10 冷たい校舎村9
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[ どちらにせよ、ここは少し居づらい。 慎一は黒沢の親の顔をさっきから見れない。 どんなに辛かろう、悲しかろうと思うから。
だから、あまり長居はしないつもりで。*]
(+198) 2021/06/15(Tue) 20時頃
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— 病院・集中治療室前 —
[>>+196向井くんが来たならば、 コーラありがとーって顔をしてそちらに歩いて、 放られた缶をキャッチする。]
ちょっとー。
[炭酸が宙でシェイクされたことへの抗議の声を上げつつ、 買ってから時間が経った缶の温度を確かめる。
……こんな寒い季節に「つめた〜い」のスイッチを押させて、 ずっと持っていてもらった苦労を思えば、まあ、 文句を言うより重ね重ねお礼を言うべきなのかもしれないけど。]
(+199) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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そっか、わかった。
[>>+196戻りが遅かったのは道理で、 帰ってきた人たちを出迎えていたかららしい。 乃絵ちゃん以外の帰還をもはや疑っていなかったから、 驚くこともなく、会ったら挨拶をしようか。
そうすると、まだ残っているのは誰なのか。 落第生でもわかる簡単な計算問題。]
……頑張ってるんだ、今も。
[あの校舎に残って答えと対峙している炭蔵くんと芽衣ちゃん、 そして、乃絵ちゃんも。私には想像もできないくらい、 今、頑張っている最中なんだろうなあって。]
(+200) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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[買ってきてくれたコーラをすぐに飲むべきか、悩んで。 シェイクされた缶をここで開けたら、どうなるかは容易に想像できるし、 自分の家や学校ならともかく、病院だしなーという遠慮は流石にある。 結局、ここで缶を開けることなくコートのポケットの中にすとんと落とした。
コーラ代と言いつつお金を取り出そうとするけど、 受け取らないという素振りをするようなら、 何度も問答はしないので、奢られておきましょうか。]
(+201) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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[>>+198向井くんと同じ居辛さを私も感じているけど、 それでもここに戻ってきたのは、やっぱり気になるから。
乃絵ちゃんが帰って来れるか、というのはもちろん、 乃絵ちゃんのお母さんのいるほうを一瞬だけ見て、 思ったことをどうにも誰かに言っておきたい衝動に駆られる。
あの世界の主に辿り着けなかった落第生の一人なりに、 気付けるとしたら、今が最後のチャンスなのかも、って。
向井くんの近くに寄って、 他の誰にも聞こえないくらいの小さな呟きを吐き出す。]
(+202) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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……乃絵ちゃんのお父さん、来てないみたい。
[だからどうなんだ、という問答をしたいわけではなく、 乃絵ちゃんの家庭事情を今ここで詮索したいわけでもない。
ただ、私が感じてしまった可能性って間違ってないよね?と、 それを確認したいという気持ちを言葉に込めて。
それだけ伝わったなら、いや、伝わらなくても。 ここから去るであろう向井くんを見送るだろう。*]
(+203) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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── 現在・集中治療室前 ──
[ 番代がこちらに歩いてきたので、>>+199 治療室前が気まずい慎一は少し助かる。
だから、抗議の声にも少しだけ笑って、 「ごめん」って素直に謝っておこう。
コントロールは悪くなかったろ。 ……そういう問題じゃない? 知ってる。
さっき会った面々について告げれば、 落第生による引き算の時間だ。>>+200]
(+204) 2021/06/15(Tue) 21時半頃
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[ 「頑張ってるんだ」って言葉に、 慎一は「うん」ってうなずいた。
何も知らない人からすれば不審な会話でも、 この距離なら黒沢の母親には届かないだろう。]
……がんばってるよ。 黒沢もだし、ユーガも、暮石も。
[ あんな世界を作り上げたのだ。 まだがんばってるって、慎一は信じる。]
(+205) 2021/06/15(Tue) 21時半頃
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[ 確かに。飲むのはせめて待合室だった。
ポケットにしまわれたコーラに、 慎一は内心でほっと安堵の息を漏らす。
あまり状態のよくないコーラのお代は、 もちろん、丁重に受け取りを断って、>>+201 ふいに揺れた番代の視線を追っていた。>>+202]
(+206) 2021/06/15(Tue) 21時半頃
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[ ……そこには女がひとりいる。 黒沢の母親だって慎一は疑わなかった。 娘の帰りを今か今かと待ってるんだろうと。
かわいそう。と慎一は思って、 だから番代のささやきは不意打ちだった。>>+203
びくりと一歩あとずさりしそうになって、 それでも、流し込まれた言葉の意味を咀嚼する。]
……あ、
[ ひとり≠ナ待っているんだなって。 今の今まで慎一が気がつかなかった事実。]
(+207) 2021/06/15(Tue) 21時半頃
