15 青き星のスペランツァ
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― 三日目/研究室 ―
[その報せを聞いたのはモニター越しの通信回線だった。 座標は海周辺、通信信号がひとつ足りない。]
……状況は!?
[慌てて音声回線を繋ぐとアリババがキランディの名を呼ぶのが聞こえた。落ち着かせるような声音に混じる取り乱したキランディの悲痛な声。 それだけで何が起きたかは察しがついた。]
…………ッ
[声を出すことはできなかった。 現場ではライジ達が対処に当たっているに違いない。 ……大丈夫、きっと彼らなら。大丈夫。 頭の中で繰り返す。 まだ命が繋がっているならば…やれることはあるはずだ。 僅かな願いをかけるよう、処置室へと駆け込んだ。]
(20) 2021/11/13(Sat) 02時半頃
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― 三日目/医療処置室 ―
[処置室には培養ポット、生体細胞、薬品の数々が並ぶ。 焦る心をそのままに、ただただ思考を巡らせる。]
早く、早く。今度こそ間に合わせなければ……
[クルーの生体情報はすべてデータベースに記録がある。 浮遊種であるハロの身体は大気よりも軽く繊細だ。 循環液はなるべく多い方がいい。 処置には時間がかかるし、生体ポットも用意しよう。 皮下組織は生成に時間がかかるが繋ぐことはできる。 海に溺れただけなら医療キットだって役に立つ。]
ハロ君、無事であってくれ……
[現場の通信が行き交っている。 正直なところ、状況は絶望的といっていい。 けれど、そうだとわかるまでは……後悔はもうしたくない。**]
(23) 2021/11/13(Sat) 03時頃
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[医療処置室にライジからの通信が入る。>>39 探査機からの簡易スキャンにハロの名前はない。]
こちらの準備はできている。 キランディ君の容態はどうだい、腫れや出血の様子は? なるべく無理をさせないようにしてあげてくれ。
[通信越しにその場の処置を指示しながら扉を開く。 必要であれば処置室から担架が運ばれてくるだろう。]
それで…他に怪我をした者は……?
(42) 2021/11/13(Sat) 17時頃
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― 三日目/医療処置室 ―
腕の負傷の手当はわかるね? 頭を打っているなら動かさない方がいい。 あとはこちらで預かろう。
[ライジ>>44には通信でできる限りの範囲の事を伝える。 怪我人はいない。その"答え"には……わずかな沈黙。]
……そうか。
[押し殺すようにつぶやいた。 動揺してはいけない、落胆をするのも違う。 自分はここにいただけなのだから。]
君達にはいつも辛い仕事をさせるね。 私もやれることをやろう。
[担架に乗せられてキランディが運ばれてくる。 今、自分が立ち向かうべきはここにある命だ。]
(55) 2021/11/13(Sat) 20時頃
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― 三日目/医療処置室 ―
[キランディの身体は機材の乗せられたベッドに移される。 その右半身は酷く傷ついていたが>>51 大きな致命傷を逃れていた。頭の傷も浅そうだ。]
バイタルは正常、心肺も問題ない……
[タプルは腕のいくつかを使って砕けた骨を合成細胞で繋ぎ合わせギプスで固定する。しばらく補助は必要だろうが、数日あれば動かせるようにはなるだろう。 しかし…]
[その寝顔に安堵と不安をない交ぜにしてその寝顔を眺める。通信機から聞こえる声を反芻する。今回の探索では相当無理をしたのだろう。その様子はどこか痛々しい。]
(59) 2021/11/13(Sat) 20時半頃
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[キランディが目を覚ます>>51とそこは白いベッドの上。 医療処置室の隣に設けられた患者用のスペースだ。]
……気が付いたかい。 ここは医療室。ライジ君が運んできてくれたんだ。
船には……皆帰還したのを確認した。
[全員無事だ、と言えればよかったが。 それが叶わないことははキランディが一番よく知っていることだろう。 言葉に触れるでもなく、紅茶を差し出す。 ソーサーの横にはひとかけのチョコレート。]
まずはこれでも飲んでゆっくりするといい。 毛布のお礼だ、しばらく安静にしてもらわないとね。
(60) 2021/11/13(Sat) 20時半頃
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問題ないさ、その為に私はこの船にいるのだからね。 隙を見られたこちらのほうがよっぽど不覚だよ。 あいや、実に面目ない。
[軽い口調で笑えばあたたかな湯気がその手に渡ってゆく。 紅茶には、異国のはちみつがひとすくいほど。 元はケトゥートゥが持ち込んだものだったろうか、癒しの効果を持つそれは心を落ち着けるのにはちょうどいい。]
ライジ君が迅速に対応してくれたおかげだね。 腕の怪我もしばらくすれば自由が利くようになるし、後遺症の心配もなさそうだ。 なぁに、探索隊など心配などはかけてなんぼだよ。 戻るべき場所まで帰してやるのが私の仕事、そしてきみは無事に帰ってきた。充分さ。
[故郷、と言いかけてすこし言葉を濁した。 船と船を渡る探索者は、帰るべき故郷が無い者も多い。 この船が少しでも落ち着ける場所になるならそれがいい*]
(63) 2021/11/13(Sat) 21時半頃
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からかわないでおくれ、これでも真剣なんだよ? ほら、私の身体はこんなだろう。眠っている間に足や触手の一本でもはみ出していたら恰好がつかないじゃないか。
[困ったように髭状の感覚器を指でぺたぺた直している。 恥ずかしいの基準はだいぶ謎であるが、キランディの普段通りのゆるやかな口調にすこし安堵した様子で微笑んだ。]
