23 あの春の廃校だけが僕らの学校だった。
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[>>2:249 共鳴なんて噛まれない、と彼は言った。 狼は占い師や守護者を噛みたいのだから、と。 それは、全うに人狼ゲームをやっていた場合のセオリーで。 既に大きく歯車の狂った盤上で、気休めにもならない言葉だった。 鮫島と、桐野と、大和が、話し合いながらこのゲームの裏に轟く闇と戦っている。知恵を絞り、犠牲を伴う取捨選択を、きっと、何度も何度も苦悩しながら。
自分にできることなど、もうあまりない。 最終盤面に残れないなら、せめて痛くないように彼の手で吊って欲しいと――どうしても言い出せなかった。 送られてくる情報を受け止めきれぬまま、『以心伝心』の彼の言葉を信じ切れぬまま。 ――だってあの男は、何度も拒絶し跳ねのけたのに、熱烈に口説いて告白してきたくせに、一時でそれを翻したのだ。分かっていて受け入れた自分も、同罪ではあるけれど。
VRの世界で、束の間の夢をみた。 自由に動く身体と、普通の学校生活と、甘い恋の夢。]
(+2) 2023/04/26(Wed) 08時半頃
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―― 襲撃 ――
[>>0:455「もし、人狼に襲われて、 誰か一人にだけLINEを送れるとしたら」
そう、桐野は言っていた。 助けてくれる信頼する相手を作れ、という意味だったのだろうけれど。 何をどう、助けて貰うのか。
『以心伝心』で共鳴する大和は、 誰が人狼か知っている。 自分も、襲ってくる相手を知っている。
心当たりは二つ三つあった。恩情であろうとも。
保健室から出て幾許か。 運動神経に自信はあったけれど、システムには逆らえないし、生身でだって襲われたら勝てない相手だ。 増して破瓜の直後に軋む両足で、満足に逃げることもできず、後は、――――]
(+10) 2023/04/26(Wed) 14時頃
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[全身で感じた喪失と悦楽の記憶を塗り潰すように、縦横無尽に奔る爪の、牙の、鋭い痛み。血潮に塗れながら、体組織が剔られ、壊され、引き裂かれてゆく。 現実の体には傷一つつかずとも、シェルターに括りつけられた身体がビクビクと跳ねる。間を置かず、ガタガタと震え出して、仰け反った。]
――――あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛や、やあああぁぁ! やだっ、やだあああぁああぁ!
[VRの中で上げられなかった悲鳴が、喉笛を破るほどに迸る。 ――あの事故の時は、過度の痛覚は脳がシャットアウトしてくれたけれど。ヘルメットとウェアラブルデバイスで直接送られてくるそれは、何度も、何度も、神経を焼き切るほどに、ダイレクトに襲いかかる。死の間際まで、想像を絶する痛みと苦悶と恐怖と、紅く、黒く、存在をズタズタに切り刻まれて。]
(+11) 2023/04/26(Wed) 14時頃
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――――――――っ
[急速に身体が弛緩した。 頭の後ろの遠いところで、フツリと何かが途絶えた。 糸の切れた操り人形のように、崩れ落ちる。 滂沱の涙と洟と涎で、顔から胸元まで濡れそぼって。 小さく胸が上下する以外、指一本動かせない。]
――――――――…………。
[そのまま気をやって、数十分が過ぎる。]
(+12) 2023/04/26(Wed) 14時半頃
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[自動的に鎮静剤が打たれて、ピクン、と肩が痙攣した。]
――、―― はぁ、 あ、 ん、 さん、、 おかああさあぁぁん たす、けて、
やだ、 も、も、もういやだ、 帰る かえりたい おかあさん、 おかあさーん――……
[シェルターの中で胎児のように身を縮こめて、ずっと啜り泣いている。**]
(+13) 2023/04/26(Wed) 14時半頃
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[母を呼びながら泣き続けて。 漸く涙も枯れて、ひくっと小さくしゃくりあげ。 何かを護るように丸くなっていた四肢をほどいて、のろのろとヘルメットを外す。 目の前にはモニタ。モニタ室で見たそれと、モニタ室と、別の個室が映されている。 虚ろな瞳が画面上を彷徨い、ふと見つけた彼女の顔に、ぶわっと涙が溢れ出た。]
ワカ、ナ さ……ん?
