8 Solo Assembly Letters
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[時を数えるのも無意味な程、変わらず終わらぬ夜の静寂。 幽霊のような状態のデアドラはなおも、リフィー川の上流、霧の壁の側に三角座りで浮いている。]
ねえランサー。
[そして川沿いの道路に佇む“あのランサー”の亡霊も相変わらず。 こちらを向きながらこちらに反応しない、そんなギミックエネミー相手に、デアドラは淡々と壁打ちのようなお喋りを始めていた。]
生真面目すぎるあなたでも絶対、ベルモントパークは楽しめると思うんだよ。 だって今はランサークラスでも、昔は馬には乗ってたんでしょ?
わたしもさ、セクレタリアトと、全力疾走して勝ってみたかったもの。 マッハがやらされた理不尽な競馬とは違うし。 っていうかマッハと違って、競馬に出る前にわたし死んじゃった。
[左手首のミサンガに触れながら零す言葉に、亡霊は答えない。]
(+7) 2021/04/18(Sun) 15時半頃
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きんのファッションショーだって見て見たかった。 ファッションショー? 違うな。違うや。でもいっか。
きんの世界は雪の季節に桜が咲くんだって。 あなたの故郷とは違う雰囲気の筈だけど―― っていうか普通に異界みたいな世界だし。 冥府との扉、なんて話まで聞いたら “あのキャスター”は絶対食いついてたと思う。
この世界には呼ばれてない?と思うけれど。 きんのお母さんとお父さんにも、会ってみたかったな。
[手持ち無沙汰に、自由帳の1ページの黒鉛に触れる。 やはり、亡霊は答えない。]
(+8) 2021/04/18(Sun) 15時半頃
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愛《じゆう》と混沌《しあわせ》――は、 あなたにはどうなのかな? あなただって血も涙もない鬼軍人じゃないし、 っていうか、結構よく泣くあなただし。
キリトのお茶、カルデアでみんなに 振舞って味わってみたかったのに。 始祖王《エンシェント・ワン》と《蒼い鳥》の話だって、聞かせたかったのに。
[ティーバッグの紅茶葉が微かに擦れる音がする。 やはり、亡霊は答えない。]
(+9) 2021/04/18(Sun) 15時半頃
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それに、ヘンなガブリエルの作り上げた双子の月とか。 こっちは本当に全然なんにも、詳しい話、聞けてないけれど。
ブリテンと水戸のヴィクトーリアのことも―― こっちも詳しい話は聞けてないや。 そういえばお屋敷って、やっぱり水戸の方なのかな。死んじゃった場所ってことは。
[そこで我に返った――というには未だぼんやりとした心地で、デアドラはお喋りをつづけた。]
(+10) 2021/04/18(Sun) 15時半頃
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…………、まるで休戦状態。 ふしぎ。 あの時だって、わたしとあなたは 敵同士のはずだった。なのに、
[ダブリン聖杯戦争は水戸聖杯戦争とは異なり、7組によるバトルロワイヤル戦。 つまり一人と一騎にしか、聖杯を手にする権利はなかった。]
数合わせのマスターどうしで なんとか頑張ろ、って あなたのマスターがベルに持ちかけたんだっけ? 本当、あなた好みの清廉で愚直な、 しかも正直な、“まっとうじゃない”魔術師。 だからあなたも、最期まであのコのこと、 本気で守り切ろうとしたんでしょ?
(+11) 2021/04/18(Sun) 16時頃
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――チェ・ヨン。 あなたにも、もう会えないや。
[そのランサーを模した亡霊は、やはり、答えない。]
(+12) 2021/04/18(Sun) 16時頃
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[……以上、デアドラのこれらの言葉は、全て確り声として出されている。 うっかり霧の壁の向こう側から通りかかる者がいれば、夜の静寂の中、するっとまるっと全部聞き拾うことができるだろう。]
(+13) 2021/04/18(Sun) 16時頃
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[「もう会えない」の言葉にまるであたかも応じるかのように、“あのランサー”の亡霊は、川で分かたれた北側の街へと融けるように去っていった。 なおこれは余談だが、北側の街、オコンネル通りに面する中央郵便局には、かの英雄クー・ホリンの像が建てられている。
自分が(本当に)死んだと思い込んだデアドラは、川の上で相変わらずの三角座りをしていたのだが――。 「他の選手がいるフィールドに移動できるようになるかもしれない」という主催側の手紙をすっかり忘れていたこの幽霊(仮)は、一瞬、聞こえてきた気がした驚き声に、ふっと頭を上げた。]
この期に及んでライダーのやつ―― って訳ないよね。 でも、いまの、気のせい?