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……忙しい、のかな。
[ その人のほうへ張り付きそうだった視線を、 無理やり引っぺがして、かろうじて慎一は言う。
忙しいのかもしれない。家をあけていたのかも。 黒沢の家族について、聞いたことはあったっけ。
いくらか頭の中で理由を並べ立てたけど、 たぶん、自分でも不思議なほど声は強張っていた。]
(+208) 2021/06/15(Tue) 21時半頃
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[ ……もし、これが慎一だったら。 きっとこの場所はもっと騒がしい。
どんなに大事な仕事が入ってたって、 父も母も全部放り出してここに駆け付ける。
どこか別の場所にいたんだとしても──、 なあ、黒沢が搬送されてどのくらい経つっけ。
そんなこと聞けやせずに、 慎一はじっと番代のことを見下ろしていた。
人の家族について憶測で何か言いはしないけどさ、 たぶん、慎一の目はひどく動揺に泳いで、 似たものを感じ取ったことを番代に知らせるだろう。]
(+209) 2021/06/15(Tue) 21時半頃
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……俺、やっぱり向こう行ってる。
[ 他人がいても気まずいだろうとか、 そんな殊勝で冷静な心掛けじゃあなく、 たぶんその瞬間、そこにいたくなかっただけ。
鏡もないんじゃ見えやしないが、 きっと、慎一は顔をひどくゆがめてそこを立ち去る。*]
(+210) 2021/06/15(Tue) 21時半頃
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おう、ただいま。 えっと…… いや、なんでもない。
[そこに居たのは 物言わぬ人形なんかじゃあなくて>>4:+66 ちゃんと生きているマナだったから、さ。
無事帰ってこれてた喜びだとか、 そりゃあ… >>4:395 言いたいことは山程あったんだけど。 ま、それはあとでいっかな、って。
お嬢様、カフェオレ温めておきました。 お陰様で俺のポケットもほかほかしていて、 俺は、じゃ、またあとで、って売店に向かうんだ]
(+211) 2021/06/15(Tue) 21時半頃
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[そしてこちらもまあ 無事、売店は開いていたわけで。 (どうしても開いてるわけがねえって? じゃあ絆創膏の自販機があったことにするからな!) 調達するのは絆創膏だけ。
んで暫く廊下にあった大きな鏡に向かって 俺は格闘することにする。 眦の傷、そんなに大きくなくてよかったな、って。
あっちの世界はさ、 日常なんかとは随分かけ離れていたけれど 確かに、夢なんかじゃないって思い知らされる。]*
(+212) 2021/06/15(Tue) 21時半頃
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架空惑星 レンは、メモを貼った。
2021/06/15(Tue) 21時半頃
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― 綿見と ―
そっか。だろーなとは思ってたけど、 やっぱ姿見るとほっとする。
え、あ、そう!?ごめん。 ついつい気になっちゃって…… でも恥ずかしがってる綿見ちゃんなんて レアだからちょっと役得。なーんて。
[勿論なんか変な気持ちで見てたわけじゃない、が、 確かにちょっと不躾だったかも。>>+192 謝罪を交えつつ、軽口を叩く綿見に笑いかける。 元気そうで何よりだ。]
(+213) 2021/06/15(Tue) 22時頃
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[続いて、黒沢の容体に水を向ければ ちらりと綿見の視線が集中治療室に向く。 まだ状況は何も変わっていないようで、 笑っていた顔を物憂げに曇らせた。]
………そっか……
九重ちゃんが来てるのは聞いたけど、 番代ちゃんも来てるんだ。
[番代家の厳しい門限を知っている身としては よく親が許可してくれたなって思ったけど、 それだけ必死に頼みこんだのかもしれない。 やっぱり皆、じっとしていられないのだ。]
(+214) 2021/06/15(Tue) 22時頃
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架空惑星 レンは、メモを貼った。
2021/06/15(Tue) 22時頃
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[他の奴も来ているんだろうか、 なんて思考の端に過った所で ちょうど鳩羽が戻って来たか>>+191
おっすおっす、って軽く手を上げて挨拶し 飲み物俺の分はねーの?とか、てかその傷どしたん、とか ちょっとした戯れ(ウザ絡みとも言う)をしたのち 売店に去っていく友人を見送る。]
(+215) 2021/06/15(Tue) 22時頃
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……忙しいだけ、なら、いいんだけど。
[>>+208可能性を考えるならいろいろある。 元々父親はいなかった、とか、いろんな事情もあるだろう。 私は乃絵ちゃんの家庭については知らないんだから、 どう足掻いても余計な推測になってしまう。
私の両親だって、私が自殺未遂を起こしたなんてことがあれば、 絶対に、全速力で、何があっても駆け付けてくれるという確信がある。 だから、そうじゃない家庭について想像を巡らせる能力が足りていない。]
(+216) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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[だけど、だけどね。 もし父親が来ない理由が、 乃絵ちゃんが自ら命を絶とうとした理由と何か関係があるなら、って。 少しでも思ってしまったせいで、歯止めが効かない。