っふ、 ううぅっ、 ぅゎかな、さぁん、
……たすけ、て たすけてよ、 ねぇ、――
[どこにも傷痕などないのに、心も、身体も、痛くて痛くてたまらない――。**]
(+17) 2023/04/26(Wed) 18時半頃
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[膝を抱えて蹲り、涙が流れ尽くすまでただじっと待った。まだ、皮膚の下をツキツキと嘖む幻痛を堪えながら、泣き晴らした瞳はぼうっとモニタに向けられている。
野々花のLINE>>124>>125は勿論届かない。 椿の袂に佇む少年の言葉が、耳を滑り抜けていく。 モニタの中であかあかと燃え盛る炎。 聞こえてくる伴奏と、歌声。 声が枯れて、一緒に合わせることもできない。 『あの春の学校だけが僕らの学校だった』
青春を謳歌し燃やし尽くすかのような、あの空気の中に、 焦がれて飛び込んでみたけれど、 結局またこうして独り、羨ましそうに外から見ている。 モニタへとのばした手を、炎の熱に炙られたようにすぐ引っ込めた。**]
(+35) 2023/04/27(Thu) 08時半頃
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[何もかもが、遠くて遠い。VRの負荷か、未だマシンの支配下にあるせいか、身体を動かすのも億劫で現実感に乏しく、ただ存在を蝕むような痛みだけが残り続けている。
モニタに映るのは、当初思っていた、願いを叶えるために身勝手に殺し合う高校生たちの即興劇、ではなくなっていた。]
――――。
[知らず命を賭けさせられた彼らが、誰を踏み躙るも善しとしない優しい彼らが、最善を模索する様子を、今は見守るだけ。]
(+36) 2023/04/27(Thu) 11時頃
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―― 回想 ――
[狂いそうな痛みが遠のくのを待ちながら、虚ろに過ぎる時の中で不意に身体がギクリと強張った。 ――接触事故。>>279
その言葉に、彼女の顔が脳裏を過った。 スケートができなくなったら、と鮫島に問われた時と、同じフラッシュバック。 具体的なことは誰にも明かさなかった、怪我の原因。
――リンクに立てないのは、 自分が氷上で人を殺しかけたからだ。]
(+38) 2023/04/27(Thu) 13時頃
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[彼女は同じコーチに師事する、期待の新星だった。
鷹羽虹乃が、『椿姫』のプログラムで自己ベストを更新し、二位に食い込んだ関東大会で、あっさり優勝を掻っ攫っていった二才年下の後輩。 正確無比なエッジワーク、次々と習得する高難度のジャンプ。華やかなオーラの中にも、どこか未成熟な危うさがあって、それすら人の心を惹きつける彼女の魅力だった。 銀盤で、ギラギラ輝く太陽のような圧倒的な存在感。悔しさや妬ましさを通り越して、嗚呼、これが才能なのだと打ちのめされた。灼熱が、イカロスの翼を焼き熔かすように。]
(+39) 2023/04/27(Thu) 13時頃
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[翌シーズン成績不振に喘ぐ虹乃のことなど歯牙にもかけず、世界に飛び出していく逸材だと、誰もが認めていた。 けれど彼女は、あの試合の後から虹乃に絡み、ありがちな嫌がらせや嫌味を浴びせるようになっていった。スケーターが望む技術も美貌も表現力も、全て兼ね備えた彼女が、選手としては凡庸の域を出ない虹乃にマウントを取る必要など、どこにもないはずなのに。 練習中に、近付き過ぎてヒヤリとする回数が増えていく。
最初は、掠める程度だった。
二度目は、肘がぶつかった。
三度目は、虹乃が着氷に失敗していなければ、直後に接触していただろう。
彼女の異常な執念に危機を感じて、コーチと練習拠点を変えることも検討し始めた矢先に、]
(+40) 2023/04/27(Thu) 13時頃
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[――四度目。 その日も転倒を繰り返し、次第に集中力を欠いていって。 ジャンプの練習には注意を払っていたが、スピンの入りだったから油断した。 カーブの最後で踏み切り、ブレードが土星の環のような軌跡を描いた先で、
猛スピードで突っ込んできた彼女の、 頭部を切り裂いた。]
(+41) 2023/04/27(Thu) 13時頃
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[髪と、氷の粒と、血飛沫が舞う。 衝撃は一瞬で、二人縺れてリンクに叩き伏せられた。 折り重なる身体に挟まれ、歪に折れ曲がった左脚の軋む音。 混乱と、激痛と、酩酊と、消失。 ――すぐに、冷たいはずの氷の温度が感じられなくなって、周囲の悲鳴も怒号も救急車を呼ぶ声も、耳鳴りとともに遠のいていく。
次に意識が戻ったのは、病室の寝台の上、 ――左脚はギプスで固定されていた。**]
(+42) 2023/04/27(Thu) 13時頃
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[痛みはどこから来るのだろう。 外傷もなければ、内臓の損傷もない。 命が消費される、というのもピンとこない。 けれど、変わらず脳は痛みを訴えてくる。 ――心の傷は、鎮痛剤では抑えられない。 一度死ぬ、という極限を越えた苦痛と恐怖を、忘れられる日など来ない。]
――――、
