10 冷たい校舎村9
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[ 玄関を開けると、 父の靴と、見慣れない女の靴があった。 母は、友人と出かけ夜まで帰ってこない。
来客だろうか、と。 祐駕は何も疑うことなく家の中に入る。
客間に人の姿はなくて、 仕事で書斎にでもいるのだろうかと思った。 見かけたら挨拶くらいはしようと思っていたのだが、 見当たらないなら仕方がない。
祐駕は、二階の自室へ行こうと 階段に片足をかけた時だった。 ]
(264) 2021/06/10(Thu) 22時頃
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俺は、何も悪いことはしていない
(265) 2021/06/10(Thu) 22時頃
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[ 女の甲高い声が聞こえてきた。
炭蔵祐駕も年頃の男子で、 もちろん知識もあれば興味もある。 但し、その相手が母親ではない。
炭蔵なら、正しくないと判断した筈だ。 全てが正しい筈だった父が、正しくないことをした。
このことだけで、祐駕には衝撃的だった。 ]
(266) 2021/06/10(Thu) 22時頃
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[ 祐駕は正しくないことは正しくないと 言える人間になるよう育てられてきていた。
だから、ちゃんと声をあげたんだ。 こんなことは間違っている、と。 ]
(267) 2021/06/10(Thu) 22時頃
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ほら、俺は何も悪くないだろう? 正しいことをしただけなんだ **
(268) 2021/06/10(Thu) 22時頃
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── 現在 ──
[ 黒沢だけど、って。 そりゃそうだよ。ここが不思議空間だからって あの子が本当にここに現れる訳が無いじゃん。
頭の中にけらけら愉快な笑い声がする。 今はうるさいって言い返す気力も無かった。
黒沢さんもまた羞恥に襲われているとは>>244 そこまで気が回っていないのだけれど。 だって多分、私の顔も真っ赤だから。]
(269) 2021/06/10(Thu) 22時頃
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[ というか、えっと? 嫌われているのが辛い、って。 ああ、そう思われていたんだ……?
嫌っているつもりは無いけれど、うん、 無意識のうちに避けてたりとか、そっけない様な そんな態度は取っていた気がする。 あの子が居たらこんな感じなんだろうなって、 それだけの理由で。
………… 我ながら酷い八つ当たりだと思う。]
(270) 2021/06/10(Thu) 22時頃
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[ 彼女も人違いだって気付いたらしい。>>245 その通りです。 慰めの言葉がありがたいやら情けないやら。]
…… あの。 いきなり訳わからないこと言って、ごめんなさい。 黒沢さんに言いたかったことじゃ無いし、 本当に、ただの八つ当たりです……。
[ 項垂れたまま、深々とお辞儀して 先ずは謝罪をすべきだろうと]
(271) 2021/06/10(Thu) 22時半頃
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— 現在:渡り廊下 —
[向井くん>>230の疑問はわたしの後ろの変化に吸われて、 わたしの両手にあった秘密はポケットに逃げおおせた。 空いた手で向井くん>>232の視界を遮ろうとする。
向井くん>>234は昨日の朝、 教室を飛び出した時みたいに動揺している様子はない。 腕の中のご飯を大事に抱えたままだ。]
いいの。なんにも買わないから。
[向井くん>>236が歩き出せば、わたしの手は邪魔になる。 腕を下ろして、冷気から守るように両手を擦り合わせた。
渡り廊下は大した距離じゃないけれど、 同じ景色が続くとなんだかずっと同じところを 歩いているような気分だった。 目が回りそうになったわたしの口は、 また向井くんの疑問を増やすような返事をする。]
(272) 2021/06/10(Thu) 22時半頃
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[そのまま離れるはずだった場所。 向井くんが立ち止まって振り返るから、 わたしは半歩遅れて向井くんの方を向いた。]
……?
[向井くん>>239が何を言っているのか 一瞬分からなくて、わたしは首を傾げた。
精神世界の話は、昨晩鳩羽くんに教えてもらったよ。 頭の中って言われても驚かない。]
それは……そうかもしれない。
[カッターナイフがわたしたちに飛んでくる訳でもない。 九重さんの人形のことを除けば、 ため息をそう捉えなければ、 わたしたちに敵意が向いていることはなかった。 まず、わたしは向井くんの疑問に答える。]
(273) 2021/06/10(Thu) 22時半頃
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でも向井くんには危ないでしょ。 ここ、想定外がいっぱいだもん。
[それからわたしの意見を述べた。 わたしは向井くんのルールなんて知らないけど、 向井くんがそういう人だとは思っているよ。
わたしの顔は笑ってない。 でも馬鹿にしたり困ってもいなかった。 ただ当たり前みたいに、わたしは向井くんを定める。]*
(274) 2021/06/10(Thu) 22時半頃
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[ 虚仮にされていた、もなんでも。 私がそう思い込んでいたようなものだし。 被害妄想全開の言葉を投げつけてしまった訳で。
……あとは、何を言うべきかと、 話題に暫し迷って]
…… あの。 私に嫌われてて辛いって、思ってたの?
