10 冷たい校舎村9
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[ とにかく涙を止めて、落ち着いて、 頭の中の雑然とした状況を、 もう少しマシなものにしたかった。
扉が開かなかったことを知らせなきゃ。 とは、そのときの慎一には浮かばなくて、
そうだ。 昼飯を買い忘れてた。って慎一は思う。*]
(83) 2021/06/06(Sun) 11時頃
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― 回想・夜遊びと反抗期 ―
うん、すげー。
[尋ね返してくる鳩羽に理由は言わずに鸚鵡返して。>>58
返って来る言葉は過去形だ。>>59 …つまり、今は悪くなってしまったのか。 恐らくそれが遅れてきた反抗期の理由>>60
ぽつぽつと、どこか拗ねたように 吐き出す彼に一度視線を遣って、また遠くを見た。
父親との喧嘩。恋愛で家庭がめちゃくちゃになった。 何があったのか全貌を知ることこそ出来ないけど ヒントからぼんやりと輪郭を察することは出来る。]
(84) 2021/06/06(Sun) 12時半頃
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……そー、 だね。 恋愛って、こわい。って俺も思う。
嘘みたいにブレーキが効かなくなってさ。 今まで培ってきたもんとか、大事にしたいもんとか、 竜巻みたいにぶっ壊しちゃうの。
…………理不尽なもんだよね。
[鳩羽の言葉に鈍く胸の痛みを感じたのは 俺はどっちかと言うと加害者側の人間だって自覚もあるから。 めちゃくちゃにしてしまった、 めちゃくちゃにさせてしまった。 自分さえいなければきっとそうならなかった――なんて。
恋愛ごとを疎う彼に、どんな言葉をかければいいのか こんなことを言う資格があるのか、少し迷って息を吐く。]
(85) 2021/06/06(Sun) 12時半頃
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…………俺、さあ。
昔一人だけ、すげー好きになった子がいたんだ。 でも、恋愛にはなんなかった。 その子は俺のことなんとも思ってなかったから。
[恋は一方だけでは完成しない。 それこそ"めちゃくちゃ"になって終わっただけ。]
もーほんと、全般的に俺が悪いんだけど。 ダメダメでさ。ちょっとしたトラウマっていうか。 そんでも希望を捨てられないし、諦めきれないんだ。
あーいや、んー、俺の話は今関係ないんだけど。 何が言いたいかって言うと………
[自分でもまとまらなくなってきて、軽く頭をかく]
(86) 2021/06/06(Sun) 12時半頃
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恋なんてすげー不安定なもんだから。 渦中の本人が案外一番戸惑ってたりするし。
何も信じらんないって言ったけど…… まだ完全にめちゃめちゃになってないなら、 もうちょい粘ってみてもいいかもよ。
色恋沙汰って、これがまたややこしいっていうか。 本人から話聞いてみないと 分かんねーことも結構あるからさー。
[今まで悪くは無かった、 そんな家族関係を築けていたのなら。 "めちゃくちゃ"になってしまうのは悲しいなって それも俺の正直な気持ち。
―――羨ましいのかもしれないな。 だって、反抗期は信頼の裏返しだ。 ぶつける相手がいなければ成立しないのは、恋と同じ。]
(87) 2021/06/06(Sun) 12時半頃
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ま、それでどーしてもどーにもなんなかったら 一泊くらいは泊めてあげるよ。家出少年。
[ただし、泊める先は実家じゃないかもしれない。
交友関係の謎さはこんな所でも健在。 ちょっと友人の不良度を上げてしまうかもしれないが、 補導よりはましでしょってにやりと笑うのだった。**]
(88) 2021/06/06(Sun) 12時半頃
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── 回想・文化祭当日 ──
ぎゃははっ、 なんつーカッコだお前! なんでカチューシャだよ。 つか、情報量、多っ!
