14 冷たい校舎村10
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[もうすぐ始業時間だというのに集まる人数はまだ少ない。 休校かどうかの真実を確かめに行った委員長はどうしていたか。
>>0:579夏見さんが言った、圏外という言葉。 それを耳にして、はて、と自分のスマホをいじる。 道中でチャットの通知が鳴り響いていたのはよく覚えているのだけど。]
……あ、俺も。
[いつの間にやら。 圏外という文字が浮かび上がっていて。]
(8) 2021/11/07(Sun) 00時半頃
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[それからバタバタと、人が増えたと思ったら、 チャイムの音が鳴り響く。
自分の席でスマホを片手に、それを聞いていた。 圏外の画面に、着信の表示が出てくるのを、見ていた。**]
(9) 2021/11/07(Sun) 00時半頃
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[クラスの女子たちのコミュニケーションを不思議そうに眺めた。
彼女たちは、友達相手にすぐ「好き」と言う。 何かあれば抱きしめ合って、嬉しさを共有し、悲しみを分かち合う。 冗談か本気か、デートしよう、結婚しよう、と軽く言う。]
(130) 2021/11/07(Sun) 17時半頃
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[俺とユイの間にはそんなことはない。
将来を誓い合った仲。 関係を確かめ合うのに言葉を交わす必要はない。
って、昔からずっと思っていた。 正しくは、錯覚していた。
なんでも俺の言うことに従い、逆らいもせず、 自分の好みを主張するでもなく、3歩引いた後ろを歩いて支えてくれる、 そんなユイの姿こそが理想の女性であるのだと。]
(131) 2021/11/07(Sun) 17時半頃
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[結婚とは、恋愛の末にするものではありません。 結ばれてから相手に慣れていくことを言うのです。
——父さんの部下が、いつか俺に言った言葉。]
(132) 2021/11/07(Sun) 17時半頃
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[黙って、スマホの画面に浮かぶ“遺書”を眺めていた。
心当たりなどない。 けれど、心の奥底で共感する気持ちが、無いわけではない。]
(133) 2021/11/07(Sun) 17時半頃
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……なんなんだよ。
[さっきから誰もが混乱している。 そんな音だけが耳にずっと入ってくる。
こういう時は冷静に現状を確かめるのに限る。 俺だって全然何も分かっていないのに、 >>47我らが委員長から齎された報告はとても完璧で、 座ってそれをただ聞くだけでいた。
電話がつながらない。 そんなことあるか?と、試しに自宅にかけてみたが、 繋がる気配はまるでなくて、いよいよ非現実じみてきた。]
(134) 2021/11/07(Sun) 17時半頃
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…………はぁ。ったく。
[らしくない雑な溜息。 この異常事態に慌てて、叫んで、慰めて、立ち直る、 女子たちのコミュニケーションをただ見ていた。
彼女たちの反応は至極当然なので文句があるわけでもない。 ただ、少し心の疲れに響いた気がした。]
帰れるんなら帰ったほうがいいよな。 俺もうちょっと様子見とく。 他に誰か来るかもしれない。
[>>110黒板に書かれる力強い帰宅宣言に目をやり、 クラスから散り散りになるみんなを眺めながら、俺はまだ教室に残る意思表示。*]
(135) 2021/11/07(Sun) 17時半頃
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[さて、教室に残りながら、 >>141何やら窓にかじりついている虎次郎の様子を見ていた。]
おいおい、割れたら怒られるぞ。 修理代出せないだろ。 っていうか寒いだろ。
[いつものように、弟分を窘めるように声をかけたが、 何やら様子は尋常じゃない。
やがて虎次郎はどこかへ行ってしまったため、 >>142残っている副委員長の河合さんと目が合った。]
(155) 2021/11/07(Sun) 19時頃
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どうって、
[意見を求められても、自分の手で確かめなくては何も言いようがない。 河合さんが窓を開けようとして、開かなくて、まさか、とは思った。 だから俺もそれに倣って同じことをしようとして——]
接着剤とか……。
[誰かが悪戯で窓をぴったり接着してしまった。 最初に浮かんだ発想はそれだ。
他の窓も試してみる。 隣も、開かない。その隣も、その隣も。 いつも当たり前のようにここを開けて、風通しを良くしていたはずなのに。]
(156) 2021/11/07(Sun) 19時頃
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……今すぐ答えを出さなきゃだめ?
