ。 作ってくれてありがとう。 いろんな食パンを試してみるのも良いかもね。
私お米よりパンが好きなの。 みんなで開催できたら素敵ね。』
[それは、タイミングにより送られたかもしれませんし、送信が間に合わなかったかもしれません。 送信しようと試みた形跡は、田端のスマホに残されています。]*
(156) 2023/08/03(Thu) 19時半頃
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―現在:資料室―
[そこに居たのは田端でしたが、やっぱりみんなの知る田端ではありませんでした。 小学校高学年くらいの田端です。 胸に詩集を抱えて、外を眺めてぼんやりしていました。 窓の外は真っ赤な夕焼けです。]
…………。
[窓の外にはアラセイトウの花が揺れていました。 この花はよく知っているのです。 アラセイトウの花。 音楽の時間に合唱で歌う歌詞にありました。 どんな花だろうと思って調べてみたのです。]
(160) 2023/08/03(Thu) 20時半頃
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わたしも。 優しい人になれたらな……。
[優しいお姉さんたちがいました。 本当に優しい人になりたいと思っていました。 あのお姉さんたちの優しさを覚えていたなら、優しい人であり続けられるのでしょうか。
もうあんなふうには泣けないのに。]**
(161) 2023/08/03(Thu) 20時半頃
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―現在: ―
わたしを 。
[そこはどこだったのでしょうか。 元の声で、朗々と響かせるように紡ぐ声。 それは一遍の詩でした。 小学生の田端が胸に抱えていた詩集にあるうちの一つ。 新川和江という女性詩人の、広く未来に拡がる詩だと田端は思っていました。 私を決めつけないで欲しい。 何かの型に当てはめないで欲しい。 私は自然と共になる。 私の価値は私が決めるのだと言う、田端自身の決意にもにた歌に思えていたのです。 5連あるうちの四つまでを読み上げて、田端の声はそこで途切れました。]
(209) 2023/08/03(Thu) 23時半頃
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…………四年が三人残ればよかったのにね。
[後輩が一人、最後に残ってしまったからこぼれた言葉でした。 生き残りたい。生きていたい。 もし生き残って、その価値を譲ってあげたくても譲りたくはないのです。 けれど、後輩の女の子が残るのは少し可哀想でした。 だからと言って大藤が死ねば良いとも思えません。 でも、年下が苦しい思いをするよりも、同じ年齢の奴ら三人残るのなら受け止め方も違うのにと、残される側なりに考えてしまいました。 死にたくない。死なせたくない。でも、変わらない。 結末は変わらない。 それなら、やっぱりこれは本当に慈悲なのでしょうか。 だから、田端から別れの挨拶をしに行ったりはしません。 死は残す方も残される方も辛いのだと知っているからです。 それなら。 多くを知らない方が良い気もするのです。]
(210) 2023/08/03(Thu) 23時半頃
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[声はそのまま消えてしまいます。 それはとても穏やかなものでした。]*
(211) 2023/08/03(Thu) 23時半頃
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