レンだけなんかやべー。 でも超おもしれー。
え、客引き組でそのへん並べよ。 黒沢、写真撮って広報アカに上げて! あと、俺にも送っといて。 あ、黒沢も入って撮る? 撮ろっか。
[ 客寄せパンダ──もとい鳩羽の姿に、>>0:1056 慎一はひっくり返りそうなくらい笑った。]
(89) 2021/06/06(Sun) 12時半頃
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[ プラカードもだけど、クラスTも。 かわいいクレープの絵ならいいが、 詰んだデザインが万が一どこかに残ってたら、 慎一は本当に吐くんじゃないかってくらい笑った。
せっかくなので記念写真を残そうとしながら、 スイーツアクセ着用、明るく元気な客引きと、 屋台のホラーテイストや、文字通りの目玉メニュー。 割と温度差があって風邪引く人が出ないか心配。
まあ、慎一が心配したって文化祭は始まって、 想像以上の繁盛っぷりに接客に追われることになる。]
(90) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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[ 暮石にボタン風対応集を見せられたとき>>0:1185も、 慎一は「本気だったわけ?」ってゲラゲラ笑って、 それを自慢のチャートの隣に貼りだしたはずだ。
本当は自分以外の誰かがレジに入ったとき、 トチるのを目ざとく見つけてやって、 「販売係スイッチ、あ!」とか言いたかったけど、
たとえば前からも横からも後ろからも、 つまりお客さんや調理係やほかの人から、 同時にあれこれと話しかけられたら、 慎一はその情報量に溺れただろうから、
案外そのスイッチに一番助けられたのは、 当の慎一だったのかもしれない。]
(91) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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[ でも、そのおかげでうまくいった。 慎一は途中休憩ももらいながら、 チャートと対応集をちらちら見つつ、 最後まで機嫌よくレジに立っていたし、 「これ、役に立ったなあ」なんて、 対応集を指してしみじみと暮石に言ったりもした。
クラスの出し物としての評判も上々。 売上も計算する間もなく上々だろうなって、 高校最後の文化祭を楽しく終えられそうだった。
でも、なんでかなあ。 いつも何かがうまくいかないんだよね。]
(92) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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[ その10円玉なら、慎一が持ってる。>>0:1187]
(93) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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[ 売ったモノの数と、手元に残った金額。 用意していた小銭の数との確認作業。 もう暮石が数えたって知らなくて、 ズレがないかをちゃんと数えようとして。
その直前に慎一は、 レジスペースの変なとこに挟まってた、 10円硬貨を1枚見つけて小銭の山に混ぜた。
何かの拍子に挟まったんだなって、 深く考えることもなかった。
それで数えたら、10円余っちゃった。 なんで? って頭の中が真っ白になって、 こっそりと震える手で数えなおしても合わない。]
(94) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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[ 自分が関わってたら他人を責めなくて済む。
慎一はそう思ってレジに立っていたけれど、 本当に何かズレが生じてしまったときに、 どうしたらいいかなんて考えてなかった。
この10円をどうすればいいんだろう。 どこからズレていたんだろう。 返す相手なんてわかるはずないし、 でも、計算はちゃんと合わなきゃいけない。
10円くらいいいじゃん。って考えは、 慎一の頭には一切浮かんでこなかった。
でもどうしたらいいかわかんなくて、 もう何も考えられなくて、息が詰まって、 混乱したまま、慎一は10円玉を1枚抜いた。]
(95) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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[ 会計の記録上の収支の辻褄は、 最終的には合っているはずだ。]
(96) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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[ どうしたらいいかわかんなくて、 自分の財布に混ぜることもできなくて、 まだ持ったまんまの10円玉を見るたび、 慎一は今も「なんで?」って思う。]
(97) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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[ なんでいつもうまくいかないんだろう。 いつも些細なことで息を詰めて、 動揺して、泣きたくなる自分を、 慎一は、「明日はうまくいくよ」って、 明日はきっとかんぺきな1日になるよって、 必死になだめすかして生きているのに、 そんな日はちっともやってこない。
あんなにかんぺきに思えた文化祭だって、 最後の最後でこうなっちゃうんだもの。 その事実にも、慎一はやっぱり泣きたくなる。]
(98) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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[ だからこれは、慎一にとっては、 楽しいばかりだった日、たったひとつの瑕の話。*]
(99) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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[ 訊いた先には、取り繕えなくなった顔が>>28 もう少しで溢れてしまいそうなその瞳が見えて。 いっぱいいっぱいなんだろうな、と。
飛び出していく姿を止める気にならなかったのは それだけが理由ではないけれど。
賑やかで雑然とした文化祭の日の廊下。 時間が戻ったように、あり得るわけがない光景が そこには広がっていて。]
…… 文化祭の思い出は持っていきたい、って こういう、こと……?
[ 辺りを見回しつつ、一歩廊下に出る。]
(100) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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[ 誰かを探してくるって言ったひとみに追い抜かれつ、 調理室へと足を向けたのは、……何故だろう。
文化祭の時に自分の根城だったとか、 部活で使っていて馴染みがあったとか、 多分、多分、……そんな理由。
カッターナイフを蹴飛ばしつつ、 夢遊病患者の様に無意識に行っていたのは、 我ながら笑ってしまうけれどね。
…… 外見では、わからないだろうけれど。 私もきっと、焦って、慌てていたんだ。]
(101) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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[ どこもかしこも浮ついててお祭り騒ぎみたいで、 みんなふわふわ楽しそうにしているのに、
いつだってそれをじっと、 暗い黒い瞳で見つめているのが私だった。]
(102) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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──── 諦めたのはいつのことだっけ?
