17 【半突発身内村】前略、扉のこちら側から
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[違う星から来た、穏やかで優しい人。
私はきっと、まだまだずっと幼くて 友達になるということが、 いつか来るさよならを匂わせるのだということ、 そのことに心を傷める人がいるということ、 ちっとも理解していなかったんだ。
だから大きな呼吸をする姿を、 情けなくも穏やかな気持ちで見つめていた。
ほんとうのさよならを ほんとうの孤独を きっと、私以上にミケさんは 知っているのだろう。 ]
(18) 2022/03/07(Mon) 19時頃
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[ミケさんの指先をグラスの水滴が伝って、 濡れている。 じん、と喉の奥がまた熱くなってしまったけれど 次いでミケさんの素敵な呪いが 鼓膜をくすぐったものだから。>>1:107
一瞬、私の好きになったあの人が ブロッコリーにまたがって、 夕日の綺麗な島を駆けていく、 そんな光景が頭にぶわ、って浮かんで
ぶは、ってカルピスを吹き出しそうになった。 ゲラゲラ笑ってしまったせいでちょっとだけ咽せて、 目尻に滲んだ涙を咳のせいにして そっと指で拭った。 ]
(19) 2022/03/07(Mon) 19時頃
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[席を立つミケさんが、手を握ってくれた。 禿げたネイル、かさかさの指先で、 ぎゅっと力と想いを込めて。 ]
うん、またね。 ありがとう、ミケさん。 ……元気でいようね。
[そんな言葉を口にした。 さよなら、じゃなくて。 またね、と言ってくれたことが嬉しかった。
また、いつか。 きっと、どこかで。 ]**
(20) 2022/03/07(Mon) 19時頃
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[ミケさんと離れて、私はしばらくカウンターで ぼんやりしていた。 ネズミさんがチーズと格闘している姿があれば 笑って見守って。
そういえばさっき、他の人の姿も見えたんだった。 ここにいるのは私とミケさんだけじゃない、と 会釈をしてくれた人>>0:20の姿を思い出す。
歩いている姿を見たあの人も、 もしかしたら他の人も、 どこかにいるのかな、とぐるりとあたりを見渡した。 ]
(21) 2022/03/07(Mon) 19時頃
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[ ─── ふと、視線の片隅に小さな白。 グラスの水滴で濡れていたカウンターは いつのまにか綺麗になっていて、 そこに、一枚の、紙。
そっと指を伸ばして、摘み上げて。 そこに綴られた文字を、声に出す。 ]
『あなたの目には、何が見えていましたか。』>>1:130 ]
(22) 2022/03/07(Mon) 19時頃
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なにこれ……メモ? ……手紙?
[ネズミさんがいれば説明をしてくれただろうか。>>#5 ふぅん、とひとつ頷いて、 カウンターの上の紙とペンを手に。 ちょっと悩んで、それでもいくつか言葉を綴る。]
(23) 2022/03/07(Mon) 19時頃
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『前略、扉のこちら側から。
お手紙、受け取りました。
視力は裸眼で両眼とも1.2です。 色々なものが、ちゃんと見えていたのに、 自分に都合の悪いもののほうを 自ら好んでよく見ていました。
今は、ほんの少し そのことがわかった気がしています。
あなたの目には、何が見えていましたか、と 尋ねてくれたあなたに。 あなたの見えるものは、綺麗ですか? 』**
(24) 2022/03/07(Mon) 19時頃
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[手紙と呼ぶには抽象的な語彙の羅列を それでもやや強い筆圧で並べて、 書き上げたものをネズミさんに差し出した。
小さな手が紙に触れるのならば その様子を目にして。
再びぼんやりとしていた時、 背中に人の気配を感じて振り返る。
驚いたような声が、ごめんなさい、と 耳に触れた。>>71 ]
(77) 2022/03/08(Tue) 11時頃
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わ、いえいえ! こちらこそ、ぼーっと座ってたから……。
[反射的にこちらも腰を浮かせて、頭を下げる。 少しだけあいた距離。 その人の顔を見て、さっき会釈してくれた人だ、と すぐに気づいた。 ]
(78) 2022/03/08(Tue) 11時頃
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こんにちは、はい、さっきお見かけしてました。 ホリー、さん。 私は、みずきです。はじめまして。
[しゃなりと音が聞こえそうな美しいお辞儀で、 名乗ってくれた彼女に同じように挨拶を返す。 私とはまた違う服装で、派手では無い色調。 綺麗に分けられた前髪、そこから続く髪が 綺麗だなとやっぱり思った。
ミケさんと同じようにこの人も、 私が知っている日本の女の子とは、どこか違う。 そんなことを考えていたら、ホリーさんの口から 当のミケさんらしき人の話が出て来て>>72 頷いて笑んだ。 ]
(79) 2022/03/08(Tue) 11時頃
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はい、あー違う、ええと。 ホリーさんがおっしゃってる獣耳の方は、 ミケさんって言って…… 猫、ではない、と思う…… 優しい方でしたよ、あの耳、 本物かは聞かなかったけど……。
[考えてみれば不思議なはずのミケさんの、 ぴょこんと飛び出した耳のこと、 言われるまですっかり気にしていなかったな、と 思い出した。 そうして、あ、よかったらどうぞ、と 隣の椅子を勧めてみようか。 ]
(80) 2022/03/08(Tue) 11時頃
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同じ世界……では無かったです ミケさんの故郷の名前、私は初めて聞いたので。 ここで、初めてお会いして、カルピス飲んで 私の話を聞いてくれました。
[『同じ世界』という言い方から、 ホリーさんは、私やミケさんとはまた違う世界から 来たのだろう、ということを、 特に疑いもせず思えたくらいには、 私はこの異空間に馴染んでいたのだろうか。 ]
