14 冷たい校舎村10
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君は知ってるんじゃないかなと。 何故かそう思ったんだ。
[ 和歌奈、と名を呼んで。車椅子を動かした。 扉から屋外に出れば、 風が長く伸ばした髪を弄ぶ。
小さなモーターが響く音と共に、 一歩、一歩と距離が詰まる。
それでもいつかと同様に。>>1:337 心の距離は測れない。 君と私の間の隔たりは、広く遠いままなのだろう。 ]
(90) 2021/11/13(Sat) 21時頃
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国語の勉強は参考書でやっている。 問題ないな。
やる事か、そうだなぁ。 [ 背後から小さな音が聞こえる。 誰かが来たのだと、 私の頼りになるクラスメイト達。 振り返らないまま確認すれば、少し安堵して。
空を、仰いだ。 ]
(91) 2021/11/13(Sat) 21時頃
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綺麗だな、この世界は。 文化祭は楽しいし、猫耳も可愛い。 星空も見事なものだ。
[ 君の言う壊れかけた世界。 カケラを一つ一つ摘み上げて、 愛おしげに微笑んだなら。 ]
(92) 2021/11/13(Sat) 21時頃
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君が造った世界は、どこも優しくて美しい。
[ 偽物でも、造り物でも。 それを愛しく思う心は本物≠セと。 きっと私は、胸を張って。 ]
エレベーターありがとう。 おかげで私もみんなと同じように 自由にこの学校を回る事ができた。
(93) 2021/11/13(Sat) 21時頃
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和歌奈、君は優しいな。
[ いつかのお返しとばかりに。>>1:305 瞳と口元を柔く緩めて。
今の私がやりたい事を。 君自身が知らない事を>>79 君に伝えよう。 ]*
(94) 2021/11/13(Sat) 21時頃
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[ 風の中でもよく通る声。 この声でクラスの意見をまとめてくれた。 我らが委員長。>>104
君さえいれば大丈夫だ。 安心感を与えてくれた穏やかな声が 今、和歌奈を思ってゆとりなく張り詰めている。
そしてその隣には、 隣、には?? ── 猫??? …… 春満か、愛らしいな。>>110 ]
(115) 2021/11/13(Sat) 23時頃
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ふむ。見解の相違だな。 君の思考を私に寄せようとは思わない。
[ 優しくないと、君は否定する。>>108 頑なな拒絶に心が詰まる。
なんだろうなぁ。 どうして優しい人ばかり、>>0:494
その言葉に対して、首を横に振るんだろう? ]
(116) 2021/11/13(Sat) 23時頃
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[ 車椅子を一歩、進め、声を張る。 ]
大変すまないが、 私には君の家庭の事情はわからない! 君の妹と会った事もないからな!
君が自分の事が嫌になったのは残念だと思うが。 仕方ない事だとも思う。 だが君の家族のことは知らなくても。 君の事は少し、知っているんだ。
…… たとえ最後だとしても、 何かを壊したらきっと君は傷付くのだろう。
君達ときたら、他者にばかり優しくて、 どうにも自分に優しくする事は不得手のようだから。
(117) 2021/11/13(Sat) 23時頃
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[ 困った物だと、顰めた眉と共に息を吐き。
更に車椅子を動かした。 距離は縮まり、重なって。
そのまま止まらないまま擦れ違えば、 フェンスに近い場所へ。 中心を反転した状態で、先程と同じ距離が生じる。 ]
和歌奈。
(118) 2021/11/13(Sat) 23時頃
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[ 今度は私が君に背中を向ける番。 振り向かないまま、名を呼べば。 口元に咲かせるのは、挑むような笑み。 ]
私は君の考えを否定しない。 君と私は別の人間だから。
─── が、
(119) 2021/11/13(Sat) 23時頃
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君が優しくない人間だと言うのなら。 どうか、私の邪魔をしてくれるなよ?
(120) 2021/11/13(Sat) 23時頃
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[ 笑いながら、念を押すように言い放てば、 さてどうしよう?
そうだな、手始めに。 真っ直ぐ車椅子を進めて、 フェンスの破れているところを手で押し広げて、 普段は行けないと向こう側に身体を出せば。 そこから先の事は、君が誰よりも知っている。 ]*
(121) 2021/11/13(Sat) 23時頃
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[ ─── そう、君と私は平行線だから。>>129
きっと距離は縮まらないし、 交わる事もないのだろう。
フェンスの端から地上を覗けばぶわり。 一際大きな風が、前髪やスカートを揺らした。
そのまま特に気負うことなく、身体を傾ける。 しかしいつまで経っても 予想していた浮遊感が訪れる事はなく。 ]
(142) 2021/11/14(Sun) 02時半頃
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[ 不知火真梛も自分の事をわかっていない。 河合和歌奈の言い分もまた、 至極その通りかも知れない。
繋がる手。 暖かい指に屋上へ引き戻されれば、 顔をあげて、その持ち主を確認してから。
やっと重なった瞳に向けて、 まずは河合和歌奈が知らない彼女自身の事を。 得意げな顔で告げようか。 ]
(143) 2021/11/14(Sun) 02時半頃
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ほら、やっぱり君は優しいじゃないか。
(144) 2021/11/14(Sun) 02時半頃
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[ 精神の世界だ。 飛び降りたところで、 実際の死が訪れるとも限らないのに。
それすら放って置けなかった優しい瞳に向けて。 私は再度微笑んだ。 ]
(145) 2021/11/14(Sun) 02時半頃
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それにここだけの話だが。
目玉焼き、本当に練習したんだ。 君は忘れてしまったかも知れないけど。 自分で言うのもなんだが、 なかなか上手く焼けるようになった。
その、 だから……
[ 屋上に戻った後。 続けた言葉はこれまでとは一転、若干気まずそうに。 君の意思を尊重したいのだけれど。 真梛個人の感情を滲ませてしまった自身の不甲斐なさ ほんのり頬を薄桃に染めて。 ]
(146) 2021/11/14(Sun) 02時半頃
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君が食べてくれないと寂しい。
[ 何とか言い切れば、話は終わり。 元々口は達者な方ではない。
ならばと助けを請うように視線を傾ければ、 やはり君はそこにいてくれただろうから。>>138
自身を投げ出すことしかできない真梛とは違う。 彼女を繋ぎ止めてくれる、力強い腕。 ふふと、自然に浮かんだ笑みのまま。 ]
(147) 2021/11/14(Sun) 02時半頃
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委員長殿のお話だ。 しっかり拝聴しないとな、副委員長殿?