[悪戯にしては手が混みすぎている。 というか、虎次郎が叩いても割れなかった。 ガラス自体の強度がおかしい気もする。
石頭幣太郎の結論としても、お手上げだった。 意見を求められても何も言えないので、保留ってことでいかがですか。
決を取って結論を出す委員長はここにはいない。 なので代理で副委員長、君に委ねます。*]
(157) 2021/11/07(Sun) 19時頃
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— 回想:不知火さん —
[不知火さんがいなくなって、ちょっとした騒動があった日。 それが終わってから、彼女に声をかけて、そして謝って。 彼女からの反応は、想定していないものだった。>>0:457>>0:458]
……いや、そういうわけじゃ……。
[欲張り。そう言われて否定しそうになるが、言葉が見つからない。 なんの予防線を張ったんだよ、俺。 足が不自由なこと、それにも関わらず一人で行動しようとしたこと。 それが悪いわけじゃないって伝えたかった、だけだったのに。]
(158) 2021/11/07(Sun) 19時半頃
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自由な奴が、不自由な人の重荷を背負うことぐらい、 当たり前でいさせてくれよ。
[それは、欲張りなんだろうか。 言われてみれば、わからない。
俺は恵まれている人間だ。 将来は人の上に立つことが約束されている人間だ。 だから、これは義務だと思っているのに。]
(159) 2021/11/07(Sun) 19時半頃
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あっさりと行方不明になられたら、みんなびっくりするんで。
[>>0:459不知火さんの、案外平気そうな顔に戸惑いながら、 笑い事じゃなかったんだぞと、軽く笑う。 みんな探していたこと、それは伝わっているはずだから。]
罰則? いやいや……。 じゃあ、次のクラス委員会の議題にでもする? なんつって。
[>>460真剣な顔でそんなことを言うもんだから、 さて、なんて返せば良かったのやら。
気安く罰を与えられるほど、俺は女子たちのような親しい距離は取れそうになくて。 それは、俺と彼女では立場が違うという、暗黙の上から目線だったかもしれない。*]
(160) 2021/11/07(Sun) 19時半頃
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[俺は将来の製薬会社社長で、 ユイは子会社の代表として嫁ぎに来る。
立場は最初から違っていた。 俺だけが呑気に、浮かれていた。*]
(161) 2021/11/07(Sun) 19時半頃
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— 回想:VS衣装係 —
無理やりやらせても上手く連帯感は出ません〜〜〜〜 やりたくない奴がトラブル起こすかもしれません〜〜〜〜 集合写真は……俺も撮りたいけど!!!
[>>73最後の抵抗を試みるも、決壊するのは時間の問題であった。 男子がかわいい猫耳をつけるのはネタにしかならないが、 まあ、最後のお祭りに浮かれるのもしょうがない。
>>74みんながみんなギャップ萌え起こすと思うなよ! 事故起こしたら居た堪れないだろ! と、衣装担当の平塚さんと論撃を交わした長時間。
ごめんな、男子のみんな……諦めて……。]
(166) 2021/11/07(Sun) 19時半頃
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そこまで言うなら平塚さん、 男子に猫の演技指導する覚悟がおありで?