[外部からの干渉は何もできない。 震える肩を抱いて背を丸め、見ているだけ。]
……イヤ、だ。
[痛みは止まない。多分一生。何故自分が、と理不尽な怒りもある。軽率に参加を決めてしまった、数時間前の自分を恨みたい。ゲームが終わったとて、自分はどうなってしまうのだろう? 最終日に残った者たちは? ――彼らはもう、TVの向こうの遠い人ではない、言葉を交わし短い時を供に過ごした友人たちだ。 誰かが、同じ"死ぬほどの苦痛"を味合わされる時が、刻々と近付いている。]
(+48) 2023/04/27(Thu) 22時頃
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ニジノは、ワカナの声が聞こえて、小さな声で「ただいま」と零した。
2023/04/27(Thu) 22時頃
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――まだ、痛い。痛いけれど、
[苦みすら感じる息を深く深く吸って、吐いて。 濡れた頬と腫れた目蓋を手で拭う。 ここからでは、化粧道具もスマホも、手が届かない。]
少しだけ、落ち着いた。嗚呼、酷い顔……、
[此方のモニタの画像だけでもオフにしたい。]
(+50) 2023/04/27(Thu) 22時半頃
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心配かけて、ごめ……っ、
[時折、堪えるように眉を蹙めて、頭を抑えながら、]
ほんっっっっと、何コレ、聞いてなかったんだけど クルーエル社クソだな!
[VRの中で何度罵ったか知れない。 少しだけ、普段の憎まれ口が戻ってきた。]
(+51) 2023/04/27(Thu) 22時半頃
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断固訴訟も辞さない。 ……って未成年はできなかったっけ。
[その前に誰かが殴り込みしそう。]
命を代償に願いが叶うのもだけど、 襲撃だけこんな痛い必要ある!? VRなんだから、わざわざ痛覚まで 再現する必要ないでしょ……、ああもーーーー っだだだだ、いた、
[髪を掻き毟る。]
(+52) 2023/04/27(Thu) 23時頃
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……キルロイ、ピンピンしてる。
[別モニタに映る姿を、恨みがましい目で睨んだり。]
(+53) 2023/04/27(Thu) 23時頃
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ああ、そういえば私も共鳴のLINEは、…………。
[ふと、何処かのモニタに目を移し、そっと瞑目。]
ありがとう、大和。 これでもう、終わりにする。
[最初から決めていたことだった。 愛おしそうに画面を一撫でしてから、オフにする。]
(+54) 2023/04/27(Thu) 23時半頃
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口説かれ告られ6時間でフられた私の話する……?
私の10倍くらい送りつけてきてたよ。 9割鮫島との惚気だったし。
なんでこんなことになった……。
(+55) 2023/04/27(Thu) 23時半頃
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今日は柊が襲撃されるの、か。
[渋面になる。する方も、される方も、本意ではないだろうに。]
……やっぱりクルーエル社クソだな。
(+56) 2023/04/28(Fri) 00時頃
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>>@41 ワカナさん、こっちで大和と会ったら、 首締めといて。私が赦す。というか、私の分。
私はもう、会う気はないから。二度と。
(+57) 2023/04/28(Fri) 00時頃
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……ジャンプ跳ぶのには邪魔だったけど、 もう滑ることもないなら、 あった方がいい、のかな……?
[言われて思い出したように胸元に手を滑らせる。 沙羅に触れられた時を思い出した。きっと、弾力が6倍くらい違う。]
……………………。
[頬が少し熱くなった。]
(+59) 2023/04/28(Fri) 00時頃
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じゃあキルロイに頼む……? 会うかな??
(+60) 2023/04/28(Fri) 00時頃
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サンドバッグを提供する話。
キルロイと言えば、筋肉を触り損ねたっ……! 後で鍛えられた腹筋を拝ませて!
(+65) 2023/04/28(Fri) 00時頃
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色々たてこんで大混乱してて、 LINEの返事もロクに返せてなくてごめん。 私も色々話してみたかったよ。……筋肉触りながら←
ってことは、私が直接ヤらなきゃだめか。 ……………………やめとこ。逃げよう。今度こそ一生。
(+67) 2023/04/28(Fri) 00時半頃
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