(103) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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…………。
[ 今だってそう。 世界はきらきらカラフルなのに 自分の居るところだけモノトーン。
静かで落ち着いていて諦めて悟って。 ぎりぎり残っていた調理部のルーティンに縋った。
クレープの材料はきっとあると思ったから。]
(104) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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[ が、]
あ、れ。 …… 食堂行かないと、無い感じ? あっちのキッチン慣れてないんだけど……
[ はあ、とため息をひとつ。 文化祭。文化祭ねえ。 忙しくて何も考える余裕がなくて、 それは楽しくて良かったな、と 思う。]*
(105) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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── 回想:夜遊びと反抗期 ──
[恋愛は理不尽だ、と語る、 ユキの言葉を聞いていた>>85 ユキから語られる過去からは、>>86 彼が「どちら側」なのかはわからない。
確かにユキの話は、 俺の話とは全然違ったかもしんないし ユキが言う通り、関係なかったかもしんないけど
…… でも、ユキの本音の一端を聞けたこと ちょっとだけ嬉しい、とさえ思っちまった。]
(106) 2021/06/06(Sun) 13時半頃
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希望を捨てられないし 諦めらんないから、 ……前。上手くできるきがしねーって 俺に話したのってそういうこと?
[話の合間、思い出したのは まだ俺の家庭が平和だったころの会話>>0:406
上手く行かなかった。 もう一度一歩踏み出すのが怖い。みたいな。 そういうニュアンスなのかな、って。 俺は頭ん中でさ、話を都合よく繋ぎ合わせる。
繋ぎ合わせたところでさ、 俺にできることなんて、きっとねーのに。]
(107) 2021/06/06(Sun) 13時半頃
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[まあその話の結論がどうあれ、 ユキが俺の話に切り替えて、 んでもうちょい粘れ、って言うなら、 曖昧にさ。笑ったんだ。
……… 俺自身の恋愛の話とかならともかく もういい年した父親とかの話だぜ? 正直若干きもちわりーとか思ってしまうのは 俺が多分当事者の息子って立場だからだと思う。
ユキに、羨ましいって思われてるなんて そんなこと全く思いもよらなかった。]
(108) 2021/06/06(Sun) 13時半頃
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……めちゃくちゃになんねー道があるならさ 俺だって、それを望みてーよ
[母親の存在なんて、はじめからなかった。 そう思えるような、三人家族。 それでいーじゃねえかよ、クソ親父。 ずっと手に持っていたほうじ茶は、冷え切っている]
(109) 2021/06/06(Sun) 13時半頃
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[大きくため息をつく。夜の冷たい風が 鼻から入って、肺をたっぷりと満たしていく。 それなのに。吐いたところで浄化されるわけでもなく まだ身体の中を、どろどろと。どろどろと。 なんとも言えない空気が流れ続けていた ]
息苦しいな。
[恋愛に振り回された側であれ。 恋愛で誰かを振り回してしまった側であれ。 人間の持つただの感情のひとつだ、 それが絶対悪とは言い切れねえからさ。
だからきっと息苦しい。どちら側であっても。]
(110) 2021/06/06(Sun) 13時半頃
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……泊めてくれんの? なんなの?神様なの?
[でもこのへんは現金な男子高校生。 ユキが泊めてくれるっていうなら、 短く息を吐き出してから、へらっと笑う。
── 結果どこに泊められたのか。>>88 その上で、翌日は学校に行けたのか。 俺はきっと不良の階段を二、三段駆け上がった筈。]*
(111) 2021/06/06(Sun) 13時半頃
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―― 現在:教室 ――
[ 意味がわからない廊下の光景から目をそらして、 私は窓の方を見た。 だってもう、こんなの、帰るしかないじゃない。 今日は休校だし、ここは電波通じないし、 廊下の妙な状況も、学校を出てしまえば関係ない。 メールのことを調べるにしたって、 圏外じゃどうにもならない。 となると、問題はお天気だ。 帰れないくらいの大雪だったら困る。 そう思った私は、窓を開けてみようとして、 そうしたら、同じことを考えたのか、 鳩羽君が先に開けてた>>56 ]
えっ?
[ 鳩羽君は開けた窓をものすごい勢いで閉めてしまった。 確かに入り込む冷気はここまでばっちり届いたけど、 そんなに吹雪いてたのかな? ]
(112) 2021/06/06(Sun) 13時半頃
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