10 冷たい校舎村9
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[ いつか、炭蔵君に話したことを思い出した。>>1:265
「これが正解だ」って押し付ける人もいる。 「これが正解なのになぜやらない」 「これが正解なのになぜできない」 そんな風に強要する人も、いる。
その話に、具体的なイメージなんて、ないはずだった。 でも違った。 あれは、私の父だった。 私は父から、強要されていると感じていた。 優しくないと思ってた。 自分勝手だと、思ってた。思ってたんだ。
だけどそう思ったとして、 どうして父に逆らうことができただろう?* ]
(295) 2021/06/08(Tue) 23時頃
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―― 現在:3-10教室 ――
[ 自分に自信があるなんて思われていたと知ったら>>307 多分、私は笑っちゃったと思う。 私はいつだって自信なんかなかった。 でもそうね、自信があるふりはしてたかもしれない。 だとすれば、私のふりも板についたってことかな。 私は、ただ誠実でありたかっただけだった。 出来のいいふりをしているだけの私に、 差し出せるものなんてそれしかないもの ]
(316) 2021/06/09(Wed) 00時頃
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[ 人に認められたくて、愛されたくて、 他人の顔色に怯えたことなんてないように見える? 私は今でもそのためにもがき続けてる ]
(317) 2021/06/09(Wed) 00時頃
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[ ムキになっていたのは、柊君のはずだったのに、 いつの間にかそれは私の方になっていたのかな。>>308 静かに頷かれて、私はちょっと冷静になった。 冷静なつもりだけど、必死だったかもしれない、って ]
……そうだった、のかな。
[ 私、怒ってたのかな。理不尽だって思ってたのかな。 わからない。それを認めることには勇気がいる。 だけど、一つだけわかることがある ]
(318) 2021/06/09(Wed) 00時頃
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別に比較して、“だから柊君は優しい”って 思ったわけじゃないよ。 他の人を不愉快にして喜ぶ人とか、 身勝手な人とか、優しくない人は色々いるけど、 そういう極端な人以外は優しいかというと、 そういうわけじゃないでしょう。
[ 極端じゃない優しくない例って何だろう。 無関心とか? ああ、そうだった。 私の父は、姉を見限るまで私に対して無関心だった。 やっぱり私の優しくない像は父に帰結する ]
(319) 2021/06/09(Wed) 00時頃
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……ふふ。でも、柊君のあんな顔、初めて見たかも。
[ 柊君は、いつも機嫌が良さそうな、 愛想のよい笑みを浮かべていた。 カーテンを外す時だって、 浮かない顔はしてたけど、私のことを気遣ってくれた。 文化祭の時に取り乱した顔を見たことはあったけど、 あんな怒りを秘めた顔を見たのは初めてだった。 それすらも、 制御されたものだったのかもしれないけれど>>264 ]
(320) 2021/06/09(Wed) 00時頃
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不愉快に思わせたのはごめんなさい。 不愉快にさせておいて言うことじゃないけど、 もっとそういう顔、出せばいいのに。 柊君のそんな顔見ても、 いつも笑ってなくっても、 誰も嫌な気持ちになったりなんかしないよ。
[ だから、柊君が息が詰まりそうになることなんて、 起こらないよ。>>236 少なくとも、このクラスの人たちは。 むしろ珍しいものが見れたって興味を持つんじゃない? 私はそう思うけどな* ]
(321) 2021/06/09(Wed) 00時頃
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……そろそろ、いこっか。 柊君、この部屋のこと色々考えてくれてありがとう。
[ 柊君のその行動が、 たとえ柊君の言うように、 怖がりがゆえのものだとしても>>235 私が助かったのは事実だもの。 私には思いつかなかったことばかりなんだから。>>161 だからお礼を言うのは当然で、 こればっかりはきちんと受け取ってもらいたいと思う。
代わりと言っては何だけど、 休憩所に毛布を運んでおいたお礼は 素直に受け取ってもいいよ?** ]
(341) 2021/06/09(Wed) 00時半頃
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―― 現在:3-10教室 ――