そうだね、彼らも精一杯やってくれた。 きっと心配もかけたろう。 でもそれは誰に限ったことじゃない、皆が皆…大切な仲間だからだ。
[もし、ハロの代わりにキランディが犠牲になっていたならば。アシモフやギロチンの時がそうだったように、皆同じように悲しむのだろう。]
(69) 2021/11/13(Sat) 23時頃
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今夜といわずいつまでだって大歓迎さ。>>68 ここは羽根を休める場所だ、好きに使っておくれ。 なんならクッキーもおまけするよ。
[内緒だよ、とベッド脇の引き出しをこっそり開けて見せる。 こういう軽口を話すのもいつぶりか。 連日のせわしなさににすっかり忘れていたような気がする。]
ただ…落ち着いたら皆に顔を見せてあげるといい。 キランディ、きみにしかできないこともあるはずだ。
[無事を知らせるのもいい、共に悲しむのもいいだろう。 失ったものは戻らない、けれど寄り添うことはできるはず。 その朗らかな優しさはタプルも良く知るところだ。*]
(73) 2021/11/13(Sat) 23時頃
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─ 三日目/医療処置室 ─
まったくもう、大人をからかうのはよくないぞ。 これでも他の星ではまだまだビックリドッキリされる方なんだからね、わたしは。
[うねうねと食指を伸ばして威嚇してみせる。 これでも子供が泣く見た目だという自負はある。 そんな自分でもこの船では分け隔てない。 ここはそういう場所だった。喩えどんな事情があろうともこの船に乗り合わせた以上、タプルにとっては守るべき家族も同然だ。]
[介添えをするように紅茶を差し出しながら思う。>>77 きっと彼もまだどこかで揺らいでいるのだろう。 いくら知覚で感じ取れたとしても、深く理解することは叶わない。それをもどかしく感じながら、しばし言葉を重ねて自分もひとくち、クッキーをかじった。]
くれぐれも無理はしないようにね。 何かあった時には、いつでもここで待っているから。 ……いってらっしゃい。
[いつもそうするように声をかけて。 処置室を出ていくその背を見送った。**]
(82) 2021/11/14(Sun) 01時頃
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― 三日目/安置室 ―
[キランディの処置を終えた後、しばらく。 静まりかえった船内を渡り、タプルは安置室へと訪れる。 ちいさな遺体には布がかけられ、花が手向けられている。]
すこしだけ向こうを向いていてくれないか。 ……できれば人払いも。
[そこにいるであろうヨーランダにそうひとこと声をかけて かけられた布に手をかける。]
[酷い有様だった。へしゃげた身体、漏れ出した体液。 その残骸の形は事態の凄惨さが伺い知れた。 それでも仲間たちは彼を船へと帰還させてくれた。]
……おかえり、ハロ君。
[タプルは食指を伸ばすと、その亡骸を掬い上げていく。 ひとつひとつ。確かめるように。元あるべき場所へと収めてゆく。]
(119) 2021/11/14(Sun) 13時半頃
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[手元には緊急オペ用に用意した組織片、復元用の細胞壁。それは彼の命を繋ぐために用意したものだ。 しかしそれは生命を維持する為でなく、いまや抜け殻の身体を埋め合わせるだけのもの。 崩れた外骨格にはどうしても継ぎ目が残る。完全な状態に戻すことは難しかった。 けれど、せめて綺麗な姿で。死に化粧を施すように、丁寧に やすらかな眠りを繕って。 再び、その布をかけ直し、花を添えた。]
……もう大丈夫。ありがとう。
[見届ける墓守に、小さく礼をして。安置室を後にする *]
(120) 2021/11/14(Sun) 13時半頃
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― 四日目-朝/船内ロビー ―
[ロビーに人影>>170をみとめて声をかける。]
やぁ船長さん、具合は如何ですか。 随分と今日は早起きな様子で。
[イワノフへの最初の挨拶はいつもこれと決まっていた。 日々不安定な彼の状態を確認する為に声をかけ、 必要とあれば薬剤を持って対処することもある。 それは医療班としての日課でもあった。]
(176) 2021/11/14(Sun) 22時半頃
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[次いで入ってきた明るい声>>173に少し会釈をする。]
今から探索かい?こちらもまた随分と早い朝だ。 仕事熱心はいいことだが、忘れ物のないようにね。
[モニターを見上げて、少し目を細める。 この字を見ると細胞がざわめいてとめどない。 嫌な気配がするのはタプルもまた同じだ。 心を落ち着かせるように、紅茶をひとくち口に運ぶ。]
(177) 2021/11/14(Sun) 23時頃
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― 四日目-朝/船内ロビー ―
[耳を揺らして、不格好に いーやー と返す。 少し抑えられた声が微笑ましくありがたい。
…しかし、この不安定な気配はなんだろう。 知らぬ間に何かが形を変えて歪んでいくような そんな気配を漠然と感じている。]
…おや、どこかいい場所でも見つけたのかな。 だったら手土産に映像のひとつでも寄越してくれるとうれしいな、私はなかなか外には出られないのでね。
[またひとくち、紅茶を含んでからモニターを見る。 マップにはふたつの赤い点が浮かんでいる。 タプルが目を覚ました時、既にキランディの姿はそこにはなく、それがより一層タプルの不安を掻き立てた。]
……彼らも無理をしていないといいが。
(191) 2021/11/14(Sun) 23時半頃
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