10 冷たい校舎村9
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[わたし、首が裂けた九重さんを見た時、 怖いと思った。生々しい死に怯えた>>48。 人形だって気づかなかったから尚更。
……でもね、わたし。 ひとみちゃんが教えてくれて、鳩羽くんの声が届くまで、 一度だって、九重さんが死んだことに悲しんでない。
そのことに、気づいちゃったの。]
(588) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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[わたしの心は、夢と一緒に埋まっている。]
(589) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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— 夢が終わった日 —
[お母さんのお葬式には、 会ったこともないような人がたくさん来た。
お母さんの親戚に、お母さんの教え子。 お父さんの両親も来てくれた。
お父さんとお母さんの家はどちらも裕福で、 喪服の良し悪しなんて分からないけど、 制服を着たわたしにはみんなすごい人に見えた。]
(590) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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[最初にわたしを抱きしめてくれた>>1:526のは、 お母さんの妹だった。 喪服からは防虫剤と それを打ち消す上品な香水の匂いがした。
おばさんが「芽衣ちゃん」って呼ぶ。 わたしは「はい」って返事をした。
——大変だってね。って、どういうことだろう?
次にわたしの前に現れたのは恰幅のいい男の人だった。 お母さんのいとこなんだって。 小さい頃わたしと遊んでくれたこともあるらしい。 皺混じりの大きな手が、わたしの頭を撫でる。
——もう無理しなくていいんだよ。って、何?]
(591) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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[それからも大人が次々とわたしのところへやって来て、 わたしを気にかけてくれた。
確かにお母さんが突然死んじゃって、わたしは悲しいよ。 これからどうしようって不安もある。 でもまだ実感だって湧いてないし、 そうじゃなくても泣き喚くような子どもじゃない。
それなのに、みんなの優しさはわたしの頭上を飛び越え、 わたしの知らない方を向く。]
(592) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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[——わたし、 お母さんの夢を押しつけられた子なんだって。]
(593) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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[みんな、お母さんのことが嫌いなのかなって思ったけど、 親戚も教え子さんたちもお母さんのことを貶したりは 絶対しなかった。
「ちょっとやりすぎちゃっただけなんだ。 だから許してあげてね」
お母さんは悪気があった訳じゃないんだよって、 わたしに言うの。 お母さんのこと悪者にするのに、庇うの。
……あぁ、わたしがお母さんを悪者にしたんだ。 そう気づくのに、時間はかからなかった。]
(594) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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[確かに、最初はお母さんに言われて始めた習い事だった。
確かに練習はきつかった。 友達と遊びたいって思ったことも本当。
楽譜より絵本が読みたいって駄々を捏ねたこともあるし、 自転車で遠くに行ってみたいって思ったこともある。 優しいお母さんの鬼のような顔が怖くて泣いたり、 放課後に友達と遊びたいって言った時は、 ピアノのある部屋に閉じ込められたんだったね。
でも、ね。 わたしにはお父さんとお母さんの血が流れているけど、 お母さんの血は煮詰めたワインみたいに濃いみたい。]
(595) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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[わたしは、世界中の何よりもわたしの音楽を愛してる。]
(596) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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[ピアノが弾けなくなるくらいなら、
絵本なんていらないし、 自転車を没収されても平気だよ。 練習で叱られて何度泣いても頑張れるし、 閉じ込められた部屋でもずっとピアノを弾いていた。
どんなに苦しくても、辛くても、嫌なことがあっても、 たとえ家で泣いてばかりだったとしても、 友達だと思える人が誰もいなくても、 誰になんと言われても、どんな風に見られても、 ラクなんていらない。わたしはそれで良かった。]
(597) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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[でも。それが、ダメだったんだよね。]
(598) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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[死んだお母さんは可哀想な悪者になって、 生き残ったわたしはピアノから離れた日々を許された。
抱きしめる腕を押しのけ、ピアノを弾きたいと言っても、 「もういいんだよ」って言われる。
撫でる手を払い、わたしが望んでいるんだよと言っても、 「お母さんはもういないから大丈夫]って言われる。
あんな風に苦しまなくていいんだよ、だって。 もう何も犠牲にしなくていいんだよ、だって。
わたし、誰を恨めば良かったのかな。 お節介な参列者? 何も言わないお父さん? この物語の悪者は誰なんだろう。]
(599) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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[その答えはすぐに見つかった。 お葬式の夜のことだ。 わたしは怒りが収まらなくて眠れなくて、 お水でもがぶ飲みしてやろうって、リビングに降りた。
お父さんが、泣いてた。 お母さんの写真を見て、名前を呼んで。
——すまない、って。 守ってあげられなくてすまない、って。]
(600) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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[お母さん、ずっとみんなから言われてたんだって。 「芽衣ちゃんを解放してあげて」って。 でもその度に「芽衣の夢でもあるから」って突っぱねた。 外側に不器用なとこ、お母さんに似たんだね。
お母さんは知っていた。お父さんも分かってた。 お父さんはわたしの頭を撫でて、 わたしの好きなことをしていいんだって言ってくれた。
お葬式と同じ、悲しそうな顔をしていた。 お母さんのこと悪く言われるのが嫌なんだなって、 わたしはすぐに分かった。わたしもそうだったから。]
(601) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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[わたしの夢は2人に守られていた。
わたしがもっと楽しそうにしていたら、 わたしがもっと他のことにも目を向けていたら、 わたしの愛、ちゃんと信じてもらえたかな?