[崖際の抵抗でそんな言葉をチクリと刺してみたものの、 これを超えられたらもう反論材料がないのである。
彼女が昔見たあの子役であり、今も演劇部をやっているならば、 演技に関してはきっと専門と言っていいほどの人材なのだろうから。*]
(167) 2021/11/07(Sun) 19時半頃
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[婚約者、室家 唯。
幼い頃、父さんに婚約者だと紹介されて、 へぇそうなんだ、と何も疑わずに受け入れた。
物静かで口数少なく、今にも儚く消えてしまいそうな同い年の女の子。 最初はパッとしない印象で、一緒にいても楽しくなかったけど、 中学生の頃、会社主催のパーティー会場でドレスアップしたユイを見て、 俺の中での認識が大逆転した覚えがある。
いつもの暗いような印象が、大人びた落ち着きに。 華やかなドレスに彩られた細い手足は、雪のように白くて透き通る美しさが際立つ。 これが同い年の女性だなんて、と、一気に見違えた。]
(183) 2021/11/07(Sun) 20時半頃
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[ヒールの高い靴に慣れなかったのか、つまづいていたところを咄嗟に支えたら、 恥ずかしそうに「幣太郎さん」と初めて名前を呼んでくれたその声が、忘れられない。
ああ、俺はこの人と一緒に人生を歩んでいくんだな。 この瞬間に、社長の息子はその自覚を持ち、そして自らの幸せな身分を知った。]
(184) 2021/11/07(Sun) 20時半頃
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[>>0:469婚約者のどこが好きかって?
問われたら、「見た目」と「守りたくなるところ」としか答えられないけど、 それじゃ不服だったかな?]
(185) 2021/11/07(Sun) 20時半頃
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— 回想:文化祭前日 —
そうやってクラスの中ではいじるけど、 一般客にとってはナニコレだろ〜〜〜が〜〜〜〜
[>>83前日に至っても、衣装さんと交わした無駄な抵抗をここでも続ける会計。 せっかく夏見たちが準備してくれたパーテーションの布が少しずれそうになった。
まあ、もう、しょうがない。 決まった以上は文句言わずにやるよ。 な、春満?
彼は彼で、猫の着ぐるみを被る羽目になったとか。]
(186) 2021/11/07(Sun) 20時半頃
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[>>85婚約者とのツーショット写真。 おう、と薄く笑ってそれを受け流す。 今更照れることもないはずだけど、この会話が長引くのも居た堪れないし。*]
(187) 2021/11/07(Sun) 20時半頃
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— 回想:そして文化祭 —
[——文化祭当日。 俺が3-1の喫茶店に連れてきた婚約者のユイは、ほんのりと愛想笑いをした。
その場にいたクラスの連中には丁寧に頭を下げ、 カフェオレを注文して、ゆっくりと飲みながら軽く会話をして、 そして一緒に別の場所を見に行こうと立ち去るまで、 スン、と澄ました顔で、愛想笑い以上のものを浮かべずに佇んでいた。
猫耳を見ても、一瞬だけしか笑わない。 「可愛いと思います」と、社交辞令のように言って、ただそれだけ。
もしそれについて聞かれることがあれば、 そういう奴だから、と俺は説明をして、彼女を伴って去っていく。 別に、理解されなくてもいい。*]
(188) 2021/11/07(Sun) 20時半頃
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— 現在・3-1教室 —
[副委員長に結論を委ねていた、その横で、 >>176>>177平塚さんが窓を破ろうとしていた。 危ないので止めるべきだったろうけど、本当に割れないかどうか、 確かめるための材料が欲しかった気持ちはある。]
仕方ない、修理費は俺が出す。
[と、暗に認めた発言をして。 その様子を見守っていたが——
きっと、その結果は喜ばしいものではなかっただろう。*]
(189) 2021/11/07(Sun) 20時半頃
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— 回想:不知火さん —
[>>168>>169彼女との話はどこか平行線。 俺のほうが勝手に線を引いていることに、俺自身が気付いていない。]
そりゃあ、びっくりしたから!