[ おずおずと、そう尋ねてみて]*
(275) 2021/06/10(Thu) 22時半頃
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― 廊下 ―
[休憩室を出てまっすぐ食堂に向かおうかと思ったが 少し思う所あって寄り道していた。
何をと言うと一晩で増えに増えた9組の屋台である。 本当に全部同じなんだろうか、どっか微妙に違っててそこにヒントが隠れていないだろうかと思ったが、綺麗にそのままが再現されていた。 そのへんから一個拝借して食べてみたが ご丁寧に置いてあるクレープ類も同じみたいだ。
ここに来たときはヤバイかもって思ってたけど アウトならここにある食糧食べた時点で多分アウトだし もうなんか今更かなって。
別に腹下したり気分悪くなったりすることもなく ごくごく普通の甘くて美味しいクレープだった。 あ、ゴーストクレープの方をいただきました。 昨日の今日で目玉食べる神経の太さは流石に無い。]
(276) 2021/06/10(Thu) 22時半頃
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これ、一晩寝たらリセットされたりするんかな?
[だとしたら少なくとも飢え死にする心配はなさそうだ。 いや、ずっとクレープ生活だったら流石に飽きそうだけど。 それともまた別の屋台に移り変わってたりして。
なんて、どうでもいいことを考えながら歩いていると バキッ、と音がしてまたカッターを踏んづけていた。 やっぱり気のせいじゃないよね、明らかに増えてるよね。 後ろから聞こえる溜息の音とシンクロしながら拾い上げて、 何となしにまじまじと見つめた。]
(277) 2021/06/10(Thu) 22時半頃
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―― 昨日の夜:購買へ ――
[ なんでもないって芽衣が言ったら、>>247 私はそっかって返事する。 聞きたいことは聞くよ。 言いたいことは言わなくていいよ。 多分それが私と芽衣のスタンスで、距離感だった。
芽衣のことを信用してないわけじゃない。 大事な友達だと思ってる。 でも、友達が少ない私は、壊してしまうのが怖くて、 繊細なガラス細工みたいに怖々触れることしかできない。 シャボン玉が割れないように、 そうっと見守るような気持ちで、 私は芽衣との友情を大切にしてた。 向井君でも割れなかった窓みたいに頑丈な友情って、 どうやったら築けるのかな? ]
(278) 2021/06/10(Thu) 23時頃
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[ 芽衣が選んだドーナツは、すごく甘いらしい。>>254 ほうじ茶もって言われて、そうするって頷いた。
怒られても、こっそり芽衣はやってたらしい。>>255 そうなんだ、って答えた私は、きっと目を丸くした。 怒られたことをこっそりするなんて、 私には考えられないことだった ]
(279) 2021/06/10(Thu) 23時頃
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[ 母は、完璧な主婦であろうとしてた。 家はいつも綺麗に整っていて、 食べ物はいつもきちんとした手作りで、 子供のしつけにも熱心だった。
……それは、本当に母の意思だった? ]
(280) 2021/06/10(Thu) 23時頃
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[ そんなことを突然考えたのは、どうしてだろう。 私の耳に、ばりんという袋を開ける音がして>>258 私ははっと我に返った。 見ると芽衣がドーナツの袋を開封してて、 え、これ、どういうこと? 全然意味が分からない ]
え、でも。
[ 差し出されたから、とっさに受け取ってしまったけど、 まだお会計すらしてなくて、 こんなところで、た、立ち食い?するつもりなの? おろおろしている私は、芽衣よりずっと背が高いのに、 まるで芽衣がお姉さんで、私が妹みたいだったと思う ]
(281) 2021/06/10(Thu) 23時頃
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[ 芽衣は個包装を開けたりしなかった。 ビニールに入ったままのドーナツを覗き込む。 私がいるって芽衣は言う。>>259 乃絵ちゃんは?って芽衣が言う ]
え、あ。
[ 行儀が悪いからやめなさい。 食べ物で遊ぶのはやめなさい。 母の声が脳裏に響いて、ここは購買の中で、 私たちは椅子に座ってもいなくて、 そもそもドーナツは会計前で ]
(282) 2021/06/10(Thu) 23時頃
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[ ここには私と芽衣しかいない。 それでも、心臓が早鐘を打っていた。 怒られたことをこっそりするなんて、 私には考えられないこと、だった。 少し震える手で、私はドーナツの穴を覗き込む ]
……芽衣が、見える。
[ 私をじっと見つめる、芽衣が見えた。 芽衣は、私を見てた ]
(283) 2021/06/10(Thu) 23時頃
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[ 私の父は私を見ていない。 自分は間違っていなかったと証明したいだけ。 姉で失敗した、そのやり直しをしたいだけ。
私の母は私を見ていない。 私の母は、私が好きな食べ物すら知らない ]
(284) 2021/06/10(Thu) 23時頃
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……うん。同じだね。
[ だけど、今、私は芽衣を見てて、芽衣は私を見てた。 ほっと息を吐きだして、 私はドーナツを目から離して微笑む。
お姉さんみたいな芽衣は、私の頭に手を触れる。>>260 前みたいにベンチで座ってるわけじゃない、 きっと触りにくいと思うのに ]
(285) 2021/06/10(Thu) 23時頃
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……そうだね。その時は、聞いてね。
[ 時々、何が正しくて、 何が間違っているかわからなくなる時があるの。 私が白いと思っても、 父が黒だと言ったらそれは黒いことになるから。 そんなことがわからなくなるなんて 優等生失格だと思うけど ]
(286) 2021/06/10(Thu) 23時頃
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えっ、そういうシステムなの!?