[ 私が頑固で、>>396 あんなに言い募って、 あんなにわかってもらおうとしたのは。 柊君に自分のことを優しいって認めさせようとしたのは。 きっとそれは、私の中にある、 打算じみた感情だったのだろうと思う。
柊君が自分の優しさを 打算からのものだと思ってるなんて知らない。 だけど、打算で行動する人間の最たるものは、 きっと私だと思う。
出来のいい人間のふりをするために、 できることを探してばかり。 床の掃除をして、毛布を運んで、 これ見よがしに頼りになる優等生を演じようとしてる。 私なんて、全然頼りにならないのに。 頑張っても頑張っても、目指すものには届かないのに ]
(484) 2021/06/09(Wed) 18時半頃
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[ 他の人に機嫌よく過ごしてもらうための気遣いが 優しさでないのなら、 私のこの行動はどうなるの? 浅ましくて、醜い、自分を取り繕うためだけの努力。 それに名をつけるとしたら、 きっと、薄っぺらな見栄というのだろう ]
(485) 2021/06/09(Wed) 18時半頃
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[ そんな私のことを、 きっとまたデリケートな場所に触れたせいで、 柊君の眉を下げさせた私のことを、>>396 柊君はいい子と言うから笑ってしまう。>>397 私はこんなに浅ましいのに ]
私は、いい子じゃないよ。 でもそうか、「誰も」はちょっと分母が広すぎたかな。 「このクラスの人たちは」くらいにしとく?
[ 「優しい」と言われて否定する柊君に、 「いい子」と言われて否定する私。 お互い否定してばっかりだなって、 私はやっぱりちょっと笑っちゃう ]
(486) 2021/06/09(Wed) 18時半頃
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[ いつも頑張ってる。>>398 その言葉も、否定すべきものだった。 私のしていることは、 本来なら努力などいらないはずのことだから。 出来のいい人間なら、努力なんかしなくても、 息をするより自然にできるはずのことだから。
でも、出来のいい人間のふりをしているだけの私は、 頑張らないと、できなくて。 そっか、やっぱり頑張ってるの、バレちゃってるかー。 ……なんだか、そんな気持ち ]
(487) 2021/06/09(Wed) 18時半頃
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[ 続く言葉の返答には、少し迷った。 だけど、柊君のデリケートな部分に触れたのなら、 私のことにも触れないとフェアじゃない気がした ]
……そうだね。 そんなこと言われたら、 ちょっと途方に暮れるかもしれない。 でも多分その理由は、 柊君の想像してるような理由じゃない。
[ 今までずっとそんな風に生きてきたから、 どうしたらいいのか戸惑う。 そんな理由じゃなかった。 そんな理由なら良かったな ]
(488) 2021/06/09(Wed) 18時半頃
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私がそんなことを言われる日が来るとすれば、 それは私が見限られて、捨てられたってことだから、 見放された後、 どうやって生きてけばいいのかわからない、かな。
[ だって、そうだもの。 見限られるその日まで、きっと私は努力を強いられる。 頑張らなくていいなんて、そんな言葉をもらえる日が 来るわけがない。 今でも私は、求められた場所に遥か届かないのだもの ]
(491) 2021/06/09(Wed) 18時半頃
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[ ああ、少ししゃべりすぎたかもしれない。 でもここまで来たら今更かな。 だから、私は柊君の私は優しいっていう指摘に>>400 苦く笑って首を横に振る ]
私はね、そういう風にしなきゃいけないの。 頑張って、親切にして、みんなのことを気にかけて、 力になろうとするような人間であることを、 求められてるの。
[ 言ってから、なんかこの言い方だと、 すごく自意識過剰みたいに聞こえる?って気づく。 だから、言い直した ]
(493) 2021/06/09(Wed) 18時半頃
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……命令されてるの。 「優しくない人」に。
[ これ、大した愚痴だと思うんだけど、>>401 親近感湧いたかな? ドン引きされるだけのような気がしちゃうな ]
(496) 2021/06/09(Wed) 18時半頃
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だからね、自分のためであっても、 他の人が機嫌よくしてると気が楽っていう柊君、 いいと思うよ。 私はね、他の人のために頑張らないと、 捨てられちゃうかもって思いながら頑張ってるんだもん。 ね?ヒドいでしょ?