[>>169当然だぞ、と声を張る。 でも俺は、心の中では俺以外の女子たちのほうが心配の度合いは強かったろう、と、 そう思っていたところもあって。
>>170彼女の謝罪でこの話は終わった。 角を立てないようにして、そして、角が立たなかったならホッとして。 俺の中で、何が正しいかは分からないままに。*]
(190) 2021/11/07(Sun) 20時半頃
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[文化祭が終わり、しばらくして、秋も深まり次の季節が顔を出す頃。 ユイの誕生日が今年もやってくる。
プレゼントを毎年欠かさず贈っていたから、もちろん今年も欠かさない。 何が喜んでくれるか考えて、相談に乗ってくれた女子の皆さんは本当にありがとう。]
(199) 2021/11/07(Sun) 21時頃
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[今年のプレゼントはケーキにした。 コンビニスイーツ……は流石に採用しなかったけど、女子は本当に甘いものが好きだ。 街で有名なケーキ屋さんに1ヶ月前から予約をして、誕生日当日に届けてくれるよう手配した。
2人で食べるサイズの上等なチョコレートケーキ。 チョコで象った薔薇の細工が、いかにもな特別感を演出してくれる。]
(201) 2021/11/07(Sun) 21時頃
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[いろいろあって、すっかり忘れていたキャンセル連絡。 ケーキは予定通り、明日の誕生日当日に届く。]
(203) 2021/11/07(Sun) 21時頃
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— 回想:何もない日 —
なぁ、今日うちに遊びに来ない? 親が用事でいないから、暇でさ。 でかいテレビでゲームし放題だよ。
[その日は、本当に何もないように装って、 クラスの男子数名に声をかけた。]
虎次郎は来るだろ? お菓子たくさん食わせてやる。 雄火はヒマ? 春満は?
[声をかけた奴らのうち、来てくれる奴らを連れて、 両親がいない広々とした我が家にご招待。]
(206) 2021/11/07(Sun) 21時頃
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[誕生日プレゼントの相談をした相手は女子たちだったから、 男子たちなら何も知らないだろう、と思って。]
(207) 2021/11/07(Sun) 21時頃
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[婚約者の誕生日。 その日は遅くまで男友達と遊んだ。
一般家庭にあるものよりもデカいサイズのテレビは使い放題。 ゲーム好きならたまらなかったんじゃないかな。 喜んでくれたなら嬉しいし、俺も楽しかった。
山のように用意した高級なお菓子の中に紛れて、 8等分されたチョコレートケーキがひっそりと混ざっている。 砕けたチョコレートの薔薇は、きっと誰かの腹に収まった。**]
(208) 2021/11/07(Sun) 21時頃
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— 回想:文化祭当日 —
デレデレしてねえよ!?
[>>215何を言ってるんだ、と古香さんに言う。 したつもりはなかったけど、してたのか?と、真に受けてしまう。
婚約者が現れただけでざわざわするクラスの女性陣を眺めながら、 頭を掻いてユイを席に案内する。 おっと、付けさせられた猫耳が取れそうになった。
>>247演技指導の最後の壁を越えられて、めでたく全員猫耳の刑である。 諦めさせようとした無茶振りにも簡単に応じられて、 どこまで熱心に指導してくれたかは分からないけど、 クラス全体の接客における猫指数が上がってしまった。]
(272) 2021/11/08(Mon) 00時半頃
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[ここまでしたのだから、ユイがくすりとでも笑ってくれれば甲斐があったのに。 いつもと変わらぬ静かさで佇んでいる。
お前も猫耳つけてみるか?なんて冗談で言おうものなら、 「あなたがそう言うならば」と従うだけ。
そういう関係性が長く続いて、当たり前になっていて。]
(273) 2021/11/08(Mon) 00時半頃
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ほんっとよく覚えてるよなーそういうとこ。 じゃ、よろしく。
[>>205写真を撮ろうと構えた夏見さんに苦笑して、 ツーショットの範囲に入り、ユイの肩に手を置く。 彼女の長いストレートヘアの感触が手にかかる。