>>+209無言で視線を向け合えば、 同じ発想に至ったかどうか、目に走った動揺を感じ取った。
そのまま向井くんを見送って、 心の中に引っ掛かったその違和感と向き合いながら、 過ぎていく時間を待ち続けるだろう。
ポケットの中に重みを与えているコーラ缶の、 プルタブ部分を指でなぞる動きを繰り返す。
……うん、少し落ち着く。*]
(+217) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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[んで、聞かれた話の続き。>>+194 校舎内で綿見とあんまりじっくり話す機会は無かったけど、 そう言う風に思うってことは、 やっぱり彼女の中でも何か変化があったのかな。 そこまでは分からないにせよ。
何せ、成り行き上とは言え、 唯一俺の中学時代のごたごたを零した相手ではある。 ちょっとだけ気恥ずかしいような気持ちで 眉を下げて苦笑を浮かべた。]
………うん、
(+218) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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なんてゆーかさ、あっちでいろいろ話して、 人の話も聞いてみてさ、 俺視野狭かったんかなーって。思って。
過去言われたことは変わんないし、 俺がやらかしたことも変わんないし、 新しい彼女が出来たわけでもないけどさ。
[現実が何か大きく変わったわけでも、 根本的に解決したわけでもない。
…俺が実の親に棄てられた事実が 変わるわけじゃない。けれど。]
(+219) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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いつも笑ってなきゃ駄目だって思い込んでたんだ。 でも、なんかさ、皆優しいんだよ。 優しくしてくれたんだと思う、ずっと。
だからもっかい信じてみたいなって。 今度はちゃんと向き合いたいなって。思った。
[求めた愛を得られたわけではないけれど。 俺の周りにはたくさんの人がいて、 少しずつやさしさや愛をくれていた。
闇雲に欲しがるばかりで、 ずっとまともに見ていなかったんだって。 ようやく気付いたから俺は、 やり直したくて帰って来たんだ。
いつか俺も俺をちゃんと好きになれるように。]
(+220) 2021/06/15(Tue) 22時半頃
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……俺の方はそんな感じ。
[なんか語っちゃったな。 素に戻るとちょっと照れ臭くて、 あははと笑って軽く頭をかく。]
綿見ちゃんは? ちょっとは気持ち、楽になった?
[いつかのやり取りを思い出して。 お返しに聞いてみるんだ。**]
(+221) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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── 現在・病院外 ──
[ 「忙しいだけなら」って、 番代の言葉がやけに頭に残った。>>+216
そうやって少ない言葉を交わして、 その場を離れた慎一は、 待合室にいる人と混ざる気分でもなくて、 結局、またなんとなく外にいる。
たぶん、寒いくらいのほうが、 頭の中がぐちゃぐちゃになったり、 あるいは手に汗を握りそうなとき、 少し落ち着ける気がしてよかった。]
(+222) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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[ そう。可能性はいくらでもある。
いろんな家族の形があることも、 慎一は知らないわけじゃない。 そう頭では理解しているはずなのに、 今は、無性に落ち着かないから。
病院の外、入り口から少し離れて、 邪魔にならないようなところに立ち、 時折冷めたミルクティーを口にしながら、 ペットボトルの蓋のぎざぎざを、 短い爪でじっじっとこすってた。
誰かが似たことしてるとも知らず、>>+217 ただ、自分を落ち着けるために。]
(+223) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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[ 慎一がここでそうしている間にも、 病院の中がわあっと明るくなりますように。 どうか、また会えますようにと祈りながら。*]
(+224) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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[ 少し前。 ひとみからの反応を見て>>+187、 生きづらかったよね、なんて言われて。
思わずこくんと頷いて、ちょっとだけ 目が潤みそうになっていたのは秘密の話。
こんな簡単なことだったし、わかってくれた。 …… 言っても大丈夫だということに気がつくのに、 やたらと時間は掛かってしまったけれど。
ひとみも私も、同じようなものに囚われていた。 これからはそんな話をするような事も 段々と無くなっていくのやもとは思う。]
(+225) 2021/06/16(Wed) 00時頃
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[ 誰にも言えない秘密の共有があった事は、 何処かにあの子たちと一緒に残るだろうけど。
それこそ、あの冷たい校舎の中とかに。]
(+226) 2021/06/16(Wed) 00時頃
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[ さいごにはなにが残されるのだろう。 ここにいる私たちには、想像しかできない。]*
(+227) 2021/06/16(Wed) 00時頃
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