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ーーそれから。僕は彼を姫抱きにしてバスルームに向かった。 汚れた彼を清める為である。 恋人同士キャッキャウフフというよりは、気持ちとしては亡くなった人のお清めが近しい。
彼はまだ生きている。しかし、僕が注いだ毒により病状が悪化し、やがて息絶えてしまうだろう。
優しく優しく彼の身体を洗った。身綺麗にしたらバスタオルで包み、二人で応接間のソファーへ。ベッドはめちゃくちゃだからね。
「君が息を引き取るまで、見ているよ。傍にいる、離れない。何時間だろうと寝ないで見てる。」
彼以外のものはもう、何もいらない。彼にしてもそうだろう。
「コウ。君が亡くなった後、僕はパイロットに召喚されるだろう。
僕は……君以外なんかどうでもいいと考えたりもしたが、君の家族や君の友達、君が大切にするものの為に闘うつもりだよ。それは君の為だ。
だから、心配しないでね。僕と君が命果てても地球は、みんなの生活は続いていくよ……。」
(152) 2023/11/16(Thu) 10時半頃
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ソファーに並んで座る僕らは肩を寄せているだろう。もうすぐ彼は死ぬのだし、僕も負うことになるが気持ちは何処までも穏やかだった。
でも、結果的に僕は彼を看取る事が叶わないのである。 何故ならーー。
「ん、何だろう……サイレン?」
外がやけに騒がしい。 立ち上がり窓から覗くとそこにはーーパトカーと救急車が見える。
彼を貫いた時の悲鳴は近隣まで届いた。それを不審に思ったご近所さんが通報したのだ。
(153) 2023/11/16(Thu) 10時半頃
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それから先は悪夢でしかない。 何か強盗やらが侵入しているという通報に乗り込んできた警察は、加害者である僕と、明確な被害者である彼を発見する。
全身に暴行の痕があり、発熱している彼はすぐさま保護されて救急車に運ばれる。
「コウッ……!やめろ、彼を返せッ僕は彼が死ぬまで見守るんだ、離せ、離せーッ」
暴れて警官を何人か殴り、僕は床にうち伏せ取り押さえられた。
担架に載せられたコウの姿が遠ざかる、見えなくなる。
「コウーッ!!」
絶叫しながら手を伸ばす僕は、端から見たらどう見ても狂人だったろう。
こうして僕らは離れ離れになった。 そして数日間が経過する。
僕らが次に相対するのは、あの忌まわしいコックピットにてーー……。*
(154) 2023/11/16(Thu) 10時半頃
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ーーif・大和とーー
大和から得た情報によると、珊瑚の父親は多忙で不在らしい。 確か医者のはずだ。 どんぐり亭にて逢ったことかあるので、その姿は覚えている。
確かに人命救助は大切だし医者の仕事でもある。が、娘を放り出しているのはどうなんだろう?
大和もパイロットになる件に不服を抱いているらしいのが文面から読み取れる。 当たり前だ、巨大ロボットに乗れなんていきなり言われてハイと答える方がおかしいから。
(157) 2023/11/16(Thu) 14時半頃
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僕が驚いたのは、彼が僕の事を真摯に励ましてくれたことだった。 僕はショタコンのけがある下半身が暴走した性欲魔人だから本当にクズなんだが、それでも彼の言葉には元気づけられ、こう返した。
『ありがとう大和。 君がそう言ってくれると、僕なんかにも少しは価値があるのかな、と思えた。
彼に気持ちを伝えてみるよ。』
うっかり”彼”と性別を書いてしまったが僕は気付いていない。
そして僕は彼の家庭の事情を知った。 読んだ時には絶句してしまい、全てを捨てて逃げようとしていたと語る彼に深く心を傷める。
『そんな事情があったんだ……僕は何もしらなくて、ごめん。』
(158) 2023/11/16(Thu) 14時半頃
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謝ることじゃないと思いつつも、事情をしらないで色々無神経な事を言ったかもと僕は反省する。
しかし更に驚くことがあった。彼がハッキリと珊瑚のために闘うと書いていたから。
それはまるでーー。 いや、もしそうならば、僕に後悔しないようアドバイスをくれた彼だ、きっと自身それを実践するだろう。
『誰かの為に……は、地球のためなんて言うより余程リアリティがある。
君に闘う理由があるのならそれでいいとは思う。 僕はやはりそれでも、なんとかパイロットを降りる方法を見つけたいと思うけどね。
一緒にいるなら、どうか珊瑚を護ってあげて欲しい。
頼んだよ、大和。』
こうして僕は、短い彼とのやり取りを終えたーー**
(159) 2023/11/16(Thu) 14時半頃
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ーーif・大和と(その後)ーー
大和が探している生きる理由、証は、僕にとっても考えるべき事であった。
『衝動で子供を……か。僕はーー』
『コウが僕の子供を身籠り産んでくれるなら、絶対大切に育てるだけどな!!』
何を書いているのか既に意味がわからない。恐らく大和も大いに混乱しただろうが、僕は大和に勇気を得て、感謝を込めてやり取りを終えた。
(171) 2023/11/16(Thu) 18時頃
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その後、僕は入院中の通話が可能となった康生に電話し告白する。
そして僕らは海辺でデートし、ホテルの教会で疑似結婚式を挙げた。
最初のパイロットとなった千映戦はショックだったが、仲良くなった大和、前から何度も励ましてくれる珊瑚、何より恋人である康生が傍にいたので、なんとか前向きな思考を保つことが出来た。
ただ、僕らがパイロットを逃れる方法だけはどうしても上手く行かず、ついに僕ら四人にも、椅子に座らねばならない時が来てしまうのであるーー。**
(172) 2023/11/16(Thu) 18時頃
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