写真に写る、俺の婚約者の顔は、 何かを諦めたような、口角の上がらない冷めた顔。]
(274) 2021/11/08(Mon) 00時半頃
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[もしかしたら、俺じゃなくて、 賑やかなあいつらにならユイは心を開いたんじゃないかって、今なら思う。*]
(275) 2021/11/08(Mon) 00時半頃
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[椅子を叩きつけられても、傷一つつかない窓を見ていた。 それは強化ガラスがどうとか、そういう問題では最早なく。]
……ホラー、だな。
[>>249確定した情報を反芻する。 自分の目で見たものを疑わなければ、そうなってしまう。 修理費を出す必要が無くなったのは不幸中の幸いか。いやいや。]
金を出せば外に出られるんなら安いもんなんだが。
[ふと、ここに閉じ込められているのではないかという可能性を示唆する。 帰ると言って出て行った面々がどうしているかは知らないけど。 そんな不安に駆られる。
廊下のほうから聞こえる賑やかな音楽と、照明や装飾の色も。 ホラーでなければ、理解が及ばない。]
(279) 2021/11/08(Mon) 00時半頃
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他の教室も調べてみる、か……?
[現実的なことを少しでも言うなら、それしかない。 >>271河合さんが言うように、片っ端から窓を割るかどうかはともかく。
この校舎に他に起こっている変化があれば、調べておくしかない。 もしも帰れないなら。それしか選択肢は無いのだし。
……それか、もしくは。]
(280) 2021/11/08(Mon) 00時半頃
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壊したくない、って。 誰かがそういう風にしたのか?
[ぽつりと。 思い浮かんだのは、例の“遺書”だ。>>1
何も壊さないように生きる。それが叶わない。 だから、この教室の窓が壊れないように。
連想ゲームのように、そんなことを思う。 あの遺書が何かを示唆しているように思えてならない。]
(281) 2021/11/08(Mon) 00時半頃
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何か、知ってる?
[あの文面に心当たりがあるかどうか。 確認するように、平塚さんと、河合さんの顔を順に見た。*]
(282) 2021/11/08(Mon) 00時半頃
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— 回想:淡い希望 —
今夜、家に来ない? その……両親、どっちもいない日でさ。
[いつになくそわそわしながら、ユイに声をかけた。 それは高校2年の夏。 暑さで頭が火照るような日の、夏祭り。
浮かれていた俺でも、これは勇気のいる誘いだった。 明確に口には出していないが、わかるだろう。
俺が手を引き、彼女が後ろをついてくるだけで、一向に進展しない関係性。 それを一気に縮めるために、……いや、それ以前に。 恋人らしく熱く愛し合ってみたいと、思うじゃあないか。]
(291) 2021/11/08(Mon) 01時頃
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[艶やかな浴衣姿のユイは、困ったような表情を浮かべる。 返事が返ってくるまでの時間が永遠にも感じた。 片目が隠れてしまうほど長い髪の、その隙間で、目を伏せたのが見えた。
いつもなら。 「わかりました」とか、「貴方がそう言うなら」とか、 少々無理のある頼みも断らずに従ってくれる彼女が、 初めて、長く考えているような気がした。]
(292) 2021/11/08(Mon) 01時頃
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[そして、弱々しく声が発せられる。]
「……それは、正式に籍を入れるまで、待ってください。 心の準備が、まだ……」
[なんだか、泣きそうな声色で。 懇願にも似たその様子に、愛しさと罪悪感を覚えた。 熱せられた頭が一気に我に返る。
いきなりの誘いで、驚かせてしまったのだろう。 婚約しているとはいえ、望まないことをするのは俺も好まない。 チャンスはまたいずれやってくる。それは間違いないのだから。]
(293) 2021/11/08(Mon) 01時頃
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わかった。 ……。
[火照る空気の中。 俺たちがいる場所は、人目につく場所ではない。 今抱いているこの愛しさを、どうにかしてぶつけてしまいたくて。]
これぐらいは、いいか?