[ 冬季限定チョコレート。>>261 限定期間が終わったら、次の限定がやってくるんだって。 思わぬシステムにびっくりしつつ、 結局甘いものしか選んでないことに気づいたら、 番代さんや綿見さんの分まで、 お茶を買っていくんじゃないかな。 ……受け取ってもらえなくても、 明日飲めばいいんだし(弱気)* ]
(287) 2021/06/10(Thu) 23時頃
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[遺書とカッター。 何て言うかとても安易な感じの連想が出来てしまう。 もし自殺したのなら死因は………なんて。]
でも、カッターで死ぬの大変そうだよねー。 こう……?こうか…??
[人間って案外図太くて、 刃物で刺しても薬飲んでも簡単には死ねないんだよ。 むしろ死に損ねた時がしんどいんだよね。 by夜の仕事のお姉さん。
刃をしまった状態で手首にあてて、軽く引いてみる。 俺やったことないから分かんないけど、 これで死ぬには相当根性がいるんじゃないのかな。
俺が自殺とか今まで考えたことなかったの、 そういう知識の方が先に入って来ちゃったからもあるけど。あとフツーにこわいし。]
(288) 2021/06/10(Thu) 23時頃
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………ここで死んだらどうなるんだろ。
[ぽつ、とそんな疑問を漏らす。 脳裏に昨日の九重人形が浮かんだ。
たとえば死体は消えて、あの人形が残る。 有り得ない話じゃないよなって。 問題はその場合、死んだ後の本人はどこに行くのかってことで………
チキチキチキ、とカッターの刃を悪戯に出し入れしながら らしくもなく物思いにふけってしまう。]
(289) 2021/06/10(Thu) 23時頃
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あいて。
[ぼーっとしてたせいで手が滑った。 勢いあまって手をざくっと切ってしまう。 痛みは普通にあるんだよねー。めんどくさい。 そんな風に思いながらカッターをその場に投げ捨てて、 また歩き出した。*]
(290) 2021/06/10(Thu) 23時頃
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── 現在・渡り廊下 ──
[ 目の前で広げられた手が案外大きくて、 慎一の視界はすっかり暗かった。>>272
視界からの情報をなくしたまま、 変わらない調子の暮石の声を聞いてる。]
……変なの。
[ 再び光がさして、今度は慎一が目を細めた。 笑みをつくるんじゃなくって、ただ眩しくて。 明るさに慣れたら、またそこに暮石がいる。
両手をすりあわせるしぐさ。 慎一はなんとなく、そこに小さい爪を探しちゃう。]
(291) 2021/06/10(Thu) 23時頃
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[ 暮石は目が回りそうだったらしい。>>272
そんなこと知らない慎一は、 ただ気になって後方を振り返ってた。
なんとなく投げかけた疑問には、 少しの間と首をかしげるしぐさのあと、 肯定する言葉が返ってきた。>>273 だから慎一はただ同意を得た気分でいた。]
うん。だって、 ひどいことするようなやつ、 ここには────、
[ いないだろ。って、当たり前に言おうとしてた。 慎一はみんなことが好きだよ。当たり前に。]
(292) 2021/06/10(Thu) 23時頃
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…………。
[ さっきの掌を、慎一は親切だと受け取ったのに、 暮石は今度は動揺させるようなことを言う。>>274
せっかく立ち止まって、振り返って、 また歩き出そうとしてたとこだったのに、]
……なんで、
[ 慎一はまた立ち止まってた。驚いて。 泣き出すわけじゃないけど数秒固まって、 それで──、暮石が笑わないから、 仕方なくひとりでへらりと笑った。]
(293) 2021/06/10(Thu) 23時頃
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