(81) 2022/03/08(Tue) 11時頃
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……どこ、なんやろう。 たしかに、不思議ですよね。 ─── ほら。
[ホリーさんの問いかけにじっと耳を傾けながら、 カウンターを見つめれば、またカルピスのグラスが ふたつ、音もなく現れる。
余談だけれどこの華奢な女の人が、 『くりぃむそぉだ』をいたく気に入って 感想を言う暇もなくじゅるじゅると 吸引(!)していた>>14ともし知っていたら カルピスじゃなくてくりぃむそぉだを出そうとしたはず。 こぉらふろぉと、も美味しいけどね。
そんなことは残念ながら知らないから、 乳白色の液体で満たされたグラスをひとつ、 ホリーさんの前へ滑らせて。 ]
(82) 2022/03/08(Tue) 11時頃
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そうや、手紙! あなたももらったの?お返事くるの?これ。 ……えー、なんやろ、 だよね、すごくおもてなししてくれてる感あるし 帰るべき扉は、なんとなくわかる気もするし。
[小首を傾げるホリーさんを見つめながら、 私もちょっと肩を竦めて悩む。 見た感じ同じくらいの年齢かな、と思うホリーさんに どことなく親しみを感じて、 どこかへ消えた敬語でぶつぶつと呟いて。 ]
(83) 2022/03/08(Tue) 11時頃
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共通点、かぁ─── ミケさんはカルピス、美味しいって。
[ふ、とちょっと口角を上げた。 息を吸って、吐いて。 ]
……家族も、仲間も、知っている人は誰も あの星にはいない>>1:11 って言ってた。 ひとりじゃない、って言ったけど 孤独を感じたことがあったとすれば
─── そこはわたしも同じだったかも。
(84) 2022/03/08(Tue) 11時頃
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[グラスを手にして、そっと口をつける。 一口飲み込んだ冷たい液体は さっきとはほんの少し、濃さが違う気がする。 カウンターに戻したグラスが、コトン、と 硬い音を立てた。]
ホリーさんはどう? ……ひとりじゃない? 家族や友達とかはいる? こことか、故郷とかに。
[はじめまして、に続く会話にしては これまた少し立ち入った内容の質問を 緩やかな笑みで問いかけてみて。 ]**
(85) 2022/03/08(Tue) 11時頃
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狐……ぽくはなかった。 綺麗な人だったし? いや狐が汚いとかそーゆーことじゃなくて。
[ふ、と小さく吹き出しながら、 促した隣の椅子に掛けてくれたホリーさん>>100を 改めて見つめた。
『お可愛い』という言い方、さっきのお辞儀。 がさつな私とは違って、お嬢様なんだろうか。 飾り気の無い様相ではあるけれど、 言葉の端々が丁寧な気がする。 (ふぁっさふぁっさと揺れるしっぽがあるなんて いくらなんでも想像するはずない!>>101) ]
(171) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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[カル、ピス、と辿々しく繰り返す声は、 この飲み物がホリーさんには馴染みのないものだと 知るには充分だった。
今日私はとてもカルピスの布教活動に勤しんでいる。]
ううん、……羊の乳……ではない、乳酸菌? 乳は乳なんかな、 ってかむしろそこは牛じゃないんや。
[密かにその地味な見た目にホリーさんが ガッカリした顔をしていたのは見えていなかった。
私にとってポピュラーな牛乳でなく、 羊が出て来ることにちょっと驚いて 慌ててぶつぶつ訂正して、笑ってはいた。 ]
(172) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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え、そうなんや、やりとりしているの? へぇ、すごいね、どこからお返事が来るんやろう。 私はさっきカウンターにあるのを見つけて、 お返事を書いたところ。
[ホリーさんが話しながら見せてくれた手紙は、 蒼が鮮やかに踊る。
─── 蒼。 私の好きだった海の色。
近寄れなくなった、海の色。 ]
(173) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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[きっと戻ってくると思います。 そんな言葉にうん、と頷いて、 そうだといいな、ってまた笑んだ。
ホリーさんが言う通り、私の元へお返事が 届いていることに気づくのは、 もう少しあとだったと思う。>>61、62
広間の端まで歩いてみたけれど端には 辿りつけなかったと話すホリーさんに、 ほええ、と唸った。 世界が違う、なんて突拍子もない台詞が妙にしっくりくる。 彼女は自分なりにこの不思議な空間を解析して 理解しようとしているように思えた。 ]
(174) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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[感覚の鋭い人みたい。 そんなことを思った時、カルピスを口にした ホリーさんの体がびく、と跳ねた、>>104 ような気がして驚く。 眉がぎゅっと上がった。
何も言わずにゆっくり、ゆっくり、 飲んでいるようだったから もしかしたらお口に合わなかったかな、と 不安が過ぎったのだけれど、 どうやら違うみたい。
本当にどき、と心臓が騒めいたのは、 カルピスを飲み干してくれたことにほっとして、 口を開こうとした時のほう。]
(175) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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え───
[みんな、しんだ 故郷には誰もいない>>106
さっきのミケさんと同じような意味を持ちながら 微かな響きが違う。 自分で聞いておいて、返ってきた言葉には 少し狼狽えて、結構食い気味に尋ねた。 ]
ホリーさんのせいってどーゆーこと? ヒトと話すのが久しぶりって、 ホリーさんはヒトではない?と? いう?ような?あれ?