[ユイの肩を掴んで、引き寄せる。 顔を近付けてじっと目を見つめた。
彼女は、俺を受け入れるように——諦めたように——目を閉じる。]
(294) 2021/11/08(Mon) 01時頃
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[唇を重ねた僅かな刹那。 俺の中にあったのは、紛れもなく好きだという感情だった。]
(296) 2021/11/08(Mon) 01時頃
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[——この瞬間、お前が何を思っていたのか。 それを想像すると、俺は、**]
(298) 2021/11/08(Mon) 01時頃
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[遺書のようなメールのことについて、 平塚さんと河合さんに尋ねて、得られた有益そうな情報は、 >>299今の状況に似た演劇部の台本があったことと、そして、>>348]
……あ、それって、 どっかで聞いたことあるかも。
[誰かの頭の中に人が閉じ込められる——。 製薬会社の関係者が、そんな研究をしている人の話をしていたのを耳に挟んだことを思い出す。 といっても、それはフィクションの話だと思っていたのだ。 だってあまりにも現実味がなかったもので。
宇宙人だのUFOだのUMAだの、 そういうのは存在していてもいいけれど、夢がある話だとは欠片も思わず、 異星人同士の交流の末の戦争とか、受け入れる際の社会問題の勃発とか、 そういったことばかり想像してしまって楽しくはない。]
(357) 2021/11/08(Mon) 21時頃
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……じゃあ、それが本当の話なら、 ここはその誰かの頭の中で?
誰だっていうんだ?
[>>349誰かさんに頼むのが唯一の鍵ならば。 今度はそれを探すしかないのだろう。 しかしそうなれば、遺書の心当たりの話が、世界の主の心当たりの話になるだけ。 それが誰なのか、ヒントが無いと答えに辿り着けそうにない。
そもそもその人物は、自覚があるのだろうか。]
(358) 2021/11/08(Mon) 21時頃
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もし頼みを聞いてくれなかったら、 あれか、そいつの目的は、俺たちとの心中か?
[>>350ここから出られない人間がどうなるのか。 想像したくはないが、最悪を考えてしまう。]
……金で解決できるんなら話は早いんだけど。
[ぽつりと、苦笑しながら呟く。 冗談というわけでもない。 もし、あの遺書を残した人物の悩んでいる理由が、 金で解決できる話なら、俺がなんとかしてやるから。 だから心中だけは勘弁してほしい。]
(360) 2021/11/08(Mon) 21時頃
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[……そうか? 心中するならするで、別にいいのでは?
ふと、そう脳裏を掠めた問いは、口に出さない。]
(361) 2021/11/08(Mon) 21時頃
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[……と、しばらく考え込んでいると、 >>307>>308教室へ戻ってきた春満と、 >>317そして夏見さんもやってくる。
自分たちが開かない窓に悩んでいる間に、 校舎内を探索してきてくれたようだ。
そして。 ここに戻ってくるということは、案の定帰れないということが確定したと見ていいらしい。]
(362) 2021/11/08(Mon) 21時頃
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[戻ってきた2人の報告によれば、昇降口も開かなくて、 2階から上は空間が変になっているらしい。
徐々に、さっきの河合さんの上げてくれた説が有力に思えてくる。]
……はー、参ったね。 となると、次にできることは……。
[外に出れず、外への連絡も取れない。 これ以上探索をしようにも、冷えた校舎の寒さにより体力が奪われる。 もうどれくらい時間が経っただろうか。感覚が麻痺している。]
(363) 2021/11/08(Mon) 21時頃
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|
腹減ってきたし、食糧の確認してくる。 何かあったら持ってくるから。
[腹が減っているのは俺だけだろうか。 そうだったら恥ずかしいが、仕方ない。 ここでしばらく過ごさなきゃならないなら、無視できない問題だ。
教室を出て食糧を探す旅に出ようとして、 その前に、>>321夏見さんの質問が耳に入って足を止める。]
(364) 2021/11/08(Mon) 21時頃
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残念ながら、ないよ。 さっきもここでその話してたけど。
文化祭の思い出があれば飛んでいけるなんて。 なんで、そんなにスッキリと割り切れてるんだか。
[自分は知らないと主張して首を振る。 そう、心当たりはない。 あのメールの文面を書くような人物も。 そして、それを悪戯に使うような人物も。
心当たりはないのに、どこか共鳴する気持ちだけは否定できずに、 ざわつく心の内を抱えながら廊下へ出るだろう。*]
(365) 2021/11/08(Mon) 21時頃
|
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[教室を去る直前、>>395夏見さんの言葉に、 具体的なことを返してやれないのが悔しい。]
帰れる人は、帰れるんだろ。
[河合さんから聞いたことが正しい情報ならば。 人の頭の中からは帰ることができる。
——じゃあ、帰れない人は?