[ ふふって笑った。笑わないと話せないよこんなこと。 それから、はい、この話おしまい!って。 いつぞやの鳩羽君みたいに、 今度こそ上手に空気変えられたかな。
最後はお互い笑って10組から出られたから、>>402 多分それで良かった* ]
(497) 2021/06/09(Wed) 18時半頃
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―― 現在:3-9教室 ――
[ そうして、私は一つ隣の自分のクラスに戻ってきた。 教室にいた面々に、ただいまって声をかけながら、 真っすぐに向かったのは黒板。 チョークを手に取る。
・休憩所に体育のマットと毛布が運んであります ・女子は保健室を使わせてもらえると助かります
毛布を運んだお礼を言ってもらったけど、>>402 マットを運ぶ方が絶対大変だった。>>105 私って本当ヒドい。 チョークを置いて、指先を払いながら、 黒板に書かれた連絡事項を眺めて、 綿見さんの作ったクレープ、>>254 私も食べていいのかなとか考えた ]
(509) 2021/06/09(Wed) 20時頃
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[ それから、 あ、そうだった。教室を出る時に書いた伝言 消しておかなきゃって思って、それに気づく。 私の伝言の横に書かれた、芽衣からの返事。>>350 思わず目を丸くして、芽衣の方に振り返った ]
昼過ぎにお弁当は食べたよ。 晩ごはんは忘れてた。
[ 廊下を拭いたり泊まる段取りをしたりする合間に、 お弁当を食べた。 私がいつもお弁当を持ってくること、芽衣は知ってる。 今日ももちろん例外ではなく、私は母の作ってくれた お弁当を持参していた。 でもそうだった、泊まる段取りをしてる途中で、 あんな騒ぎが起こって、 晩ごはんのことすっかり忘れてた。 家では食べられないようなジャンクなもの、 食べるチャンスだったかもしれなかったね* ]
(510) 2021/06/09(Wed) 20時頃
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―― 回想:文化祭打ち上げ ――
[ クラスの様子が見れて楽しかった。>>480 その言葉には、きっと私への配慮もあったと思う。 でも「その中に自分がいないことは寂しくなかった?」 なんて聞くのは無粋にもほどがあるし なにより無神経すぎる。 だから、私はその言葉をありがたく受け取って、笑った ]
ありがとう。 だったら嬉しい。
[ これでも、文化祭広報が始まった直後に比べたら、 写真の腕もあげたんだよ、とか。 客引き3人組の写真なかなか良かったでしょ?>>1:166 あれ、向井君も入ってるバージョンを グルチャに送ったけど見た?とか。 そんな話をしてたからかな。 私があまり写ってないことに 気づかれちゃったのかも>>481 ]
(540) 2021/06/09(Wed) 21時半頃
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[ 私はいいよって言いかけて、気が変わった。 文化祭にほとんど参加できなかった樫樹君。 準備期間はともかく、文化祭当日に写った写真は、 きっと少ない。 だったら ]
一緒に写ってくれる?