(176) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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[最後のほうは細切れに、訥々と付け足して。
言葉は詰まるけれど、不思議なことに 恐ろしさはあまり感じない。
空になったグラスの氷が溶けて、からん、と 透明な音がやけに大きく響いた。 ]
(177) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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孤独、そうやなぁ……ホリーさんもそう? そんなふうに言ってくれるの、びっくりする。 嬉しいなって思うわ、 私ぜんぜんだめやったから。
耐えなかったし、まわりに当たりまくったし、 暴れたし泣いたし、迷惑かけて大負け大負け。 20対1のコールド負け。
[肩を竦めて茶化して、私はホリーさんに 自分の身に起こった摩訶不思議な体験を話すだろう。
どうあがいても戻らないと本当は理解していながら 悲劇のヒロインよろしく 闇へ、闇へと向かっていた日のことを。 ]
(178) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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[細めた目でこちらを見上げるホリーさんを、 私もじっと見つめ返して、緩く笑む。 空のグラスが差し出されたから、 あれ、カルピス、美味しかった?気に入ってくれた? イケる口ですねぇと戯けて喜んで、 すっかり要領を得たやり方でおかわりを登場させた。 ]
……ホリーさんは、耐えられた? 耐えて、負けずにいられたのなら、 それって誇れることやと思う。 人のこと責めないで、 自分のこと責めて耐えるなら、なおさら。
[ずず、と重たくなったグラスをホリーさんの前まで 滑らせて、ゆっくり口を開く。 飲み物がある間は、話してくれるだろうか。 気分を害したりしなければいいのだけれど、と 思いながら、冷たい液体を喉から胃へ送った。]**
(179) 2022/03/08(Tue) 23時頃
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[そのお返事に気づいたのは、いつだったのか。
私はもうすっかりこの異質な空間で起こる 不思議なことに馴染んで、 心地良ささえ感じるほどになっていたから ホリーさんの言う通り、いつしか返ってきたお返事に 過剰に驚くことはせず、大切なものに触れる繊細さで そっと包み、なんども、なんども読み返した。 ]
(207) 2022/03/09(Wed) 09時頃
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歌うような旋律で言葉を紡いでくださるB様へ
お返事、受け取りました。 ありがとうございます。
過大評価!と顔を覆いたくなりました笑 自己肯定感を上げてくれる、先生みたい。 そんな褒め言葉を、捻くれずに 多少は素直に受け止められるくらいには、 私はたしかに何かを見つけたのでしょうか。
だとすればそれはいくつかの出会いのおかげ。 あなたが言う通りです。
(208) 2022/03/09(Wed) 09時頃
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孤独、というものは、 人の温もりを知っているからこそ 強く感じるものなのかもしれません。
まだ、どろどろとした靄のような気持ちは 私の中から完全に消えた訳ではないと 知っています。 雲一つない快晴になる日が いつか来るのか、こないのかはわかりません。
それでも、隙間から差し込む光のように 自分ではとっくにわかっていたはずの "大切なこと"から目を逸らさないように 歩いて行こうと思います。
(209) 2022/03/09(Wed) 09時頃
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あなたからの手紙も、 穏やかで、温かなものを感じます。
見ず知らずの私の未来と幸せを 祈ってくれたあなたにも、 望む未来と幸せがたくさん訪れますように。
私も扉のこちら側から、祈っています。
井樋 水輝
(210) 2022/03/09(Wed) 09時頃
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追伸 視力の基準値とされている「1.0」という視力は 直径7.5mm、幅1.5mmのランドルト環 (アルファベットの「C」のような図形です) を5m先で識別できる状態のことを言います。 B、ではなくてちょっと残念!
追伸2 あなたは、カルピスを知っていますか? 食べ物を口にすることができるようなら ぜひ一度お試しください。
カルピス布教委員会、ミズキ。**
(211) 2022/03/09(Wed) 09時頃
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