[ 悪戯っぽく瞳を煌めかせれば、 真梛は書記の義務を放棄する。
その後語られる彼女達の会話。 記録する事なく、エレベーターに向かえば、 そこにいただろう大きな猫に 「似合っているな」と一声かけた後。
階下に続くボタンに手を伸ばした。 ]**
(148) 2021/11/14(Sun) 02時半頃
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[ エレベーターに乗り込めば、 行きには擦れ違ってしまった雄火がいた。 ]
そうか。 君達もいなくなってしまったのか。
[ そして姿が見えないもう一人。 幣太郎も、おそらくは同様に。 君達はいつだって誰かの為に駆けられる人達だから。 屋上にいない時点で、察せられていた事。
痛々しい傷跡。 悼むような眼差しを向けた後。 ]
(149) 2021/11/14(Sun) 12時頃
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すまないな。 私では君を皆のところに運んでやれない。
[ いなくなり損ねた娘は。 そこにはいないだろう君達に向けて。 頭を下げると、自身の無力さを詫びた。 ]
(150) 2021/11/14(Sun) 12時頃
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[ 次に向かったのは体育倉庫だった。 特に理由はなかったけれど。 強いて言えば他の場所は全て回ってしまったから。
途中に通りかかった体育館。 ステージ上に莉希の姿はなくて。 春満が望みを果たしてくれた事を知る。
彼女には舞台が似合うと思うけれど。 やはり生き生きと動いて台詞を言ってこそだから。
その隣に雄火がいてくれた事。真梛が知る余地は、 猫カフェで交わせた会話次第だろう。]
(151) 2021/11/14(Sun) 12時頃
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[ 体育倉庫。 入った途端、ピタリ、車椅子が動きを止めた。
バッテリー切れ。 …… 何となく、予想していた事もあり。 思わず、ふふと笑みをこぼす。
狼を呼ぼうか? 少しだけ過った考えに蓋をする。
真梛はこの世界においても、 一歩も動けなくなってしまったわけだが。 心は意外なほどに凪いでいた。 この時間もそろそろお終いだろう。 それは、根拠のない確信。 ]
(152) 2021/11/14(Sun) 12時頃
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[ 和歌奈、路子、春満。
君達なら、きっと大丈夫。 ]
(153) 2021/11/14(Sun) 12時頃
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[ 窓から空を見上げる。
あの時はひとつだけだった過去からの光。>>0:320 今は無数の輝きで天を覆っていて。 柔らかな星明りが、真梛を照らしていた。
この世界からの贈り物。しばし堪能したのなら。 後はその時を迎えるべく、 真梛は静かに双眸を閉ざした。 ]**
(154) 2021/11/14(Sun) 12時頃
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特に無茶はしてないな。 私はやりたいようにやったに過ぎない。
[ エレベーターに乗り込んで。>>158 扉が閉まるまでのわずかな会話。
真梛は時折空気が読めない発言をする。 勿論、あの場の和歌奈の行動自体は、 真梛にとっても喜びに繋がるものなのだが。
やりたいようにが、意味する事。 たとえあそこで助けの手が伸びなくても 自身の望みが叶っただけだからと。
それを口にしない選択は、幸いにして選び取れた。 ]
(164) 2021/11/14(Sun) 18時頃
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[ 手を必要としていないやつ。
誰のことだろう? 君の心が読めたなら、私はおそらく首を傾げる。
真梛はいつだって誰かの手を借りてばかり。 抱えてもらわなければ、階段は上れないし。 今だってほら。 エレベーター内で眠る クラスメイトを模したマネキン。
他者の理想に沿うべく必死に駆けていた 頑張り屋の君の事。 皆のところに連れて行く手を、足を。 真梛は持ち合わせていない。 ]
(165) 2021/11/14(Sun) 18時頃
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[ そう。不知火真梛は、いつだって、 誰かの手を借りて生きている。
ただ狼を呼ぼうと試みては、 何度も何度も失敗しているだけだ。 ]
(166) 2021/11/14(Sun) 18時頃
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[ ─── とまあ君の心が読めない以上。 それはもしもの仮定に過ぎず。 ]
君以外に頼れと言っていただろう。
[ だから拾えた言葉にだけ返す。 きちんと覚えているんだ。私は。 忘れないように気をつけているんだ。 ただ同時に君の言いたい事も理解していた。
迷惑だと言った覚えはない。
…… そうだなぁ。 そんなみんな≠焉A>>2:303 もしかしたら。何処にもいないのかもしれない。 ]
(167) 2021/11/14(Sun) 18時頃
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[ もう扉が閉まりかけていたから。 そしてその続きの言葉を、 平塚莉希の前に落としてしまったから。>>2:304
知っているよ。
[ だからこれから友を救おうと進む君に対して 返せたのは、ただの一言。 ]**
(168) 2021/11/14(Sun) 18時半頃
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