[ 文化祭当日の、樫樹君の写った写真。 それが一枚増えるなら、いいかなって* ]
(541) 2021/06/09(Wed) 21時半頃
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[ それは、私にとって死に近づくことじゃなくて、 むしろ、生きていくために必要なことだった ]
(542) 2021/06/09(Wed) 22時頃
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―― 少し先の話:真夜中 ――
[ 正直、泊まることになるのは予想外だった。 家に帰ってからにしようと思ってたのに、 予定が狂っちゃった。 みんなが寝静まった夜更け、 私はそっとベッドから抜け出す。 物音を立てないようにしたつもりだけど、 もしも誰かに気づかれてしまったら、 ちょっとお手洗いに入ってくるって囁いた ]
(543) 2021/06/09(Wed) 22時頃
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[ 廊下に出たら、カッターナイフが嫌でも目に入る。 でも、床に落ちているものを使うのは やっぱり抵抗があったから、私は購買に向かった。 私は上履きの底の強度を信用してるけど、 あまり物音を立てないように、 極力カッターナイフを踏まないように床を選んで ]
(544) 2021/06/09(Wed) 22時頃
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[ 最初からそのつもりだったから、 ちゃんと制服のポケットに財布は入れてあった。 目当てのものを手にレジに向かうと 買ったもののメモやお金がカウンターに置かれていた。 さすがにメモは残せなくて、 私は小銭だけ追加する。 ここはどうやら現実じゃないみたいだから、 お金を払う必要があるのかは、 正直もうよくわからなかったけど、 番代さんに万引きは良くないと言っておいて、 支払わないわけにもいかないでしょう ]
(545) 2021/06/09(Wed) 22時頃
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[ 購買の近くの空き教室に入って、明かりをつける。 ドアはもちろんきちんとしめた。 椅子に座って、左袖を少し捲る。 私、死ぬつもりなんかない。 むしろ、生きていくために必要なの。 だから、私の手首に刻まれているのは、 手首の皺みたいな線。 3年分のそれは、皺にしてはだいぶ数が多いけど。 これでも、あまり増えないようにしてるんだけどな。 同じ線をなぞるように気を付ける、とか。
カッターナイフの刃を出して、 いつものように手首に滑らせた* ]
(546) 2021/06/09(Wed) 22時頃
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―― 少し前:3-10教室 ――
[ どこかこちらを揶揄するようだった柊君の顔が>>548 神妙な顔に変わっていく。>>551 だから私、やっぱりドン引きさせちゃったなって思った。 思わず左手首に手が伸びかけて、 だけど、違ってた ]
いっしょ?
[ 今度はこちらがオウム返し。>>548 ドン引き案件だと思ったのに。 まさか共感されるだなんて思ってなかった ]
(605) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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[ 見限られたくなくて、 捨てられるのが怖くて、 そうしないと生きていけない。>>552 柊君の言葉は、私には心当たりがありすぎる ]
一緒だね。
[ 一緒の私たちは、多分同じ種類の笑みを浮かべてた。 私たちは、同じだと思った。 ただ、求められていたものの種類がちょっと違っただけ ]
早く、大人になりたいね。 大人になったら、見限られたって捨てられたって、 自分で別の場所を見つけて生きていけるかもしれない。
[ 求められているのが絶対に達成不可能な目標でも、 いくら理不尽だって思っても、 今の私には、他に生きていける場所がない ]
(606) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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……じゃあ、柊君も 自分のこと「悪い子」なんて言わないでよ。
[ ヒドいって自分のことを笑った私に、 柊君は必死なだけだって言葉をくれたから、>>553 私は柊君の言葉の方を否定させてもらうよ>>552 ]
約束する。私は、ありのままの柊君を嫌わない。
[ 私の感情に、私の約束に、 どれだけ意味があるかなんて私にはわからない。 柊君にとっては、 あってもなくても変わらないかもしれない。
それでも、私は約束するよ。 きっと、柊君のためじゃなく、私自身のために。 だって私たちの背負うものはきっと一緒だったから* ]
(607) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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[ ただ、一つだけ違うとすれば、 柊君は求められた人間らしく振舞うことができたけど、 私は要求に追いつけなかった。 スペックが足りてなかった。 それだけ、って言ってしまえばそれまでだけど、 その差って、どうなのかなあ……?* ]
(617) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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