[などと宣いながら、それでも一応立ち上がる辺りが「切り捨てられない」性分の表れか。 川の上、霧の壁沿いに、デアドラはいまいちど耳を澄ます。]
(+14) 2021/04/18(Sun) 16時頃
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[霧の壁のそばで暫く耳を澄ませていたデアドラは、ついに一歩、踏み出す。 それは丁度、空中散歩をする幽霊(仮)。 黒い影めいた亡霊ではなく、あくまであの紫色の冊子の顔写真の通りの色彩の幽霊(仮)。 ただちょっと重力を無視してしまえる程度の、ごく普通の幽霊(仮)だ。 ――そして、]
へ ?
ヴィク…………トーリア?
[そんな姿が見えた気がして、思わず素っ頓狂な声を挙げ、碧眼を大きく見開いた。
今までずっと、写真と手紙の中でしか知らなかった相手。 それ故に、聞こえてきた気がした声だけでは、相手がそのひとだとは判らなかった。 そして「フィールド間の移動の可能性」を失念していたが故に、暫くの間、デアドラは混乱して立ち尽くす。
……まさか当の彼女が、あの屋敷で「一緒に戦ったコ」の銃弾に撃ち抜かれて“死んだ”、とは思いもしない。 そして「蜘蛛の糸めいた、一縷の望み」の紙飛行機がきちんと彼女に届いていたことも、また、知らないのだ。]
(+18) 2021/04/18(Sun) 21時半頃
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[モノクロームの街角を照らす、たったひとつのしろい月。 そんな景色の中に、ストールの赤、ひとつ。 その赤のひと――ヴィクトーリアがデアドラの名を呼び、駆けてくる。]
へッ……え? ええ?? なんで? なんでなんでなんで????
[相手がこの異界のダブリンにいるということだけではない。もう死んでしまった自分のことを、明らかに、認識している。 “あのランサー”の亡霊ですら認識していなかったこの幽霊(仮)を、彼女は認識している――。 そう思ったデアドラは余計に混乱し、されるがままにハグされた。]
(+26) 2021/04/19(Mon) 09時半頃
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[そう、 しっかりと ハグされた。
つまり、ヴィクトーリアは、この幽霊(仮)にきちんと触れている。]
え、 ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!??
[幽霊だという自覚を持っていたデアドラは、抱きしめられたまま、やかましい絶叫を挙げた。]
(+27) 2021/04/19(Mon) 09時半頃
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[そこでデアドラは、はっと、思い至るのである。]
あ。 そっか。 あなた、死んじゃってるから、判るのか。
[ここでの「死んじゃってる」とは、「この世界の中で死んだ」ではなく、「元々死んだ人である」の意である。 結論から言えばおそらく、“死亡に近い状態”どうしであるが故に触れ合えているだけなのだが、デアドラはそれに全く気付いていない。 この世界に呼ばれた死者はこの世界の中では生者扱いなのでは?などの深いことは特に考えていないバーサーカー思考である。]
ってことは あれ あれ?? きんも、鬼火、だから、 もしかして、わたしのこと、判ったりする??
[などという独り言を思いっきり声に出しながら、目をぱちくりぱちくり。 なおその「もしかして」の中に、天の御使いは特に含まれていなかったりもした。]
(+28) 2021/04/19(Mon) 09時半頃
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[ともあれ、(自分なりに)今の状況を理解した(つもりの)デアドラは]
ヴィクトーリア。ヴィクトーリアヴィクトーリアヴィクトーリアヴィクトーリアヴィクトーリアヴィクトーリアヴィクトーリア!! 会えた! あなたに会えた! 会えたよ会えた―――…
[ぎゅっと、ぎゅーっとハグを返そうとして――やめた。 サーヴァント、しかもバーサーカーである自らの膂力を、はっと思い出したからである。 (ちなみにサーヴァントの数値で言えば、筋力D程度ではある) そして改めて、やんわりとした緩めの力で、そっとヴィクトーリアの身を抱きしめ返したのである。]
(+29) 2021/04/19(Mon) 09時半頃
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