お父さんもお母さんも、責められずに済んだかな。
だって、どこにも悪意がない。 悪意がないのに大切な人が泣くのなら、 悪者はわたしでいい。
わたしだけで、いい。]
(602) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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[ごめんね、お母さん。 夢、叶えられなくなっちゃった。お母さんは怒るかな。
でも、わたしは お母さんとわたしを愛してくれるお父さんを守るよ。
ちょっとの間だけお母さん悪者になっちゃうけど、 時が経てば、みんな忘れてゆっくり休めるから。 お父さんが悲しい顔しなくて済むから。
おかあさん おとうさん わたしは死んだ人間より生きてる人を選んだ。]
(603) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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[母親に夢を無理やり継がされかけた芽衣ちゃんは、 父親を始めとした大人たちのおかげで 自由を取り戻すことができました。
めでたしめでたし。]*
(604) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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―― 少し前:3-10教室 ――
[ どこかこちらを揶揄するようだった柊君の顔が>>548 神妙な顔に変わっていく。>>551 だから私、やっぱりドン引きさせちゃったなって思った。 思わず左手首に手が伸びかけて、 だけど、違ってた ]
いっしょ?
[ 今度はこちらがオウム返し。>>548 ドン引き案件だと思ったのに。 まさか共感されるだなんて思ってなかった ]
(605) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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[ 見限られたくなくて、 捨てられるのが怖くて、 そうしないと生きていけない。>>552 柊君の言葉は、私には心当たりがありすぎる ]
一緒だね。
[ 一緒の私たちは、多分同じ種類の笑みを浮かべてた。 私たちは、同じだと思った。 ただ、求められていたものの種類がちょっと違っただけ ]
早く、大人になりたいね。 大人になったら、見限られたって捨てられたって、 自分で別の場所を見つけて生きていけるかもしれない。
[ 求められているのが絶対に達成不可能な目標でも、 いくら理不尽だって思っても、 今の私には、他に生きていける場所がない ]
(606) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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……じゃあ、柊君も 自分のこと「悪い子」なんて言わないでよ。
[ ヒドいって自分のことを笑った私に、 柊君は必死なだけだって言葉をくれたから、>>553 私は柊君の言葉の方を否定させてもらうよ>>552 ]
約束する。私は、ありのままの柊君を嫌わない。
[ 私の感情に、私の約束に、 どれだけ意味があるかなんて私にはわからない。 柊君にとっては、 あってもなくても変わらないかもしれない。
それでも、私は約束するよ。 きっと、柊君のためじゃなく、私自身のために。 だって私たちの背負うものはきっと一緒だったから* ]
(607) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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[ 自分は死にたいけれど、 他の人は死んで欲しくないみたいな思考。
矛盾しているようだけれど、 あるよね、って思う。]
(608) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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―― 現在 ――
[ 即答>>586に少し驚いて、それから笑って。 そっか。そりゃそうだ。]
まあ、どれだけの時間が経ってるか 正直定かではないよね。
ずっとこんな暖かいような生温いような そんな空気の中に居るのも、そうだね。
[ 閉所恐怖症みたいな感じなのかな、と。 そんなことを思いながら彼女の話を訊く。
本当はもっと空気は冷たいし。]
(609) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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……そう じゃ、ないかな。 こんな場所に逃げたいと思うくらいだもの。
私? …… ちがう、よ。 メールは送ってないし。
[ メールは送ってないけど。
ここから出ることが出来たとして。 現実に戻ったところでどうにもならないって、 あっちに戻る意味はあるの?って、 考えているとこは、ある。]
(610) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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食堂にクレープ、作った奴があるから。 食べに行ったらどうかな。
[ そう言いつつ、もし一緒に来て欲しいならば ついていくつもりはある。 そうでないならば、彼女を見送ろう]*
(611) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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── ちょっとまえ:マナ ──
[頭に落とされたげんこつ一発は痛かった。>>573
「い゛て゛ェ」って叫んだはずだし、 「暴力反対!!!!」とも抗議する。
弱ってる人間をもっと労れ!このひとでなし! シタタカ。ナンノコトカナ。
──── 閑話休題。]
(612) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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悪意ある。 むしろ悪意しか感じねー
[ちなみに俺は天井の御札は見てないけれど 見てたらもっと悪意しかねーって憤ってた筈 悪趣味には全面同意。>>571>>77 マナの苛立ちもすげえわかる。>>575
──── でも。 ]
(613) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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トシミを人形に…? なんで。なんのために。 [このあともう少し先の時間に、 マナがたどり着いた結論には俺はたどり着かず>>556 俺の疑問も虚空に消えてしまったかもしれないけれど ]
(614) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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メールの送り主がさ、 直接やったとか、マジ考えたくねえし そんなやべーやつ、3-9に居たと思えねーけど
……でも少なくとも。
ここがそいつにとっての理想の世界ならさ そんな理想の世界にだって、 いつだって死が隣り合わせにあるっつーことだろ 物騒なナイフとか、友達の死体だとか。
……辛ェな。
(615) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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[元気のねー鳩羽憐は、相変わらず考えようとする。 マナにとっての「優しい鳩羽くん」は>>140 相変わらずの考える生き物で、 しょうがないことでも考えすぎてしまう。
だけどこれは、しょうがないこと? 死とか血とかが隣り合わせにある世界が しょうがねーって割り切っていいことなのか 俺には、ちょっと、わからない。 ]*
(616) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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架空惑星 レンは、メモを貼った。
2021/06/09(Wed) 23時頃
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[ ただ、一つだけ違うとすれば、 柊君は求められた人間らしく振舞うことができたけど、 私は要求に追いつけなかった。 スペックが足りてなかった。 それだけ、って言ってしまえばそれまでだけど、 その差って、どうなのかなあ……?* ]
(617) 2021/06/09(Wed) 23時頃
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