>>397食糧を見つけたとして9人分。 運べるかどうかは分からないけど、ひとまず手を上げて夏見さんに了解の合図。]
(417) 2021/11/08(Mon) 23時半頃
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— 1F:食堂 —
[ここに辿り着くまでに、いくつかの教室を覗いた。 なるほど、やっぱり文化祭がそのまま再現されている。 喫茶店をやっていたところには軽食が用意されているから、 それを食べるのであれば食糧は困らないのだろう。 ……食べていいのかの判断はともかく。
それでもなお、現実的に地に足のついた食べ物が欲しかった。 文化祭の関係ない、食堂の備蓄とか。 誰もいないのであっても、それはあるはず……と。
読みは当たって、無人の厨房に調理前の食材や冷凍食品が大量にあるのを発見した。 調理さえあれば暖かい料理が食べられるはずだ。 そして更に、棚の奥から大量の缶詰を発見するのに成功する。]
(418) 2021/11/08(Mon) 23時半頃
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|
うん、運べやしない。
[フルーツ缶に魚や貝の缶詰といった非常食。 おそらくこれは安全で信頼できるものだろうが、流石に重さがある。]
運ぶなら、やっぱ喫茶店の軽食か? 購買におにぎりやパンもあるかね……?
[一人で呟きながら、現実的に無理をしないラインで考える。 まあ、食料自体はあることを確認できたので、 それを伝えれば、誰かは来てくれるだろう。]
(419) 2021/11/08(Mon) 23時半頃
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[それとも、]
俺が何か作ってしまえば早いか……?
[料理をする。 それを考えると、思い出のひとかけらがフラッシュバックして、 いいや、やめておこうか、と判断が導き出された。
とりあえず、手近にあったダンボールを取って、 ひとまず缶詰を運べる重さまで詰めていく。*]
(420) 2021/11/08(Mon) 23時半頃
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[休日に、料理をしてみた。 レシピを調べながら、和食一式。 白米に焼き魚、味噌汁を。
滅多にしない料理経験で、練習のつもりだった。 ちょうど来客として訪れたユイに、味見を頼んでみた。
出来立ての味噌汁をこくりと飲んで、 彼女は「美味しいです」と答える。]
(421) 2021/11/08(Mon) 23時半頃
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[それならよかったと、自分の舌でも味を確かめてみる。 すると、なんだか薄味で、出汁の味がぼやけていて、 物足りないような出来に首を傾げた。
ああ、そうか。 ユイが気を遣ってくれたのか、と、呑気にそう考えた。
ありがとう、ユイ。 お前は俺の顔を立ててくれる優しい女性なんだよな。 やっぱ俺に料理は向かないわ。]
(423) 2021/11/08(Mon) 23時半頃
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[愛の反対は無関心だというのは、誰かが言って広く共感されている言葉。*]
(424) 2021/11/08(Mon) 23時半頃
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